イスラム国の野望 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
3.70
  • (13)
  • (41)
  • (30)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 282
感想 : 38
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983700

作品紹介・あらすじ

2014年6月、イスラム過激派の一組織が「イスラム国」の樹立を宣言。西欧社会がアラブに押しつけた国家の枠組が突き崩されたことで、国際社会に大きな衝撃が走った。数々の残虐な行為が非難されている。だがイスラム国は単に恐怖政治によって勢力を拡大しているわけではない。なぜ資金提供者が現れるのか。なぜ世界中から志願兵の若者が集まるのか。7世紀ムハンマドの時代を理想と掲げる集団が目指すものは何なのか。中東問題の第一人者が複雑な中東情勢を徹底的にわかりやすく解きほぐし、その正体に迫る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 高校生の時に。

  • 「戦争で負けるのは大変だが、勝ったとしても強くなった軍隊をどうするかという問題が残る」
    「マンデラの功績は政権を握ると過去を赦し、白人に復讐しようとしなかったことだ」

  • 2017年91冊目
    読書会3Bの10月度テーマ本でした。
    中東についてはニュースで見てなんとなくわかっているようでわかっていない。
    本書はイラン、イラク、クエート、シリアなどの中東の国々とアメリカやイギリス
    そしてロシアとの関係性をとてもわかりやすく説明しています。
    もちろんタイトル通り、イスラム国が生まれてきた背景などもわかります。
    中東を理解する上ではオススメの一冊です。

  • イスラム国だけではなく、イスラム教の基本知識についても丁寧に解説されていたので、分かりやすい一冊。ちょっと前に読んだ「イスラム国の衝撃」より先に読んでおけばよかった。

    そして、日本人ジャーナリスト殺害以後について言及された書籍が出たら照らし合わせながら読みたい。

  • とにかくわかりやすかった。
    メディアのみの情報でイスラム国を判断するのではなく、歴史的経緯や周辺諸国との関連性を俯瞰的に捉えることが必要と改めて感じた。
    今読むにはやや古い情報なので、そのあたりはまた別の書籍で補完したいですね。

  • 同じ筆者の「中東から世界がくずれる」を先に読んでしまっていたので、内容がかぶっている部分が多かった。

  • レビュー省略

  • 他方、シーア派は最初からアリーが後継者になるべきだったと考えており、間の3人はそれを不当に横取りした人物とされています。ですから、イスラム諸国で名前を訪ね、アブーバクル、ウマル、ウスマーンと言う名前が出てきたら、すぐにスンニ派と分かります。シーア派の人たちは絶対にこの名前を使いません。19ページ

    「バアス」とはアラビア語で「ミッション」、つまり「使命」という意味です。どのような使命かと言うと、アラブ世界を統一し、アラブの栄光をもう一度取り戻すこと。つまりアラブ統一運動を目指す政党です。21から22ページ

    カリフに必要なのは正当性です。正当性がなく、実力で権力を握った人の言葉「スルタン」と言います。日本で言えば天皇がカリフ、征夷大将軍がスルタンに当たります。53ページ

    ところが、民族主義という考え方が台頭したことによって、「別に何人でもいいじゃないか」という寛容さが失われてしまったのです。例えばセルビア人ならばセルビア人として誇りを持つべきといった考え方が次第に広がり、第一次世界大戦で敗れる前から、オスマン帝国内での分裂が進み、オスマン帝国の弱体化が住んでいました…民族主義に根ざした新国家が成立した場合、その中で「自分は何人」と言い始めると国内が分裂してしまいます。そのため、その国の人は全員同じ民族だとみなすと言う強制力が働き始めます。78ページ

    サダムフセインは、前述のように秘密警察を組織して国民を徹底的に監視し、文句を言う人は殺すと言う、典型的な独裁者でした。イラクで開かれた国際会議に出席したときのことです。イラクの人たちは会議中に眠っていても、「フセイン大統領」と言う名前が出てくるとすぐに起きて拍手喝采をします。ソ連の記録するには、スターリンの演説後に全員が立ち上がって熱烈な拍手を送る映像がたくさんあります。それはスターリンの演説に感激したわけではありません。常にKGBが監視しており、最初に拍手を止めた人間がシベリアに送られるとも言われていたからです。86から87ページ

    タリバンの起源も、ソ連のアフガニスタン侵攻に遡ります。当時、多くの義勇兵が立ち上がってソ連を追い出したのは良いのですが、今度は内輪もめを始めて内戦状態に陥りました。それを憂い、治安と秩序の回復を目指して、イスラム神学校に行った人たちが結成した組織が、タリバンです。アラビア語で「神学生」を意味します。このとき、彼らを助けに現れたのがアルカイダです。アフガニスタン侵攻が終わっていちどはそれぞれの国に帰ったものの、適応できなかった人たちが再結集したのです。…なおタリバンはアフガニスタンとパキスタンと言うエリア限定のブランドで、アルカイダのような国際組織ではありません。115から116ページ

  • おなじみの高橋さんが語る番組を見るような一冊。類書の中ではわかりやすさ一番。それでいて歴史など必要事項は網羅、立場も中立的でよい。ほっとけば内輪もめで自壊するだろうとの展望だったが、現在ロシア含むあちこちが空爆を仕掛け、反作用で多くの義勇兵が集まっているとか。逆効果をもたらしているとは皮肉なもの。

  • あとがきで「わかりやすく」がモットーと書かれていたけど、確かに。中東とかイスラム世界とかいうと、それだけでややこしそう、というイメージがあるけど、高橋先生はそれを実にわかりやすく解説してくださる。「わかりやすい」ことがはたしていいことなのか、という意見もあるが、まったくの混沌としたイメージが整理されて、理解の助けになることは確かだと思う。

    ただ、この本の内容ですら、すぐに古くなってしまうくらい、イスラム圏の動きは流動的だ。この本が出版されたのが2015年1月29日。後藤さんがイスラム国によって殺害された映像が流されたのが2月1日。高橋先生がこの本を執筆されていた時には起きていなかったことが起きてしまった。高橋先生は、イスラム国が日本人を標的にする可能性はあると言及されている("イスラム過激派の新ブランド")が、最後の章では「イスラム国の敵意は基本的には欧米に向けられている」と述べられている。そしてそれは先生が執筆されていた時点ではその通りだったのに違いない…。先生は「イスラム国に接近するジャーナリストっや研究者の活動をあまり縛らないように」「せっかくのチャンネルを塞ぐことのないような政策的な配慮が望まれる」と書かれている。日本政府がこの提言をもっと早く聞いてそれを受け入れていれば…

    内容が古くなった、といっても、内容が誤っているわけではなく、なぜイスラム国のような組織が生まれてきたのか、バアス党とはどんな政党だったのか、イスラム国とアルカイダなどとの違いなど、なるほど、と腑におちることがたくさんあった。結局、今の中東の混沌状況を作ったのはヨーロッパやアメリカの責任というところはかなりあるわけだ…。また、キリスト教の教義は難しく(三位一体というのは理解しにくい)、論理的なひっかかりを信仰によって乗り越える必要があるが、イスラム教では、ムハンマドは神の言葉を聞いた普通の人間という位置づけでありわかりやすい、などの説明にも、そうだよな、と思った。

全38件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

放送大学名誉教授。福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会)、『中東の政治』(放送大学教育振興会)、『最終決戦トランプvs民主党』(ワニブックス)、『パレスチナ問題の展開』(左右社)など、多数。

「2022年 『イスラエル vs. ユダヤ人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高橋和夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×