日本人の精神と資本主義の倫理 (幻冬舎新書 は 3-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344980570

作品紹介・あらすじ

ライブドア・村上ファンド事件に象徴される、手段を選ばない利益追求の姿勢=「売れてなんぼ」は、今や日本社会を根本まで腐らせつつある。ビジョンもフィロソフィーも、もはや口にすることのなくなった日本人は、この先、いったい何処へ向かうのか。経済格差・地域格差・文化格差を克服していくことはできるのか?単なる問題提起や現実からの逃避がすでに無効となった今、激論の末に二人がたどり着いた覚悟と唯一の希望とは。

感想・レビュー・書評

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  • リーダーは多少の大衆的なベクトルにひきずられるのではなく、本当に社会のためになるなら多少強引でも引っ張っていくというのは難しいけど大切だと思った。失敗したら過程を振り返ってなんでだめだったのか考えて次は良くしていくことも大事だ。専門バカもだめでリベラルアーツを学んで教養人になることが評価されるべきで、教養人に自分もなって物事を広い視野で考えられるようになりたいと思った。何か強烈な対抗軸である、みんながすごいと思う何かで、価値の転覆が起こる何かを示すことも必要だというのも印象的で、特に持続可能な社会に転換するのにモデルやビジョンを示さないといけないと思った。
    日本企業はアメリカと違って、完成系ではなくそれを支える部品を作っていることをアピールして満足してるけど、それを超える動きが出てこないというのは確かにと思った。もっと先をみて考えていく必要があるだろう。

  • ノーブレス・オブリージュ
    ピアプレッシャー
    ビジョナリー

    イデオロギッシュ。だけど日本社会に対して感じることを言語化してくれている印象。

  • タイトルで提示された主題は、P71からの波頭の発言に集約されている。

    ◇通奏低音的に流れる日本のカルチャーは、やはり家康に始まる幕藩体制が源だと思います。逆らわず、長いものには巻かれるという文化。(中略)それをベースに近代を迎え、大衆の野獣性が、高度経済成長期でひとつのピークを迎える。経済至上主義。しかし、あの時代はそれで良かったのかもしれないと思っています。71-72

    それまでは経済成長が、飢餓や凍死を減らし、生活水準の工場に直結していた。しかし、

    ◇五〇年代に入り、そろそろ経済のことばかりでなく、文化や芸術にも目を向けよう、その方がナチュラルだというべきフェーズ(段階)に入ってからも、相変わらず経済だけが追求されてしまったわけです。どらだけカネが稼げるかという価値軸だけで生きる社会になってしまった。72

    そんな日本でいかに生きていくかと言えば、資本主義の手先にとなり、カネのためなら何でもするというような態度を拒否した
    ◇働き方と生き方の実態モデルになりたいと思っているからなのです。皆が思うほど儲けてはいないけれど、それでも飯は食えるし、好きな時計ぐらいは買える。クルマだって持てる。もちろん、そのためにはがむしゃらに金儲けをするのとは別の意味で、必死に頑張らなければならない。112
    と、結局がむしゃらに頑張る事を処方箋としているのは、いささか不満である。
    キーワードは、大衆というバケモノ、ピアプレッシャー、対抗軸としてのハイカルチャー


    ◇日本において宗教は、いつの世も国家の道具、政治の手段だったのです。しかも、戦後はその神道すら消えてしまう。25
    ◇今の東京の景観を見れば、これは自我剥き出しの、まさに大衆というバケモノのあり方を示しているのではないか53

  • 波頭さんと茂木さんの対談本。
    裏表紙の解説文を読んでおもしろそうと思いました。
    でも、なにか物足りない。説明しづらいのだけど、茂木さんがこういう社会評論をすると感情的に思えるから、もったいない。
    自分をいちばんに考えようとしない姿勢には共感するけど、二人とも、「自分が正しくて他のひとたちが間違っている」っていう枠組みで語っているような気がして、ちょっと残念でした。

  • 脳科学者茂木健一郎、経営コンサルタント波頭亮の対談。

    なんだか、随分と思想的に極右になったり極左になったりと忙しい感が拭えない。

    この一冊を通して、思うのは、やはり日本人は、和を以て貴しと成すに帰着するんだな、と。
    また、どうしても戦後の宗教感の抹殺が影響しているな、と。

    ものづくりはイケてるが、マネジメントは苦手な大和民族か。

  • 対談形式は苦手だったのだが、結構スラスラ読める。
    今半分程度。
    大衆について書かれていることについて。
    お二人が、大衆というものに対し憂え、憤懣しているように感じた。
    弱者であることで自分の怠惰を正当化し、利益や享楽をむしりとろうとしている、大衆だ。
    私は言うまでもなく大衆側の人間で、テレビやドラマは観ないけれど、オペラやコンサートなども積極的に見に行かない。興味はあっても行動するまでに至らない。だいたい東京に住んでいない人間は、凡そハイレベルな文化を臨めないような書きぶりで、東京に行きたくもない人間としてはちょっと苛立ちも覚えてしまった。
    それはまあ、私の劣位感みたいなものなので、そういうものも含めて読んでいておもしろい。
    これからどんな話になるのか。わくわく。

  • 二人の対談形式で進んでいく本。
    現在は日本人の精神が廃れてきたという危機感と、今の資本主義に対する警鐘も鳴らしている。

    特に日本のエリートの美意識、ノブリス・オブリージュについてもなくなっていることに悲観している。
    アメリカはピューリタニズム精神で弱者に対する優しさがあるが今の日本はない。

    本来はそぎ落とす文化を持っており数少ない国であり、資本主義に対する新しい価値観を強烈に出しても良いのではないか。
    今の資本主義のスピードは明らかに逸脱していて、このままではまずい、
    金儲けでは勝てない日本人精神を違う方に向けて世界をリードするような事ができるのではないか。

  • 波頭さんと茂木さんの共著。
    この2人のTweetはとてもおもしろくて
    考えさせられることが多くて好きなのだが、
    ときどきTwitter上でこの2人でやりとりをしているのを
    見て、「どういうつながりなのだろう」と
    思っていたのだが、
    まさか共著を書いていたなんて思いもしなかった(笑)。

    さておき、本書は対談本のかたちとして、
    薄いながらもアクセル全開、感情のほとばしりが
    コラボレーションしている。
    まさに2人の対談の席に座っているかのような気持ちになる。

    脳科学者、経営コンサルタント、そういう肩書きはあるけれど、
    あまりその職業的肩書きが前面に出ることは無くて、
    異なる経験を積んできた2人のプロによる日本を考え、憂う
    「ホープフルモンスター」たちの気高い理念と泥臭い葛藤の
    混ざり合った珠玉の言葉が詰まっている。

    私が、私の理念として、私のやり方で、
    現状に一撃を入れていくためにできることはなんなのだろう?
    そんな思いがぼんやりとあり続けていたのだが、
    それを具現化することができず、ゆえに当然一撃入れる方法論に
    なんて考えが及ばなかった。

    が、本書を読んで、まずそのぼんやりに愛と鋭さのある
    エネルギーが流れ込む中で、具象化されつつあり、
    そして一撃の方法論にまでついにステップを踏めそうな
    感覚を持つことができた。
    これは、非常に大きい。

    私も「ホープフルモンスター」となりたい。
    それになるための道を歩く。

    ことあるごとに読み返したくなる一冊かもしれない。

    タイトルがいまいちよくわからないけれど(笑)。
    「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
    に引っ掛けているのだけれど・・・なぜそれを。
    まあ、私自身がその本を読んでいないのでなんともいえない。
    早く読まなくては(ハイ・カルチャー!)。

    以下、心に残った文章など。

    -----------------------------------------------

    p.28 茂木
    「ピアプレッシャー」、つまり「ピア(同輩)」からの「プレッシャー
    (圧力)」のダイナミクスにおいて、戦後の日本社会はこれまでずっと、
    抜きでようとする者の圧力を引っ張ることしかしてこなかった。
    平均値に引きずりおろす方向にばかりプレッシャーの力学が働いて
    きたのです。

    p.40 茂木
    当時の自分に自負するところがあるとすれば、未知なる世界と
    出会ったとき、それを拒否しようとはしなかった。分からないことは、
    分からないまま判断を保留しました。世界には自分の分からないことが、
    まだまだたくさんあると思っていたからです。その思いを出発点に、
    僕はこれまでいろいろなことを学んできたのです。
    だから、自分たちが理解できる範囲内でしか世界を想像しようとしない
    今の日本のポップカルチャーが、僕にはどうも理解できないのです。

    p.42 茂木
    日本の貧困はテレビのタレントたちに対抗する軸がないことに
    尽きるわけで、「あんな連中どうでもいい!」と言う人がもっと
    いてもよいし、そういう人がもっとビジブルでなければならない。

    p.45 波頭
    僕にも茂木さんにも子ども時分から未知の世界に対するCuriosityが
    あったわけです。もし、今のようにcuriosityもないまま、テレビと
    ゲームだけで育つ環境が続いたら、ハイカルチャーやハイサイエンスを
    楽しむ能力自体、芽生えなくなってしまうかもしれません。
    子ども時代をどう過ごすかはやはり重大な問題だと思います。

    p.47 波頭
    誰かが踏ん張っていないと民主主義が衆愚政治に成り下がってしまう
    のと同じように、レベルの高いものに対する敬意を誰かが抱き続けて
    いかないと、分かりやすいものだけが正しいことになってしまいます。
    分かりにくいものの正しさやそれに対する敬意が社会から消失して
    しまうでしょう。

    p.49 波頭
    文化の素養は社会的な仕掛けによりインストールすることが可能なのです。
    (略)
    確かに権力の操作だけで人間の心がすべて決まるわけではありませんが、
    制度として人の心の中に浸透・定着させていくことはできると考えています。
    ともあれ、高度経済成長期以降、日本の価値軸は経済中心の
    マテリアリズムに偏りすぎていることは疑いないでしょう。

    p.73 茂木
    地方に住む子どもにとっては、テレビが唯一の情報源だったりするので、
    自分がテレビに出演するときは、ノイズでもいいから、何かが伝わればと
    思って、確信犯的にテレビの前の子どもにひとつ傷をつけてやろうと
    いつも考えています。

    p.84 波頭
    反省のない日本、よくいえば桜の文化。駄目なら駄目で、潔く散れば
    よいとする考え方ですね。そのせいか、科学的な分析を嫌う傾向があります。
    (略)
    失敗は忘れ、態勢を立て直して、ぶつかって行こうというのが日本人は好きです。
    その潔さの最たるものが切腹です。切腹が全ての総括になってしまう。

    p.91 波頭
    和魂洋才といえば聞こえはいいけれど、欲深に良いところ取りばかりしようと
    するから、全体としてうまく機能しないのではないか。

    p.92 茂木
    僕は現代日本の生活を心の底では認めていない。自分の生活を愛していない
    という問題に突き当たっているわけです。もちろん、きちんと生きています。
    友達もいるし、仕事もしているし、楽しくやってはいるけれど、どこかで
    現代日本を肯定していない。それはとても不幸なことです。

    p.110 波頭
    茂木さんと同じで、お金のことは気にならない。お金の軸と離れていても、
    幸せと豊かさを、充分に手に入れられるとの確信を持って生きています。

    p.113 茂木
    われわれは青臭さが共通点かもしれませんね。平成日本では
    「絶滅危惧種」みたいな存在ですが。

    p.119 茂木
    僕は牛丼を食べるのが趣味なのですが、あんなものが食べられるだけで
    日本は天国ですよ。味噌汁と卵とお新香まで付いて。僕が案外、
    高度経済成長期が好きなのです。テレビも、あの頃はまだ好きで、
    よく観ていました。高度経済成長といいながら、日本人の中に経済以外の
    夢がまだいろいろあった時代だと思っています。

    p.127 茂木
    日本には、ITオタクはいるけれど、人間を含め社会を広範に理解して
    制度設計できる真のプロフェッショナルがいません。人間はよりよい
    生活を手に入れるために、何をすべきかよく分かっている生き物だから
    「知」が価値として見出される時代が必ず到来すると確信しています。

    p.129 波頭
    多方面にわたってものが分かっていることの大事さ、専門馬鹿でない
    ことの大切さを社会的に認めないと、今の社会の閉塞状況は
    打ち破れない。経済の分野で既得権の解体が起こったように、
    日本のアカデミズムも早く専門馬鹿信仰とそれに基づく既得権体制を
    解体しないと学問も進んでいかないと思います。

    p.139 茂木
    昔のように労働が額に汗して働く形なら、自分の生とのつながりも
    見えやすかったかもしれないけれど、今そのつながりは何重にも
    間接的です。仕事の意味を認知システムの中で了解させることが、
    ある種の工夫とイマジネーションを必要とする行為になってしまった
    と言ってもいいでしょう。

    p.143 茂木
    多様性。それが今の時代を理解する一番のキーワードだと思います。
    多様性が必要なことは間違いないけれども、逆に人生の様々なことが
    扱いにくいともいえる。人間は単純化したいとの欲望が
    非常に強いから。

    p.143 波頭
    リベラルアーツ的なアプローチは論理や数学、認知学あたりに
    留まるけれど、複雑系の概念をもっと広く社会全般に導入したら、
    それこそさっきの全ての分野が総括して有機的につながるのではないか。
    また、そうしたかたちで認識しないと、実社会を捉えることなど
    できないのだろうと思います。

    p.154 波頭
    地球を人間の身体に置き換えて考えるならば、物理的な身体としての
    制約や限界に対して、調和的な消費や、生命再生産のペースが
    あるはずでしょう。現状はそれを明らかに逸脱しているのではないかと
    思うわけです。必要以上に利便を追求したり、必要以上に消費を
    大規模化することで、ほんとうに幸せになるのか。

    p.166 波頭
    仮にインテリジェンスの所産を文明と定義すれば、日本には文化は
    あるけれど、文明はないと言わざるをえません。日本には感覚や感性を
    土壌として成立する文化は多彩に存在する。しかし、インテリジェンスによって
    人類を進歩させるような文明を日本は生んだことがない。

    p.167 茂木
    突出したい人は遠慮なく突出してくださいではなく、平均的なレベルに
    引きずりおろすことで安心するような精神構造がそうしたことをしてきたの
    だと思います。

    p.167 茂木
    アップル社におけるスティーブ・ジョブズの役割とは、経営判断です。
    (略)彼のモットーは最悪のディシジョンを下さないこと。
    (略)僕は単眼的な研究ではつまらないと思うのだけど、科学の世界でも、
    目に見えない総合的な知性、頭の働かせ方からいうとおそらく
    シビライゼーションみたいなものをリスペクトする感覚がない。
    そうした価値を認められないというのは、日本のインテリ、というか
    アカデミアの最大の欠点です。

    p.184 波頭
    今の時代、経済格差ばかりが取り上げられるけれど、本質的に問題なのは
    この文化的環境格差であり、この格差が生き方の格差につながる
    のでしょうね。

    p.185 茂木
    こればかりはインターネットで知識を断片的につなぎ合わせても
    補えないものです。手にしている人からしたらまったく当たり前の
    ようにあるものだけど、触れたことがない人は思考に変な癖が
    ついてしまったりする。

  • ポップカルチャーとハイカルチャー。
    ポップカルチャーだけでバランスの取れた文化は育たない。
    (エリートは)ハイカルチャーを大切にすべき。

    お金のことは取り敢えずおいておて、
    で、君は何が好きなの?
    (エリートは)そこが肝心。

    (エリートの)エンジンは、好奇心だ。

    日本人論というより日本のエリート論のような雰囲気もかなり漂っています。どう考えても一般大衆側である私ですが、そこは背伸びして二人の論調には概ね同意。

  • 2011/6月
    日本の現在のあり方に対する2人の対談。
    茂木さんが日本に対して、問題定義しているのが以外だった。
    2人に共通して、欧米の議論の文化に対して、日本の譲り合いの精神は時代に乗り遅れるという議論を展開しているが、
    自分は、案外そうでもないかと最近思っている。
    文化の違いは結局。批判のしあいでなく、尊重のしあいであると思うから。
    だから日本人がこうやって日本はだめだと言い合ってしまうのはちょっと残念な気がする。
    それでも、海外の場でやってきた人たちの日本人社会に対する物足りない、実感はあるんだろうなぁとも思う。
    最終章「格差社会」での議論は結構すきでした。(秀吉と千利休、人間と地球寿命、ジョブスのコーディネート力と日本人の職人気質など)

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著者プロフィール

波頭 亮(はとう・りょう):1957年愛媛県生まれ。東京大学経済学部卒業。マッキンゼーを経て、88年㈱XEEDを設立し独立。戦略系コンサルティングの第一人者として活躍する一方で、明快で斬新なヴィジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目される。著書に、『プロフェッショナル原論』『成熟日本への進路』『論理的思考のコアスキル』(以上ちくま新書)、『知識人の裏切り』(西部邁との対談、ちくま文庫)、『経営戦略概論』『戦略策定概論』『組織設計概論』『思考・論理・分析』『リーダーシップ構造論』(以上、産能大学出版部)、『AIとBIはいかに人間を変えるのか』(幻冬舎)ほか多数。

「2021年 『文学部の逆襲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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