SとM (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 229
レビュー : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344980730

作品紹介・あらすじ

娼婦に肛門性交を強いて国を追い出された作家マルキ・ド・サド、被虐趣味に溢れた小説を書き一躍有名になったザッヘル・マゾッホ。彼らの嗜好を基に命名された「サディスム」「マゾヒスム」が浸透したのは十九世紀だが、そもそも精神的・肉体的な苦痛を介して人が神に近づくキリスト教に、SM文化の源流はあったのだ。鞭とイエスはどんな関係があるのか?そして、SMが輸入されることもなく日本で独自の発展を遂げたのはなぜか?縦横無尽に欲望を比較する画期的な文明論。

感想・レビュー・書評

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  • 「SMをキリスト教との関わりから、文明史的に考察したもの」 で、SMの実践的指南書でも、SM業界のインサイドレポートでもありませんが、スリリングでとても面白かったです。実際は、鹿島茂が語り、木村俊介がリライトしたものです。

    『SMとは、「想像力」 を核とした 「関係性」 であり、二人の想像力によって規定されている。』 というのは納得できます。私はMと間違われやすいですが、典型的なS、サービス満点のSです。

    最近は、自己愛型のSMが跋扈している。SMは、キリスト教が絶対的なものでなくなったときに生まれた。信者は自己処罰の果てに、絶対的な神、理想のSとまじわる幻想を抱く。すべての文化は、最終的にはMにたどりつくもの。SMは、文化の進化のバロメーターである。

    SはMの願望を先取りすることで、Mに奉仕することになる。Sは、「Mの理想に従って鋳造されてしまう人」 で、だから、サービス精神満点でなければなりません。主導権は、完全にMにあるわけで、「SはサービスのSです」(みうらじゅん)、Sは相手の欲望を汲みとるために、想像力豊かじゃないと務まりません。SMの本質は 「逸脱」 を楽しむことである。
    たくさん珍しい本に言及されているので、参考文献の一覧あればさらによいと思います。

  • SとMについて歴史的な考察をした一冊。
    なので、精神分析的なものはほとんどないので、その筋を期待して読むとガッカリします。

    SとMがそもそもキリスト教から来た概念であること、そして西洋人は狩猟民族なので鞭を、日本人は農耕民族なので縄を使うというのは普通に勉強になりました。

  • パリが愛した娼婦に続き、鹿島先生の本。

    日本と海外のSMの違いについて、その発祥について、などなど盛りだくさんの本でした。すっごい面白かった!
    時々「それはちょっと飛躍しすぎでは…」って思う部分もあるんだけど、この人の場合はこういうこと考えるのが楽しくてしょうがなくて、ぶっとんじゃったんだろうなって思えるw

    Mの女の子が嫌いなのは「粗暴で自己中なだけの自称S」とか、普段私が言ってるのそのまんまじゃん!って思いながら読んでました。
    多分この人、自分の中に女でMな部分が多くあるんだと思う。

    特に西洋のSM文化は「家畜文化」から来てるっていうのはすごい納得した。拘束具も革だし、鞭だもんね。
    日本のSMが緊縛メインなのは着物文化からっていうのはちょっと無理があるような気もしたけど、「日本人は自由が嫌い。だから緊縛がメインになるし制服にも萌える」っていうのはすごい的を射ていると思う。

    これまで読んだSM本の中で一番面白かった!
    そしてやっぱり私は日本の、じめっとしたSMが好きだな。緊縛はアートだと思います。

  • この人は、すごいなぁ。突き詰めますね。
    SMに関して、歴史・文化的考察をしているのだが、ここまで徹底して考察されると、本人は否定しているが、ある意味「変態さん」とよいのではないだろうか(これは、鹿島氏に対しては褒め言葉になる?)?

    この人の書く本はとっても読みやすく、ばかばかしく、教養深く、変態チックである。

    なので、僕は好きだ。

    ちなみに変態は迷惑さえかけなければ悪ではないからね。

    この本の面白いところは、「健全な!?」SMを解説し、現代の世俗的に受け入れられているSMの一般的見解を、「間違ってる!」と断罪している点である。

    この本を読むまでは、僕も断罪される側の一員であったわけだけど、これを読んでからは、真面目にSMについて考えてみようとちょこっとだけ思った。

    これで僕も変態に一歩近づいたかな?

    ところで、僕は通勤電車の中でこの本を読んでいたのだが、見出しのページなんかは、一般的に言う卑猥な言葉がちりばめられているので、ちょっと恥ずかしかった。

    もしかしたら、周りの人から「この人、SM趣味なのかしら」と密かに思われていたのかもしれない。

    断っておくが、僕にはSMの趣味は全くありません。興味はあるが・・・。

  •  なぜ「ですます」調なのかと思ったら、語り下ろしなのだった。
    「あらゆる対人関係は畢竟SMではないか」
    「罪の文化と恥の文化は、そのまま彼我のSM観と照応している」
     上記二つは以前から私の考えていたこと。
     フランス文学や文化を知悉し、下情にも通じた鹿島先生ならではの視点で、その考えが補強された。メルシー。

  • キリスト教の教えから展開されるM性の開花など論点は面白かった

  • http://naokis.doorblog.jp/archives/s_and_m.html【書評(18禁)】『SとM (幻冬舎新書)』 : なおきのブログ

    <目次>
    プロローグ あなたはS?それともM?
    第一章 そもそもSとは?Mとは?
    第二章 SMって何?いつから発生した?
    第三章 SMは、どのようにエスカレートしたのか?
    第四章 SMは、歴史の必然から生まれた
    第五章 SMの理想の相手は、どこで見つかるのだろう?
    第六章 SMは、文化のバロメーターである
    第七章 日本人にとって、SMとは何か?
    エピローグ
    編集協力


    2017.08.21 朝活読書サロンで紹介を受ける
    2017.09.03 読書開始
    2017.09.06 読了

  • 文明史の視点からSMの成立を考察している本です。

    キリスト教の教父たちは北ヨーロッパに布教する際に、サクリファイス(供犠)をおこなうケルト人の信仰にあわせて、キリストの磔刑を利用しました。これは、ゴシック建築が北ヨーロッパの聖なる森の代用として作られたのと同様だと著者はいいます。こうして、キリスト教の宗教感情の中核に「苦悩」が位置づけられることになります。つまり、精神的・肉体的な苦しみを介さなければ神に近づくことができないということが、教義の根本とされるに至ったのです。

    ところが近代に入ると、こうした「苦悩する人間」に対する神の座を、人間自身が占めるようになります。サドの小説の登場は、「近代の目覚め」だと著者は指摘しています。このような意味で、「キリスト教が人間の自由を束縛している」という近代的な自我の確立と、「アンチ・クリストは自由を束縛するくびきを断ち切る」というサドの宣言は等しい意味をもっています。

    さらに著者は、中世から近代を経て、それ以後に至るまでの歴史を、「自我」というパイの配分というたとえを用いて説明します。つまり、リビドーの備給が神から自我へ向かうことになり、さらにそのリビドーを他者と分かちあうことで民主主義が成立したのです。こうした歴史的経緯とかさなる仕方でマゾヒズムが成立したと著者は主張します。それは、自我に備給されていたリビドーを他者に振り向けるということであり、「支配している相手に支配されること」を意味します。こうして著者は、M願望は本質的に自己本位だと結論づけます。

    このほか、皮と鞭を用いる西洋のSMが「苦痛」を求めるのに対して、縄を用いる日本のSMは「自由の拘束」を求めるという、比較文化的な考察もなされています。

  • 文化論的な本は参考文献から引用したものが多く、読みにくいが、この本は口述筆記したものなので、さらっと読めた。
    著者の見識が詰まっている。
    西洋のSMが宗教的儀式が関係するとはおぞましい。残酷なことも神の思し召しと信じればできるし、耐えられる?
    SMを知るために谷崎潤一郎の小説を読むといいと著者はいう。
    読み直してみようか?
    性とSMは関係あるようで関係なく、混同したくないと思う。

  • フランス文学研究者のSMについての文明論。軽い読み物のつもりで読んだら結構奥が深く考えさせられる部分もあった。とくにSとMは二元論ではないという部分や、理想のSはそんなに存在しないという部分はわかりやすくおもしろかった。

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著者プロフィール

1949年生まれ。東京大学仏文学科卒。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。フランス文学者。1991年『馬車が買いたい!』(白水社)でサントリー学芸賞、1996年『子供より古書が大事と思いたい』(青土社)で講談社エッセイ賞、2000年本書『職業別 パリ風俗』(白水社)で読売文学賞評論・伝記賞受賞。著作は他に『「レ・ミゼラブル」百六景』(文藝春秋)、『パサージュ論 熟読玩味』(青土社)、『情念戦争』(集英社)、『渋沢栄一』(文藝春秋)、『失われたパリの復元 バルザックの時代の街を歩く』(新潮社)など多数。書評アーカイブWEBサイトALL REVIEWS主宰。

「2020年 『職業別 パリ風俗』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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