放射能は取り除ける 本当に役立つ除染の科学 (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983106

作品紹介・あらすじ

福島原発事故による放射能汚染で、今も16万人が避難生活を続けている。除染活動については、「お金がかかるだけで効果がない」と悲観的な意見が少なくない。たしかに今回の事故では、史上かつてない膨大な量の放射性物質が放出された。しかし最新の科学的知見、現場でのノウハウの蓄積、そして日本の環境技術をもってすれば、美しい国土を取り戻すことは不可能ではない。森・水・土をいかに除染し、生活を再建するか。怒りの国会演説で多くの日本人の心を揺さぶった著者が、ふたたび渾身の提言。

感想・レビュー・書評

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  • 2011年7月27日の衆院厚生労働委員会での参考人としての発言「それから先程から食品検査と言われていますが、ゲルマニウムカウンターというのでなしに、今日ではもっとイメージングベースの測定器が、はるかにたくさん半導体で開発されています。なぜ政府はそれを全面的に応用してやろうとして、全国に作るためにお金を使わないのか。3ヶ月経ってそのようなことが全く行われていないことに私は満身の怒りを表明します。」が反響を呼びネイチャーの選ぶ「科学に影響を与えた今年の10人」に選ばれた児玉氏の「内部被曝の真実」の続編とも言えるのが本書。

    食品の検査体制はその後進み、2012年秋には福島のコメ袋の全袋検査が可能となり1000万袋を越えるコメが検査され基準値の100ベクレル/KG越えが71袋、50ベクレル超が2066袋(県のHPでは612点)発見された。H26の厚生省が取りまとめる公表検査結果の10/5発表では全国で17万件弱の報告があげられ、野生の産物で260件、栽培した物で12件が基準値を越えた。東北以外でも千葉、長野、山梨、静岡などでも発見されており、この本にも紹介されているようにキノコや川魚などが比較的汚染が続いており、イノシシ、シカ、クマなどの肉、カレイなどの魚などもある。栽培品では福島のあんぽ柿やシイタケなど。

    福島のコメは県のHPで発表されていて2013年はイメージングのスクリーニングでは11百万袋中99.9%が検出限界以下、25-50が6479、51-75が224、76-100が1。さらに詳細検査に進んだ692点中、基準値の100超は28、76-100は322、51−75が269と検査は機能している。今年の分はまだ3百万袋ほどでだがスクリーニングで50ベクレル/KGを越えるのは2袋と着実にコメの汚染は低下している。

    汚染の原因物質はほぼセシウム137で事故からすぐの間は移動が激しく、最初に気化したセシウムが塵に付着し、雨や雪とともに地表に落ちた。7割は山林で当初は水に溶けて流れ農産物へ移行していったが、いったん粘土中に取り込まれたセシウムは簡単には溶け出さないので川底やダム、水田などにたまり最終的には海底に沈殿しその後徐々に拡散していく。大気圏核実験が盛んだった1964年上越では土壌中から100ベクレル/KGのセシウムが検出され、玄米で10ベクレル、精米で5ベクレルの汚染が全国で報告された。その後土壌の放射線量は17年ほどで半減していく。水田の汚染とコメの汚染は単純には相関がなく、5000ベクレル/KGの水田でもコメの汚染がないケースも有ればもっと線量が少なくても汚染濃度の高いコメもある。水田中の粘土からはコメには移行せず、落ち葉や雑草が分解した水溶性のセシウムが取り込まれるからのようだ。

    除染で空間線量を下げるためにはある程度の面積をまとめてやらないと効果が出にくい。γ線は60mほど飛ぶので線量が高いところだけを除染しても周囲からの線量が減らないからだ。幼稚園や小学校などで表土を5センチはぎ取ると効果は顕著に現れている。内部汚染を防ぐには砂埃を吸い込まないようにする工夫が要り、例えば校庭を芝生にする様な取り組みも進んでいる。

    前作同様内部被曝に関してはLNT仮説の不備を厳しく指摘している。DNAが傷ついても修復するので低線量被爆は健康に影響しないというのがLNT仮説で、おそらくその通りなのだがよく知られたヨウ素の場合甲状腺にたまり、幼児や子供ではさらに濃縮されやすい。最近の研究では修復が上手くいかない個所が発見されており、また色素性乾皮症(紫外線過敏)という遺伝子の修復に異常があり影響を受けやすい人が500人に一人いる。そこまで含めて考えると閾値は世間で言われているよりかなり低く見積もる必要が有り、また疫学的に統計を取るのも難しいのでここまで下げれば誰に対しても安全というラインはなかなか引けない。LNT仮説はある程度の被害を受け入れたものだと言う点に注意が必要なのだろう。

    除染方法についても詳しく特に低線量廃棄物の減容にスポットがあげられている。中間廃棄物貯蔵所については誰も自分の住むところに来ることを喜ばないので政治的に決着させるしかないが、量を減らさないと問題が大きくなる。粘土中のセシウムも焼却炉で気化させた後急冷すればフィルターで取れ、除染された土は再利用できるようになる。一番除染が難しいのが山林の樹皮についた物でこれも焼却後灰を回収すれば減容出来る。時間をかけて植え替えながら減らしていくしかない。

    児玉氏は汚染された山林やそこからの土砂が堆積する大柿ダムをナウシカの腐海に見立てている。セシウムを取り込んだ粘土を貯めるダムは巨大な濾過装置として流れる水を浄化していく。ただたまった粘土は時限爆弾の様な物なので台風でかき回されたりすれば外に流れもし決壊すれば汚染はまた拡がる。汚泥を浚渫し焼却、減容して管理しながら除染を続けるという長い道のりが待っている。

  • 誠実に放射能,特に東日本大震災時の状況を分析する.科学者としての真摯な態度のお手本.

  • 除染できるところ、住める所の環境を目一杯良くしていく。それとともに、10年以上も住めないと言う地域では、新しい町の構想を住民のコンセンサスで作り上げていく。それが第一歩ではないだろうか。

  • 福島第一原発事故の直後から除染活動を主張し推進し続ける著者は、科学的知見と現実を摺り合わせながら、なんとかして福島を再生させる道を見つけようとしている。チェルノブイリから現在に到る間にも、科学は進歩し、放射線測定器の精度やスピードははるかに向上している。そうした科学知識を活用しながらもそれに溺れず、誠実にこの大きすぎる問題に向き合っているように思える。私たち東京都民は、福島に原発を押しつけてその成果物である電力を消費してきた事を自覚して、諦めずに支え続けていかなくてはならないだろう。

  • 時間は決して逆行することなく、
    熱力学第二法則によれば、必ず一方向に向くという
    歴史性を持つ…では、福島原発事故による放射能汚染を
    どうすればよいか…という視座を、本書はわかりやすく示す。

    現状を確認するため、次のステップで語られる…

    序章 環境問題としての原発事故
    第1章 放射能汚染はどう広がったか
    第2章 放射線はなぜ危険か
    第3章 放射性セシウムは人体にどう蓄積するか
    第4章 本当に効果のある除染とは
    第5章 土をきれいにする
    第6章 水をきれいにする
    第7章 放射性ゴミを保管する
    終章  森・水・土を取り戻す

    取り組みの現状を鑑みる上でも、こうした視座は
    不可欠であろう…なにより忘れてならないのは次のことだ…
    ―(放射性物質の)人体への影響を与える際は、
     最も弱い人を基準に考えなくてはいけない。

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