恋する付喪神 (幻冬舎ルチル文庫)

著者 :
  • 幻冬舎コミックス
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344834750

感想・レビュー・書評

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  • ■トキは万葉筆の付喪神。自分を大事にしてくれた少年・要に恩を返すため、死に物狂いで修行を積み見事『福の神』へと出世した。しかしいざ下界に降りてみると、天使のような美少年だった要は、仏頂面で人嫌いな厭世家になっていた。それでもいい、要のためならと尽くすトキだったが、要に抱いた恋心が次第に隠せなくなり……という話。付喪神(尽くす系ワンコ攻め(地味にヤンデレ))×画家の青年(不器用だけど根はいい子受け)。

    ■わたしが昨年読んだ本の中では、トップの問題作がこちらでした。
    ■すごく荒削りな物語だと思うんですよ。主人公がすごく恋愛脳だしフラグの立て方が強引だし端々の下ネタが下品だし、そもそもせっかくの『付喪神』という設定なのにそれをあんまり活かされていないところがあるし、心情を地の文で説明しがちだし、気持ちの移り変わりさえもやたら地の文で説明するし、しかもコロコロ変わるし……。

    ■けどねなんでかな、最後まで読むとなんつーか、……正直、嫌いになれない。むしろ大好き。スーパー御都合主義大団円ハッピーエンドだったけど、大いに結構。こんなのもたまには悪くはないなという気分。

    ■どうして嫌いになれないかと言うと、脇役の猫(雌、ツンデレ)が可愛かったのと、脇役の九十九神が健気可愛かったのと、脇役の女キャラ(受けの元カノ)がいい感じに味わい深くて好もしかったのと、敵対関係にある男キャラがこれまた味わい深かったのと、そいつが最終的にきちんと服役してたのがよかった……という、何が言いたいかというとこの作品、主役のカップル以外のキャラクターがちゃんと生きてて、そして変にBLの肴にされてないんですよ。
    ■BL文庫の脇役って、多くの場合主役カップルに単に嫌な気分を味あわせるだけの障害物要員だったり、やたら人間味がなくて物語の駒っぽかったり、たまに「お、ええキャラやな」と思ったら他のBL作品からのスピンオフキャラだったり(要はそのキャラにも同性の恋人が居るわけだ)、することが、すごく多いんですよ。「ふつうにかっこいい女キャラ」とか「平和で円満な家庭を持つ既婚者キャラ」とか全くいないわけではないけれど,少数だし,あんまり求められてない気さえする。
    ■ところがどっこいこの作品。まず脇役がけっこう多い。けども恋敵キャラとかはいない。敵対関係にある男キャラ(受けの大学の先輩)はいるけれど、その男キャラが受けを憎む理由というのも才能への嫉妬とルサンチマンの発露だし、クライマックスで勢いあまって強姦しようとなんかしないし(そういうパターンなぜかすごく多い!)。きちんと憎しみあまって包丁で刺そうとしてる!いいぞいいぞ!
    ■物語のラストも、なんていうか「あー、こんな感じでこの二人はいろんなひとに囲まれて支えられて、これからも生きていくんだなー」と思える感じで、個人的にはそこがすごく幸せでした。「二人の世界!!!!他には何もいらぬ!」全開で終わる物語があまりに多い中、いやそういう作品ももちろん好きなんですけど,この物語のカップルのあり方はあまりに牧歌的で、うーん、嫌いになれない。
    ■他人には勧めづらいけど、個人的にはなんだか好きな話でした。

    ■あと攻めが、デレデレワンコ攻めに見せかけた隠れヤンデレ(根深い)だったのがかなり……好きでした……。

  • 付喪神・トキ✕水墨画家・要。大黒様や恵比寿様たちとのやりとりで楽しめるファンタジーかなって思ってたらやられましたね~。トキの一途さにうるうると… でも要を慕う気持ちだけでなく、仕方ない事だと分かっていても忘れられた憤りや悲しさから、どこかで要を信じきれていない諦めといった負の感情も書かれていたのも良かった。トキと一緒にいる九十九神たちが心配症で泣き虫で可愛いかったです♪

  • 福の神になった柳葉筆の付喪神・トキ×水墨画家の要。
    現代システムちっくな神様の世界とか大黒様たちのノリとかは好きじゃないですが、要とトキの哀しみや苦しみ、お互いへの想いには胸を衝かれました。アリスや九十九神たちとのやりとりも微笑ましくて可愛かった。
    ただ結構いいこと書いてるのに大黒様たちとかトキの妙なノリと合わさって軽ーい感じになってるのがなんかもったいないなあと。

著者プロフィール

4月14日生まれのAB型。広島人。第66回花丸新人賞選考にて『プライスレス・ライフ』が選外佳作入選。花丸文庫「恋愛小説は書けない」にてデビュー。

「2019年 『白狼さまの恋ぐすり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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