決算書の9割は嘘である (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344982444

作品紹介・あらすじ

有名企業の粉飾決算が相次いでいる。決算書は所詮企業が自分で作る成績表。体面を気にする一流企業の決算書ほど虚飾にまみれ、また、脱税のための会計操作も跡を絶たない。国税庁によると、大企業の決算書の実に9割に嘘がある。一見巧妙に仕組まれているようだが、見るべき項目を見れば実は簡単に嘘は見抜ける。「第4期の業績だけ異常に良い」(←株価対策のため売上をよく見せる)、「売掛金だけが異常に減少」(←売上を小さく見せて脱税)、そんな企業に注意せよ。元国税調査官が、危ない企業の見分け方を伝授。

感想・レビュー・書評

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  • 【レビュー】
    著者の書く本で外れはないと思う。一読の価値あり。
    ・『つぶれる会社にはわけがある』という別の著書の本(すでにレビュー済)の中に、本書と同じ言及つまり日本の会社の7割が赤字である、というものがあったが、『つぶれる』のほうはそれをもって起業を悲観的に論じていた。しかし本書によって、そうした赤字は税金対策として帳簿上わざとそうしているにすぎないとの指摘をもらい、膝を打った。やはりいろいろな本を読んで比較しないといけないことがよく分かった。
    【特記事項】
    ●決算書の誤り①利益の過少計上=脱税②利益の過大計上=粉飾決算
    ・国税庁は①のほうに関心がある。なぜなら②の場合は税金を返さないといけなくなるから。
    ・不良債権処理をするとして、相手先の業績が芳しくない、という基準があいまいで、それゆえにグレーゾーンが発生する。
    ・ソニーはリストラ経費を通常の特別損失ではなく一般管理費に含めて計上した。これはアメリカ基準では正解。アメリカはリストラが多いから一般管理費でOK.
    ・法人税が下がると、企業は利益を上げるために経費を下げようと努力し、つまるところ給料カットに励むことになるから、会社員にとっては悪い。
    ・経営者が自分の給料を増減させ、また経費をボケっとマネーから払って経費を削減して計上するなんて方法もある。
    ●株主構成が目印。銀行や大企業が株主だと、脱税する動機はないが利益を上げようとするため粉飾決算に走ることが多い。同族会社はその逆。
    ・特別目的会社を設立し、そこに投資し、次いでそれを清算させて自社の利益とする方法もあるが、これはまずい。
    ・海外の子会社に利益を分けて税金を下げるという方法もある。
    ●売掛金などは嘘をつきやすい。しかし土地や現金・預金は調べれば一発なので嘘をつきにくい。
    ●決算書は一年分を見るだけでは意味なし。EDINETなどで3年分くらいをみて、各勘定科目の増減に注目する。とくに営業利益に注目。
    ・第4期(年度末)に粉飾は多発する。
    ●粉飾するには①売り上げの水増し②経費の隠蔽③在庫の水増しのどれか。①には、利益を前倒しすること、グループ企業内などで循環取引をすることなどがある。また、子会社に負債を押しつけたあとで連結を外し、自社の債務を減らして計上する、とか投資事業組合、匿名組合を作ってそれに債務を押しつける、という方法がある。
    ・ライブドアは、「資本取引による利益」を「営業利益」として計上したことがまずかった。しかし利益それ自体はあったのだから、それほど悪質ではない。地検が捜査した背景に国策があったのでは、という見解は、国税からすると的外れとは言えない。
    ●脱税するには、上記①~③の逆をやればよい。人件費をあげれば合法的に経費をアップさせられる。
    ・売掛金が急に減ったら要注意。

  • 強烈なタイトルで誤解してしまったが、決算書は人がつくるものであり作成基準も曖昧な部分があるのでそれをふまえる必要があるというものと理解。そのうえで見る側に必要な知識を紹介。

  • 国税庁のOBである著者が、決算書の実態について語っている内容。あまりこの手の内容になじみがない人向けにかなり分かりやすく書かれているが、その分、国税庁OBならではのマニアックなエピソードを期待すると裏切られるかもしれない。

  • 企業は、粉飾したいか、節税(脱税)したいかの目的に合わせて決算書を作るので、その意図を見極めれば、本当の内容を見誤ることは少なくなる。パターンを非常にシンプルに纏めているのでわかりやすい。201408

  • タイトルが体を表してないのが微妙だけど。。中身は意外とおもしろい。税務署からみたら粉飾(アップサイドの粉飾)なんてどうでもいいのね。

  •  何かと悩みのタネになることが多い決算書だが、その決算書の9割が嘘とはどういう事なのだろうと思い、手に取った。

     第一章では「決算書はいい加減なもの」と断言してしまっている。
     筆者は元国税調査官だそうで、決算書は企業が恣意的に自分に都合よく作る物であると吐露しており、15万件程度の法人の内、6割以上の申告漏れ・決算書の誤りが見つかる事や、3952社の大企業のうち3419社(86.5%)の決算書が間違っている事を明らかにしている。そしてこの8割は誤りの中には粉飾決算が含まれていない。決算書にかかれた利益が少なければ株価が下がり、銀行との取引も出来なくなり、結果として資金繰りが行き詰まり、公共事業の受注も出来なくなる。思わぬ利益を産んだら、それはそれで払う税金が増えてしまう。そして決算書の作成には明確な方法がなく、かつ自分たちで作るのだから間違っていて当然、という訳である。その例としてソニー(アメリカの会計基準を採用)とトヨタ(法人税及び配当金の税金引き下げの効果)、コクド(長期借入金と短期借入金の額を調整)の例を挙げている。
     読んでいて驚いたのは「粉飾決算の場合は、税金を返す可能性が生じるため黙殺するのが通例」という一文だ。確かに国から見れば迷惑なのだろうが、ゆくゆくは従業員に負担が目に見える形で現れる事は必然なのだから、許されるべきでは無いと思っていた。「小さな誤りも、いちいち修正していたら仕事が増えるので黙殺する」という下りもなかなか嫌な事実だ。「法人税の減税は経費の削減の実行を意味するので、株主位しか特をしない」という下りも同章にある。
     
     第二章は決算書は立体的(企業の状況・背景。決算書の傾向)に見ることで嘘が分かるというものである。ここでも粉飾決算のある会社を避けるとあるが、一見したでけでは分かりにくい脱税と違い、粉飾決算数字を書き換えなければいけないので痕跡が残るため、除外するのがある程度容易なのだそうだ。
     筆者は「企業の背景を知るためには「株主構成」を見るのが早い、構成によって「脱税をしやすい会社(創業者が経営の実権を握っている:株主の機嫌をとる必要が無い)」、「粉飾をしやすい会社(銀行などの支配下:経費削減・不採算部門の切り捨てで収益を得ようとする)」と、会社の体質が異なるからだ」と述べている。それ故、税務調査をする際には大企業の子会社や、銀行・商社が株主の会社を選定しているそうである。株主の構成で体質が異なる例として、楽天(実質的に同族会社なので株主や銀行に気兼ねしない)、朝日新聞(最大株主が社員持株会なので現場の人間による散財が多い)が挙げられている。
     資金調達を目論んで、粉飾決算を行ってまで上場をしようとする企業もあるので、上場を検討している企業には注意する必要があるというアドバイスも書かれている(例:特別目的会社を利用したビックカメラ)。また、海外展開をしている企業は法人税の関係で営業利益が低くなる傾向があり、申告漏れが意図的に行われることがあるとも述べている(大和ハウスの海外子会社への寄付金)。)

     第三章では決算書の流れ、最低でも三年分の決算書を比較し、かつ嘘が出やすい勘定科目に注目することで決算書の誤りを見つけやすくなると述べている。
    嘘をつきやすい勘定科目(売掛金、売上、原価など)とつきにくい勘定科目(現金・預金など:粉飾の場合残高が減っていく(カネボウなど))に気をつけながら、売上と営業利益の傾向を追うことで脱税あるいは粉飾の恐れを見極められ、それは最終的に売掛金に現れる。また、原価率・一般管理費・従業員が減っている会社は景気が良くない、第四期を見ることで粉飾が行われているかが分かる(アイ・エックス・アイなど)など、就職・転職を行う際にチェックしておきたい項目としても使えそうだ。

     第四章では、粉飾は基本的に「売上の水増し」「経費の隠蔽」「在庫の水増し」の三つの方法しかないとし、実際に企業が行った事例を説明している。
     「売上の水増し」は一見簡単そうだが、すべての売上と入金を突き合わせるのは不可能であり、かつ売掛金と処理されている事も考慮すると照合しても意味が無い事を利用したものだそうだ(悪用例:ミサワホーム九州の売上の前倒し)。他にもグループ企業・関係企業を使い、循環的な取引を行う「循環取引」(悪用例:加ト吉、カネボウ『通称:宇宙遊泳取引』)が有名な例として挙げられている。
     「経費の隠蔽」は、特定の相手との取引を偽装するために発覚しやすく、あまり行われないと説明されている(例:井関熊本製造所)。一方、「在庫の水増し」は取引先などを巻き込まず、在庫表を書き換えるだけで行える容易なものと述べられている。
     本章の最後に旧ライブドアの粉飾騒動について触れられている。筆者はこの事件が大きくメディアに取り上げられた事に疑問を抱いており、「政治的な意図があったのではないかと言われることがある」という言葉を借りて違和感を表明している。「資本取りによる利益」を「営業利益」として計上したが、利益自体に問題は無かった。それなのに特捜が入った。怖い話である。

     第五章は日本の脱税の実態について説明している。「日本企業の七割は赤字会社。上場企業や銀行に借入金がない企業でない限り、赤字であることによって法人税がかからず、税務署の調査を受けにくいというメリットがあるため」という冒頭の下りは、会計に疎い人には衝撃的な事実だと思われる。そして「脱税を行う企業のほとんどは、役員報酬を受け取ることが出来る同族会社であり、合法的に赤字にするために身内の役員に高額な報酬を渡している」という説明も嫌な気分になることだろう。もっとも、非同族会社であっても「裏金」のために振り込んだ側が税金を払っているのでますます気が滅入ってくる(例:西松建設の献金事件)。
     第四章同様、脱税の方法を説明しているが、こちらも基本的に「売上の除外」「経費の水増し」「在庫隠し」の三つしかないと述べている。
     「売上の除外」は売上が出るたびに領収書をだす企業でなく、現金商売(飲食店など)などの企業に限定され、かつ水商売(原価の特定が難しい、常連が領収書を切ることは少ない)で行われていると説明している。特定法として、シミの付いた伝票の利用や資産に目を光らせることをすることも明かしている。
     「経費の水増し」は「売上の除外」の逆で、領収書を発行する企業が「外注費」や「人件費」を多く計上する手法が主に取られるようである(例:トリプルサン)。
     「在庫隠し」は自社だけで簡単に行える反面、毎年行わざるを得ない手間のかかるもので、かつ発見されやすい手法であると明かしている。そして、何よりも脱税が行われたかを見破る方法が「裏帳簿」の発見だそうだ。
     「申告漏れ」は簡単にいうと、不正か否かで大きく意味が異なり(過少申告加算税と重加算税)、その不正の金額が大きくなる(約1億円以上)と「脱税」として起訴されるそうである。ややこしい。

     最後の章は「危ない企業の見分け方」である。就職・転職の際には是非チェックしておきたい。
     一、二時間で読み終えられるが、なかなかためになる本だと私は思う。
     
    自分用キーワード
    EDINET 連結逃れ(東海興業)
     
     

  • ・決算書は企業が自分で作るもの。自分に都合がいいようにつくる。監査法人や税理士も企業から雇われた身分なので、チェックも甘くなる。
    ・国税調査官の本質的な仕事は、追徴税をいかに多くとるか。→粉飾決算を避けて、脱税を見つける。
    ・創業者が大株主で経営の事件を握っている企業は脱税が多くなる傾向になる。→利益を上げて株価を上げる必要がないから。
    ・ウソをつきやすい勘定科目:売掛金。つきにくい:現金・預金。
    ・決算書は1年分をみてもダメ。数年分を比較する。
    →EDINET
    ・日本企業の7割が赤字。赤字なら法人税がかからないから。

  • タイトルに釣られて読んでみたけど・・・、
    とりあえず内容が薄い。

    粉飾と脱税の手口(と言えるほどのモノでも無い)が書かれているのだが、同じような内容が延々と繰り返されるだけ。しかもどこかで聞いたことある話ばかり。
    うーん、ハズレ本かな。

    一生懸命まじめに決算書を作ってる自分としては、嘘と言われるとちょっと腹立たしい。

  • 決算について「税金をとる側」から書かれた本。

    筆者はもと国税庁に勤めていた。

    視点がどのように経営者は決算すべきではなく、

    どう税金を多くとるかとか、経営者はどのように振る舞うのか

    人間の本質に迫った本

  • ● また国税調査官は、粉飾決算の企業を税務調査することは避けなければなりません。粉飾決算の企業を税務調査すれば、追徴税を取るどころか、税金の還付をしなければならなくなるからです。

    ● アジア諸国などでは日本に比べて法人税が安くなっています。なので、日本の本社よりも、海外の子会社に営業利益を多く計上させます。日本の本社が受け取るロイヤルティーを低く設定したり、本社から子会社へ格安で資材の提供を行ったりするのです。

    ● 企業にとってもっともいいことは、「自分が予定している程度の利益を出すこと」なのです。

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著者プロフィール

1960年生まれ、大阪府出身。
元国税調査官。主に法人税担当調査官として10年間国税庁に勤務。
現在は経営コンサルタントの傍ら、ビジネス・税金関係の執筆を行なっている。フジテレビドラマ「マルサ!!」監修。著書に『脱税のススメ』シリーズ(彩図社)、『完全図解版 税務署対策最強マニュアル』(ビジネス社)、『サラリーマンのための起業の教科書』(小学館)などがある。

「2023年 『正しい脱税』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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