昭和45年11月25日―三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344981850

作品紹介・あらすじ

昭和45年11月25日、三島由紀夫、自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹、介錯される-。一人の作家がクーデターに失敗し自決したにすぎないあの日、何故あれほど日本全体が動揺し、以後多くの人が事件を饒舌に語り記したか。そして今なお真相と意味が静かに問われている。文壇、演劇・映画界、政界、マスコミの百数十人の事件当日の記録を丹念に拾い、時系列で再構築し、日本人の無意識なる変化をあぶり出した新しいノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  •  書名のとおり、三島由紀夫自決事件の日の日本の様子を、各界著名人の反応から描き出したノンフィクションである。三島の没後40年を記念して刊行が相次いでいる関連書籍の1つ。

     ノンフィクションといっても、本書に登場する120人の著名人に、著者はまったく独自取材をしていない。当時のマスコミ報道や、各人が著書やインタビュー等で書いた(語った)言葉を時系列で再構成しているだけなのである。

     というと、「ケッ、人のフンドシで相撲をとるお手軽本かよ」と思う向きもあろう。まあたしかに、120人それぞれに独自取材する労力に比べたら、お手軽なやり方ではある。
     しかし、本書は見た目の“お手軽感”よりもはるかに手間ヒマがかかっていると思う。構成は凝りに凝っているし、そのまま引用するのではなく著者の言葉に置き換えられた部分のほうが多い。そもそも、各界著名人の反応をこれだけ集めるだけでもかなりの労力だったはずだ。

     何より、実際に読んでみると、読む前に予想したよりもずっと面白い本に仕上がっている。「ありもの」の文献や記録を再構成しただけなのに、あたかも上質のドキュメンタリー映画を観たような読後感が味わえるのだ。ありそうでなかった「コロンブスの卵」みたいな企画だが、本書の試みは成功していると思う。

     当時の著名人から、当時は無名の少年少女だったのちの著名人まで、120通りの事件への反応がモザイク状に連なって、やがて1つの大きな絵を成していく。その様子が興趣尽きない。

     自分にとっての「あの日の思い出」を持つ世代が読めば面白さ倍増だろうが(ちなみに私は当時6歳で、テレビのニュース映像をかすかに記憶しているのみ)、当時まだ生まれていなかった人が読んでもそれなりに面白いと思う。

     なお、三島事件の意味についての各界著名人の解釈をタイプ別に腑分けしたエピローグ「説明競争」が、じつによくまとまっている。このエピローグだけでも、評論として独立した価値を持つものだ。その中にある次の一節は、とくに印象的。

    《三島由紀夫の死に最も誠実に立ち向かっているのは、大江健三郎だ。彼は、三島の政治思想も政治行動も全面的に否定する。文学、芸術、美学として捉えるのではなく、戦後民主主義への明らかな挑戦であると捉える。それゆえに、自分に対する攻撃と受け止め、機会あるごとに三島を否定する。》

  • 死後40年に蘇る昭和45年11月25日。120人以上の、どこで、なにをしていて、どう感じたか、を時系列で再現することで「日本で一番夕刊が売れた日」を体感できます。本人の言葉とか新しい事実とか再評価とか次元の違う記述がないことで自分にとっての三島事件を考えざるを得ない構成です。一瞬で砕け散ったガラスの破片が当時のすべての日本人の心にそれぞれに突き刺さっているのは、そして今もチクチクさせ続けているのは、この事件が思想の事件とか制度の事件ではなくて個人の肉体の事件だったからだと思いました。首の上と下が別々になった肉体の物語を、われわれはその後、消費し続け、そしてまったく消化できずにいます。この事件は、われわれのアタマとカラダをも別々にしてしまったのかもしれません。

  • 三島由紀夫自決から40年を記念して出版されたらしいが、三島自身の言動を描いた作品ではなく、当時の三島を知る人々や、何らかの形で三島とかかわりがあった人たちの事件に関する発言なり出版物を中心に構成されている。

    そうか、三島はこんな人たちとの付き合いがあったのか!とびっくりするような場面が結構あったように思う。

  • 120人に及ぶ証言や記録を収録している。荒井由実や丸山健二まで出てきて驚いた。因(ちな)みに丸山の反応は実に底の浅いもので、後々アナーキズムを礼賛するようになる萌芽を見る思いがした。折に触れて三島を批判したのも三島の丸山評が本質を衝いていたためだろう。
    https://sessendo.blogspot.com/2019/01/451125.html

  • ノンフィクション
    歴史
    文学

  • 構成が気に入り、購入。

    【読了後コメント】
    企みに満ちた、熱い本。夢中で読んだ。
    著者のいう「すべてが大袈裟で、熱く興奮に満ち溢れていた」「あの時代の雰囲気」を、
    まさに感じることができた。
    他の著作も読みたい。

    【読書メモ】
     ・ <三島由紀夫の死によって、近代の作家の人生とその作品を語る意味が、私の中で消えていったのだと思っている。> p163
     ・ しかし、開放され尽くした日本社会総体は、すでに時代を代表する「ひとりの俳優」も、「ひとりの作家」も、持てなくなっている。 p282

    【目次】
     プロローグ 前日の予兆
     第1章 静かなる勃発
     第2章 真昼の衝撃
     第3章 午後の波紋
     第4章 続く余音
     エピローグ「説明競争」

  • 本書は三島を直接的に理解するための書ではない。三島が生きた最後の時代の雰囲気を、彼自身の死を通じて今に呼び起こす書となっている。
    三島自決のニュースに直接触れたことのない世代にとって、三島は大変不思議な存在である。自衛隊基地での演説シーンが稀にテレビ流れるが、必ずといっていいほど具体的な解説はない。三島が大声で叫んでるな、でも聴衆から共感得てないぽいな、自衛隊決起を呼びかけるなんて極右の親玉みたいなものかな、そんな感想を持つ。一方で三島の著作を読めば、テレビで見た彼と同一人物が著したのだろうかと疑うほどの耽美的な文章が並ぶ。自分の中で矛盾する三島像をつくりあげ、いつの間にか「三島由紀夫問題」化していたし、またさせてしまっていた。でもそれは理解の努力を放棄しているだけで、我々からは想像できないほどに彼は極端に思想の純度が高かったのだろう。
    本書からは三島の死について喪失感を語る者はあれど、深い共感を語る者はほとんどない。また、三島自決の報に触れた人々の思いと、三島の檄文等の温度差を見せつけられる。事実社会の空気はそのようなものであったであろうが、そこにこそ三島自決の直接的要因があるようにかんじる。戦中世代として戦前の空気とのあまりの差異に強烈な違和を感じている中で、自衛隊の「何か純粋さ」を見つけしまったことを想像する。彼にとって行動もまた肉体や服装や思想以上に美しくあらねばならず、世にはびこる欺瞞性に我慢できなかったのだろう。敗戦体験、文学、演劇、写真集、自衛隊体験、楯の会、自決と介錯、これらはきっと三島の中で逡巡しながらも一本の線でつながっている。

  • とても良質な理系本レビューを載せてるこのサイトの書評がきっかけで読んだ。
    三島の演説も檄文も全容を知ったのは初めて。彼の文学はこの日に完成したのだろうか…。
    昭和45年11月25日―三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃: 中川右介 - とね日記 https://t.co/ol0nRdR5wf

  • 三島由紀夫は単なる人気作家ではなく、あの時代のスーパースターだったようです。当時80万部の平凡パンチが1967年春ミスターダンディの読者投票をした結果(11万以上の投票)は、1位が2万票近くの三島由紀夫で、2位以下が三船敏郎、伊丹十三、石原慎太郎、加山雄三、石原裕次郎、西郷輝彦、長嶋茂雄、市川染五郎、北王子欣也だったそうです。中川右介氏の「昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃」、2010.9発行です。文壇、演劇・映画界、政界、マスコミ百数十人の事件当日の記録をもとにしたノンフィクション

  • 三島由紀夫割腹を、当時の人々の反応から映し出す

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。「カメラジャーナル」「クラシックジャーナル」を創刊し、同誌のほか、ドイツ、アメリカ等の出版社と提携して音楽家や文学者の評伝や写真集などを編集・出版。クラシック音楽、歌舞伎、映画、漫画などの分野で執筆活動を行っている。

「2019年 『阪神タイガース1985-2003』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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