アダルトビデオ革命史 (幻冬舎新書 ふ 4-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 184
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344981256

作品紹介・あらすじ

日本は年間一万タイトルを超えるアダルトビデオが流通する世界屈指のポルノ生産国である。日本製のAVは、インターネットなどを通じて無修整版が世界中に流出し、そのクオリティの高さからアニメと並んで日本を代表するコンテンツとなっている。だが一方で、今までその歴史は詳らかにされておらず、アンダーグラウンドな文化としてしか語られてこなかった。本書は、第一人者の手によって、はじめてまとめられた四十年にわたるAV全史である。

感想・レビュー・書評

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  •  これをレビューしようかどうしようか葛藤するくらいの恥じらいは僕も持ってますよ? タイトルがストレートなんだもの。「へー、こういう本読んでるんだー」とか怖いじゃない? でも、隠しておくには惜しいくらいに良い本だったのでレビューしまうま。

     タイトルからもわかるように、いわゆる「アダルトビデオ(=AV)」の歴史を扱った新書でございます。とはいえ官能的な表現もほとんど見られず、ごくごく「真面目」な本。歴史を紐解こうとしたら、たまたま題材がそれだった、くらいな書き味。
     題材こそ敬遠をしたり、興味をそそらなかったりする人もいるでしょうが、ほんとにすごいのは論の発展性であります。「AV」を題材に行政論、司法論、マーケティング論、芸術論・・・あらゆる方面に視点を向ける展開には驚きを隠しきれないです><。「あとがき」で藤木さんが書いているとおり「冒険的な解釈」も多く含まれてはいますけど。
     「第六章 無修正へ」ではますますその傾向が強まり、業界・社会への提言もなされています。それもまた、なかなかの説得力を持たているとは思います。その解釈・提言が正しいかどうかはともかく「一理ある」と感じさせるのではないかと。

     なによりも本書のイイところ。「説得力」と同じことかもわからないけど、それは文章の巧みさでござんす。ユニークさとかではないんで、そういった感激は薄いのですが、実に模範的な文章表現・構成だと思われます。大学一回生とかに配って回りたいくらい。「レポートはこうやって書くんだぞ」って。

     (゜▽゜)<なんか本くれた人がいたよ!
               へえー、なんて本?>(´s`)

           『アダルトビデオ革命史』

     (|||゜▽゜)<     !!!     >(´s`|||)

     ハッキリ言って、何の期待もせずテキトーに選んで購入したわけですよ。そしたら思いのほかの良書でお目目パッチリ。ホント、本との出会いってよくわかんない。


    【目次】
    はじめに
    第一章 AV前史
    第二章 AVの誕生
    第三章 AV女優の成立
    第四章 本番AVの時代
    第五章 AVの新しい波
    第六章 無修正へ
    あとがき
    参考文献
    AV関連年表

  • 2009年。アダルトビデオのハード面とソフト(女優)面、両方からの業界のいきさつと成り立ちをクールに書いていて面白い。ほお、と思った豆知識。「黒木香が大学時代、同じく大学生だった岩井俊二の自主製作映画に出演していた、そして彼女がAVに出演したことを知っても岩井は特に驚かなかった」(142~144p)、「V&Rプランニングの社名は『ビジュアル&リテイル』の略で、当初は生鮮食品販売を展開していた」(191P)。

  • 実際、私は女優でも1990年代以降の方々しか名前を聞いたこともなかったが、ポルノ映画時代から現在に至るまで、資料の収集も難しかったと思う。マニアックな分野かもしれないが、AVの歴史を中心によくまとめられていると思う。力作といえる。

  • 「ポルノグラフィー」の語源はギリシャ時代の娼婦たちを描いた戯画にあるそうだから、ポルノ自体の成立は紀元前に遡らなければならない。ここで言及するにはあまりにも遠大で深遠なテーマすぎる。p21

    ポルノブームとVTR開発がほぼ同時進行したことは、のちのAVブームの到来に大きな意味を持っているのである。p27

    ところで「性感表現」が優先される女優が誕生したのは基本的にAVが生まれた81年前後のことと考えていい。そうした属性はAVというメディアが独自に、突発的に生みだしたものではなく、別のメディアにルーツがあり、漸進的に進化したものだと筆者は考える。
    別のメディアとはー映画よりもむしろ出版物、とくにビニール本や自販機本といわれたアングラ的なポルノ写真集、雑誌の影響が大きいと考えられる。p71

    裏ビデオの女王・田口ゆかり p92

    SONYの8ミリビデオが片手操作のデザインに徹底的にこだわって開発されたおかげで、AVにおけるハメ撮りは普及したと言っていい。そこに日本のAVの独自性の鍵がある。これはAVの手法進化がビジュアル機器の進化と並走したことを示す好例であろう。p184

  • 2009年刊行。◆ピンク映画から数えて約半世紀、日活がVTR事業部を開設してからでも約40年。レンタルビデオ事業を隆盛に乗せたAV事業の展開を、主に①被写体の変遷と②演出技法の変遷で検討していく。◆ここからネット展開(著作権の問題は勿論、公然性がレンタルとは比較にならないネットにおける公然猥褻に関する適否)に議論が進められる必要はあるんだろうが…。

  • 2009年7月15日、3刷、並、帯無
    2015年5月27日、津BF

  • ~2009 AVの歴史

  • アダルトビデオの歴史。それはモザイクとの戦い。

  • これ、すごく面白い一冊です。頭の中で、AVに対するモザイクが少しだけ薄くなること間違いなし。
    テレビ、ビデオとともに独自の進化を遂げた日本製AV。本書は、その技術と欲望との不思議な結びつきを明らかにしてくれる。

    新型のビデオカメラを片手に新しいジャンルを生み出した監督や女優、人々の意識の変化を追ってみていくと…ヒトの持つ柔軟性には驚かされるばかり。警察の目をかいくぐりながらも「無修正」やリアリティ、といった欲望を追求していく姿勢には心が動かされた。これもヒトの"性"?

    それと同時に見えてくるのが行政機関の強硬的な対応。多くの摘発で「行政圧力が競争原理に優先した」のはこの業界以外にも見られる現象。日本社会、国家の孕む矛盾のモザイクはまだ濃い。

  • 2012年4月23日読了。「ポルノ」とも「成人映画」とも違う、日本の独自文化である「アダルトビデオ(AV)」について。その起源・発生から、いかにしてAVが独自性を獲得したのか?という点について論考を加え、多くのAVの歴史を彩るスーパースターたちの功績について述べる本。もともとは地方の民宿のテレビで流されてるような「いなたい」エロ映像だが、「わいせつ物」の定義を明確にせず規制をかける警察とビデ倫、予算の制約とハンディカムなどの機材の進化、ビデオの普及、被写体と撮影者の内面をドキュメンタリー的手法で描こうとする野心的な監督、お茶の間にも進出できるルックスを備えた女優、などの奇跡的な要素がいくつも絡み合った結果、日本を代表する輸出商品(これはそう。海外サイトの無料配信によりメーカーがどれだけの損害をこうむっていることか)である「AV」が生まれたのだなあ・・・。物心ついてからAVに接してきた自分にとって実に興味深い論考だ。80~90年代のAV界のスーパースター、村西とおる氏の毀誉褒貶ぶりには、涙。

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著者プロフィール

1962年生まれ。ライター。
映画、庶民史、酒場ルポ等のテーマを中心に雑誌・書籍に執筆している。
主な著作に「東京戦後地図 ヤミ市跡を歩く」(実業之日本社)、
「辺境酒場ぶらり飲み」(リイド社)、「消えゆく横丁: 平成酒場始末記」 (筑摩書房)など。

「2022年 『失われゆく娯楽の図鑑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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