発達障害と呼ばないで (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344982680

作品紹介・あらすじ

「発達障害」と診断されるケースが急増している。子どもだけでなく、大人もだ。児童のADHDの有病率は六%に達し、学習障害は一〇%に及ぶ。なぜ猛烈な勢いで増えているのか。一方で「発達障害」と診断されながら、実際は「愛着障害」であるケースが数多く見過ごされている。根本的な手当てがなされないため、症状をこじらせるケースも少なくない。「発達障害」と似て非なる「愛着障害」とは、いったい何なのか?本当に必要な対処とは?「発達障害」は現在、大きな岐路にある。その急増が意味する真のメッセージを明らかにする、衝撃と希望の書。

感想・レビュー・書評

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  • 前半はどちらかというと型通りに発達障害の解説がなされているのだけれど、後半はこれぞ岡田先生とでもいうべき鋭い問題提起がされています。10年経った今でも色褪せてないどころか、正鵠を射ている感があります。
    まず、発達障害というより「非定型発達」とした方が妥当であるとの考えがあります。人はそれぞれ発達の早さが異なるだけで障害ではない場合も多々あるからです。現代の日本では五科目中心の大学志向が中心です。「非定型発達」の子どもについて、大学は緩いからそこで社会性を訓練してから就職するのもよいとする向きがあります。向き不向き、特性によってはもっと早期に職業教育も選べるようにする選択肢もあった方がよいと思います。たしかに勉強は大切だけど社会で使わないことの方が多いという人もいます。また、ネットやメディアが脳の発達を止め、ADHDや自閉症スペクトラムの症状を呈することに早くから警鐘を鳴らしています。現在スマホ依存でそうした症状がみられる研究も出てきています。
    「愛着」に関する重要性も変わらず述べられています。とにかく付箋でいっぱいになってしまったので語り尽くせませんが、読み返して自分の中でまとめようと思います。

  • 勉強用としてメモをとりながら読む。なんでも発達障害として片付けてしまうことに疑問だったが、非定型発達との呼び方に変えるだけで、どれだけの子どもが健やかに育てるだろうと思う。改めて子どもを育てることの大変さを思う。求められたら応答する。過剰でも不足でもなく、与える。簡単なことなのに、とても難しい。

  • 発達障害は生物学的基盤によって起こる中枢神経の機能的発達の障害とされ、遺伝要因が強いことがわかっている。

    しかし、遺伝要因が強いはずの「発達障害」と診断されるケースが近年急増している
    その背景には、第二の遺伝子とも呼ばれる"愛着スタイル"が関与していると考えられる

    生育史上の問題は、心理学的な問題だけでなく、生物学的、生理学的なレベルでも影響を及ぼしていることがわかってきた
    ここで引き起こされる症状が、発達障害の症状に類似するのだ

    そのため、専門家は発達障害と愛着障害を見極める必要がある

    ところで、「障害」という診断は子どもにくだしてもいいのか。
    前向きに乗り越えれる子どもがいる一方で、強い自己否定にとらわれる子どももいる。

    また養育要因があることについても専門家は慎重に扱わなければいけない。
    不用意に養育者に責任を求めると、子どもだけでなく親までもが強い自責の念に囚われてしまうからだ

    そのことを踏まえ、周囲の大人が「発達障害」と呼ばれる子どもたちの特性を見極め、そこを伸ばしていけるような環境をサポートできるのが理想であろう

    ✏安全基地として機能しているかどうかを見分けるには、「何でも話せる人がいますか?」と尋ねてみれば良い。
    そこで親や配偶者など身近な家族を挙げる人は、安全基地がうまく機能している人である。
    それに対して、誰もいないとか、家族以外の友人やメル友しか心を打ち明けられないという場合、赤信号だ。

  • 最近よく耳にする「発達障害」という言葉だが、この本はタイトルが気になり読んでみた。

    この本では発達障害の種類や症状などについて詳しく書かれているところが
    ほとんどないので知識がない方は事前に入門書的なものを1冊読んでおいた方が
    いいかもしれない。

    近年、発達障害と診断される子どもや大人が増えていると言われているが
    子どもが生まれてからすぐの母親の育児態度、心理状態、家庭環境、
    両親の仲が悪かったりすると発達障害に似た症状や問題行動が出ることがあるという。
    このことを知っただけでも読んだ価値があると思うが、筆者は安易に「障害」と
    診断しすぎることに警鐘を鳴らしており、幼いうちなら親の気遣いや家庭環境の改善で
    症状や問題行動が落ち着くこともあるというのだ。

    また日本型教育の問題点やどんな気質や環境で発達障害やそれに似た症状が出やすいか、
    また親が子に関わらな過ぎておこる愛着障害(発達障害に症状が似ている)
    についても触れられており、教育関係者やお子さんがいる方、これから
    お父さんお母さんになる方にすすめたいと思う。

    中学、高校生以上の子どもの問題行動にも的確なアドバイスもされており、
    読字障害のトム・クルーズや社会面で発達が遅れていたビル・ゲイツを例にあげ
    様々な問題に対する対処法や生活の仕方、子どもの養育だけでなく
    オトナの人間関係のヒントにもなる部分もあり興味深く読めた。

  • 読み方をまちがえると、親のせいになってしまうので…私もそうとってしまうので、最近のこの著者の愛着障害系ははずしていたけど、
    なるほどとは思う。
    文章もわかりやすいし読みやすいし、例もあげてるし。

    うまく浸透されるといいなあと思う。
    私は今からだれかたくさんの人たちに、たくさんだっこしてもらおうかな(笑)

  • (ブクログで、いいコメントを見かけたので、読んでみたいなと思った一冊。)

  • やっぱり環境って大事。もっと知りたい。

  • 悩みに名前がつくと安心するということは多いのかもしれないと思った。のどが痛いのが風邪だとわかったり、足し算が苦手で数学がわからないと気付いたり、拾った動物がタヌキだとわかったり、自分が人間だとわかると安心するのかもしれない…。

  • 発達障害と比較しながら、愛着障害についてまとめられている。障害の遺伝率や愛着スタイルの臨界期など具体的な数値とともに載せられており、分かりやすい。親と教師の子どもに対する関わり方について、大切にすべきことは共通する部分が多いと感じた。

    ・発達障害が短期間に増えている理由は、定義の拡張+環境変化によるもの。
    ・双生児研究による遺伝率
    自閉症9割 スペクトラム7〜8割 IQ7割弱
    読字2〜5割強(飲酒や喫煙でリスク1.6倍増)
    ADHD6〜7割 *体重の遺伝率も同様
    愛着障害2.5割程度
    ・親のうつ→2次的に愛着障害につながる。
    ・愛着の臨界期は1歳半頃
    ・1歳未満で預ける→愛着や発達面で影響大
    ⭐︎愛着は量より質 子ども視点からどうか
    ・抵抗→絶望→脱愛着
    ・愛着=生理的な現象+大人の愛着スタイル反映
     +スキンシップや授乳など…
    ・遺伝要因も少しは関係している。
    ・愛着は社会性、知的発達もバックアップしている
    ・1歳半時の愛着パターンは7割の大人が同傾向
    ・愛着パターンは18歳頃にスタイルとして固定
    ・幼少時の可愛がり度が生涯にわたって影響
    ・オキシトシンシステム
    ・アジア人種は母親の接し方による影響大
    ・自閉症スペクトラムは上位階層に多い。
    ・ADHDは貧困層に多い。
    ・画面控えめ+適度な不足状態の方が意欲増
    ・安定愛着を育むために…感受性+応答性

  • 「発達障害」と診断される人が急増しているのは、発達障害と似た症状を示す「愛着障害」の人を誤って発達障害と診断しているケースが多いからだ、と主張している本。愛着障害ならば、愛着を作り直すことで症状は大きく改善するという。

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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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