人間の分際 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983847

作品紹介・あらすじ

スポーツの世界では「努力すれば必ず報いられる」などという美談が溢れている。しかし著者の八十余年の体験によれば、いくら努力してもダメなことは実に多いという。つまり努力でなしうることには限度があり、人間はその分際(身の程)を心得ない限り、決して幸福には暮らせないのだ。「すべてのものに分際がある」「老いと死がなければ、人間は謙虚になれない」「誰でも人生の終盤は負け戦」「他人を傷つけずに生きることはできない」「『流される』ことも一つの美学」「老年ほど勇気を必要とする時はない」等々、作家として六十年以上、世の中と人間をみつめてきた著者の知恵を凝縮した一冊。

感想・レビュー・書評

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  • すべてのものに分際が
    あります。

    人間にもむろん私にも。

    これまでまあまあ本を
    読んで、

    人間は弱い者だという
    ことを、

    弱き人間故の哀しさを
    見てきました。

    それでも私は性懲りも
    なく、

    したいことが全て叶う
    強さを求めてきました。

    しかし不可能なものは
    不可能なんですよね。

    叶わないことを不服と
    しようとも、

    あるいは諦観をもって
    承認しようとも、

    そんな私の思惑は一切
    関係ないこの世の摂理。

    それよりこの結果こそ
    良かったのだと受入れ、

    流されることも一つの
    美学。

    したいことを全てして
    生きた人などひとりも
    いません。

    己の分際を知り、この
    小さな力の範囲で出来
    得ることに焦点を当て、

    幸せは凡庸の中にある
    ことを胸に留め生きて
    いくことですね。

  • 分際とは「身の程」ということだ。財産でも才能でも、自分に与えられた量や質や限度を知りなさいということなのだ。

    気になった言葉は次の通りです。

    ・人間の世界には、どんなになそうとしてもなし得ないことがある。その悲しみをしるのが人間の分際であり、賢さだろう。

    ・私たちが体験する人生は、何が勝ちで何が負けなのか、その時はわからないことだらけだ。

    ・年老いてぼけた自分の父母を何十年も介護し続け、ほとんど自分の人生を犠牲にしながら、誰からも注目もされず、もちろんメダルももらわなかった人の方が、私はずっと偉人だと思うのである。

    ・人にはそれぞれ持って生まれた器というものがございます。それはどうにも致し方ございません。土のうちならば、まだ作る壺の大きさは変えられます。しかし焼き上がった壺はもう大きさをどうすることもできません。

    ・人の心の内面を知り、それを裁くのは神だけだ。と聖書は書いている。

    ・人の生き方は外見や能力とはあまり関係ない。運命を受け入れ、そこからそれぞれの道を歩き出す気力があるかないかの違いなのだ。

    ・私は、うまくいかない時にはいつも神さまから「お前は別の道を行きなさい」という指示があったと思うんですね。

    ・人にはすべて運命というのがあるんです。その運命には変えることができない部分がある。

    ・人間は常にどこかで最悪のことが起こるかもしれないという覚悟をしておくべきだ。

    ・「人間は平等」と日本人は教えられたが、しかしこれはれっきとした嘘であった。

    ・子供は徹底して、親しい他人、と思ったほうがいい。

    ・私の弱点をさらすことによって、相手は慰められるのである。

    ・愛ほど腐りやすいものはない

    ・幸福の概念を創り出す力だけは、たった一人の孤独な作業によるのである。

    ・人と同じことをしていては幸せになれない

    ・幸福の秘訣は、受けて与えることだ、と私は知っている。

    ・心配とか恐怖とかいうものは、人間が不必要なものをたくさん所有している時に起きるものなのだということを、私は知りました。

    ・生きる人の姿勢は大きく分けて二つの生き方がある。と私は良く思うのである。得られなかったものや失ったものだけを数えて落ち込んでいる人と、得られなくても文句は言えないのに幸いにももらったものを大切に数え上げている人と、である。

    ・目的は常に一つしかかなえられない。一番大切なことから果たしていって、後は捨てることである。

    ・職業は好きでなければならない。これが唯一、最大、第一にして最後の条件である。

    ・人が生きるということは、働いて暮らすことなのだ。

    ・成功のたった一つの鍵は、忍耐なのである。

    ・誰もが苦しみに耐えて、希望に到達する。努力に耐え、失敗に耐え、屈辱に耐えてこそ、目標に達することができるのだ、と教えられた。

    ・人並みなことをしていては、人並みかそれ以下にしかならない。それだけの努力しかしなかったのだから、それだけの結果しかもらえなかったのだ。日本は公平な国なのである。

    ・妻に対して、あるいは夫に対して、この人と結婚してよかったと思わせることは、多分、「ささやかな大事業」である。

    目次は以下です。

    まえがき
    第1章 人間には「分際」がある
    第2章 人生のほんとうの意味は、苦しみの中にある
    第3章 人間関係の基本はぎくしゃくしたものである
    第4章 大事なのは「見捨てない」ということ
    第5章 幸せは凡庸の中にある
    第6章 一度きりの人生をおもしろく生きる
    第7章 老年ほど勇気を必要とする時はない

    出典著作一覧

  • 大学生の頃から読んでいる本ですが、著者の曽野綾子女史がまだお元気で執筆されている嬉しい限りです。

    二十年前の三十代前半の時はいざ知らず、50歳を超えた今、目標を立てることは大事だとは思いますが、この本のタイトルにある「分際」なるものも考えてみる必要があると心のどこかで思っていた矢先に、巡り合えた本です。

    私より長く生きてこられてきただけあって、書かれている事は、深みがあります。

    以下は気になったポイントです。

    ・分際とは、身の程、のこと。財産でも才能でも、自分に与えられた量や質の限度を知ることが大事(p4)

    ・身の丈に合った暮らし方をするということが、実は最大のぜいたくで、それを知るにはいささかの才能がいる(p6)

    ・失敗には、意味も教訓も深く込められていることが後で分かる。その過程を意識して、人生の流れの半分に作用する自助努力はフルに使い、自分の力の及ばない運、つまり神の意志にも耳を傾けて深く悩まない方がよい(p31)

    ・運命を受け入れ、そこからそれぞれの道を歩き出す気力があるかないかの違い(p47)

    ・不公平に慣れないと器が小さくなる(p55)

    ・不幸が、むしろその人の個人的な資産になって、その人を強く、静かに輝かせている(p69)

    ・人の生き方に口を出すべきではない、ただひたすらに外からその成功や健康を祈ればいい(p88)

    ・欠点をさらしさえすれば、不思議と友達はできる。他人は、美点と同時に欠点に好感を持ってくれる(p105)

    ・愛とは、すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐えること(p123)

    ・人に何かを与えることが幸福の秘訣(p155)

    ・心配とか恐怖は、人間が不必要なものをたくさん所有しているときに起こる(p159)

    ・人間が自分でなしうるのは、多くの場合、与えられた偶然に乗っかっての結果だとわかってくる(p172)

    ・年を超えても見事だと思える人は、それは与えられているものに対して感謝できる人である(p173)

    ・成功した人生とは、1)生きがいの発見、2)自分以外の人間ではなかなか自分の代替が利かない、という人生でのささやかな地点を見つけること(p176)

    ・人間は誰でも、自分の専門の分野を持つことである。小さなことでいい、自分はそれによって社会に貢献できるという実感・自信・楽しさ、を持つこと(p177)

    ・道楽とは、苦労を楽しみと感じられるように変質させ得るもの(p178)

    ・自分の得意で好きなことをするのが成功と幸福につながる、まず、自分の得なものを発見する、次にそれを一生かかって続ける(p179)

    ・人生のおもしろさは、そのために払った犠牲や危険と、かなり正確に比例している。冒険しないでおもしろい人生はない(p191)

    ・人と比べるのをやめると、ずいぶん自由になる。限りなく自然に伸び伸びと自分を育てることができるようになる(p194)

    ・人間は50から先の生き方が大切である、それはその時期を過ぎると、人間は一日一日弱り、病気がちになるという運命をもっているから(p211)

    ・人間が高齢になって死ぬのは、多分あらゆる関係を断つということ。分を知って少しずつ無理がない程度に、狭めて軽くしていく。生きるのに基本的に必要なモノだけ残す(p220)

    ・死ぬ前に2つのことを点検しておく、1)自分がどれだけ深く人を愛し愛されたか、2)どれだけ面白い体験をできたか(p227)

    2015年10月4日作成

  • 全7章からなる抜粋集。

    人間には「分際」がある。
    からはじまり、
    苦しみがあるからこそ人生は豊かであること。
    そして
    人間関係なんてうまくいかないのが当たり前。
    それでも見捨てず、諦めないこと。
    幸せはそんな凡庸な日々に溢れていて
    それは自分次第におもしろくできるかである。
    そして死について最後には語られている。

    一冊の中に生命の動きを感じる。

    「分際」とか「身の丈」というものは私はあまり好きではないし
    少しイマドキではない感もある。

    しかしながら、長く生きてこられた方の言葉の重みは確かにあり
    最終章の死について書かれた章は少し涙してしまいました、、

  •  1931年生まれの曽野綾子さんの「人間の分際(ぶんざい)」(2015.7)を読みました。この方の箴言(直言)は、いつの時代に読んでも、読んでるうちに姿勢が正しくなっていく・・・、そんな気がいたします。①人間はその分際(身の程)を心得ない限り、決して幸福には暮らせない。②老いと死がなければ、人間は謙虚にはなれない。そして、③誰でも人生の終盤は負け戦。人間は50から先の生き方が大切。負け戦と決まっているものなら、ちょっと気楽に、さわやかに、おもしろく! (^-^)
     人間はその分際(身の程)を心得ない限り、決して幸福には暮らせない。曽野綾子「人間の分際」、2015.7発行、再読。①成功した人生とは、生きがいの発見 ②人と比べることをやめると、ずいぶん自由になる ③老いてこそ「分相応」に暮らす醍醐味がわかる ④昨日できたことが、今日できなくとも、静かに受け入れる ⑤誰もが死に際に点検する二つのことは、自分がどれだけ深く人を愛し、愛されたかということと、どれだけおもしろい体験をできたか、である。

  • 若い頃よく読んだ作者。作品を抜粋しながら人生訓を語られる。世代の差を感じてしまったのは、自分が大人に成長したからか...。よく上の年代の方が今を否定しがちなのは仕方ないが、私にはあまり意味がない。

  • 人生下り坂最高!歳を重ねてから見える世界がある❗️

  • 神とか信仰とか多少出てくるけど、書いてある内容はとてもよかった。
    他人の目を気にしないとか実践してるのもあるけど、人にあたえるとか生き方とかためになったし、自分に合うものは取り入れていきたい。死ぬまでね。

  • 総集編

  • 今までの著作から大事なところ?をカテゴリーごとにまとめたもの。え?こういう本の作り方もあったんだ。なんだか、騙されているような。これだと、いくらでも生産できる。新たな発信が何もない。構成の巧みさだけ。

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著者プロフィール

1931年、東京に生まれる。作家。53年、三浦朱門氏と結婚。54年、聖心女子大学英文科卒。同年に「遠来の客たち」で文壇デビュー。主な著作に『誰のために愛するか』『無名碑』『神の汚れた手』『時の止まった赤ん坊』『砂漠、この神の土地』『夜明けの新聞の匂い』『天上の青』『夢に殉ず』『狂王ヘロデ』『哀歌』など多数。79年、ローマ教皇庁よりヴァチカン有功十字勲章を受章。93年、日本芸術院・恩賜賞受賞。95年12月から2005年6月まで日本財団会長。

「2023年 『新装・改訂 一人暮らし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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