日本の地下水が危ない (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344982956

作品紹介・あらすじ

中国資本による日本の森林買収が増え、多くの自治体が「狙いは水資源ではないか」と警戒を強めている。日本の法律では、いったん土地を買われたら、地下水使用を制限できない。現在、淡水は世界レベルで不足し、外国資本による地下水独占が住民の生活を脅かすケースが各地で多発。同じ事態が日本で起こらない保証はまったくない。さらには、ペットボトル水需要の急増、森林・水田の荒廃など、国内事情も深刻化しており、このままでは日本の地下水が枯渇する!危機的現状と自治体の必死の防衛策を緊急レポート。

感想・レビュー・書評

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  • 水が無くなるということは考えたことがなかった。今のままでは、地下水も枯渇してしまう。取水を一定程度制限し、涵養しなければならない。それも、地域の実情に合ったかたちで、異なる利害を調整しながら。水を守ることがいかに大切で難しいか、分かりやすい文章で、とてもよく理解できた。好著。

  • 外国資本による、日本の地下水の買い占めの話で始まったので、てっきりそういう内容の本だと思っていました。
    が、読み進めると、「そもそも地下水とは何ぞや」といったとても基本的なことから、今後の地下水の保全のための提案まで、地下水全般を扱ったとてもいい本でした。

    正直言って、これまで地下水についてちゃんと考えたことがなかったので、地下水について知る、とてもいいきっかけになりました。

    日本の国土の特徴や風土にも触れられていて、内容の濃い本だと思います。

  • チェック項目17箇所。驚くべきことに、日本には地下水に関する法律がない、数年前から法案が準備されてはいるが、各省庁からの異論、企業の反発などで遅れている。「水どころ」として知られる熊本市周辺地域の地下水位(2010年)は、20年前と比べて約5メートル下がった、使用料が75%に減ったにもかかわらず、である、熊本県の担当者は、「毎日使っている水がゆっくりと減りはじめ、何の手も打たなければ、将来的には枯渇してしまうことがわかった」と、深刻な表情を浮かべる。本書では、水源地をめぐるさまざまな動きをレポートしていく、海外では水源地の争奪戦が起きているが、その背景には水不足がある。森林を取得した場合、保安林等の法的規制がかかっていなければ、所有者は比較的自由に開発ができる、木を伐採してもよいし、温泉を掘っても地下水を汲み上げてもいい、と考えられている、つまり、土地を買う=水を買う。たとえば、コカ・コーラ社がインドのケーララ州で、水をペットボトルに詰める工場を稼働させたが、その取水量は1000~1500トンと大規模で、地元は日常的に水不足に陥るようになった、住民は「工場の進出で地下水が枯渇し、水質も悪化した」と抗議したが、コカ・コーラ社は「工場で使う地下水は、村の井戸と水脈が違う。訴えは事実無根」と主張した。中国や香港では土地の所有が認められていないため、将来の有事に備えて海外不動産に分散投資する、現在、日本の林地価格は、1ヘクタール50万円程度と非常に安く、利用目的によっては「お買い得な物件」なのである。日本の軟水では味の差異化はむずかしい、そうした状況ではブランド力のある水が売れる、今後、新規ブランドの立ち上げは相当に難易度が高いと言える。明治時代には炭酸水が国民的なブームとなった、当時、大流行したコレラの予防にガス入りの水が効くと考えられていたのだ、きっとメーカーがコレラ予防に効くと宣伝したのだろう、いまなら薬事法違反である。外国資本が日本の水をねらうなら、日本のペットボトル水メーカーや宅配水業者を買収すればいいのである、水源地を取得しても良質で豊富な地下水脈に当たるとは限らない、ならばすでに良質で豊富な水の利用権をもっている企業を買いとったほうが手っ取り早い。水は生活の基本インフラなので安いほうがいい、水が不足してくると、水を遠方から取り寄せなくてはならない、汚れた水をきれいにしなくてはならない、そうなるとコストが発生し、水の価格は上がる、水不足のなかで、高い水でも売れるようになる。民法207条の「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」という規定が適用されている、つまり、法的には土地の所有者に、その地下に賦存する地下水の利用権があると解釈されている。外国人が土地を所有できる国はアジアでは珍しい、共産圏である中国、ベトナムなどは外国人の土地所有を認めていないし、韓国、インド、シンガポールなどでは土地の所有は可能だが、いずれも条件つきとなる、でも、日本では自由に所有できる。「ごはん1杯分のコメを育てると1500リットルの水を涵養できる」。コメを食べなくなったしわ寄せは農家を直撃する、農家はコメづくりをやめ、田んぼは減っていく、それが日本の地下水を減らすことにつながる。

  • 中国などによる土地の取得も問題だが、それ以上に自分たちの生活の仕方に問題があることに気づかされた。危機感を持ち、それを共有するためにも多くの方に読んで欲しい

  • 世界でボトル詰め飲料水の需要が増えること、特に中国では水不足の深刻化がさらに進むと予想されることから、日本の水源エリア森林を中国資本などが買いあさり、水を「乱獲」するのではないか、と警鐘を鳴らす。現在の法規制は土地所有者が周囲環境への影響を無視して地下水を濫費することを防ぎえない。適切な規制の確立が急務であると。また、全体として節水できる生活方法、技術の浸透も併せて必要である。

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著者プロフィール

学習院大学文学部卒業。出版社勤務の後、ジャーナリストとして独立。アクアスフィア代表。国内外の水問題とその解決方法を取材し、発信。国や自治体への水対策の提言、子どもや一般市民を対象とする講演活動も行う。現在、参議院第一特別調査室客員調査員(水問題)、東京学芸大学客員准教授、NPO法人地域水道支援センター理事、日本水フォーラム節水リーダー、ウォーターエイドジャパン理事。著書に『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)『水は誰のものか』(イマジン出版)『67億人の水』(日本経済新聞出版社)ほか多数。

「2014年 『通読できてよくわかる 水の科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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