日本の10大新宗教 (幻冬舎新書 し 5-1)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344980600

作品紹介・あらすじ

多くの日本人は新宗教をずっと脅威と好奇の眼差しで見てきた。しかし、そもそも新宗教とはいかなる存在なのか。「宗教」の概念が初めてできた明治以後それがいつどう成立したか案外、知られていない。超巨大組織・創価学会に次ぐ教団はどこか、新宗教は高校野球をどう利用してきたか、などの疑問に答えつつ、代表的教団の教祖誕生から死と組織分裂、社会問題化した事件と弾圧までの物語をひもときながら、日本人の精神と宗教観を浮かび上がらせた画期的な書。

感想・レビュー・書評

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  • メモ
    あらゆる宗教は、最初、新宗教として社会に登場するとも言える。

    ・仏教は、インドの伝統宗教・バラモン教のなかに出現した新宗教であった。
    ・キリスト教も、ユダヤ教のなかに生まれた新宗教で、だからこそ『聖書』のうち「旧約聖書」に関してはどちらの宗教においても聖典の教えの中心に位置付けられている。
    ・イスラム教もユダヤ教やキリスト教を生んだ宗教的な伝統のなかから生まれた新宗教である。

    新宗教としてはじまったそれぞれの宗教は、時間を重ね、信者を増やして、社会の中に定着していくにつれて、既成宗教としての性格をもつようになってゆく。

    新宗教の場合、信者はそれまでの宗教を捨て、自らの意思で信仰を獲得する。既成宗教の場合は、親などから自動的に信仰を受け継ぎ、自らの意思でその宗教を選択するのではない。

    ・日本人は自らを「無宗教」と.考えているが、これはイスラム教徒と同じように、生まれた時から日本の既成宗教の信者になってしまうからである。
    ・日本の場合は既成宗教が神道と仏教という二つの宗教が組み合わさった特殊な形態をとっているために、自分たちを神道信者とも仏教信者とも決めることもできない。そこから特定の宗教に属していないという意識が生み出される。

    ・明治に入って近代化されるまで、日本には「宗教」という概念がなかった。宗教という言葉はあったがそれは宗派の教えと言う意味で、現在の宗教とは意味が違った。
    ・宗教という概念がなければ、無宗教という考え方もない。

    ・近代になって、新宗教ということが問題にされるのも、無宗教という意識が広まったことと関係している。
    ・国民の多くは特定の宗教を信仰していないと考え、特定の宗教に入信して活動している人間を、特別視するようになった。
    ・最初は明治に入って活動が合法化されたキリスト教に入信する人が特別視されたが、やがて、新しい教団、新宗教に入信して、信仰活動を展開する人が、特別視されるようになった。

    ・新宗教は、仏教、神道、キリスト教など既存宗教の影響を必ず受けている。巨大建築物を建てる傾向。

    1 天理教:神道系:1838(天保9)10.26を立教の日と定める。教祖・中山みきが「神の社」に定まった日。みきの神憑きが元。

    2 大本(おおもと):神道系:教祖・出口なお(1836天保7生)が57歳の時(1893明治15)神憑きする。なおの5女の夫、王仁三郎が発展させる。

    3 生長の家:谷口雅春(1893明治26生)が大本を経て、1929(昭和4)雑誌「生長の家」の刊行が元。

    4 天照皇大神宮教:教祖は北村サヨ(1900明治33生)が1944(昭和19)祈祷師から生き神になると告げられる。1948(昭和23)数寄屋橋で「踊る宗教」として出現。
     ○爾宇:長岡良子も1947年、金沢で天変地異の予言を行い幟をたて街中を練り歩く。46年には元横綱双葉山も訪問。

    5 立正佼成会:日蓮系、「法華経」を所与の経典:庭野日敬(1906明治39生)と長沼妙佼(女性)(1889明治22生)が、1938年(昭和13)に大日本霊友会を抜けて創立。
     ○霊友会:日蓮系、「法華経」を所与の経典:久保角太郎(1892明治25生)とその兄嫁の小谷喜美が1925(大正14)創始。喜美はシャーマン的能力を体得。総戒名の思想は西田無学から受け継がれる。1971年(昭和46)に喜美が亡くなり、久保の息子の継成(東大インド哲学科卒)が雑誌「インナートリップ」を創刊。自分探し路線のさきがけ。

    6 創価学会:日蓮系、「法華経」を所与の経典:牧口常三郎が創立。北海道で教師をしていた。先祖供養の重要性を否定したことで、特異な信仰世界を築くことになる。

    7 世界救世教:観音信仰が入っている:岡田茂吉が1931(昭和6)夢で啓示を受け、大本を脱退して1934(昭和9)前身の「大日本観音会」を創立。戦後「お光さま」という手から光が出るという病気治しを行う。熱海のMOA美術館を所有し「地上天国」のモデルの一つとしてとらえている。
     ○神慈秀明会:世界救世教の分派:ミホ・ムージアム(滋賀県信楽にある)「シャングリラ(桃源郷)」にある美術館を自称。
     ○真光系教団:浄霊(真光の業と呼ぶ)や聖地の建設、自然農法などで世界救世教と共通点がある。「世界真光文明教団」「崇教真光」など

    8 PL教団:パーフェクト・リバティ教団:観音信仰から出発しているが広い意味で法華信仰の流れ:天照大神を至高の神として認める:御木徳一(1871明治4生)が開祖。23歳の時、徳光教の信者となるが教祖の徳光が1919に亡くなると、1925に御嶽教徳光大教会本部→1928扶桑教→1931扶桑教ひとのみち教団→戦時中結社禁止処分・徳一、息子の徳近、入獄→徳一死亡→1945.10徳近出所→1946教団再建、名称をひとのみちから、パーフェクト・リバティへ。弾圧から解放された喜びが示される。

    9 真如園:不動信仰を核とした修験系:伊藤真乗(1906明治39生)が創立。(初期は立川飛行機のエンジニアだった) 真言宗の在家修行者として宗教活動を開始。1938(昭和13)真言宗醍醐派立川不動尊分教会を設立。「涅槃経」を重視。

    10 GLA(ジー・エル・エー総合本部):高橋信次(1927昭和2生)が教祖。:霊的な現象への関心。1969.4.8「大宇宙神光会」発足。1970.12.7「GLA God Light Association」に改名。ずっと町工場の経営者。現高電工業株式会社。ソフトウェア制御装置など。

    おわりに
    「カルト」との区別。過度に終末論を強調、多額の献金を集める、など反社会的な傾向の有無が指標。


    2007.11.30第1刷 2008.1.30第9刷 図書館

  • 創価学会や天理教、生長の家、など、よく名前を聞くし近所にも施設がある宗教の変遷がよくわかり、面白かった。
    新宗教に対する偏見みたいなモノはなしに、中立的に事実を取材して書いてある。
    興味深いのは、新宗教の教祖はほとんど女性だということ。やはり最初は、病気や子どもを亡くしたことなどをきっかけに、祈祷などに頼るようになるみたいで、そこから“教祖”になってゆく。
    中世に生まれた浄土真宗や日蓮宗や禅宗なんかも、最初はその時代の“新宗教”だったわけで、「念仏唱えれば極楽へ行けるなんてあり得ない」とも言える。でもそれを裏付けるような“宗教体系”を作っていき、組織を作り、信者を集め、宗教団体になってゆく。教祖は女性でも、2代目の代表者からはだいたい男性になる。
    宗教って何なのかな、という観点からも面白い本でした。

  • ここで扱われている10大宗教とは、以下の通り。

    01 天理教
    02 大本
    03 生長の家
    04 天照皇大神宮教と璽宇
    05 立正佼成会と霊友会
    06 創価学会
    07 世界救世教、神慈秀明会と真光系教団
    08 PL教団
    09 真如苑
    10 GLA

    漢字変換が大変。
    それはともかく、「大本」教について書かれた「大地の母」という小説は、とんでもないものらしい。著者によると、
    「そこでくり広げられている物語は、想像を絶するもので、物語のあまりにもドラマチックな展開に、私は全十二巻を一気に読み終えた。『邪宗門』よりもその内容ははるかに強烈で、圧倒的だった。…全編を通して繰り返されるのは、神話的なドラマであり、初代教祖である出口なおと王仁三郎の神憑りであり、二人に降った神同士の対立と抗争である。そこでは、当たり前のように奇跡的な出来事が起こり、時間さえも逆戻りしたりするのである」(p54)


    小説の作者は登場人物の出口王仁三郎の孫にあたる人で、すべて事実にもとづいていると述べているらしい。これは面白そうだ。そのうち読んでみるかもしれない。

  • 70点。10の新興宗教(本書では新宗教と呼ぶ)を選び、それら団体の来歴や教義、組織形態を客観的に概説した一冊。深く知る必要はないと思うけど、これくらいは知っててもいいんじゃないかなぐらいの感じ。
    「吹奏楽の甲子園」と言われる普門館って立正佼成会の施設だったんだと初めて知った。ブラバンの憧れは言葉通り「聖地」だ。

    社会が変われば不満の中身も変わるし、どういった人々が不満をもつかも変わる。宗教がそれら人々の受け皿になるんだとすれば、今後も新たなる新宗教が生まれるだろうし、それは時代を映す鏡にもなるのかもしれない。

  • 新宗教(新興宗教)についてわかったようなわからないような。

    わかったこと
    ・従来の宗教との類似性、違い
    ・各新宗教の教義(系列)の違いと関係
    ・新宗教の発展理由
    わからない
    ・新宗教の目指すもの(創価学会は何となくわかった)
    ・宗教を起こす、教祖となる理由

  • 天理教,大本,生長の家,天照皇大神宮教,立正佼成会,創価学会,世界救世教,PL教団,真如苑,GLAという,10の新宗教について,その成り立ちや仏教等との関連,他宗教との違いなどを解り易く説明している。
    新宗教は,社会問題となる時にしか我々の前に出て来る機会はあまりなく,病気の治療法,予言などがきっかけになっている事が多い。このため,破壊的なカルトとして私も捉えてしまいがちだが,そんなことはない新宗教の方が多い。ただ,新宗教も信者を集めねばならず,そのためにはアクティブな活動を展開をする必要があり,注目の的になってしまうのだろう。
    そもそも新宗教といっても,立正佼成会や創価学会,PL教団,世界救世教のような日蓮・観音信仰,天理教や大本のような神道系のものなど,必ずと言っていいほど,神道か仏教の影響を受けていて,多くはそのどちらの影響も受けいている。具体的には,天理教や大本,金光教は,名称は異なるものの,国常立命というオーソドックスな神を根源的な神として信仰している。これは,ユダヤ,キリスト,イスラム教が同一の神を信仰の対象としているのと基本的には同じ事である。
    よく考えれば,キリスト教ですらも,当時としては異端であり,新宗教だったのは周知の事実である。
    新宗教に信者が集まったのは,高度経済成長の時代で,地方から都市に移って来た新しい都市住民たちだった。彼らは未組織の労働者として不安定な立場にあり,都市に新たな人間関係のネットワークを築くうえで新宗教の信者になることは大いに役立った。また,面白いのは,高度経済成長時代に巨大教団に発展したのは,いずれも日蓮系・法華系教団であり,現世利益を説いている教団だったということだ。明日も知れぬ生活に対して,現世利益を説く教団は彼らの目から見ればまぶしかったのだろう。
    このように,新宗教が興るのは,社会が危機に陥っていたり,不安定化している時期で,社会問題を批判したり,このままの状態が続けば決定的な危機が訪れることを強調する事によって発展して行く。(どこかの政党に似ているが)。
    ただ,その時でも,地球がいついつ破滅するといった世紀末説を唱えるようなところは,地球が破滅することなく世紀末を過ぎた場合,信者を失ってしまうことに注意しなければならない。予言が外れた時は,信者が去っていくのは当然である。
    今後,宗教として伸びて行くためには,江原啓之のように,霊界からのメッセージをメディアなどを通じ,柔らかく伝えるようなことをやっていかなければならないのかもしれない。GLAなどは,女性教祖がアイドル路線をはしったりしたこともある。これまでのように閉ざされた宗教ではなく,明るく,開かれた現代風の宗教を目指すべきなのだろう。
    宗教とは,よく生きるための生き方の示唆である。そういう意味では,最近流行りのような,60歳からのライフセミナーとか,いきいきなんとかセミナーとかも,結局は宗教のようなものである。
    日本人は,占いや言霊を信じ・楽しむ人種であり,宗教を受入れやすい性格を持っている。著者は,日本人が無宗教と言われることについて,『日本の場合,既成宗教が仏教と神道という2つの宗教が組み合わさった特殊な形態をとっているため,自分たちを神道の信者とも,仏教の信者とも決めることも出来ない。そこから特定の宗教に属していないという意識が生み出される。』と言っている。それに加え,私が思うに,生活の中に宗教がちりばめられ,毎日触れているからこそ,あらためて宗教を実感しにくく,自分は無宗教だと思ってしまうのではないだろうか。それは全く違っていて,日本人はめちゃめちゃ信仰心の厚い,仏教・神道の両宗教の信仰人種なのではないだろうかと思ってみたりする。

  • 宗教の歴史については嫌というほど知れるが、実態や特徴とか俺たちが知りたい情報が少なかったのが残念。

  • 十大宗教とそれに関連する宗教を記述することで結果的に多くの宗教について解説していたが、例えば白光真宏会は入っていなかった。他の宗教から分かれた、連携したということがあまりない宗教は入れづらかったのかもしれない。あとは有名どころでも、阿含宗、オウム真理教、幸福の科学などはあまり記述なし。

    気になったところのメモ。

    ・新宗教:キリスト教系以外は仏教or/and神道の影響をほぼ受ける
    修験の影響を受けた宗教も多い
    ・真光:野口整体の愉気と活元を宗教的に解釈
    ・世界救世教系:聖地建設、自然農法への関心
    ・天理教から璽宇まで:神道系

    ・高度経済成長期に巨大になった霊友会、創価学会、立正佼成会など:日蓮系、法華経系
    ・PLの原点の徳光教:「お振替」という病気直し(モニター法に似ていると思った)
    ・新宗教:社会が不安定な時期に世直しを掲げて出てくるのが普通。
    しかし・・・真如苑、GLAは世直し要素なし。
    ・カルト:終末論を強調、多額の献金要求
    取締により社会性が生まれ成熟するのが普通→成熟を拒むとカルトのまま

    古い絶版ムック「神人類と信人類たち」巻末の新宗教カタログで新宗教をさらったときは流れがわからなかったので、歴史が辿れてよかった。

  • 面白かった。この本読んでおじはさまに会うために天理市行ってきた!

  • 宗教学者である島田裕巳さんが、日本の新宗教についてそれぞれの成り立ちなどを解説した本。この本には、いわゆるカルト宗教とされている団体は載っていない。
    面白かったのは、割とどの宗教も相互に影響を受け合っていたりしたこと。あとGLAの「エジプトの神ワンツースリー」は面白かった。英語やん。

    面白かったんだけど、私は宗教の成り立ちよりはそれを信仰している人達のこころの方に興味があるようで、教科書を読んでいるような気持ちだった。

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著者プロフィール

島田裕巳(しまだ・ひろみ):1953年東京生まれ。宗教学者、作家。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任し、現在は東京女子大学非常勤講師。現代における日本、世界の宗教現象を幅広くテーマとし、盛んに著述活動を行っている。 著書に、『日本人の神道』『神も仏も大好きな日本人』『京都がなぜいちばんなのか』(ちくま新書)『戦後日本の宗教史――天皇制・祖先崇拝・新宗教』(筑摩選書)『神社崩壊』(新潮新書)『宗教にはなぜ金が集まるのか』(祥伝社新書)『教養としての世界宗教史』(宝島社)『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)等多数あり。

「2023年 『大還暦 人生に年齢の「壁」はない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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