都立中高一貫校10校の真実 白鴎・両国・小石川・桜修館・武蔵・立川国際・富士・大泉・南多摩・三鷹・区立九段 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983250

作品紹介・あらすじ

2005年から始まった都立中高一貫校が人気の的だ。全10校の平均受検倍率は約7倍。そのメリットは、6年間の中で先取り学習が可能なため、後期課程を大学受験の準備に充てられること。しかも同じ中高一貫でも私立は最低500万円もの学費がかかるのに、都立は授業料もすべてタダ。私立と都立の"いいとこ取り"をしたのが、都立の一貫校なのだ。しかし高倍率にもかかわらず、入学時に「学力試験」がないという矛盾もある。実はこのシステムは「ゆとり教育」の副産物なのだ。本当に都立の中高一貫校は「お得」なのか。今春まで現場の歴史教師だった著者が、徹底検証する。

感想・レビュー・書評

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  • 2024年3月25日読了。中学受験に取り組んでいると気になる「都立中高一貫校」の歴史と実態について、白鷗で教員を務めた著者が解説する本。「学校群制度」という悪名高い受験制度により没落した都立中高の地位の復権、というテーマと「受験競争の過熱を抑え、ゆとりを持った6年間の教育を行いたい」という教育委員会の希望と「高い大学進学実績を持つ学校にしたい」という周囲の野心が噛み合わず矛盾を引き起こしているのが都立中高一貫校、ということか…。タダに近い授業料で質の高い教育を受けられる、といいことずくめに見えるが、公務員に近く低い給与の教員に半端ない残業を強いて離職率も高い、など、永続的な仕組みではない・学力のある子どもはいいが授業についていけなくなったとき適切なサポートが受けられない懸念がある、ということは非常に気になる。いまの社会では、資本主義に乗らない仕組みはうまく働かないんだよな。あとがきの著者の養護学校でのエピソードには希望を感じる。

  • 著者は元白鳳高校の教師。あまり印象に残らない本だった。

  • 面白い。
    あとがきが泣ける。

  • 【子育て・教育】都立中高一貫校10校の真実 / 河合 敦 / 20191128 / (59/791)/ <219/120467>
    ◆きっかけ
    お受験検討を機に

    ◆感想
    自分の時代とは大きくことなるのを実感、自分の経験則で考えない方がいい。まずは情報収集。

    ◆引用
    ・九段:予算が潤沢
    ・全都から集まってくる生徒と千代田区内から入ってきた生徒の間には大きな学力差が生まれる。授業展開の上でネック?
    ・ゆとりある6年間を遅らせる目的で創設されたんが中高一貫

  • 都立中高一貫の設立経緯やら理念は分かった。がタイトルにあるように10校全部を掘り下げているわけではなく、白鷗が8割、小石川1割、残り全部で1割くらいの配分。
    しかし、これ読むとあまり都立一貫の効果は期待ほど無いということのような気がしてならないんだけど…
    教員の質が落ちてきているのは致命的だよね。今もそうなのかな。

  • [墨田区図書館]

    本当はもう少し「都立中高一貫校の内情(校内環境、違い)」を知りたかったんだけど、どちらかというと「都立中高一貫校の成り立ち」的な書物だった。

    内容としては近年もてはやされて人気もあがっている?都立中高一貫校が本当に期待するほどにいいのかどうか、それどころか下手に小卒で進路を決めずにしっかりと実力と意志を決めてからしかるべき高校を選んだほうがいいのでは、という批判?に近いもの。ただ、都立中高一貫校自身を否定したり卑下しているわけではなく、どちらかというと、都立中高一貫校の成長のために、警鐘を鳴らすために一石を投じた本、といった感じ?

    読み直しナシの記憶違いや誤解ありかもな状態で簡単に流れをまとめると、本来中高一貫校はゆとり教育の一環として提唱され、設立当時は現在とは逆に、緊張感のない6年間から中だるみをしてしまう環境なのではと、入学志望者がさしていないほどだったこと、けれども白鴎の第一期卒業生が現役5人の東大入学者を輩出したせいで、一気に設立当初とは真逆の、現在の流れに続く「私立のように先取教育可能なのに安く済む進学校」としてのステイタスが確立されたことが紹介されている。

    ここまではどちらかというと現在の私たちが知らない、いわば過去の話。そして「先」しか見据えていない私たちには、正直その経緯はどうでもいい話。けれども「進学校」として評価し先を期待していこう、となったときに、それまでの経緯で顔を覗かせた「公立校ならではの弊害」が成長の足かせとして浮き彫りにされてくる。具体的には、「中高一貫」とまとめたことによる教員手配の大変さから始まり、横連携の取れていない「教科ごと」での対応による、各教員の大変さ(特殊な授業が指導項目に入ると、現場の一教員レベルが貧乏くじをひく、進路がからんだ年などは面接だけでも大変、中高一貫のため高校での変化がなく保護者の距離が近すぎる)、教科間での足並みが取れないことでの生徒の成長のアンバランスさ(補講などは教諭ごと、但し主要三教科が熱心すぎても生徒は連日の補講になったり、その他の教科がおざなりになったりする)、高入生がいると入試問題の作成もある、など。

    但しいずれも「教師側が大変だからサポートしきれず内容が薄くなる」と言いまとめられる節もあるので、教員次第だろう、システムが違うとはいえ、"大変さ"が生じる作業自体は私立も同じ分だけ発生しているだろう、と言えなくもないが、結局「中高一貫校」が、土俵が同じはずの「有名都立高校」に追いつけない理由としてはわかる気がした。確かに教員の大変さという裏側を見なくても、中学で実力をつけてやる気も備えて高校入試で上位校を狙う、という方が、より大学入試でも良い成績に結び付けそうだ。

    ただ、本書で最も私にとって意味があったのは「本当に都立の中間一貫校はお買い得なのか(P.180)」だった。常日頃、対象校のトップの成績以上に、「大半」がどのレベルで卒業するのか、「下層」がどのレベルにしかいけないのか、を意識してきた私にとっては、正に欲しかった情報の一例だ。白鴎ショックで有名な一期生の合格大学数を見ると240名のほぼ全員がGMARCH以上に入学したように見えるが、実際は20%が浪人だったらしい。それもGMARCH以上に受かってはいるがそれ以上を、という"上を目指した"浪人は殆どおらず、5%弱は短大・専門学校などで、現役合格の半数程度も日東駒専同等かそれ以下の大学だという事実。つまり半数以上は現役でGMARCH以上への合格ができなかったということだ。そうではないかと思っていた事実が、この本を読んで実証された形になった。更に数ページだけ書かれた著者の目からみた他の都立中高一貫校のカラーの中で、両国に対する記述も、やはりという実感が思えた。

  • 久しぶりに良書、あとがきの作者の体験談で泣きそうになった

  • 筆者は2004年から9年間、都内初の中高一貫校である都立白鴎高校の社会科教師として勤務した。

    <目次>
    第1章 都立中高一貫校の構想
    第2章 都立中高一貫校の誕生
    第3章 10校の都立中高一貫校と九段中等教育学校
    第4章 都立中高一貫校の現実とその矛盾

    <メモ>
    白鴎中高一貫校では、「特色ある教育活動」として、
    ?質の高い授業と高い志を育成する指導
    ?日本文化理解のための指導
    ?英語力強化のための指導
    などを掲げた。その実施項目として
    ?「社会と私」という授業(ただし3,4年実施してみて消滅)
    ?日本文化概論
     囲碁・将棋・邦舞・邦楽・演劇などで全国大会出場レベルの者の特別枠
    ?プレゼンテーション・イン・イングリッシュ

    受験の低年齢化を防止するために「学力検査」はしてはならないこととし、「適性検査」と呼ばれる試験があるが、実態は「学力検査」となり、受検の低年齢化に拍車をかけている。私学は小学校からの囲い込みを始めるのではないか。

    進学実績を見ると、日比谷や西などの都立進学重点校と比べると見劣りする。
    一貫校の試験問題は、詰め込んだ知識よりも、思考力や判断力を問う。しかし大学の試験は知識を問うものが多い。先取り学習についてこられない生徒もいる。

    教員の平均勤続年数が3.3年。
    中高一貫校の教員たちの勤務実態はかなり過酷なものであり、筆者が退職した原因もその多忙さにある。

    あとがきにある筆者の養護学校における経験談がすばらしい。
    「ダレカニ、ナニカヲ、シテモラッタラ、アリガトウト、イイナサイ」
    そう教えてきた。
    ぞんざいな態度を示した店員に対し、教え子が「おばさん、ありがとう!」と言った。

    2013.12.15 新刊を巡回していて見つける。
    2014.04.18 読了

  • 何ごとも良い事しかクローズアップされませんが、その点を明記されてます。
    勉強になりました。

  • 中高一貫の特色、利点、弊害が分かりやすくまとまっている。かつ私立や他の公立との比較も多く、納得のできる内容である。今後、子供の進路を考えていく際には重宝する情報だ。
    早期に選別し、長期的・継続的に、限定された環境で子供を育てることには大いに違和感を感じている。
    確かにその方法で私自身が育っていたらより学歴のよい人間になっていたかもしれない、だがそれだけではなかろうか。あの大学入学前の3年間は高校時代を無為に過ごしてしまった私を一気に変えたとても意味のある時間だった。

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著者プロフィール

1965年、東京都生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業、早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学。文教大学付属中・高校教諭。早稲田大学教育学部講師。教育活動の傍ら、精力的に執筆活動も行なっている。

「2016年 『大学入試問題から日本史を学びなおす本(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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