欲望の民主主義 分断を越える哲学 (幻冬舎新書)

  • 幻冬舎 (2018年1月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784344984882

感想・レビュー・書評

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  • NHKの『欲望の民主主義』がとても面白いので、こちらも読んでみましたが、現代の課題を考えるにはとても良い本だと思います。
    民主主義も資本主義も、現代においては主流の政治経済理念ではありますが、これらはあくまでも歴史の流れの中で求められた思想であって、至高のものではありません。そして、現代においては、日本に限ってみても、どちらも行き詰まり、閉塞感を感じている国民が多いと思います。この閉塞感がどこから来ているのかを明らかにしているのが本書です。
    どちらも当初は必要であり、むしろ大事な思想でした。ですが、どちらもそれぞれに課題を抱えているのは当然であり、長く延命した分、行き詰まりから抜け出られなくなっています。
    特に資本主義はその性質上、もはや人類は太刀打ちできないところまできています。なので、もう一方の民主主義をアップデートし、本来の民主政治を取り戻し、維持しながら、資本主義に立ち向かっていくしかありません。
    時代は、ちょうど分岐点にあります。我々の選択が、子どもたちの将来を作るのであれば、正解も誤りも含めながら一人一人が真剣に考えなくてはいけない、そういう時代です。

  • 内容を覚えていない

  • 本書が出版された2016年、トランプ氏が大統領選挙で当選した年、民主主義は世界的に危機にあった。ポピュリズム政党、政治家が欧州で躍進、日本の都知事選も国際的にはポピュリズムと評される。
    これまでも投票率の低さ、政治への無関心は言われてきたが、昔の無関心は、投票しなくても無難な結果、という空気だった。だが今は、政治への信頼が失われている。選挙で選ばれた者は民意を代表しない、つまり代表制民主主義そのものに疑念が抱かれている。これは時代の変化に民主主義が対応できないのか、それとも民主主義そのものに欠陥があるのか。

    本書は、そんな時代の空気の中、米国とフランスの政治学者、心理学者、哲学者へのインタビューを通じて民主主義への処方箋を模索する。民主主義の原点といえるホッブスのリヴァイアサン、ルソーの社会契約論に立ち戻り、共同体を維持するツールとしての民主主義、平等と平和の理念のための民主主義、哲学としての民主主義、様々な視点から民主主義を説き直す。どの論者にも共通するのは、民主主義は所与のものでなく、一人ひとりの協力が必要という点である。しかし現代のネット社会は、一人ひとりの意見を分断して増幅する。そのため、選挙で選ばれた代表者の議論よりも、変動が早く極端である。そのような意見に政治家が左右されて愚策に走るか、逆手にとってポピュリストとなるか。どちらにしても危機的だ。

    本書の出版後、パンデミックにより再び政治は信頼を失っている。恐怖、脅威は人々を結びつけ、民主主義が再び上手くいく条件となるはずだが、政府よりも国民の方が情報の量とスピードが大きいこと、人の特性である自信過剰のバイアスにより、議員よりも自分たちの方が解決できる、と思ってしまうのだ。

    ヒト、モノ、カネ、情報のグローバル化の中、私たち一人ひとりが民主主義を再定義する必要がある。

  • 民主主義についての考え方は様々あるが、現在劣化しつつある民主主義を克服するためには、民主主義以外の選択肢を通じてではなく、民主主義が持っているポテンシャルを引き出すことにより可能となることがわかった。そのためには一人一人が、しっかりとした知性、対話できる能力を持ち、おかしなことを言う政治家や、偏った見方をするメディアを批判することが大切だと思った。

    個人的にはマルクス・ガブリエルの「他人や他の種の動物の苦しみを理解する人間の度量を普遍的価値とした民主主義」に共感を覚えた。分断が深まる現代においてはこの考え方が特に重要だと思った。

  • ・大統領の役割=何が起きているか分かっている人がいるフリをする役割、というのが腹落ち。

    たかだか10人くらいの組織でさえ、トップは部下が何をしているか把握していない。1億、2億の民のトップが、すべてを見通しているわけがない。

    民主主義が、中産階級の価値を最大にするための組織(集団の力を使って個人の自由を最大化する)であり、それが現状機能しなくなっている。

  • アメリカの自国主義、EUの分断等民主主義の混迷、世界の現実を知る本です。
    後退している民主主義はこのままでは、破滅の道、戦争へといってしまうのではないか?危惧を感じる。人間は弱肉強食から逃れられない。
    著者は「民主主義とは何か自分に問い続ける限り」より良くなって行くと言う。
    印象に残った文章
    ⒈ 人々はとにかくすべてを焼き尽くしたかったのだ。
    ⒉ 問題その1ーグローバル化
    ⒊ 問題その2ー代表制民主主義
    ⒋ 問題その3ー分極化

  • ずっと「民主主義」を無条件でとてもいいもののように思っていたけれど、どうもそうではないかもと思って手に取った本。
    民主主義の政治が衆愚政治にならないためには何が必要なのか、とか、ただの民主主義ではなくて「自由」民主主義が大事なんだとか、じゃあ自由ってなんなんだろうか、とか、そういったことを考えるヒントがいろいろあった。

    「ドイツ史上、最も若くして大学の哲学科教授に就任した」マルクス・ガブリエルが「自分があの人だったかもしれない」と認識すること、他人や動物の苦しみを理解する度量が民主主義の基盤だと言っているのが印象に残った。

  • 自由「民主主義」でなければいけないんだな。
    意思決定の速度を遅くして熟考する時間が必要なんだな。

    グローバリゼーションの時代だからこそ、もっと違うものや弱いものを受け入れることが大事な気がします。

  • 民主主義は巨大な情報処理システム。意見の対立を調整するための方法。常に相互に批判し合っている状態こそ、民主主義が機能している証拠。民主主義とグローバル化は両立しにくい。民主主義とは、共同体の皆で決めたルールは皆で守るものだから、グローバル化により多くの人々が共同体へ流入すると移民や外国人が自分たちの果実を食べるのではないかという恐怖心が生まれる。人生全てが自分の思うままにならないのと同様に、民主主義はフィクションに近い。。

  • 自らの人生を受けとめ、真摯に思考する時、誰もが実存主義者となる。生まれ落ちた時から抱える実存、所与の条件、意識を持った頃にはすでに課さられていた宿命を、引き受けざるを得ない存在が覚悟を決める時、実存主義の門を潜るのだ。だが、そうしたありようは、時に固着した視点を生み、それゆえの不自由を生むこともまた事実。他者からの視点という想像力を欠き、熱い情念に囚われることでますます視野狭窄に陥る不幸も、背中合わせとなる。その呪縛を解こうとしたのが構造主義だったのであり、そうした柔軟な視点を獲得した時、皆、構造主義者となる。すべては関係性だという認識がもたらす、自己という存在の相対性に思考を開く可能性をそこに見るのだ。そしてさらにその関係性すらも固定化しないダイナミズムを導入しようというのがポスト構造主義だった…
    真摯に思考する時、人はすべて実存主義の洗礼を受け、構造主義の門を潜る。

  • 平成の終わり頃くらいに、ボスト・モダーン風味もある面白い本が登場。 ジョナサン・ハイト目当てで購入。元の番組の内容全てを書籍に載せたわけではなく、割愛した部分もあるようだ(ダニエル・コーエンをカットしたのは痛い)。

    【版元サイトから雑な書誌情報】
    書籍分類:新書
    判型:新書
    カテゴリー:新書
    価格:800円(税別)
    ISBN:9784344984882
    Cコード:0295
    発売日:2018/01/30
    https://www.gentosha.co.jp/book/b11478.html

    【著者についてのメモランダム】
    著者:丸山 俊一[まるやま・しゅんいち](1962-) NHKプロデューサー。
    著者:NHK「欲望の民主主義」制作班
    DTP:美創

    【番組について】
    『BS1スペシャル「欲望の民主主義」~世界の景色が変わる時~』
     2017年4月23日(日)22:00~23:50
     NHK BS1
    制作:NHKエンタープライズ
    制作統括:稲毛 重行,丸山 俊一
    出演:
    マルセル・ゴーシェ
    ジャン=ピエール・ルゴフ
    ドミニク・レニエ
    シンシア・フルーリー
    クリストフ・ギリュイ
    ダニエル・コーエン
    マルクス・ガブリエル
    リチャード・J・サミュエルズ
    ヤシャ・モンク
    ジョナサン・ハイト
    吉田徹
      ほか
    語り:やくしまるえつこ


    【目次】
    はじめに――「万人の万人に対する闘争」が蘇る時 [003-007]
    目次 [008-015]


    I 迷走する「民主主義」――世界を覆う分断 017
    三つのシナリオの先に――ヤシャ・モンク[Yascha Mounk] 018
      失われた民主主義への熱
      少数派が多数派になる大きな変化は静かに進行した
      ポピュリストは敵を外部につくり、政治をシンプルに見せる 
      アメリカ人には誰が含まれているのか?
      「内向き」になるアメリカのジレンマ
      アメリカは独立の時から不安定だった
      グローバリゼーションから撤退するのではなく、その衝撃を緩和する
      グローバリゼーション、国家、民主主義を同時に成立させることは可能か?
      資本主義と民主主義の二人三脚が崩れる時
      トクヴィルが発見した「アメリカの民主主義」の可能性
      大衆と大統領が直接繋がることが意味するもの
      「最大多数」が衆愚政治を招かないために  
      アメリカがたどるかもしれない、崩壊した共和制ローマの歴史
      思想、崇拝、言語を個人が好きに決める権利を守る


    IIへのイントロダクション ホッブズが迫る人間の本質を考える 042


    II アメリカの激情 フランスの憂鬱――人々の心の底を暴き出せ 055
    ただすべてを焼き尽くしてほしかった――ジョナサン・ハイト[Johathan Haidt] 056
      民主主義はアメリカの道徳的美徳を表す宗教だった
      扇動政治家に惹きつけられるほどアメリカは感情的になっている
      アメリカがバラバラになりつつある今、違いを強調してはいけない
      エリート層への怒りがポピュリズムの底にある
      競争のための試験が大衆を無視するエリートをつくった
      自らの文化が崩壊する危機感から独裁者を待ち望む人たち
      アメリカは「自由でオープンな国」でいる必要がなくなった
      縮小する社会の中では閉鎖性が高まる
      教会に行かず、地元組織が消えつつある中で起こる人々の不安
      必要なのは、安定した経済的基盤、教育、努力が報われる状況
      当面は悪化の一途をたどるアメリカの民主主義
      民主主義に期待しすぎてはいけない
      民主主義的な思考を抑制し、共和制の要素を強める時

    民主主義のイノベーションのために――シンシア・フルーリー[Cynthia Fleury] 080
      代表者への不信、制度への不信という民主主義の二つの危機
      制限付き投票権と生涯教育、ベーシック・インカムの関係
      集団の力と個人の自由の狭間からの産みの苦しみ
      巨大なものを恐れることで人間は平等になる?
      民主主義とは勇気
      勇気は特別な人だけが持っているのではない 外
      自らが使う勇気、もらう勇気、さまざまな形
      言葉の力を取り戻す
      民主主義とは教育のプロジェクトだ


    IIIへのイントロダクション 「五月革命」とは何だったのか? 空転したエリートたちの想いと大衆の本音 098
      フランス革命とルソーの「社会契約論」 
      「若者たちの革命」からフランスは遠く離れてしまったのか?
      ブルジョワと労働者の隔たり


    III 「二つの革命」の負の遺産――「歴史の終わり」は来ない 113

    生き延びるためにゲームのルールを知れ――マルセル・ゴーシェ[Marcel Gauchet] 114
      フランス人の8割が民主主義は機能していないと感じている
      グローバリゼーションが生んだ社会の分裂
      欧州連合はなぜ機能不全に陥ったのか?
      戦略を欠いていた欧州連合の存在意義
      ポピュリズムの背後にある政治不信
      70年代半ばに進んだエリートからの権力の剥奪
      表層だけに終わった五月革命
      アメリカ、イギリスに続きフランスも反グローバル化へ
      誰もが生き延びようとする時代の厳しさ
      政治の役割は問題解決ではなく、問題提起
      独裁と民主主義のミックスが今、力を持ちつつある
      政治は政治を通して解決せねばならない
      本当に考えなければならない自由の意味
      「理性」が機能していないから民主主義は沈滞する
      イギリスで発明された「言葉での戦い」

    パイロットがいない飛行機のゆくえ――ジャン=ピエール・ルゴフ[Jean‐Pierre Le Goff] 145
      自分のいる世界がわからなくなったフランス人
      どの選択肢も無理のある時代
      「選択不可能な選択」への大衆の反逆
      「選択不可能な選択」からどう抜け出す?
      戦後フランス民主主義の変質
      五月革命の「不可能な遺産」
      自由主義経済と人権の理想モデルが崩壊した
      民主主義の健全なバランスを失う時
      「ポスト五月革命世代」の皮肉
      国家は今、自国の歴史を語ることができるのか?
      欧州連合によりフランス独自の歴史が欠如しつつある
      西洋世界とは何だったのか?
      歴史の中で継承される遺産
      「文明の衝突」を越えて
      暗礁から脱出するための物語をどうつくるか?
      フランスはパイロットがいない飛行機に乗っている
      「万人の万人に対する戦い」から学べること
      個人主義が生んだ「隙間」は埋められるか?
      「攻撃的な欲動」はどう生まれる?
      保守主義と近代主義のジレンマを越えて
      穢れのない文明など存在しない


    IVへのイントロダクション ヨーロッパ知性の真価が問われる時 188
      実存主義、構造主義が蠢く背景
      ガブリエルが切り開くポスト構造主義以降の新しい風景以
      AIとルソーのパラドックス


    IV 民主主義の定義を更新せよ――世界は存在しない 民主主義は存在する――マルクス・ガブリエル[Markus Gabriel] 201
      民主主義とは情報処理の一形態である
      考える時間を生めば、敵も味方もないことがわかる
      民主主義のストレステスト
      根拠のない恐怖が新たな恐怖を生み、欲望を生む
      「歴史の終わり」の終わり
      新しい歴史の哲学を生む時
      誰もが信心深い今、哲学は力を持つ
      この世に幼稚な国家も大人の国家もない
      民主主義を信じるということ
      ホッブズの自然状態の恐怖を越えるために
      民主主義は声なき者を尊重する制度
      民主主義の中にある真実の均衡
      ドイツ帝国の崩壊に学べ
      民主主義は生き残るための唯一の選択肢


    あとがきに代えて 民主主義が世界の景色を変える時 [221-228]
    解説に代えて 民主主義という〈欲望〉を生きる(吉田徹) [229-245]
      悲観的なアメリカ、楽観的なヨーロッパ
      問題その1 ――グローバル化
      問題その2 ――代表制民主主義
      問題その3 ――分極化
      「希望」を欲望するフィクションとしての民主主義へ
    『BSIスペシャル「欲望の民主主義」』の番組情報 [246]
    著者プロフィール [247]

  • 「欲望の資本主義」が書籍も番組も良かったので買ったが、哲学よりだった。
    で、内容も「欲望の資本主義」ほどの知的興奮は得られなかった。
    まあ、補助線としては使えるけど、点線?

    フランス人がむやみに偉そうなんだよね。
    「トランプを放逐できたら、民主主義の勝利」とかもう意味不明だし。

    むしろ、著者が懐かしがって高く評価している五月革命の内幕が受けた。

    ガソリンの供給が再開されると、(学生がドライブに行くので)デモが休みになった。
    とか
    フランスの学生の抗議活動は、バカンスの時期には(バカンス優先で)休みになる。
    とか。

    あいつらの「社会運動」って、子供の反抗期以下じゃねえかwww
    何であんなのをありがたがる人が居るの?

  • 20180629〜0713
    世界の知性が見る「民主主義の限界と現実」とは?
    大反響のNHK異色教養ドキュメント、
    待望の書籍化!
    世界中で民主主義が劣化している。アメリカのトランプ現象、イギリスのEU離脱、フランス極右政権の台頭など、多数の民意を反映した選択は、目先の利益のみを優先し、自国の生き残りを賭けたものばかりだ。協調、共和といった精神からかけ離れたむき出しの欲望が民主主義と結びつき、社会の分断は加速する。今、世界の知性たちは何を考えるのか──?若き天才哲学者、マルクス・ガブリエルら六人が考察する政治変動の深層と民主主義の混迷。世界の現実を知る必読書。 (AMAZONの紹介文より)
    全般的にアメリカの知識人は民主主義に懐疑的であり、欧州の学者らは民主主義にいまだ希望を持っているように感じた。本書の最後に「民主主義はフィクションに近い。このフィクションを信じていくこと、自分と異なる存在を欲望することで、自らの欲望を実現していくことが必要」と説いている。ホッブスを読んでみたくなった。

  • 東2法経図・開架 B1/11/487/K

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著者プロフィール

丸山 俊一(マルヤマ シュンイチ)
NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー
1962年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。「欲望の資本主義」「欲望の時代の哲学」などの「欲望」シリーズをはじめ「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」「人間ってナンだ?超AI入門」「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」「地球タクシー」他、異色の教養番組を企画・制作。
著書『14歳からの資本主義』『14歳からの個人主義』『結論は出さなくていい』他。制作班などとの共著に『欲望の資本主義』『欲望の資本主義2~5』『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る』『欲望の民主主義』『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅡ』『マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る』『マルクス・ガブリエル 新時代に生きる「道徳哲学」』『AI以後』『世界サブカルチャー史 欲望の系譜 アメリカ70~90s「超大国」の憂鬱』他。東京藝術大学客員教授を兼務。

「2022年 『脱成長と欲望の資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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