ハート型の雲

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 26
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344921702

感想・レビュー・書評

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  • 芥川賞受賞作家、高橋三千綱さんの本は初めて。家族の本棚にあり、もらった本。年末整理のため読み始めた。
    というわけで帯以外何も事前情報なしに読んだのだが、読んでいる最中にどこか違和感があり、その違和感は読了後もあった。で、検索して気づく。
    ……これは「株式会社染めQテクノロジー」のほとんど社史のような小説だった。

    登場人物描写についてなど、多少はフィクションもあるだろうが、ほとんど事実なのかなと思う。創業者である菱木貞夫の生い立ちから起業、転落、再生の様子を妹である恵美子の目を通して描いている。

    人物描写としてはまず兄妹の母の描写がかなりの「鬼婆」、というよりあまりにも情緒不安定な女性に描かれているのだが、その回収やそうなった背景の説明なども特にされなかったのは「小説」としては不完全燃焼な感じがした。(お母さま……子どもたちにこんな感じで描かれてますけど……それでいいんか……?)
    また、物語といえばいかに親を乗り越えるかが主要テーマのひとつだと思っていたので、てっきりそういう展開もされるのかな〜と思い読み進めていたら特にそんなことはなく、ただただヤバい母親で終わる。この母親の人物像が強烈なので、会社の起業、上昇、転落、再生のストーリーよりもそっちの方が印象に残ってしまった。笑

    あと、妹の恵美子の良く言えば素直なお嬢様っぷり、悪く言えば何も知らない様子にもひたすらもどかしさを覚えた…笑

    【ちょっと言いたいこと】
    事実をベースにしたほぼ社史の物語だとわかって読んでいればふ〜ん、へ〜、という感じの読書体験だったのだろうが、帯にも商品説明にもそんなこと書いていないし、デカデカと書いてあったのは
    「アノ家は貧乏だからよ。貧乏すぎるからよ」
    のセリフ。これ、読み終えた者としては「かなり違和感を感じた」と指摘したい。
    これだけ見たら貧乏な家族のお話なのかな?と思うのではないだろうか。しかしこのセリフは恵美子の母(例の鬼婆)が恵美子に結婚を取りやめるようヒスった場面のセリフ。
    貧乏なのは恵美子の結婚相手の家のことである。(しかもその結婚相手もなんだかんだで東大卒、そして都庁に勤める公務員なのである。)
    (というか、この物語には貧乏すぎる人など出てきません…。)

    この物語の本質をな〜〜んにも捉えてない抜き出しの帯文。これに関しては、読後、なんでこの文を帯文に?という疑問を抱いたし、「こういう売り出し方でいいのか?幻冬舎メディアコンサルティングさんよ!」という感想と(結構な)不信感を抱いた。
    意図的なミスリード?”三丁目の夕日”的な郷愁を感じさせる物語だと思わせたかったか?多分家族もそれで買っちゃったのかな…。
    それともただ単にセンスがない?
    つまらなかったとしても別にいいので、こういう騙すようなのはちょっとどうかと…。
    (というわけもあり星2つです…)

    【おすすめポイント】
    日本経済が列島改造論〜バブル期〜そしてバブル崩壊…と劇的に変化を遂げていく様子が兄・貞夫と妹・恵美子の周辺の人々と共に描かれている物語なので、その辺りは帯の文の通り「生々しく」感じられて面白いかもしれない。また、
    ・「株式会社染めQテクノロジー」の今に至るまでの歴史が知りたい人
    ・社長/専務を知りたい人
    ・社長の転んでも立ち上がるスピリットに励まされたい人
    にはおすすめ。

  • あぁ懐かしい昭和の時代背景。
    家族の確執と最後は追い討ちをかけるようにバブル崩壊。
    三千綱さんがガンになっていらっしゃたことはなんとなく知っていたけど、そのご経験も書き込まれているのか、最後は少しだけ読むのが辛かったです。

  • 読み終わってから、
    何の話を読んでいたのか、
    思わず首を捻った。

    家族もの…なんだろうな。

    感動は…しないな。

    あの母親のキャラは何だったんだ?

    疑問しか残らん。

  • 昭和30年代。
    菱川恵美子の実家は塗料の会社を経営していた。
    母親は5歳上の兄に冷たくあたる。
    しかし
    恵美子にはオーダーメイドの服を着せたり
    いくつもの習い事をさせたりした。
    母親に逆らうことを許されない恵美子は
    彼女の「操り人形」だった。
    反対に‪父親は2人の子供へ深い愛情を注ぐ。
    いい時も悪い時も腐らず、努力を惜しまない兄の貞夫と、
    恵美子のお嬢様然とした素直さが気持ちいい。それが救い。‬

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著者プロフィール

1948年1月5日、大阪府で作家・高野三郎の長男として生まれる。2歳より東京杉並で育ち、サンフランシスコ州立大学創作科、早稲田大学第一文学部を中退。テレビ局員、ホテルマンを経てスポーツ紙記者在職中の74年『退屈しのぎ』で第17回群像新人文学賞を受賞。以後、作家に専念。78年『九月の空』で第79回芥川賞を受賞。
主な作品に『葡萄畑』『怒れど犬』『天使を誘惑』『坂道を越えた国』『猫はときどき旅に出る』など。エッセイ『こんな女と暮らしてみたい』はミリオンセラー、『真夜中のボクサー』を映画化、脚本、監督を務める。『Dr.タイフーン』『セニョールパ』といった劇画の原作も多数手がけ、近年は、時代小説に新境地をひらいていた。近作には、『さすらいの皇帝ペンギン』(集英社)、『作家がガンになって試みたこと』(岩波書店)、『悔いなく生きる男の流儀』(コスミック出版)がある。2021年8月17日逝去。
2021年11月13日、未刊の最後のエッセイ集『人間の懊悩』(青志社)刊行。

「2022年 『枳殻家の末娘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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