パチンコに日本人は20年で540兆円使った (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344982536

感想・レビュー・書評

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  • 私はパチンコを今までに2、3回しかやったことがないので、説得力はありませんが、
    パチンコは、どうやら、健全な娯楽ではないみたいです。

     なんで、こんなモノが野放しになっているかというと、この本を読めば直ぐにわかります。
    それで、金銭的に特をする人間が多いからです。

     しかし、パチンコにどっぷりな人は、決して金銭的に余裕がある人ではなさそうです。
    なけなしの数万を使って、生活費を稼ぐモノもいる。これは、貧困ビジネスそのものではないでしょうか?

     パチンコは中毒性がある娯楽、、、というか、ギャンブルです。いつの間にか、パチンコをしないと、
    「どうしもない」自分になってしまう可能性があります。

     日本社会を見ると、こういった、安易に手を出して、人生が崩壊するものが多いような気がします。

  • おもに、ギャンブル依存症の側からパチンコを批判する本です。論理や情報に飛躍したようなところがないので、適度な距離感を保ったまま落ち着いて読める本。ただ、パチンコ依存症の人からのメールなどが載せられているのですが、そういう具体的な体験談には、ぐっと気持ちが引き締まるような思いがします。厚生労働省が2010年に発表したのが、「ギャンブル依存症は国内に400万人以上」ということだそうです。そのうち、7,8割がパチンコ依存症だと見られているらしい。著者の方は、よくこういうことをこういう姿勢で書いてくれたなと思って、本書ではたぶん、著者の前の著書で言いたいことはかなり言いきっていると思われて、論説的な部分は少なかったんですけど、訴えてくるものはある本でした。

  •  ギャンブル依存症のために自ら命を絶ってしまった友人を持つ筆者によって執筆された本。
     大変衝撃的な数字がタイトルに使われており、思わず二度見してしまう人も多いのではないだろうか。
     この数値は、一年間あたり約2、30兆円というとてつもない金額を日本国民が過去2、30年間に払った総計であり、なんと有名なカジノを持つマカオの売上よりも遥かに上なのだという(2010年度のマカオの売上は1兆8834億円)。
     私は以前に。本書にも名前が載っている帚木蓬生氏の著書、『ギャンブル依存とたたかう』を読んだことがあるので、本書を読んで初めて知った事を記録しようと思う。
     
     第一章はパチンコによって日本が受けた経済損失についてである。
     2010年度のパチンコ業界の売上は19兆3800億円と、以前よりも落ちてはいるが、それでも通販などのインターネット産業の市場規模に匹敵する値なのだという。他社に目をやると、イオングループが約5兆円、トヨペットが1632億円となっており、いかに19兆円という金額が途方も無い金額であり、もしこのお金が健全な使われ方をしていたのならば、景気回復に寄与していたのではないかと筆者は考えている(国が国民から集めた2010年度の税収は41兆4868億円と、約半数がパチンコの売上と同じ)。
     『レジャー白書』によると、2010年に「一年に一回以上」パチンコに行った人は1670万人である。これは中央競馬:1130万人、地方競馬:360万人、競艇:250万人、競輪:200万人、オートレース:60万人で、合計すると約3670万人が日本のギャンブル人口であり、3人に1人がギャンブルをしているという、恐ろしい現状にあるのだという。なお、パチンコの一人当たりの年間平均費用は7万7100円であり、これは余暇市場全体のランキングで8番目に金がかかるレジャーとなっている(パチンコより順位が上のレジャーは、観光旅行・ゴルフ・ヨットなど)。
     厚生労働省が2009年に行った研究では、日本の成人男性の9.6%、女性の1.4%がギャンブル依存症であり、分かりやすくすると、男性483万人と女性76万人、計559万人が依存症である。駐車場に子供を放置して死なせたケースや、労働意欲の低下のためにパチンコを禁止した韓国の事例をみると看過してはいけないはずなのだが、政府は動こうとはしない(この事に疑問をもってもらうために本書を執筆したそうだ)。
     すでに何度か紙面で報じられているが、東日本大震災の被災地ではパチンコが盛況なようで、そのことを懸念した地元の方からのメールも記載されている。実際に筆者が足を運んだところ、満席状態なのは本当のようで、インタビューをすると「やることがないからね」と、心身共に疲弊した様子で、どの人も楽しんでやっている様子は無い。辛く悲しい現実に直面したときに現実から逃れようとするのは自然なことだが、漁師はツキの影響を受けることもあってかパチンコ好きな人が多く、かつ地方は娯楽が限られておりパチンコにハマりやすい事が一因であると、筆者は考察している。

     二章は「パチンコ依存症は病気である」ということを読者に知ってもらうために、筆者のもとに寄せられたメールを紹介しながら説明を行なっている。
     冒頭の藤川大祐氏の寄稿を引用して「パチンコへの依存は子供のメディア依存と似ている。経済的に余裕のない人は娯楽の選択肢が限られる」と述べており(原文では「家庭や学力に恵まれない子はメディアに依存しやすい」となっている)、孤独感や「やることが無い」人が依存しやすいのではないかと考えている。
     筆者はチャンネル桜という番組で、元パチンコ店の部長にインタビューを行い、「売上金額は遠隔操作で調節されており、釘や回転率はあまり関係ない」ことを明かしており、目が覚めたという感謝のメールを受け取ったことも記載されている(この動画には多くのコメントがされているが、「台を操作できるようにするのに金がかかりすぎてメリットが無い」「でたらめを言うな」といったものも散見される。手の内をばらされて都合が悪いメーカー、自覚のない依存症者がコメントしているというのは考えすぎであろうか)。
     章の終わりの方では、パチンコ依存から立ち直った二人を例に文化や教育に関する政策の重要性と、じつはパチンコ業者も2003年度の全日本遊技事業協同組合連合会の顧客対象アンケートで、依存症の実態を把握していることが明かされている。
     
     三章は章タイトル通り、依存症を生み出す社会構造についての説明である。
     パチンコには、禁止されているはずの「サブリミナル効果」を利用した特許(特許番号第3029562号「弾球遊技機」。1995年出願・2000年に受理)が使用されていると筆者は述べている。大当たりの絵柄を「暗示図柄」として挿入することで、客のゲームに対する興味を起こさせる事を目的としているという(私が検索した限りではこの特許は見つからなかったのだが、探し方が悪かったのだろうか)。
     二章で「業界も依存症の実態を把握している」という記述があったように、顧客がひと月に「6〜10万円」使っており、「金銭的な負担がかかり過ぎるハイリスク・ハイリターンなもの」という自覚はあるようだが、「過度にのめり込むのは本人の問題だ」「『お金』の面だけがクローズアップされ、メーカーには非がない様に取り上げられる。店だけが悪いのでは無い」と、互いに責任を押し付けあっているようである。
     なぜこの状況が放置されているのかというと、警察と政治家がパチンコ業界と密接なつながりがあるためである。
     パチンコ産業の監督官庁は国家公安委員会と警察庁、都道府県警察レベルでパチンコホールを所管しているのは生活安全課であり、業界関連団体には多くの天下り指定席がある。その代表が遊技機の型式試験業務を行う「財団法人保安電子通信技術協会」である。この協会がきちんと機能していれば、被害は抑えられたのではと筆者は考えている(この他に「財団法人社会安全研究財団」がある)。
     「暴力団の排除・プリペイドカードの導入で会計のクリーンさをアピールできた」、けれども「(本書を引用して)高額の軍資金が無ければ出来ない状況は賭博以外の何者でもない、三店方式を警察は黙認しているという批判に耳を傾ける必要がある」と、事態は把握しているようだが、自分たちの実績を称えるだけでなく、苦しむ客のことを考えて行動してくれているのだろうか。
     が、それ以上に腹立たしいのは「政治分野アドバイザー」という名で活躍する議員の存在だ。前政権の首相:菅直人を始め、換金の合法化・業界企業の株式上場実現の為にパチンコ・チェーンストア境界に手を貸している議員がいるとは、有権者に頭を下げてもらいたいものである。なお、本書で取り上げられている主な議員は山岡賢次(元消費者行政担当大臣:この問題を追求したのは大門実紀史議員)、中川正春(「パチンコ店の託児所が少子化対策の突破口」発言)、鹿野道彦、前田武志、古川元久などである。パチンコ業界から入ってくる金がよほど魅力的なのだろう。彼らは依存症の怖さを知った上でカジノの解禁に踏み切ろうとしているのだろうか。 

     四章は、パチンコと各々の方法で戦う人々の話である。
     石原元都知事の「パチンコ不要発言」を受け、大きなショックを受けた元パチンコ経営者:一条高生氏は、暴利を貪る大手のやり方とは違う、客と社員の距離を大切にし、安心して楽しめるよう0.4円パチンコを導入して楽しんでもらうことを優先した店作りをした(現在は廃業)。
     個人的には、「1円パチンコ」などの低い金額から始められるものは心理的なハードルを下げるための口実であり、長い目で見れば客を苦しませることになると思っているのだが、そこは考え方の違いだろうか。メーカーが新台を出すたびに入れ替えの必要が生じてしまい、元を取り戻すためにヘビーユーザーを作ろうとしている、地元の警察官がやって来ると何らかの「もの」を持たせるという裏事情も明かしている。
     ギャンブル依存症者は多額の軍資金を消費者金融から借りて、返済に困っていることがあり、それを援助するための「全国クレジット・サラ金問題対策協議会」、「依存症問題対策全国会議」が全国で行われている。また、パチンコの全廃に成功した韓国から知識人を招き「韓国におけるギャンブル依存症の過去、現在、そして未来」という講演会を開いているという。依存症である事が負い目となり相談できない、という人のために、依存症体験者が設立した「JAGO」というNPOもあるという。
     章の終わりでは、パチンコの実態とリスクを大きく報道しようとしないマスコミを控えめに糾弾している。

     五章はパチンコ業界とマスコミの癒着についてである。
     巨額の広告費に目がくらむ一方で、依存症の実態はあまり報道しようとしない。いかにパチンコの為に人格や労働意欲が低下し、社会に悪影響を及ぼしているかを知らしめようとしない。
     顕著な例が2011年6月7日の朝日新聞の朝刊で、パチンコの負の側面をあまり載せずに「パチンコばかりバッシングするな」と主張するという馬鹿げた記事が載ったことだろう。新聞をとる人が減っている為に、広告費を多く払ってくれるパチンコ業界に頭が上がらないのだろうか。この記事のインタビューに答えたPOKKA吉田氏(パチンコ業界のジャーナリスト)を「パチンコ業界をジャーナリズム精神を発揮して世に伝えるというのなら、依存症・被害について深堀して欲しい」と、筆者は綴っている。
     それにしても「被災地のパチンコ店はコミュニティーの拠点」とは酷い誉めそやし方である。「美談が全くないわけではないだろう」と一応筆者は理解しているが、一時の苦しみを忘れたいが為に来ている客から、被災地支援の募金さえも吸い上げる事は美談とは言いがたいのではないだろうか。

     20年で540兆円がパチンコに消えた。度々使われる言葉「失われた10年(20年)」の裏にこの事実があるかと思うと恐ろしい。本当に政治家や警察には危機意識を持って欲しいと思う。

     
    自分用キーワード
    チャンネル桜:「パチンコで壊れる日本」 カードリーダー(パチンコ) 名古屋地裁国家賠償訴訟(2009年12月、パチンコのCR問題) 依存症問題対策全国会議 藤川大祐『本当に怖い「ケータイ依存」から我が子を救う「親と子のルール」』 メダルチギ(韓国) 風営法第4条 政治分野アドバイザー 全国クレジット・サラ金問題対策協議会 依存症問題対策全国会議 NIY(ニュースペーパー・イン・エデュケーション) ハン・ミョンスク首相「射幸性の高いゲーム機が全国に拡大し。庶民の生活と経済に深刻な被害をもたらした」 ノーバヤガゼータ(ロシア『新しい新聞』)  

  • ちょっと筆者の主観が強いがパチンコ業界の現状が良く分かった。

著者プロフィール

1940年、秋田県生まれ。
 トヨタ自動車のデーラーに19年勤務。メカニック、営業マン、営業所長を経験。営業マン13年で新車を1200台販売。独立後、自動車販売会社を経営するも3年で撤退。その後、損保の代理店を経営。選手として出場したスポーツは、スキー、ボクシングなど。ラリーにも出場。
 著書に『タクシードライバーほど素敵な商売はない』(エール出版)、『タクシードライバー千夜一夜物語』(K&Kプレス)、『失敗から学ぶ』『TAXI・ニューヨーク』(以上、花伝社)、『打ったらハマる パチンコの罠[PART1]』『打ったらハマる パチンコの罠(PART2)』(以上、社会批評社)、1998年夕刊フジに連載を執筆。
 http://www.wakamiyaken.jp

「2010年 『増補 打ったらハマる パチンコの罠(PART1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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