天皇「生前退位」の真実 (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344984417

作品紹介・あらすじ

平成28年8月8日、天皇は異例のビデオメッセージで国民にお気持ちを伝えられた。「高齢のため象徴天皇の役目たる公務が十全にできず平成30年に譲位したい。が、制度改正とその可否は国民に委ねる」と。世論調査で国民9割が「陛下の願いを叶え、譲位認めるべし」と賛成。憲法改正は不要だが、皇室典範改正は不可欠だ。案外簡単な変更で済む。改正せず特措法なら退位と新天皇の即位自体が「違憲」となり、譲位直後に「皇太子不在」「皇室存続の危惧」問題が浮上する。転換点の今、天皇・神道学の第一人者が世に問う「皇室典範問題」のすべて。

感想・レビュー・書評

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  • 2016年8月8日にビデオメッセージで表明された天皇陛下の
    お言葉を受けて、政府は「天皇の公務の負担軽減等に関する
    有識者会議」なんて言う妙な名称の有識者会議を設置して
    専門家へのヒアリングなどを行って来た。

    専門家と言われる人たちの中には専門家と呼ぶにはふさわしく
    ない人たちも多くいたが…。

    どうも今上陛下一代に限り譲位(退位)を認めるとの特例法の設置
    が着地点になりそうだ。でも、それは今上陛下のお考えとは異なる
    方法ではないのだろうか。

    陛下のご意思の表明を受けて、どの世論調査でも9割以上が譲位に
    賛成だとの結果も出ている。皇室への関心も高まっている。ならば、
    この機会に皇室典範の抜本的な見直しが行われてもいいのではな
    いだろうか。

    それなのに、有識者会議に呼ばれた専門家のなかには「摂政を置く
    ことで解決出来る」とか、「退位は認められない」とか言っている人が
    いた。自称保守の人たちは、今上陛下の抱いておられる危機感を
    感じ取れなかったのだろうか。

    「眞子がいるではないか」

    東宮家に愛子内親王殿下がお生まれになる以前、皇統の継承が

    心配された時、今上陛下はおっしゃった。これは女性天皇の検討も

    必要であるとのことではなかったか。

    幸い、秋篠宮家に悠仁親王殿下がお生まれになってはいるが、悠仁

    親王殿下が即位する頃には皇室自体が存続の危機を迎えるのでは

    ないか。

    本書はタイトルこそ頂けないものの、内容は秀逸だ。退位反対論者の
    言い分を論破し、摂政を置くことの無礼、皇室典範改正のポイントを
    分かりやすくまとめている。

    今上陛下のお言葉を「高齢になったから天皇という重責から降りたい」

    みたいに受け止めている、いわゆる知識人もいるんだろうな。

    私のような一般人でもあのお言葉を聞いてそのように受け止めることは

    なかったのだから、特別法で済まそうとしている政治家や専門家、有識者

    たちは、もう一度、あの日の陛下のお言葉を聞き直した方がいい。

    本書巻末にはお言葉を文字に起こした全文が掲載されている。この部分

    は何度も読み返した。今上陛下らしい考え抜かれたお言葉だと思った。

    小泉政権下で女性天皇・女性宮家が検討されたが、悠仁親王殿下お誕生
    以降、議論は立ち消えになっている。もう一度、この議論をすべき時でも
    あるのではいかとも思う。

    今上陛下は天皇家の長い歴史の中で天皇のあるべき姿をお考えになって
    いらっしゃる。しかし、政治家か考えているのは明治以降の歴史でしかない。
    そもそもここに齟齬があるのではないかとも感じた。

    尚、特別法にて今上陛下に限り譲位を認めた場合、その後に即位する皇太子
    殿下は「違憲の天皇」になるとの著者の指摘にはっとした。

    違憲の天皇が誕生したら、それこそ、政治利用されやしないだろか。私の思い
    過ごしかもしれないけれど。

    天皇制及び譲位について、皇室の存続について問題点から対策までを記した
    良書である。

  • 著者の主張は極めてまとも。現天皇一代限りの法律で対処しようとしている関係者の「不敬」ぶりが浮き彫りになる。根本から考えろ、といいたいな。現政権にとって、この問題は、「やっかい」な問題として浮上してきたのだろ。

  • この本が決定版。これ以上でもこれ以下でもない。陛下の望みは皇室が永遠に国民と共にあること。勝手なことばかり言っている自称保守派は下手なリベラルよりたちが悪い。

  • 読了。
    ”GHQの意図以上におとしめられ、もっぱら消極的・否定的な概念として扱われてきた「象徴」という言葉を、極めて積極的・肯定的・能動的な概念として位置付け直された”という著者の解釈は庶民レベルで納得がいくものだろう。
    皆が肌感覚でそれを理解しているからこそ、国民の9割が生前退位に肯定的なのだろう。
    不思議なのは、寧ろ保守系を自認する知識人(?)達が、今上陛下の意思を蔑ろにしているように見えることだ。
    いにしえの尊王攘夷を掲げる志士達も天皇を「玉」と呼び、政権奪取の手段としてみていた節がある。戦前の皇道派にしても然り。
    半端な知識で断言は出来ないが、”本書を読む限り”、皇室典範改定にてそれを実現することは可能であり、それこそが御意にかなうと感じる。寧ろ特措法で一時凌ぎする方が無理があるように思えるのだが。
    因みに、後半は女系天皇容認論にページを割くが、私はこれに関しては未だ自論を持たないので割愛。

  •  週刊誌みたいな内容かなと思いきや、ものすごく真面目でまともな本でした。

     第五章「象徴天皇の逆襲」って、編集部が付けたタイトルですかね? ちょっとドキッとするタイトルだけど、この章に書かれていることはとても大切だと思います。

  • 天皇「生前退位」の真実
    高森明勅
    幻冬舎新書 二〇一六〇年十一月三十日第一刷発行
    ISBN978-4-344-98441-7

    はじめに
    第一章 八月八日の「お言葉」をどう受けとめるのか
    第二章 生前退位を認めなかった理由
    第三章 生前退位を認めるべき理由
    第四章 皇室典範改正の全貌
    第五章 象徴天皇の逆襲
    おわりに

    http://www.gentosha.co.jp/book/b10490.html

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著者プロフィール

昭和32年、岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒業。同大学院博士課程(神道学専攻)単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「国家観・歴史観」講座担当などを歴任。大嘗祭の研究で神道宗教学会奨励賞を受ける。小泉内閣当時「皇室典範に関する有識者会議」のヒアリングに応じる。現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師など。
著書は、『天皇と民の大嘗祭』(展転社)、『この国の生い立ち』(PHP研究所)、『天皇から読みとく日本』(扶桑社)、『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)、『日本の10大天皇』(幻冬舎新書)、『天皇「生前退位」の真実』(同)『歴史で読みとく女性天皇』(ベスト新書)、『私たちが知らなかった天皇と皇室』(SBビジュアル新書)、『古事記が日本を強くする』(共著、徳間書店)、『歴代天皇事典』(監修、PHP文庫)、『天皇陛下から私たちへのおことば』(監修、双葉社)、『天皇と元号の大研究』(監修、PHP研究所)など。

「2019年 『天皇と国民をつなぐ大嘗祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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