日本の醜さについて 都市とエゴイズム (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344984981

感想・レビュー・書評

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  • 井上章一さん(1955~)の作品、ブクログ登録は2冊目になります。

    本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    個人主義で自己主張の強い欧米人とくらべ、日本人は集団主義的で協調性があり、「和をもって貴し」とする民族だと言われてきた。しかし、ひとたび街に目をむければ、それはまちがいだと気づく。利権まみれで雑多な東京。くいだおれ太郎やかに道楽など人形だらけの大阪。“千年の都”と称されながら破壊と建設をくりかえす京都。ローマと東京、ヴェネツィアと大阪、フィレンツェと京都―街並をくらべると、近代化と自由化をすすめ謳歌するあまり、無秩序とエゴにおおわれたのは欧米ではなく日本なのだ。都市景観と歴史が物語る、真の日本人の精神とは?

    ---引用終了


    「くいだおれ太郎」って、何ですか?
    検索すると、大阪を代表するキャラクターとのこと。

  • (特集:「先生と先輩のすすめる本」)
    伝統的な秩序を基調にした欧州の都市は建築相互が慎み深く尊重し合って美しく、自己主張する新建築がひしめく日本の都市はエゴを晒して醜いと著者は評する。そしてその「事実」は、協調性が高く保守的という日本人像と正反対で、日本人は個人の自由と近代的な自我の獲得に大成功したのだと揶揄する。言い換えると、現代日本の都市風景は、とりわけ戦後日本人の幼稚さ、慎みの無さ、歴史への無理解の反映ということで一々腑に落ちる。そして、失われてきたものの大きさに嘆息してしまう。通学の際、車窓からの眺めを観察しながら読み進めて欲しい。
    (教員推薦)

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  • 背ラベル:361.78-イ

  • 日本の醜さについて 都市とエゴイズム。井上 章一先生の著書。日本が集団主義的で協調性があるなんて幻想で妄想。個人主義で自己主張が強い自分勝手で利己主義だらけの日本。個人主義で自己主張が強い自分勝手で利己主義だらけだから日本の街は醜くなった。日本の街は醜さと日本人の個人主義で自己主張が強い自分勝手で利己主義だらけである現実から目をそらさないことがはじめの一歩。

  • 日本は戦後、利便性・個人の願望ばかりを追い求めて建築の美、都市景観を壊してきたという筆者の意見。
    都内在住の人間として、街並みの汚さは感じるところがあるので納得。
    パリを訪れた時も、繁華街であっても昔ながらの美しい街並みに驚いた。
    日本はごちゃごちゃとして一つ一つの看板、広告も視覚的にうるさい。

    都内では細長いペンシルハウス隣の住宅とほとんど隙間なく立ち並び、不動産の高騰から住宅の狭小化が止まらない。そんななかでも豊かな生活を求めて日本人は設計事務所に依頼をする。
    一般人が小さな住宅に対して建築家に設計を求めることは世界では珍しいと書かれていた。
    おそらく世界から見たら、庶民が狭小住宅に建築家を入れることなんかはちぐはぐで滑稽なことなのだろう…。
    インスタとかを見てても、日本人って結構自己顕示欲強い人多い印象。景観・建築にもそれが現れているというのは思い至っていなかったけれど、色々と納得の内容だった。

  • 海外、特にイタリアと日本の都市の建築物を比較して日本人の景観に関する価値観について批判する本。エッセイ風で手軽に読める。「海外では」という論調になりがちなのと、読む人によっては不快な思いをするかも、とあらかじめ断わりながら書かれている。

    言われてみれば、日本の建築は海外と比べて「昔からの建築様式」を捨て去り、逆に昔ながらの建物にはイベント性も伴うような懐かしさを感じてしまう。著者は日本の建築行政は安全性には事細かだが景観や文化の継承に関しては無頓着だと批判している。

    お堅い話しばかりではなく、薬局の店頭のマスコットキャラ、日本独自のものらしいKFCのサンダースおじさん、ラブホテルの建築様式が「子供じみている」という言及をしているくだりは、批判を含みながらも色々気づかされることが多くて少し笑える。

  • 大抵の日本人論では日本は西洋より遅れているといわれるが、こと街並みに関してはずっと自由で進んでいるという指摘。
    著者の過去の著作からの寄せ集めみたいな内容で、あんまり面白くなかった。

  • 日本のとイタリアの都市景観の差を、文化的歴史的背景から論じた本。
    視点が面白い。が、結論に救いがない。
    日本の都市景観が醜い理由の1つに、公共心の欠如をあげている。その通りだと思う。
    都市景観だけでなくインフラ問題など問題は山積している。都市や地域の公共性について議論をしなければいけない時期に来ている。

  • 全く纏めにくい本である。
    まあこの本に限らずこの著者の本は全てそうなのであるが・・・結論だけを纏めるのは簡単だが、著者はいろんな面白い例を繰り出して煙に巻く、その面白さを伝えるのが大変難しい。

    著者は、冒頭で「これから世間の常套的な物の見方にはむかう」と、見得をきる。
    「いわく、日本人には強い自我がない。欧米人とくらべれば、自己主張は苦手である・・・(略)・・・逆に全体の気配を察して、自分の立ち位置を探ろうとする・・・社会科学めかしてあらわせば、集団主義的な性質を日本人はおびている。逆に、欧米人は個人主義的であるという」
    この定説を建築というか都市景観という視点から突き崩していこうと試みているのが本書である。但しどこまでが読者に受け入れられるかは???である。

    欧州と日本との都市景観の比較を試みている。
    ・フィレンツェと京都、ヴェネツィアと大阪、ローマと東京等ヨーロッパの街並みと日本の都市景観の比較。我が国が誇る古都京都でさえ、都市景観という視点で見れば、落第であることがよくわかる。
    ・ドイツ軍に破壊しつくされたワルシャワの街を、ポーランドでは破壊される前の1760年代の景観に復元したという話。
    ・第二次大戦で、イタリアはローマが空爆を受けた翌日には、ローマの遺跡を守るために休戦を宣言している。日本では初めての空爆後3年4ケ月も抵抗をし続けた。イタリアが休戦を公表したあとに日本の大本営はこの国を口汚くあざけった。そう叫んだ大本営に、ローマの歴史遺産への想いをはせた者は、絶無であったろうと・・・我が国の文化的貧困を著者は嘆く。
    ・また第二次大戦のパリの解放しかり・・・ここで私はノンフィクション小説(映画にもなった)「パリは燃えているか」を思い出した。ヒトラーのパリ爆破命令に背いて、連合軍に無条件降伏をしてパリの街を守ったドイツの将軍がいた。

    現代の日本の建築行政は、安全面の配慮に神経をとがらす、火災の避難準備、建築資材の確認、風圧への備え、地震対策等々、だが、意匠面の要請は殆どない。街並みとの調和を求められるケースはまれである。

    その結果、勝手気儘な色や形のビルがならび、ふぞいな街並みが出来上がる。そんな日本的傾向は、大阪の道頓堀あたり(動くカニや食い倒れ人形等のバラバラで猥雑な街並み)で頂点に達する。
    「欧州の建築家には、皮肉も込めてのことだろうか、こう感嘆するものもいる。ヨーロッパではありえない表現の自由が、ここにはある・・・(略)・・・あの景観を、大阪が生み出した風変りなそれとして、受け止めるべきではない。あそこには、日本の近代の姿が、集約的に投影されている」

    かくて著者は「建築が『利益のためだけにつくられる』。ヨーロッパではありえない自由を、日本は勝ちとった・・・近代の日本はブルジョア革命をなしとげたのだ」とうそぶく。

    都市景観については、私は素人だが、そういう概念そのものがなかった日本とヨーロッパを比較するのは、そもそも無理な気がする。
    特に日本は木造建築主体で、台風・地震・火事にもてあそばれて、大陸の頑丈な岩盤の上に作られた石造りのヨーロッパとは比較しようがないと思うが、それを真面目に反論しても、この著者の場合意味がないように思う。

    著者は、従来思いつかなかったような例を並べ立てて、世の中の定説というような既存の考えを引っ掻き回すことに、喜びを感じているのかもしれない。
    つくづく食えないオヤジだと思うが、視点を変えて、このような見方もあるなと、面白がって読むと、読書の楽しみ方に幅が出来ると思う次第です。

  • 20190126 中央図書館
    井上のもともとの背景である建築を切り口に、イタリアと日本の比較の視点などから、日本はそれほどのものじゃない。。というスタンスかな。あるいは天の邪鬼的に逆の意味かも。

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著者プロフィール

建築史家、風俗史研究者。国際日本文化研究センター所長。1955年、京都市生まれ。京都大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程修了。『つくられた桂離宮神話』でサントリー学芸賞、『南蛮幻想』で芸術選奨文部大臣賞、『京都ぎらい』で新書大賞2016を受賞。著書に『霊柩車の誕生』『美人論』『日本人とキリスト教』『阪神タイガースの正体』『パンツが見える。』『日本の醜さについて』『大阪的』『プロレスまみれ』『ふんどしニッポン』など多数。

「2023年 『海の向こうでニッポンは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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