歴史と戦争 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344984967

感想・レビュー・書評

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  • 「歴史探偵」を名乗り、おもに近現代史に関する作品を発表してきた半藤一利氏による81の著作から言葉を選び時系列で並べたもの。
    昭和5年生まれの彼は第二次世界大戦前後の日本と一緒に生きてきました。
    「天声人語」を読んでいるよう。
    こういう本を読むとパワハラのニュースがたくさん流れる現代はほんとうに平和だなあと思う。

    構成したフリー編集者の石田陽子さん、お疲れ様でした!
    全部読んで選ぶのもたいへんな作業だと思うけど、各出版社に交渉しなくてはいけないものなのかしら?
    そのために金銭が必要なのかしら?

    ただ、このように書かれると、その本を読まないとわからないと思ったことがあります。
    たとえば「元首相東条英機の自決未遂」
    〈戦争に敗北することによって、日本人の無知、卑劣、無責任、狡猾、醜悪、抜け目なさ、愚劣という悪徳がつぎつぎにぶちまけられる。だれもが自分以外のだれかを罵倒しつづけた。日本人が自分たちを矮小化し、みじめなくらい自己卑下し、そして相互に浅薄な悪口をぶっつけあったのは、おそらく歴史はじまっていらい、敗戦後の初秋ごろほどすさまじいときはなかったであろう。
    そして人間不信、日本人であることの屈辱、嫌悪、情けなさ、それを決定づけたのは、9月11日の元首相東条英機大将の自決未遂ではなかったか。敗戦いらい失望することのみが多かったが、翌日の新聞で、ピストル自殺に失敗、の報道を読んだときほど、心底からがっかりしたことはない。『日本国憲法の200日』〉

    もっと詳しく彼の気持ちが知りたい。
    そのためにはこの本を読むしかないのですから、各出版社にとっても宣伝になって良い本といえるのでしょう。

    あともうひとつ、お気に入りの文章をのこしておきます。
    〈ボートと歴史探偵の共通点
    ボートをやっていて歴史の勉強には何かためになることがあったのか。そこが大事なところかもしれません。スポーツの練習とはくる日もくる日も同じことをやっています。くり返すことが、結局、いちばん大切なのです。スポーツの醍醐味とはくり返すことにあきないこと。あるいは何でもそうかと思いますが、ものごとの上達とはそうしていることで、ある日突然といってもいいほど開眼して、ボートを漕ぐことが楽しくなり、艇がエッと驚くほど速く滑るように走るようになります。歴史の開眼もまた然り。どうしても不可思議としか思えないことが、あきずにいろいろな史料を読んでいるうちに、パッとひらめくようにしてわかることがあるのです。その意味ではスポーツの練習と同じだと思います。〉

  • お盆の時期なので何か戦争に関する本を読みたいが、子どもの遊びにも付き合わねばならないから分厚いものは無理だなあと考えながら、本屋で見つけたのが本書。半藤氏の過去の著作からの短い引用が、戦前〜戦中〜戦後の順に並べてあり、時代をざっと概観するには良かった。次は引用元である著作のどれかをじっくり読んでみたい。

    以下、面白かった点。

    P16-17
    人工的な神国意識や天皇観。

    P20
    新旧両思想に帰依せず『宙吊りの孤独に堪えねばならなかった』勝海舟。

    P34
    日露戦争で日本兵の精神的弱さが認識されていたにもかかわらず、戦史には残されなかった。

    P44-45
    「非常時」の掛け声の下の軍国化。

    P46
    売るために積極的に戦争を煽った新聞。

    P133
    資料の整理保存が国家の仕事。

    P142-144
    石原莞爾の平和主義と人間味。

    P146
    東条英機の形式主義。

    P151-152
    『人間そのものから考えずに、機械や組織や権力や制度や数字といった人間とは別のものから考える傾向』『非人間的ーそのことがすなわち「戦争」』『大本営の学校秀才的参謀どもの机上でたてた作戦計画』

    P185
    日本はもう現状維持でいい。

  • 幕末・明治維新からの日本近代化の歩みは、戦争の歴史でもあった。文藝春秋の編集長や役員を経て、歴史作家の半藤一利氏の80冊以上の著作から厳選した半藤日本史のエッセンスがここに!

  • 「日本のいちばん長い日」の半藤一利。彼の著書の中での言葉を、時間軸に整理して並べたある意味著作集。
    知っていた話もあれば、もちろん知らなかった話も。
    「昭和史」も読まなきゃって積読になっているけど、早く読まないと。
    後世に伝えなきゃいけないっていう言葉もたくさんあります。新書ですが、これは永久保存版にしようと思います。

  • 戦前ふんぞり返った軍人が戦後すぎて恥ずかしくもなく生き延び、自分がやった不条理に対してなんら反省・謝罪の弁を一切発しない。軍人優性思想に染まりまくったクズだ。

  • 半藤日本史のエッセンスを明治から昭和まで、明瞭な言葉で語られている。その経験と知識は貴重。

  • 歴史に関する様々な作品がある著者の、幕末以降、戦争にまつわる作品を選び、著者の言葉をまとめたもの。
    著者の作品は何冊か読みましたが、このよな編集になっているとは知らず手に取ったため、本全体としての主張などは分かりません。この中から気になるフレーズを探し、実際に原典にあたるためのガイドブック的なものとしてとらえればいいのかなと思っています。
    個人的に気になった部分をメモしてみました。




    ・「フランスの社会心理学者ル・ボンは『群集心理』(創元文庫)という名著を、十九世紀末に書いているが、かれはいう。『群集の最も大きな特色はつぎの点にある。それを構成する個々の人の種類を問わず、また、かれらの生活様式や職業や性格や知能の異同を問わず、その個人個人が集まって群衆になったというだけで集団精神をもつようになり、そのおかげで、個人でいるのとはまったく別の感じ方や行動をする』そして群集の特色を、かれは鋭く定義している-衝動的で、動揺しやすく、昂奮しやすく、暗示を受けやすく、物事を軽々しく信じる、と。そして群集の感情は誇張的で、単純であり、偏狭さを保守的傾向をもっている、と。昭和十五年から海鮮への道程における日本人の、新しい戦争を期待する国民感情の流れとは、ル・ボンのいうそのままといっていいような気がする。それもそのときの政府や軍部が冷静な計算で操作していったというようなものではない。日本にはヒトラーのような独裁者もいなかったし、強力で狡猾なファシストもいなかった。」(『昭和・戦争・失敗の本質』)

    ・「戦争をいうものの恐ろしさの本質はそこにある。非人間的になっていることにぜんぜん気付かない。当然のことをいうが、戦争とは人が無残に虐殺されることである。」(『B面昭和史』)

    ・「よく『軍人はつねに過去の戦争を戦う』といわれる。先頭の技術や方式の急激な変化を予測することは、たしかに非常なる困難なことに違いない。が、戦いがはじまってそれをまのあたりに見せつけられながら、なお『過去の戦争』を日本人は戦っていた。その悲しき象徴が戦艦大和・武蔵なのであった。」(『歴史探偵かんじん帳』)

    ・「本当に日本人は歴史に対するしっかりとした責任というものを持たない民族なんですね。軍部だけではない。みんなが燃やしちゃったんですから。」(『「東京裁判」を読む』(保阪正康氏・井上亮氏との鼎談で))

    ・「『一億総懺悔』は、そう影響がなかったと言う人もいますが、その後の日本人の精神や日本の歩みを見ても必ずしもそうではないように思えるんです。みんなして悪かったんだからお互いに責めるのはよそうじゃないかという『なあなあ主義』につながりもし、同時に、この言葉のなかに、トップ層の、結局は戦前戦中と変わらない国民指導の理念が垣間見えるからです。つまりこれが、『戦後どういう日本をつくるか』をわれわれがしっかり考えるための大きな障害になったと言いますか、むしろわれわれにそれを考えさせないようにした、という気がするんです。そしてこの先、皆がなんとなしに『そういうもんか』と、責任を追及しなくなったような印象があるのです。」(『昭和史 戦後編 1945-1989』)

    ・「まったく戦争というのはいつの時代でも儲かるのです。新聞雑誌もそうです。だから変なことを考えるやつが絶えないのです。」(『昭和史 戦後編 1945-1989』)

    ・「政治的とは、人間がいかに動かされるか、動かされたか、を考えることであろう。戦前の昭和史はまさしく政治、いや軍事が人間をいかに強引に動かしたかの物語であった。戦後の昭和はそれから脱却し、いかに私たちが自主的に動こうとしてきたかの物語である。しかし、これからの日本にまた、むりに人間を動かさねば…という時代がくるやもしれない。そんな予感がする。」(『昭和史 戦後編 1945-1989』)

    ・「戦争は、ある日突然に天から降ってくるものではない。長い長いわれわれの『知らん顔』の道程の果てに起こるものなんである。(中略)いくら非戦をとなえようが、それはムダと思ってはいけないのである。そうした『あきらめ』が戦争を招き寄せるものなんである。」(『墨子よみがえる』)

    ・「この元軍人には反省という言葉はないと、そのとき思った。そして勝海舟の言葉『忠義の士というものがあって、国をつぶすのだ』とそっとつぶやいたことであった。」(『B面昭和史』)


    <目次>
    第1章 幕末・維新・明治をながめて
    第2章 大正・昭和前期を見つめて
    第3章 戦争の時代を生きて
    第4章 戦後を歩んで
    第5章 じっさい見たこと、聞いたこと

  • 「コチコチの愛国者ほど国を害する者、ダメにするものはいない。」主観的過ぎると、盲信を生む。多角的視点とか批判的視点持つ、っていう21世紀型学力って、戦争しないための、取り返しのつかないことをしでかさないための視点なんだろうな、と思います。

  • 半藤利一氏の著作から切り貼り でも半分ぐらいは気持ちを新たに勉強になった
    戦争は悲惨なのは当然 問題は責任が明確になっていないこと
    「勝海舟」の評価高い 私も当然と思う 無血開城に加え、日清戦争に大反対
    大義なき戦は、結局国を滅ぼす その通りになった

    国家を滅ぼした戦犯は
    山縣有朋 官僚制度 統帥権の独立 帷幄上奏権 治安維持法 現人神思想
         伊藤博文は歴史に残せなかった
    近衛文麿 蒋介石を相手にせず ずるずると国費20兆円、人命50万人
    東條英機 戦陣訓の罪 超形式主義
    →忠義の士が国を潰す[勝海舟]

    ノモンハン事件の5つの教訓
    ①陸軍エリートの根拠なき自己過信
    ②驕慢なる無知
    ③エリート意識と出世欲
    ④偏差値優等生
    ⑤底知れない「無責任」 →私はこれが一番と思う

    それにしても読めば読むほど腹が立ってくる

  • 先の大戦前後、敗戦の経緯、すべて事実は学校で教わっていないと痛感。あの時代を生きた筆者の語る事実をもう一度かみしめなくてはならない昨今

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう かずとし)
1930年、東京府東京市向島区(現在の東京都墨田区)生まれ。東京大学文学部国文科卒業後、文藝春秋新社に入社。編集者として活動しながら匿名記事も記す。1965年に大宅壮一の名義を借りて『日本のいちばん長い日』を執筆、発行。『漫画読本』『増刊文藝春秋』『週刊文春』『文藝春秋』編集長を歴任。1995年に文藝春秋を退社してから作家・評論活動専任となる。
1993年『漱石先生ぞな、もし』で新田次郎文学賞、1998年『ノモンハンの夏』で山本七平賞、2006年『昭和史』で毎日出版文化賞特別賞をそれぞれ受賞。2009年の語りおろし『昭和史 1926-1945』『昭和史 戦後篇 1945-1989』はベストセラーとなった。
妻の半藤末利子は、松岡譲と、夏目漱石の長女・筆子の四女で、夏目漱石が義祖父にあたる。

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