あなたの中の異常心理 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344982451

作品紹介・あらすじ

誰もが心にとらわれや不可解な衝動を抱えている。そして正常と異常の差は紙一重でしかない―。精神科医で横溝賞作家でもある著者が、正常と異常の境目に焦点をあて、現代人の心の闇を解き明かす。完璧主義、依存、頑固、コンプレックスが強いといった身近な性向にも、異常心理に陥る落とし穴が。精神的破綻やトラブルから身を守り、ストレス社会をうまく乗り切るにはどうすればいいのか。現代人必読の異常心理入門。

感想・レビュー・書評

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  • ガンジー、ニーチェ、三島由紀夫など歴史上の人物から身近な人にいたるまで豊富な事例が紹介されています。解離による多重人格からゴミ屋敷に至るまでの幅広い症例を分かりやすくまとめています。「異常心理」の側を眺めることで、人間の奥深さや人間とは何なのかということを浮き彫りにしており興味深く読めます。
    そして、完璧主義や自己絶対視、自己目的化など、自分でもありそうなことが、相当にいきすぎると異常心理へと続いていくことにも気づかされます。加えて数々の事例に幼少時の愛着の問題も大きく関わっていることがわかります。
    無差別殺人など「異常心理」は全く理解できないものでしたが、本書から背景や仕組みを知ることができました。閉ざされた思考や全か無かの二分法的な思考の危険さを知りました。
    うまく行かないことを思い返して、あの頃の方が一生懸命生きてたなと人生の味わい深さとして捉える考え方は何か心に刺さりました。
    「あなたの中の異常心理」で「あなたの」とあるように、異常心理とは誰しもの心から地続きになっていることがわかりました。
    ニュースなどみても、こんなことなのかなぁくらいは考えられそうです。人間というものを見ていく視点を得ることができました。有意義な読書でした。

  • この著者の本はこれまでに『マインドコントロール』、『母という病』、『父という病』を読んだ。文体というか、展開がどれも似ている。「異常心理」という言葉を軸に、色んな事例を、自身の臨床経験や有名人の半生を交えて語っていく。

    ・この類の本を読んでよく思うことは、他者の例を知ることで自分を省みることができるということだ。自分の特徴や普段無意識に捉えている漠然としたものを言語化することができる。言語化しないと、考えることすらできない。自分のことを自分だけで気付くのは、とても難しい。

    ・前半は三島由紀夫、東電OL殺人事件、ガンジー、水木しげるといった人物・事件を交えて話が展開していく。この辺りは自分もどんな人なのかをある程度知っているので、理解しやすかった。

    ・後半になると有名な外国の思想家や哲学者が登場する。初めて聞く名前で、わからない。自分の勉強が足りないということか。ジョルジュ・バタイユの「悪の哲学」なんていうのが出てきたが、あまり理解できていない。

    ・完璧主義や潔癖という流れで三島由紀夫、東電OL殺人事件、ガンジーの例が出た。こういう風に、ある異常心理に対して実在の人物の例が出てくると、なるほどと腑に落ちる。そういうのが面白い。

    ・完璧主義な三島由紀夫の自決、極端に潔癖で禁欲的なガンジーがなぜそうなったのか?といった辺りは初めて知ったが、興味深かった。

    ・この本では、極端な例がいくつも示されている。しかし、案外それらは自分が日常で感じることの延長線上にあるものに思う。自分は完璧主義者とは思わないが、無意識に完璧なものに拘って足踏みしたり、見切りをつけられないことがある。社会的には望ましくないと知りつつも、頭の中に欲求が湧いてくることもある。

    ・『自己目的化した、閉じられた快楽の回路』という表現が気に入った。自己目的化という言葉も初めて知った。

    ・それにしても、新しい思想や概念を切り開いてきた昔の心理学者や精神科医は、みんなうつ状態だったんじゃないかと思う。

  • 例として挙げられている人々、三島由紀夫、夏目漱石、ガンジー、ドストエフスキー、ユング、ショーペンハウアー、オスカー・ワイルド、ニーチェ…世に出て、後世に残るクリエイティブな仕事を成し遂げた人たちでさえ、闇を抱えていたのですなぁ。異常心理があったからこそ、考察できたこともあるんでしょうけれども。

    「いじめはクセになる」「快楽回路ができるとループし続ける」ほか、先週読んだ別の本「脳内麻薬/中野信子」ともリンクしていて興味深かった。

    最後まで読んでみて、異常心理に向かう原因を「幼少の頃の親との関係(特に母親)」に重点を置きすぎのような気がした。これを言われたら、自分もそうだと思う人は多いんじゃないかしら。でも、「愛情不足で育ったからしょうがない」で終わらせては自分が損。いつからだって生き直せると思いたい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「いつからだって生き直せると思いたい。 」
      私も、そう思います!
      「いつからだって生き直せると思いたい。 」
      私も、そう思います!
      2014/08/11
    • newrose33さん
      ですね!
      ですね!
      2014/08/12
  •  面白かったのだけど、「健全な心を育むには幼児期の母親の接し方が重要」という記述が多くて、心が萎える。
     昨日もちょうど、ストレス耐性のある人間に育てるには、幼児期の母親の愛情が重要というネット記事を読んで、一体父親は何処にいるもんなのでしょうねと思ったばかり。どうも父親に大事な素質は「暴力をふるわない」事だけに思えてくる。
     幼児期の母親との接し方が大切だという事は否定しないのだけど、同じ研究を父親に対しても充分行われていての記述なのか甚だ疑問。

     心に問題を抱えた人の解決方法としては役立つ事が書かれているのだろうけれど、これから一人の人間を育てていく母親になる可能性のある人間としては、逆に心理に異常を来しそうなプレッシャーを感じた。
     それも私自身の幼児期の母親との関わり方が悪かった所為なのでしょうかね。

     時代の問題もあるだろうが、心に問題を抱えていたであろう歴史上人物の中で数名、「幼少期に女の子として育てられた事が原因」とあったのだけれど、逆のパターンがないのが物足りない。

     父親の虐待があった時に、それを止めなかった母親もセットで非難される事はあっても、母親の虐待があった時に、それを止めなかった父親の存在というものを余り聞かないのも気になる。
     そもそも父親とは、子供との接触が薄くても構わない存在なんだろうか。

  • 完璧主義、窃盗癖や過食症、依存症など、日常に溢れかえってる精神的な問題について書かれてある。
    一貫して、主張されてるのは『幼少期の愛情の大切さ』かな…
    最後の方に書かれてた「不完全な存在こそが安定している」、という言葉がよかった。完璧は実はすごく危ういものだと、そこにこだわりすぎると視野狭窄に陥り破滅してしまうかもしれないと教えられた。

  • ●久しぶりに読み応えのある一冊に出会えた。
    ●普通の人間でも陥りがちな異常心理について、具体的ケースを交えながらサクサク解説してくれるので、
    非常に面白い。
    ●やはり、幼少時の愛に囲まれた、常に主役になれるような成育環境が一番大事なのだと思う。結局は様々な原因は幼少時にあるもんなあ…なんだか親の凄さというか、有り難さを知ったよね。自分が普通だと思っていたことはわりとレアなケースだったという…
    ●これからの時代、特にSNSが悪い方向に進化しているような時代は、もっと異常心理の増大に拍車がかかる気がするんだよね…見なくてもいい、交わるべきではない世界が交差してしまう難儀な世界
    ●ほんとに他人事じゃないよね…この本を必読の本としたいぐらいだよ。てっきり異常な精神病患者を紹介していくのかなあと思っていたから拍子抜けしたけど、よく読めばこっちの内容の方が怖い。他人事にできない…

  • 極めて異常な状態は、誰にでも見られる正常心理からそのまま連続している
    つまり、異常心理は決して特別な人の心に潜むものではなく、誰の中にもある心の状態だということを理解しておかなくてはならない

    ✏完璧でない、不完全な自分に耐えられる力こそ、混乱した見通しのない時代を生き延びるために必要である

    ✏窃盗癖や過食症は、幼い頃に刻まれた根本的な欠落やそれに対する飢餓感釜存在していて、それを過剰なまでに代償しようという衝動に駆り立てられているということである

    ✏真っ正直で嘘がつけず誠実な性格というものは、心に二面性を抱えられないという内面的構造の単純さに由来する問題であり、ある種の未熟さを示していると考えられる

    ✏疲労やストレスによって前頭前野のコントロールが低下したとき、扁桃体に刻まれた否定的体験から生じるネガティブな情動を抑えきれなくなり、思いがけない攻撃性や感情の爆発が起きやすい

    ✏完璧な自分が最善なのではない。完璧な存在を求めることは、将来の破綻を用意することになりかねないのである。
    完璧なものよりも、不完全な存在こそが安定したものであり、それを受け入れ、さらけ出せることが、人から受け入れられ、愛されることにもつながるのだ。

  • 著者は精神科医師ということで、いろいろな症例を元に述べられていますし、また今は亡くなっている有名作家などを例にあげたりで読みやすいと思います。

    正常も異常も、養育環境の影響かわからないけど紙一重だな、と思ってしまう。
    社会から逸脱しないから正常と言えるか?と問われれば、間違いなく誰の中にも異常心理のかけらはあるわけで。
    異常性が行動・言動に出てしまうと社会生活が難しくなるだろうから、そこに至る前に手を打つことが大事なのかな。
    完璧主義思考は危ういとか、ドキッとする箇所がありました。

  • なんでこの本を読もうと思ったんだったかな……。

    専門的な内容だが、分かりやすい言葉で書かれていて読みやすかった。
    様々な“異常心理”について著名人、特に「表現する職業」だった人々を中心に、生い立ちなどを説明しながら解説。
    表現芸術に身を置く人って、やっぱり“異常心理”を抱えていて、それを作品に昇華させてる人って多いんだろうな、という。

  • 禁断の扉

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「禁断の扉」
      開けない(読まない)方が、良いのかな?
      「禁断の扉」
      開けない(読まない)方が、良いのかな?
      2013/06/10
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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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