宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書 む 2-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344981881

作品紹介・あらすじ

物質を作る最小単位の粒子である素粒子。誕生直後の宇宙は、素粒子が原子にならない状態でバラバラに飛び交う、高温高圧の火の玉だった。だから、素粒子の種類や素粒子に働く力の法則が分かれば宇宙の成り立ちが分かるし、逆に、宇宙の現象を観測することで素粒子の謎も明らかになる。本書は、素粒子物理学の基本中の基本をやさしくかみくだきながら、「宇宙はどう始まったのか」「私たちはなぜ存在するのか」「宇宙はこれからどうなるのか」という人類永遠の疑問に挑む、限りなく小さくて大きな物語。

感想・レビュー・書評

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  • 【まとめ】
    1 物質(宇宙)は何でできているのか
    惑星のサンプルがなくても光を分析すれば、それがどんな物質からできているかを調べることができる。光を精密機械で分光し吸収線スペクトル上に表すと、ある一部分に黒い線が入る。これはその部分だけ原子に光が吸収されてしまうからだ。そのため、光のどの波長が吸収されているかを分析すれば、惑星上に存在する原子の種類がわかる。

    スーパーカミオカンデは、すべての星とニュートリノが同じぐらい存在することを突き止めたが、星とニュートリノ、目に見えない原子などを合わせても、宇宙の全エネルギーの4.4%程度にしかならない。残りの96%のうち、23%は暗黒物質であり、暗黒物質の重力が太陽系全体を銀河に引き留めている。73%は暗黒エネルギーだ。暗黒エネルギーは宇宙が膨張しようとも密度が薄まることはない謎の存在であり、これが宇宙をぐいぐいと後押しして膨張を加速させている。


    2 宇宙を見る
    ビッグバンによる宇宙誕生後から38万光年あたりまでは、宇宙の姿を観測できていない。電子や陽子、中性子などさまざまな粒子が高速で飛び交う火の玉の時代であったため、光や電波がまっすぐ飛ぶことができなかったからだ。
    そこで、宇宙のスケールを素粒子のスケールまでサイズダウンし、ビックバンをミクロの領域で再現することで「宇宙の誕生」を観察しようと試みている。粒子に高エネルギーを加えて衝突させる衝突型円形加速器(LHC)を使ったプロジェクトだ。

    原子は電子とクォークからできているが、原子の陽子や中性子などを構成するクォークには「アップクォーク」と「グウンクォーク」の2種類がある。構造もわかっていて、陽子は「アップ」2つと「ダウン」1つ、中性子は「ダウン」2つと「アップ」1つ。原子はその3つでできているが、宇宙にはニュートリノ(正確には電子ニュートリノ)という素粒子もある。そして、アップ、ダウン、電子二ュートリノ、電子の4つの素粒子のことを、標準模型では「第1世代」と名付けた。
    第2世代ではチャームクォーク、ストレンジクォーク、ミューオン(ミュー粒子)とミューニュートリノが見つかる。
    次の第3世代ではトップクォークとボトムクォーク、タウオンとタウニュートリノが発見された。この12種類の素粒子はフェルミオン(フェルミ粒子)と呼ばれ、物質はこれら12種類を基本に構成されると考えられている。


    3 これからの宇宙研究
    ・暗黒物質が原子を引き寄せて星ができあがることがわかった。
    ・超ひも理論が、重力を含めた4つの力を1つの理論で統一できる可能性を秘めている。
    ・暗黒物質の検出のためにXMASSという検出器を地下深くに建設している。また、暗黒物質の性質を調べるための加速器「国際リニアコライダー」の建設も計画中である。
    ・反物質と物質は同じ数だけ存在するはずだが、なぜか10億分の2だけ物質のほうが多い。その10億分の2の差異はどうやって生まれたのかを探るため、ニュートリノが反ニュートリノに変わる現象が無いかを研究している。

  • 時間をかけて、再読したい本。科学に改めて興味を持たせてくれました。

  • 半分までなんとなくわかったような。。。
    クオークの話になると、イメージがついていかなかった。強い力と弱い力、全ては波で、力をやりとりしている。
    増え続けるダークエネルギー、右利きにも実は物理学が関連している(自発的対称性の破れ)、反物質と物質の違い(電荷が逆なだけ)、振動して捉えられないニュートリノ…もう、お腹いっぱいでした。振動して、別のものになってしまう(観測した時にどっちになっているかというか…)なんてもはや、普通に生活して、目に見えるものを見ているだけでは想像もつかない世界…。

    知らないことは沢山ある。

  • 私には難しすぎる本。例え話が理解ができない箇所が多く残念だった。ニュートリノ振動を説明するのに、アイスクリームの種類を持ち出されてもなあ。

  • 本書「宇宙は何でできているか」が扱う宇宙論は、ポピュラーサイエンスの世界におけるレッドオーシャンでもある。これは「境界が気になる」というヒトの生理学的特性にてらしてある意味当然でもある。それが対象とするのは、世界の端なのだから。小はプランク単位から、大は宇宙の果て、前はビッグバンから、後はビッグクランチ、あるいはビッグフリーズに至るまで。

    目次 - Mailより
    序章 ものすごく小さくて大きな世界
    宇宙という書物は数学の言葉で書かれている
    10の27乗、10のマイナス19乗の世界
    世界は「ウロボロスの蛇」
    第1章 宇宙は何でできているのか
    リンゴと惑星は同じ法則で動いている
    リンゴの皮の部分に浮かぶ国際宇宙ステーション
    「4光時」の冥王星まで20年かかったボイジャー
    太陽光を分析すると太陽の組成がわかる
    「発見できないが存在する」と予言されたニュートリノ
    ニュートリノは毎秒何十兆個も私たちの体を通り抜ける
    すべての星を集めても宇宙全体の重さの0・5%
    宇宙全体の23%を占める「暗黒物質」
    宇宙の大部分を占めるお化けエネルギーとは
    ビッグバンの証拠になった太古の残り火
    宇宙は加速しながら膨張し続けている
    こんなにわからないことがあるとわかった21世紀
    第2章 究極の素粒子を探せ!
    皆既日食で証明されたアインシュタイン理論
    なぜ見えない暗黒物質の「地図」がつくれるのか
    遠くの宇宙を見るとは昔の宇宙を見ること
    光も電波も届かない、宇宙誕生後38万年の厚い壁
    物質の根源を調べることで宇宙の始まりに迫る
    電子の波をぶつけて極小の世界を観測する
    光は波なのか粒子なのか - 量子力学の始まり
    原子核のまわりを回る電子は波だった!
    電子の波長を短くして解像度を上げる電子顕微鏡
    加速器で誕生直後の宇宙の状態をつくりだす
    私たちの体は超新星爆発の星くずでできている
    原子が土星型であることを明らかにしたラザフォード実験
    これ以上は分割できない素粒子、クォーク
    「標準模型」は20世紀物理学の金字塔
    第一世代のクォーク、「アップ」と「ダウン」
    誰も探していないのに見つかってしまった謎の素粒子
    クォークには3世代以上あると予言した小林・益川理論
    物質は構成せず「力」を伝達する素粒子もある
    第3章「4つの力」の謎を解く - 重力、電磁気力
    重力、電磁気力、強い力、弱い力
    力は粒子のキャッチボールで伝達されると考える
    質量はエネルギーに変えられるという大発見
    「質量保存の法則」の綻びにブリタニカ執筆者も興奮
    性質は同じで電荷が反対の「反物質」
    毎秒50億キロをエネルギーに変える太陽の核融合反応
    不確定性関係 - 位置と速度は同時に測れない?
    エレクトロニクス技術として実用化された「トンネル現象」
    コペンハーゲン解釈 - 神はサイコロを振るらしい
    同じ場所に詰め込めるボソン、詰め込めないフェルミオン
    原子と原子は電磁気力でくっついている
    電磁気力は粒子が光子を吸ったり吐いたりして伝わる
    電磁気力の届く距離も不確定性関係で決まる
    物理学史上最も精密な理論値
    第4章 湯川理論から、小林・益川、南部理論へ - 強い力、弱い力
    未知の粒子の重さまで予言していた湯川理論
    湯川粒子はアンデス山頂で見つかった
    新粒子発見ラッシュで研究者たちは大混乱
    「なぜか壊れない粒子」の謎をどう説明するか
    陽子の寿命は宇宙の歴史よりとんでもなく長い
    思いつき自体がストレンジなストレンジネス保存の法則
    陽子・中性子はクォーク3つ、中間子はクォーク2つ
    3つの色がついている? 単独では取り出せない?
    クォーク理論を裏付けた「11月革命」
    強い力を伝えるのはグルーオン
    クォークを取り出せないのはグルーオンの色荷のせい
    クォークが元気だから体重が増える?
    太陽が燃えているのは弱い力のおかげ
    月とTGVまで発見してしまった大型加速器
    弱い力を伝えるのはWボソンとZボソン
    パリティを保存しない「タウ-シータの謎」
    「右」と「左」には本質的な違いがあった!
    「CP対称性の破れ」を説明した小林・益川理論
    「クォークは2世代でなく3世代以上ある」ことが肝心
    「三角形」をめぐる日米の激しい実験競争
    素粒子に質量を与える? 正体不明のヒグス粒子
    右利きが多いのは「自発的対称性の破れ」?
    第5章 暗黒物質、消えた反物質、暗黒エネルギーの謎
    ゴールに近づいたと思ったらまた新たな謎
    暗黒物質がなければ星も生命も生まれなかった
    「超ひも理論」は夢の「大統一理論」を実現するか?
    本当の時空は10次元まである?
    暗黒物質検出、一番乗りはどこか?
    反物質のエネルギーは0・25グラムで原爆並み
    物質は10億分の2の僅差で反物質との生存競争に勝利
    イチゴ味がチョコ味に? ニュートリノ振動の正体
    東海村から神岡へニュートリノビームを飛ばせ!
    収縮? 膨張? 宇宙に終わりはあるのか?
    宇宙の将来をめぐる仮説は「何でもアリ」の状況
    一人一人の人生とつながる素粒子物理学
    それだけにこの分野では数々の名著が生まれてきた。"A Brief History of Time"(「ホーキング、宇宙を語る」)、「クォーク」、「ニュートリノ天体物理学入門」に「宇宙論入門」…


    宇宙論入門
    佐藤勝彦
    特に「宇宙論入門」は、この分野の第一人者の手によるものであるというのに留まらず、話が「学者離れ」しているという点でもおすすめで、特に最初に登場する「宇宙の晩年」の描写はは、サイエンス・フィクション(そう、ファクトではなく)の短編として「幼年期の終わり」と並び称されるべき一冊だ。本書の後に読むとしたらこれである。

    しかしこの「名著のビッグバンぶり」は、選ぶ方としては宇宙論者にとっての相対論と量子論の統一に匹敵する頭の痛い問題で、こうも多いと一体どれから読み始めたらいいのかわからない。いきなり Dirac の「一般相対論」にあたりようものなら、好奇心は恐怖心というブラックホールに吸い込まれ、事象の彼方にいってしまうだろう。

    ものごとには、順序がある。

    宇宙にも順序があるように。

    本書は、「最初に触れるべき宇宙論」の本としては、第一選択肢だ。

    まずなんといってもいい意味で著者が「学者離れ」していること。こういう言い方も何だが、著者のユーモアのセンスは日本人離れしている、というか21世紀のネット住人のセンスである。その口調は、まさにデジタルネイティブのものなのだ。

    P. 57
    また、その存在が予言されているものの、まだ見つかっていない粒子もあります。宇宙の「質量」がそれによって生まれていると考えられる粒子で、予想される量は、なんと宇宙の全エネルギーの1062%。意味がさっぱりわかりませんね。
    ヒッグス粒子ふいた。

    P. 108
    これは重力や電磁気力とは違うもので、名前は「強い力」。小学校の校歌に出てきそうな言葉ですよね。
    さくらんぼ小学校の?

    P. 208
    そう聞くと「反物質は危険だ」と思う人もいるでしょう。でも、反物質をつくるには大変なエネルギーが必要です。0.25グラムの反物質をつくるのに電気代を計算した人がいるのですが、なんと1兆円の1億倍もかかるとのこと。『天使と悪魔』では、CERNの科学者が所長に無断でつくったことになっていますが、それだけの無駄遣いに気づかないほど巨額の研究予算があるのだとしたら、実に羨ましい話です(笑)。
    村山せんせえ、まさか「宇宙物理学者だけど質問ある?」とかいうスレ立ててないでしょうねえwww

    それでいて、きちんと最新の理論と観測に基づいて話を進めている。白黒ではあるが図版も新鮮なものを利用しており、新書という読み物よりも「ニュートン」や「日経サイエンス」を見ているような気分になる。「古典的名著」だと、このあたりが古かったりするので、ビジュアルな訴えが欲しい人はあくびが出てしまう。

    もちろん宇宙物理学は新書一冊で学べるほど簡単ではない。本当にわかりたかったら著者のように学者となるしかない。しかし学ぶ前には、そこに学ぶべき何かがあることを知る必要がある。本書が優れているのは、まさにそこ。本書を読んでも理論、すなわち「そうなる理由」はわからない。わかったといったらそれはウソである。しかし「何を知ろうとしているのか」、そして「知るために何をしているのか」を、本書ほど上手に訴えた一冊を私は知らない。

    検索した限り、本書は著者の初単著ということになるようだ。初めてでこれとは。サイエンス・コミュニケーションにおける著者の発見は、J-POPにおける宇多田ヒカルの発見に相当するのではないか。

    本書の名前、「宇宙は何でできているか」は、もちろん What is the universe is made of という意味であるが、とりようによっては What is the universe made for、すなわち「宇宙は何故つくられたのか」という意味にも取れる。

    P. 225
    一方、「こんなことを調べて一体何の役に立つんだ?」と疑問に思われた方もいると思いますが、いつもこのように答えています。「日本を豊かにするためです」。
    宇宙物理学者らしからぬ、「中途半端な大きさ」の答えではないか。最小でも最大でもない。

    最小は、「自分を豊かにするためです」であり、最大は、「宇宙を豊かにするためです」ではないのか?PRでは誤解されがちな前者を避けるとしたら、残るのは後者の方である。

    そう。宇宙を豊かにするため。「宇宙は何故つくられたのか」、そもそもそれに何故があるかどうかはわからない。しかし宇宙を知る宇宙の一部がある宇宙と、それがない宇宙とでは、前者の方が豊かな宇宙ではないのか?

    そして宇宙を知る宇宙の片隅は、別の宇宙の片隅をも豊かにせずにはいられない。

    だから自分という宇宙も豊かにしなければならないのだ。

    著者は宇宙が豊かになっていくよろこびを、別の宇宙に伝えるのが最も上手な宇宙である。これからも多いに豊かになり、そして豊かにしてほしい。

  • はじめのうちは興味深く読んでいたが、途中から難しすぎて気が遠くなりました。これが入門書であれば、私には理科系はやはり無理です

  • 考えたこともないミクロとマクロの世界。映画「インターステラー」を思い出しながら読みました。

  • 本の内容を全て理解できたわけではないが、宇宙の壮大さに思いをはせることで、日常生活における悩みなんてちっぽけだなぁと思える

  • わかりやすいけど後半ついてけへんくなった。おもろかった
    オーディオブック

  • ★分かりやすい入門編だが、もう一歩欲しい★広大な宇宙と極小の素粒子がウロボロスの蛇のようにつながっているという関係性を分かりやすく説明してくれる。物理の世界では現象を説明するための仮定が次々と生まれ、巨大な実験設備で確認されていく。ダークマターなどそれでおも分かっていないことが多いことが分かり、日本人のノーベル物理学賞受賞者の貢献も何となくイメージがわくように記してくれる。物理のワクワクを伝えるための本で、ケタの違いを比喩で表したりと確かになんとなく伝わってくるのだが、こちらの能力不足で細かい点は全く頭に入ってこない。それはいかんともしがたいのか。

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著者プロフィール

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)教授、カリフォルニア大学バークレー校Mac Adams冠教授。
1964年東京都生まれ。1991年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。東北大学助手などを経て、2007年から2018年10月までKavli IPMUの初代機構長を務めた。専門は素粒子論・宇宙論。『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)はじめ著作多数。メディアを通して研究成果を伝えることにも力を入れる。難解な素粒子論・宇宙論をわかりやすい言葉で語る。

「2020年 『そうたいせいりろん for babies』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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