なぜ日本人は世界の中で死刑を是とするのか: 変わりゆく死刑基準と国民感情 (幻冬舎新書 も 6-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344982185

作品紹介・あらすじ

EUは廃止、米国でも一五州で廃止された死刑制度を未だ適用するわが国で昨今、死刑基準に変化が生じている。そもそも死刑基準と言えば、一九八三年に最高裁が永山事件で示した「被害者の数」「犯罪の性質」「犯人の年齢」などが指針とされてきたが、近年では少年犯、一人殺害でも死刑になる可能性が高まっている。国民の誰もが死刑裁判に立ち会う可能性がある今、妥当な死刑判決はあり得るのか。戦後の主立った「死刑判決」事件を振り返りながら、時代によって大きく変わる死刑基準について考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 死刑判決の事例がたくさん載っていて、わかりやすい。
    資料的価値の高い一冊。

  • 死刑廃止論についてこれまでしっかり考えてこなかったのでその考察の一助とするために。単純な気分的には死刑廃止反対であったが、死刑を廃止して終身刑を確立すべしということなら少しわからなくもない。というかそもそも無期懲役が終身刑でないという認識もこの本を読むまではっきり持ってなかったわけだが。

  • 生の被害感情と正義観念を同一化することはできない。歴史を逆行する過ちを犯すことになる。

  • 延々と述べられている、戦後から最近に至る、死刑の対象となった犯罪の要旨が淡々としているだけにコワい。こんな事で死刑に?ということも、たまにあるのがまた怖い。案外基準はあいまい。自分が裁判員になったらこの本のことを真っ先に思い出すだろう。

  • 326.41||Mo

  • 社会
    犯罪

  • ■永山基準
    ①犯行の罪質
    ②動機
    ③態様,ことに殺害の執拗性・残虐性
    ④結果の重大性,ことに殺害された被害者の数
    ⑤遺族の被害感情
    ⑥社会的影響
    ⑦犯人の年齢
    ⑧前科
    ⑨犯行後の情状
    ■死刑の基準の裏にある二つの基本的観点。
    ①「(殺人の)抜きがたい犯罪傾向」の有無
    ・なぜ前科の存在が死刑に結び付くかと言えば二度目であることで「抜きがたい犯罪傾向」ありと見極められるため
    ・二人殺害でも機会の同一性を満たす「同時型」であれば「抜きがたい犯罪傾向」が認められないということがある
    ・機会の同一性を満たさない「連続型」(巷間言われるところの連続殺人)の場合「抜きがたい犯罪傾向」と直結
    ・想定されているのは「安全な社会」であり,死刑にすることで一定程度市民の安全確保につながる
    ・「安全な社会という現代の日本社会の在り方と矛盾する者はその存在を社会の側から否定される」それが我々の社会であり日本という国家のかたちであるという社会の姿が念頭に置かれている
    ②「犯罪被害の極限性」
    ・「犯罪被害」を死刑判断の主要観点とするもの
    ・「結果の重大性(被害の深刻性)」と「遺族の被害感情」に重点を置く
    ・犯罪傾向というより被害者にどのようなことをしたのか,被害者の生命や尊厳に対してどのようなことをしたのかが重要になる
    ・被害者の立場に立ち犯罪被害を重視するということで大きな観点で見れば市民的な感覚の重視
    ・被害感情を満足させるために死刑が用いられている

  • 日本では昨今、死刑基準に変化が生じている。国民の誰もが死刑裁判に立ち会う可能性がある今、妥当な死刑判決はあり得るのか。戦後の主だった「死刑判決」事件を振り返りながら、時代によって大きく変わる死刑基準について考察する(表紙カバー)。

    本書は実にシンプルな構成となっている。第1章では、戦後日本のめぼしい死刑事件の解説により、時代の変遷とともに死刑判決が異なっていることを示している。第2章では、議論の取っ掛かりとなる現在の死刑判決の基準の解説をしている。第3章は死刑判決の根底にある人間観、社会観について述べている。そして最終章はこれまでの議論から、死刑判決に正義があるのかということを読者に問いかけている。

    本書は私が大学1年(2011年)のとき、死刑制度についての論文を執筆するために購入したにもかかわらず読み損ねて、積読状態になっていた本である。しかし本書を読んでみると、それが悔やまれるほどに目から鱗の内容だった。

    裁判員制度が始まり、国民の誰もが死刑判決の判断を迫られる可能性がある。そうした時のために、ぜひ一度は読んでおきたい本である。

  • 日本と世界の死刑観というよりは、日本の死刑の歴史。(実例から傾向を読み取る)

    死刑よりは、終身刑(日本には終身刑ないことを知らんやった。事実上の終身刑はあるらしいけど。)のほうがいいんじゃないのかっていうのが著者の主張。概ね賛成。
    最近は、殺した人数とか計画的かどうかよりも、被害者家族の心情のほうにフォーカスし始めてるらしい…

  •  とてもレビューが難しい本だと思う。この本の著者を、死刑反対派と見るか、あくまで中立的な視点で捉える慎重派と解釈するかで、この本に対する感情が大きく揺れ動く。

     第三章と第四章において筆者の意見が述べられているが、「死刑は遺族の被害感情を満足させる、被害者の尊厳の回復に寄与しているが、この事は『犯行の計画性を重視する理由がなくなる(殺人の被害にあったという事に変りないため)』、『前科の有無を問う必要もなくなる(上と同じ理由による)』、『被害者が同時に殺されたか・連続して殺されたかも関わる(一度にその場で殺されたか、機会ごとに殺されたか)』」と述べている。

     そして、四章において「果たして死刑は凶悪犯罪の発生を防ぐ効果を果たしているのか(ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアの例から)、終身刑を導入して人々の記憶に長く留めさせ賠償し続けさせるべきではないか」、「抜き難い犯罪傾向を消滅させるならば、死刑でなくても終身刑で間に合うのではないか」、「殺された側の心情は理解出来るが、あくまで被害感情を満足させるだけで、社会正義の実現に寄与しているのか(イリノイ州の死刑に立ち会った被害者の例)」、「人命・人権の尊重は全ての人間に与えられているのではないか」、「法があるのだから死刑にしてよいのか。象徴的な意味合いを持たせ、かつ備えとして残すだけでよいのではないか」といった意見を述べている。

    自分用キーワード
    機会の同一性 ベッカーリア(死刑廃止論者。) ノーマン・フェルドマン(妻と娘を殺されるも死刑には反対し終身刑を訴えた) 修復的司法


     

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著者プロフィール

1959年東京都生まれ。東京大学法学部卒。東京地裁、大阪地裁などの裁判官を務め、現在は弁護士として活動。裁判官時代には、官民交流で、最高裁から民間企業に派遣され、1年間、三井住友海上火災保険に出向勤務した。著書に『司法殺人』(講談社)、『死刑と正義』(講談社現代新書)、『司法権力の内幕』(ちくま新書)、『教養としての冤罪論』(岩波書店)ほかがある。

「2015年 『虚構の法治国家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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