浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
3.32
  • (16)
  • (55)
  • (88)
  • (18)
  • (5)
本棚登録 : 744
感想 : 83
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344982505

作品紹介・あらすじ

日本の仏教はさまざまな宗派に分かれており教義や実践方法が大きく異なる。にもかかわらず多くの人、とくに地方から都会に出て菩提寺とのつきあいを絶った人は関心を持たない。だが親や親戚の葬儀を営む段になって途端に宗派を気にするようになる。家の宗旨に合った僧侶を導師として呼ばねばならないからだ。そこで初めて「うちは○○宗だったのか」と知る。そもそも宗派とは何か。歴史上どのように生まれたのか。本書は、日本の主な仏教宗派を取り上げ、その特徴、宗祖の思想、教団の歩み、さらに他宗派との関係、社会的影響をわかりやすく解説した。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 我が家の宗派は真言宗だが、日常意識することもない。父母の葬式は無宗教で済ませた。とは言えおおまかに真言宗については気になる毎に少しは調べているのだが、近親の宗派が浄土真宗が多く、そちらの思想なりを調べるたび、真宗の考え方に興味と共感を覚えることが近年多くなってきている。正直、もう少し信心深かったなら、真宗に改宗しようかとも思うだろう。
    先に読んだ『日本の10大新宗教』と比べるととりあげる範囲も広く、そのため用語も多岐にわたり個々の言葉を記憶するだけでもひと苦労してしまう。そのぶんひと通りの宗派はこれ一冊でほぼ概要を知ることができるのだと思うが。ここから興味を持ちより深く理解するためには各々が調べていくものとなる。この一冊はそのための入門書、と捉えるべきなのだろう。

  • 日本仏教の概説。
    普段、何となく感じている程度の宗派へのイメージから話が始まり、その理由を宗派の趣旨や歴史で説明してくれる。仏教入門としては最適な、わかりやすくシンプルな概説書。
    個人的には奈良の寺院の商売熱心な感じが、南都六宗の国家仏教故に檀家が無いことや、廃仏毀釈の影響ということで説明がされていて、なるほどと思いました。

  • いまいち。仏教について広く浅い内容。著者自身がさほど詳しくないのか、意欲がないのか。

  • 浄土真宗についての本というより、日本の仏教史とその中心人物について宗派ごとにまとめた本。日本史の復習や仏教の入門としては読みやすく面白い。しかし、肝心のタイトルの「浄土真宗はなぜ~」という問いに関しては「おわりに」でさらっと述べられているだけでかなりタイトル詐欺に感じる。この本を足掛かりに、親鸞や空海などの有名な人物や宗派に焦点を絞って何冊か読んでいくと、だいぶ仏教に詳しくなれそう。

  • Twitterとの連携テスト

  • 曹洞宗や臨済宗といった禅宗の場合には、不立文字と言うように、教えを文字にして表現することを戒める傾向が強く、他の宗派を批判したり、攻撃する事はなかった
    戦前の昭和15年に、現在の宗教法人の前身となる宗教団体法が制定されるが、それ以前の段階では13宗56派が存在した
    宗教法人は認証されるものであるにもかかわらず、多くの人たちは認可されるものと誤解している
    比叡山が10世紀末以降、支配下に置いたのが祇園社、つまり今の八坂神社である
    南都北嶺は兵僧を抱え、武力を所有することで、独立性を保っていた
    織田信長の比叡山焼き討ちや豊臣秀吉の検地や刀狩りは、寺社勢力から領地や兵力を奪い、世俗の権力の支配下に置く試みだった
    親鸞の場合には、妻帯しており、血筋によってその信仰が伝えられていった。これは、他の宗派にはない浄土真宗の特徴である
    戒名に関しても、浄土真宗はそれを法名と呼び、必ず釈の字を含む

  • p9
    南都六宗>法相、倶舎、華厳、律、三論、成実。
    天台宗>
    法華系……日蓮宗→日蓮正宗
    禅系…曹洞宗、臨済宗→黄檗宗(おうばくしゅう)
    浄土系…融通念仏宗、浄土宗→浄土真宗、時宗

    p20
    奈良時代、僧侶が官僚の時代で宗派は学派に近かった。
    国の試験で正式な僧侶に。持統天皇時は10名。
    奈良の東大寺は南都六宗+天台真言の「八宗兼学」の寺。

    p23
    鎌倉時代。
    法然が浄土宗を起こす。念仏以外の教えや実践を聖道門と呼び、念仏で極楽浄土を目指す浄土門を目指した。
    法然を批判した日蓮が法華経への信仰以外を否定。
    禅宗の曹洞宗や臨済宗は不立文字(ふりゆうもんじ)と言うように教えを文字にして表現することを戒めたが、他の宗派を批判することはなかった。
    p24
    江戸時代、寺請制度で檀家制。
    昭和15年の宗教団体法で28宗に。宗教法人は認可ではなく認証。

    p30
    聖徳太子の法華信仰。
    仏教とヒンドゥー教の習合した密教は護摩を焚いたり祈祷したりする儀礼等が用いられる。
    浄土真教はインド仏教(輪廻苦)には無い極楽転生。
    禅は瞑想の一種。現世利益や浄土往生などの実利効果ではなく、精神安定や生活規範として機能し、武家に好まれた。茶道や花道、武士道に影響。

    p71
    天台本覚論の中の草木成仏…植物が芽生え花や実をつけ枯れるまでの過程が仏道修行の過程と重ね合わされ、さらに草木はそのままで成仏していると解く。中国にも存在したが、日本ではあらゆるものがそのままで仏になっているとする徹底した現実肯定の思想に発展した。この思想の背景には古代的なアミニズムの考え方がある。そのままで成仏しているなら改めて修行する必要は無いことになる。本来仏教は釈迦が家庭を出家したように、現実の価値を否定する現世拒否の必要を特徴としている。が、日本では草木成仏の考え方が広く受け入れられた。能楽には草や花が主人公となっている作品があり、一神教の人間と動植物を激しく区別する考え方とは相容れないものである。宗教そのものの存在意義を否定しかねない。日本人の無宗教の根底はここにある。

    p199
    創価学会と日蓮宗の関係

    p218
    現在の仏教式の葬儀の基本は曹洞宗が作り上げたものである。修行の途中でなくなった雲水を弔うための亡僧葬儀法が一般の在家信者の葬儀にも応用された。死者に対して剃髪の真似をしその上で戒律を授け戒名を与える。それが葬儀の中で最も重要な部分になっている。
    この葬儀の形式を取らない宗派は浄土真宗と日蓮宗である。死者を出家させると言うやり方を取らない在家中心。僧侶と在家との間に根本的な区別はないため。
    戒名に関しても浄土真宗はそれを法名と呼び、必ず「釋しゃく(尼)」の字を含む。日蓮宗は「日(女性なら妙も)」の字を必ず含む。

    p225
    浄土真宗の寺院の総数は2万カ所を超える。寺院総数がおよそ77,000カ所なのでおよそ26%。なぜこれほど浄土真宗は日本の社会に浸透しているのだろうか?簡単に言えばそれは庶民の信仰だからである。
    p227
    浄土真宗では親鸞が非僧非俗の立場をとることを鮮明にし自ら妻帯し子供ももうけた。浄土真宗では血縁を通して信仰が継承される。日蓮宗の場合は僧侶と俗信徒との間は明確に区別されている。

    近代、浄土真宗の歎異抄についての再発見。

  • 日本の仏教宗派について詳しく解説している本。
    教祖から複雑に枝分かれしているのでとても覚え切れない。
    ・全部の派を合計すると1,200万人の信徒 26%の寺院数 北陸、広島は殆ど
    ・真言宗は、高野山で空海が弘法大師として広める。
    ・単独では、曹洞宗が700万人で1位だが真宗大谷派(東本願寺)等の宗派を合わせると、門徒の数は1200万人に及ぶ。
    ・近東光と瀬戸内寂聴が天台宗
    ・日蓮は、伊豆と佐渡2回流罪となる。他の宗派を激しく攻撃。
    ・日蓮正宗が1700万人いたが、創価学会員を破門にした為小規模となった。創価学会員が出したお金が創価学会を通らず大石寺(静岡県富士宮市)に渡ったことに対する不満蓄積。
    ・創価学会は戦前に出来た。日蓮宗の僧侶と創価学会幹部が討論会を北海道で実施。池田大作が一方的に勝利を宣言。
    ・お経 般若心経、自我〇(浄土真宗)がメジャー

  • 副題にあるような「仏教宗派の謎」というものでもないように思うけど、日本における仏教宗派の成立、歴史と現在のポジションを概観する本。


    浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか (幻冬舎新書)
    いわゆる南都六宗から天台・真言、浄土系、禅系、日蓮と現代に通じる宗派にももちろん一通り触れられていて、それぞれの開祖や中興の祖のエピソードも添えられている。仏教って何?くらいの単純な関心を抱いて読むオレなんかにはありがたい内容である。

    新書ということで話をかいつまんであるだけに、その業界地図や変遷はかえってわかりやすくなっている。偉い開祖が亡くなると、宗派も千々に分かれて乱れ再習合していく様子も、いたって人間くさくて面白いのである。

    浄土真宗がどちらかと言えば庶民の宗教であり、葬式仏教化の中でもシンプルかつわかりやすいこと等が日本で「いちばん多い」理由であることも大いに納得できる。

    なお著者については、オウム関連で若干批判があることは、内容の是非はともかく知って読んだ方がいいかも知れない。

  • 中学の歴史の授業で、浄土宗は法然、浄土真宗は親鸞、時宗は・・・と、ただただ暗記した。そこには、教祖の人物イメージが湧くようなエピソードまでおしえられることなく、その宗教のなにが新しくて発展したのかという記述まで深く教えられることはないかと思う。
    この本を読んで、教祖のイメージが湧き、何がその宗教がすごかったのか、広まったのかという理由がわかり、興味深く読ませてもらいました。
    教科書の暗記のために歴史の勉強ではなく、こういう本で歴史が学ぶのが面白い。

全83件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

島田裕巳(しまだ・ひろみ):1953年東京生まれ。宗教学者、作家。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任し、現在は東京女子大学非常勤講師。現代における日本、世界の宗教現象を幅広くテーマとし、盛んに著述活動を行っている。 著書に、『日本人の神道』『神も仏も大好きな日本人』『京都がなぜいちばんなのか』(ちくま新書)『戦後日本の宗教史――天皇制・祖先崇拝・新宗教』(筑摩選書)『神社崩壊』(新潮新書)『宗教にはなぜ金が集まるのか』(祥伝社新書)『教養としての世界宗教史』(宝島社)『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)等多数あり。

「2023年 『大還暦 人生に年齢の「壁」はない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

島田裕巳の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×