怖い俳句 (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎
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  • / ISBN・EAN: 9784344982697

感想・レビュー・書評

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  • そういえば最近、
    (怖い思いをした事が無いな・・・。)

    本書を手にとりながら、そう思った。

    夜中のトイレも
    母親の小言も
    ホラー映画の中のゾンビにも

    ビビらなくなったね。私…。

    ふと、
    (怖いもの…

    どこへ消えたんだろう?何時の間にいなくなっちゃったんだろう?)

    無敵の私は、ほんのちょっとだけ寂しくなり、

    歌人達が一体何を怖れているのかが、
    突然気になりだした。


    ねぎを切る うしろに廊下 続きけり

    戦争が 廊下の奥に 立っていた

    口開けぬ 蜆(しじみ)  死んでいる 


    ぞくっ、とする。

    私には全くみえない

    亡霊が 歌人の目には  見えている    おそまつ。

    • MOTOさん
      九月猫さんへ

      こんにちわ。 コメントありがとうございます♪

      そういえば、この3作品、
      特にゾクッときた句を適当に並べただけだったのですが...
      九月猫さんへ

      こんにちわ。 コメントありがとうございます♪

      そういえば、この3作品、
      特にゾクッときた句を適当に並べただけだったのですが、
      あれ?
      いつの間にか3句一体となって、恐怖倍増してませんか?ぶるぶる。(どなたの仕業だろう?^^;)

      無敵ですが、たった17文字にやられました。

      >紙面より 出てはならぬと 本を閉じ (^^;
      2013/03/24
    • 九月猫さん
      MOTOさん、おはようございます♪

      あああ、本当だぁっ!
      MOTOさんのレビューを読んだときには
      ちゃんと一句ずつわけて読んでいた...
      MOTOさん、おはようございます♪

      あああ、本当だぁっ!
      MOTOさんのレビューを読んだときには
      ちゃんと一句ずつわけて読んでいたのに、
      コメント書くときにはなぜか繋がってるものと思ってます・・・。

      >どなたの仕業だろう?^^;)

      ひいぃ。
      コワイのでわたしのボケだということにしておいてくださいぃ(T_T)
      (いやそれはそれで、違うイミでコワイですが;)
      2013/03/24
    • MOTOさん
      九月猫さん こんばんわ♪

      いやいや~
      確かに感想書いた時は、
      ちゃんと一句ずつわけていたはずなのに、
      改めて読んだら、なぜか繋がっていた、...
      九月猫さん こんばんわ♪

      いやいや~
      確かに感想書いた時は、
      ちゃんと一句ずつわけていたはずなのに、
      改めて読んだら、なぜか繋がっていた、ってのも…

      いやぁぁぁ~
      コワいですねっ!
      お互い、蜆の味噌汁のねぎ刻むときは・・・
      せいぜい背後に気をつけましょう・・・

      (…て、余計コワいっつーの♪^^;)



      2013/03/24
  • 世界最短の詩である俳句。

    その俳句の世界で、誰もがその名を知る「俳聖」松尾芭蕉は
    「言ひおほせて何かある」(すべてを言いつくしてしまって、何の妙味があるだろうか)
    と言っている。
    (この言葉は本書の中でも紹介されている)

    要するに「チラリズム」

    ただ、俳句で「怪奇」や「恐怖」を表現した場合、短いだけに、かえって想像が掻き立てられてしまう。
    本書では、そんな怖い俳句を紹介している。

    その怖さの種類にも
    「幽霊画を見たり、怪談話を聞いているような怖さ」
    「作者自身、もしくは作者がおかれている状況が怖い」
    「作者が体験したことが怖い」
    といったものがある。

    「幽霊画を見たり、怪談話を聞いているような怖さ」は比較的、分かりやすい。(紹介されている句の数も最も多い)
    なにより、所詮「絵」や「話」なので、実際に危害を加えてくるようなものではないという、ある種の「安心感」もある。

    そのような句の中で印象に残った句としては次のようなものがある。

    稲づまやかほ(顔)のところが薄(すすき)の穂  松尾芭蕉
      骸骨たちが能を舞う絵に感じ入っての句。骸骨の幽霊たちが踊り狂うさまを偶然、見てしまったかのよう。

    狐火や髑髏に雨のたまる夜に
    公達(きんだち)に狐化けたり宵の春
    巫女(かんなぎ)に狐恋する夜寒かな
      すべて与謝蕪村の句。怖い句ではあるが、同時に絵になる感じがする。

    流燈(りゅうとう)や一つにはかにさかのぼる  飯田蛇笏
      怪奇現象?

    蛍死す風にひとすぢ死のにほひ  山口誓子
      嗅覚にうったえる、というのはこの句だけ。「死のにほひ」がどんなものか分かりませんが、嗅げば、それと分かるものなのだろう

    百物語果てて点せば不思議な空席  内藤吐天
      さきほどまで百物語をしていたメンバーの一人こそ実は死者そのものだったのか・・・。
      「山小屋の四人」の怪談を連想させる。

    水を、水を 水の中より手がそよぎ  坂戸淳夫
      水の中からのびてくる手は「助け」を求めているのか、「仲間」を増やそうとしているのか・・・。

    海避けて裏道とほる死者の夏  大屋達治
      海水浴客でごったがえす海沿いの表通りから一歩、裏通りに入ると表の喧騒がウソのような静けさ。
      死者が歩くにはもってこいの環境なのだろう。

    隙間より雛の右目の見えてをり  小豆澤裕子
      ホラー映画で隙間から外の様子を覗いたら、邪悪な者もその隙間から中の様子を覗いていた、というシーンを連想させる。

    「作者自身、もしくは作者がおかれている状況が怖い」という句(自由律詩が多い)は紹介されている数は少ないものの、かなりゾッとするものがある。

    皿皿皿皿皿血皿皿皿皿  関悦史
      よく見ると「皿」の羅列の中に、形のよく似た「血」が混ざっている。
      いまだに意味不明だが、「皿」という日常品の中に突然「血」が出てくる怖さがある。

    ホントニ死ヌトキハデンワヲカケマセン 津田清子
      文句なしで怖い・・・。

    本書の中で一番、怖かったのが「作者が体験したことが怖い」という句。

    戦争が廊下の奥に立つてゐた   渡邊白泉
      廊下の奥に立っていた「戦争」は人型で、ずんぐりむっくりの体型、全身真っ黒、顔は大きな口だけの異形の者(推測)
      「冷酷無比」ではあるものの、「邪気」はない気がする。

    この作者の他の句も怖い。

    繃帯を巻かれ巨大な兵となる
    赤く蒼く黄色く黒く戦死せり
    眼をひらき地に腹這ひて戦死せり 
      どれも「この世ならぬ者」が関わっておらず、戦場で実際にありそうな光景なので、よけいに恐ろしい。

    結局、一番怖いのは「この世ならぬ者」ではなく、「生きている人間」なのだろう。

  • 寺山の歌集に衝撃。
    しかし頭の悪い高校生ゆえ季語を知らない。
    切れ字もぴんとこず。
    とはいえ川柳というと言葉が低俗な印象。
    やっぱり俳句より短歌だ、
    俳句ではわずかに山頭火くらいだな、
    とまったく無駄なこだわりを持ち続けていたが、
    まったくの誤りであると眼を見開かされた。

    言葉少なく指し示すことの豊饒さ。

    ホントニ死ヌトキハデンワヲカケマセン

  • 【怖い~を読む―2】
    いそうでいない…とか、見えそうで見えない…
    ってのが、「怖さ」を引き起こすんだろうなぁ。
    俳句は17音…すべてを語るには短すぎる…
    わかりそうでわからない…う~む、やっぱり怖い…

    本書にもあるように…
    「鑑賞する主体によって、感じる怖さはおのずと違ってきます。」
    …というわけで、ボクが怖いぃ~と思ったのは、
    こんな句でした…絞りに絞って10句…

      稲妻に道きく女はだしかな            泉鏡花

      戦争が廊下の奥に立つてゐた         渡邊白泉

      葱を切るうしろに廊下つづきけり        下村槐多

      うしろとは死ぬまでうしろ浮き氷         八田木枯

      不安な世代完全な形で死ぬ電球        上月章

      水を、水を、水の中より手がそよぎ       坂戸淳夫

      呪う人は好きな人なり紅芙蓉           長谷川かな女

      六月の皿に盛りたる人の顔            栗林千津

      きみのからだはもはや蠅からしか見えぬ    中烏健二

      かあさんはぼくのぬけがらななかまど      佐藤成之

    怖いもの見たさで一気に読んじゃったけど、
    ふと気がつけば、この本…俳句の世界を概観できるように
    なっています…そして、人の心に蠢く闇のありようも…まさに、
    本書で語られることのすべてがある世が「怖い」のかも…

  • 似たような感じで先行ヒットした桐生操『ほんとうは怖いグリム童話』や中野京子『怖い絵』みたいな「あの有名な作品に実はこんな怖い意味が…」というのとは違うが、俳句にもいろんな味わいの作品があるんだと知ることができて面白かった。

  • 「俳句の怖さは、その決定的な短さに由来します。」六月の 皿に盛りたる 人の顔/栗林千津, 鏡ヨリ 見知ラヌ我ノ 迫リ来ル/関悦史―おぞましくも美しい俳句の世界へようこそ【中央館3F-文庫・新書 080/GE/268】

  • 買ってから、あれーまた怖いの買っちゃったよー。なぜ、わたしは怖いものに惹かれるのかなーとしみじみ考えながら読みました。芭蕉から、現代までの怖い俳句の数々。ひとつひとつ読んでいくと、これはあんまり怖くない、わぁ!これはゾッとするなぁ。と自分の嗜好がわかってきます。説明が付与されない不安、分からなさ、ぽんと放り出された不条理。そういった怖さに俳句の形式はぴったりです。

  • まえがき冒頭は
      俳句は世界最短の詩です。
    とのこと

    俳句・・・何気にと手にしたら、結構はまりました
    はっきりくっきりこわい句や、そこはかとなくこわい句の数々
    芭蕉から、戦前、戦後、女流、自由律、現代まで、
    多くの俳人の作から著者が採ったものを紹介
    この最短の詩から、背景や意味を読みとるのは、
    慣れていないからなかなかむつかしかったけど
    解説のおかげで楽しめました
    また、読んでみたくなりました








    稲づまやかほのところが薄の穂  松尾芭蕉

    稲妻に道きく女ははだしかな    泉鏡花

    ホントニ死ヌトキハデンワヲカケマセン   津田清子

    口あけぬ蜆死んでゐる        尾崎放哉

    無人駅にころがるつぶれたランドセルの記憶   種田スガル

  • 「ぼんぼん彩句」のあとがきで、
    宮部みゆきがこの本を読んで俳句の世界に魅せられたと書いてあったので。

    面白かった。
    俳句と言えば学校で習った有名どころしか知らなかったので、
    こんな俳句もあるんだ、というのが正直な感想。
    だが、紹介されている俳句の数が多く、
    怖くて不気味で意味不明なこともあって、かなりの消化不良。

    それと、著者がたとえにちょくちょく絵画を出してきて、
    それを調べるのに忙しい。

    私が怖かったのは、
    稲妻に道きく女はだしかな 泉鏡花

    夕焼けや
    みな殺されて

    歩きだす

    岩片仁次

    実際に溺れた同僚を助けて水死した河本緑石の俳句も怖かった。
    死んで俺が水の中にすんでる夢だつた

    あと面白かったのは、
    府中の猫はこれは嘘だがぜんぶ片目 前島篤志

  • 再読。六年前のわたしの俳句入門書。好きな句はほとんど変わらず。見えるものと観えているものの差異と齟齬に美しさを感じて陶酔する。周辺が真空みたいな、真芯だけをくりぬいたり、切り取ったりしている十七音の世界に決定的な破局が訪れることはない。けれどもひたひたと忍び寄る足音がきこえてくるのだ。振り返ると、少し距離を開けた場所に「何者か」が佇んでいる。近づいてくる気配はない。遠ざかる気配もない。また歩きだすと、「それ」もついてくる。目的はわからない。その繰り返し。そしてその「わからない」ということが、いちばん怖い。

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著者プロフィール

1960年、三重県生まれ。
早稲田大学在学中に幻想文学会に参加、分科会の幻想短歌会を主宰。
1987年、短篇集『地底の鰐、天上の蛇』(幻想文学会出版局)でささやかにデビュー。
1989年、第一歌集『日蝕の鷹、月蝕の蛇』(同上)を刊行。
平成とともに俳句に転向、「豈」同人。句集に『アンドロイド情歌』『悪魔の句集』『怪奇館』など。俳句関連書に『怖い俳句』『元気が出る俳句』『猫俳句パラダイス』などがある。
1998年より専業作家。ホラー、ミステリー、幻想小説など多彩な作品を発表。近年は時代小説の文庫書き下ろしを多く手がけ、オリジナル著書数は130冊を超える。
趣味はマラソン、トライアスロン、囲碁・将棋、油絵、鉄道など。

ホームページ「weird world 3 倉阪鬼一郎の怪しい世界」
http://krany.jugem.jp/

「2017年 『世界の終わり/始まり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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