異端の人間学 (幻冬舎新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983885

作品紹介・あらすじ

野蛮で残酷、時に繊細で芸術に過剰なまでの情熱を傾けるロシア人。日本と近く、欧米に憧れて近代化してきたという似通った過去も持つ。だが私達は、隣国の本性を知っていると言えるのか。欧米中心のヘゲモニーが崩れつつある今、世界はロシアが鍵の一つを再び握った。ロシアを知り理解し得なければ、今後日本は生き残れない。一九六〇年代からソ連・ロシアと深く関わってきた二人の作家が、文学、政治経済、宗教他あらゆる角度からロシアを分析。人間とは、国家とは、歴史とは、そして日本人とは何かを浮き彫りにしたスリリングな知の対論。

感想・レビュー・書評

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  • ロシアという国を正確に理解できる人が世の中にどれほどいるだろうか。勿論私にとってもロシアはよくわからない国の一つだ。プーチン大統領の目つきや喋り方をニュース映像から見ていると、鋭く威圧的な雰囲気が漂ってくる一方で、帯を締めて柔道で技を決めたり、乗馬する姿などは少年の様な純粋さを感じたりする。ウクライナへ侵攻して随分と日が経つが、大規模反転攻勢に出てから既に3ヶ月経過し、未だウクライナはロシアを追い出して領土奪還まで到達できていない。開戦当初経済封鎖などで早々に疲弊するだろうと思われたロシアも、ルーブルの急激な下げを一時的に受けただけで、現状でもまだまだ戦う力を失っていない。寧ろロシアに進出していた諸外国の拠点や製品を奪取できた分、中長期的に見ればロシアに益があった様にさえ見える。
    ロシアの内情がどうなっているのか、真の姿が中々見えてこないのは、プーチンという人間自体が前述した様に。掴みどころがなく謎めいているせいだろうか。
    本書は元外交官の佐藤優氏と「大河の一滴」で知られる作家の五木寛之氏との対談形式で、テーマは正に「ロシア」である。前者は外交官時代はロシア駐在官として、後者は著作に多くのロシア物を書いており、ロシア文学にも文化にも、社会にも人にも充分に触れてきた二人が、ロシア人の思考方法について考える。同国民が触れてきた文学や歴史文化、周辺諸国との関係性などから現代ロシア人がどの様に考えているか。
    正にウクライナとの戦争中であり、その終結には独裁者プーチン大統領の意思・判断が重要な鍵を握る。現時点で70歳に満たない氏が当面ロシアおよび周辺国の行く末を決めるのは間違いない。本書でロシア人の文学的背景を学びつつ、日本国内でもどの様な人々がロシアについて語ってきたかを知る機会になるだろう。

  • 「佐藤、お前、よくも裏から手をまわしたな」とロシアの外交官やインテリジェンス・オフィサーに言わしめる佐藤氏と、ロシア人の本質を描いたという『さらばモスクワ愚連隊』『蒼ざめた馬を見よ』の著者五木氏の対談。
    日本とロシアは隣国であるから専門家がもっといるべきだが希薄すぎる日ロ外交を嘆いている。

    スメルシュという役職には驚いた。裁判なしに脱走兵やドイツ軍に寝返った兵士を処刑する権利を持ち、KGB国家保安委員会の前身NKVD内務人民委員部に所属した。
    1965年五木氏が訪れたシベリア抑留兵士の日本人墓地は整然としてきれいに手入れされていたとのこと。今はどうなのだろうと思った。
    1980年代のソ連のビザは挿入紙方式で、パスポート本体にスタンプ押さないのは、スパイ活動や革命運動をしているのでソビエトの渡航記録が残らないようにしていたらしい!

    行列待ちのレストランで金色のボトルキープ券を見せたら通してもらったという佐藤氏の逸話や、ロシア人の飲み会の豪快さ、120㎏以上が太っているという基準が違うらしい。節酒令がでたときは、歯磨き粉、オーデコロン、靴クリームがなくなるらしく、エチルアルコール分を摂取する方法は気分が悪くなった。
    ロシア人は識詩率、詩を朗誦する能力が高く、高校生までに七冊の読本を全文暗唱するらしい。

    ロシア人とウクライナ人それぞれの「ウクライナ」の語感、ニュアンスの違い、「クライ」には辺境という意味があるとのこと。宗教と民族の二つの問題という視点で語られる。
    異端の問題、文化、思想、政治、民族問題の底流として歴史を動かしているという認識。満州国は国籍がない、計画経済の実験場、ポストモダン国家だったという。

    政治と文学の深い結びつき、『異邦人』を例にして、力づくで居場所を奪われた人たちの時代は続くということが結語となっている。

  • 読み応え有り

  • 佐藤優と五木寛之の対談本。
    五木寛之さんがロシアに詳しいということはよく知らなかった。ロシア通として有名な佐藤さんが、五木さんの知識や経験に一目置いている感じがして、共に分かり合える部分と、二人それぞれの経験から見たロシアが紹介されていて、薄い本の割に内容が濃い印象だった。 ウクライナ戦争のロシアを見ていると、昔と変わらず一国で完結の考え方があり、周辺で何が起きようが他国に非難されようがお構いなし、唯我独尊の国という感じがする。だからこそロシアに嵌る人もいるのだろう。

  • モスクワ ソ連

  • 2014年クリミア併合後の2015年に出た本。2022年ウクライナ侵攻。今だからあらためて読んでいい本。

  • タイトルからはわからないが、主にロシアについての対論。
    五木寛之さんがロシア通だというのは初めて知ったが、「さらばモスクワ愚連隊」の著者だと知れば然もありなんという感じ。
    五木さんの持論は、独特でオリジナリティがあり、興味深かった。ご自身で実践派と仰っていたが、そういった点もあるのかもしれない。
    五木さんの語り口は自然体でやわらかく、包容力があって好感が持てる。

    お二人とも圧倒的な知識で読んでて面白いけど、対話というより各々の一人語りが多かったように感じた。
    ここら辺は相性だろうか。その点、佐藤優さんと池上彰さんの対談は、池上さんの合いの手が抜群で相乗効果を感じる。
    とは言え、総論で言うと良書である。

  •  この二人のロシアに対する学識の深さには驚かされた。特に五木寛之は佐藤優に全く劣っていない。

  • 作家の五木寛之と元外交官で今は作家の佐藤優の主にロシアについての対談。

    ロシアや周辺諸国について今までより深く知ることができた。

  • サクサク読める、対談本は読んだ気になってしまうのがね。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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