ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
3.67
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本棚登録 : 78
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344985070

作品紹介・あらすじ

人類の悲劇を巡る旅「ダークツーリズム」が世界的に人気だ。どんな地域にも戦争、災害、病気、差別、公害といった影の側面があるが、日本では、それらの舞台を気軽に観光することへの抵抗が強い。しかし、本当の悲劇は、歴史そのものが忘れ去られることなのだ。小樽、オホーツク、西表島、熊本、栃木・群馬などの代表的な日本のダークツーリズムポイントを旅のテクニックとともに紹介。未知なる旅を始めるための一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 井出明『ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅』幻冬舎新書。

    ブクログ献本企画で久し振りに当選。

    人類の悲劇の記憶を巡る旅である『ダークツーリズム』の定義と著者が実際に日本やアジアのダークサイドを巡った際のルポルタージュとポイントの紹介をまとめた作品。

    旅には様々な形や目的があるが、本書では『ダークツーリズム』というある意味での特殊領域の旅だけをカテゴライズしたことに意義があると感じた。

    堅苦しく述べれば、過去に起きた戦争や公害、災害、事故などの悲劇の跡をモニュメントとして遺して後世に悲劇の記憶を伝えることと、それらを学ぶことは全くの対極にありながら、両者のバランスを保つことの重要性を強く認識した。心構えとしては軽いノリの怖いもの見たさの物見遊山ではなく、過去の悲劇に真面目に正面から向かい合う真摯な姿勢が必要となるのだろう。

  • ブクログさんより献本いただき読破。
    ダークツーリズムという言葉は知っていたけれど、日本にどれくらいのダークツーリズムポイントがあるのか?なんて考えてみたこともなかった。悲しみの歴史は知識として知ってはいても、いざそこを訪れてみようと思ってもみなかった。しかしながら、今まで気になっていたり調べてみたりした史実について、実際に訪ねてみるという行為はものすごい経験と財産になるんだろう。深く学ぶために訪れてみるのでも、あくまで観光メインて訪れるのでも、感じるものはあるのだろう。旅のポイントやテクニック、アクセスについても書いてくれている本書は、読んで損はない一冊。旅に行きたくなる。

  • 歴史の暗黒面を刻んだ観光地を訪れることを、「ダークツーリズム」と呼ぶのだそうです。普段、観光について取材する機会が多いにも関わらず、恥ずかしながら本書を手に取るまで知りませんでした。
    もっとも、ダークツーリズムという言葉が世に出て来たのはごく最近のこと。何でも、世界的に人気になっている旅の一形態なのだそうです。本書は、日本のダークツーリズム研究の第一人者が、世界各地の「負の遺産」を訪ね、観光の新潮流の行方を展望したものです。
    著者が訪れた場所を章ごとに順に紹介すると、小樽、オホーツク、西表島、熊本、長野、栃木・群馬、インドネシア、韓国・ベトナム―です。トップを飾った小樽でダークツーリズムとは意外でしたが、小林多喜二を生んだ地ということに光を当てれば、たしかに頷けます。小樽では、陸軍の特攻艇マルレが隠されていた事実も明らかになりつつあるといいます。
    エコツーリズムの聖地として知られる西表島は、実は「疫病と搾取」という悲しい歴史を持つ島でもす。詐欺同然で集められた炭鉱労働者が島から逃走しないよう、地域通貨で賃金が支払われていたという事実には衝撃を受けました。
    熊本では、水俣病やハンセン病、炭鉱労働の記憶、栃木・群馬の旅では、日本初の公害事件と呼ばれる足尾鉱毒事件の跡をたどります。
    インドネシアではバンダアチェを訪ね、WHOのまとめで22万4千人もの人が亡くなったというインド洋津波の現場を見ることで災害復興について考えました。
    いずれも物見遊山では得られない価値のある旅でしょう。ただし、ダークツーリズムの旗色は、必ずしも良いというわけではないようです。足尾鉱毒事件の現場となった渡良瀬川を含む一帯は現在、ラムサール条約にも登録された湿地となっていますが、ダークサイドから掘り下げる紹介は、市の当局から拒まれたといいます。観光の持つ明るさを強調したい観光学系の学会からも煙たがられているそうです。
    しかし、歴史に負の部分はつきものです。悲しみの記憶をしっかりと受け継ぐことが、明るい未来を築くことにもつながるのではないでしょうか。本書でも触れられていますが、多喜二は愛する田口タキに送った恋文で、「闇があるから光がある」と書きました。秋の行楽シーズンには、ダークツーリズムで歴史の暗部に目を凝らしたいものです。

  • 「ダークツーリズム」とは何かという解説から筆者の実際に体験した旅の様子まで掲載されているので、ダークツーリズムについて未知の私にもよく分かった一冊でした。本書を通じてもっと興味が出てきたのでダークツーリズムについて調べてみたいです。

  • 旅人目線、というよりは、観光地目線で読むと面白いなと思いました。
    ダークツーリズムという言葉に興味を持ち、思わず読み始めましたが、学術としてのツーリズムを過去の悲しい事実と組み合わせる考え方は新しいようで昔からあるものなのだなと思いました。

  • ★3.5
    ブクログ献本。"ダークツーリズム"という言葉を本書で初めて知ったけれど、著者の言いたいことやその意義はとてもよく分かる。災害、病気、差別、公害等に見舞われたことは不幸なことではあるものの、その全てを忘れて次に進むのは少し違う気がする。例え痛みが伴っても、負の記憶を継承していくことは大切なことだと思った。ただ、それは部外者だから言えること、と言われてしまうと返す言葉がないのだけれど。本書に紹介された小樽に数年前に行った時、運河と食ばかりを楽しんでしまったので、勿体無いことをしてしまったな、という気持ちになった。

  • 日本におけるダークツーリズムのポイントを、エッセンスを押さえながら紹介してくれる。

    そもそもダークツーリズム対象が観光地として整備されているケースが稀である(例外は網走刑務所)。
    なぜかというと体制がつくりたい町のイメージとあわないからだ、
    など心理的社会的理由によるものだとの考察がなされ、内省を促される。

    我々はもっと、負の記憶と向き合い教訓を汲み取っていくべきなのかもしれない。

  • <目次>
    第1章  ダークツーリズムとは何か
    第2章  1泊2日で150年を体感する~小樽
    第3章  極北の悲劇を追う~オホーツク
    第4章  南の島の疫病と搾取~西表島
    第5章  水俣病、ハンセン病、そして炭鉱労働の記憶~熊本
    第6章  若者、女性、そして外国人の悲しみを知る~長野
    第7章  足尾銅山と渡良瀬川の爪あと~栃木・群馬
    第8章  バンダアチェから考える災害復興~インドネシア
    第9章  日本型レッドツーリズムの可能性~韓国・ベトナム
    第10章  ダークツーリズムのこれから

    <内容>
    「ダークツーリズム」とは聞きなれない言葉だが、「負の遺産」ならどうだろう?日本では言えば戦争関係、公害関係(この本では足尾や水俣)、さらには災害関係(この本ではインドネシアのバンダアチェが取り上げられていた)など。そこを歴史を踏まえながら、地域を観光することが「ダークツーリズム」だ。いきなり行ってもダメで、あらかじめ学習したり、現地のガイドと廻らないとダメだ。
    単なる物見遊山の旅の時代は終わったのではないか(特に日本人では)?各自が何かしらのテーマをもって旅をすることになるだろう。その一環として可能性があると思う。ただ本にもあったが、この手の話は政治や行政が絡み、複雑な部分がある。東日本大震災の地域では、こうした旅を否定する動きもあるという。また「レッドツーリズム」という言葉も出てくるが、これは政治的な「左派」との絡みだ。日本の場合、現在この辺は全否定されているきらいがあるが、そこの力が「ダークツーリズム」の支えになっている場合がある。
    大々的に賞賛される旅ではないが、自分も「廃墟」絡みで戦争遺跡をめぐったり、歴史絡みで公害地域に行ったりしている。もう「ダークツーリズム」を実践していたわけだ(笑)。  

  • 東2法経図・6F開架 B1/11/506/K

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著者プロフィール

井出 明(いで あきら)
1968年長野県生まれの研究者。現在、金沢大学国際基幹教育院准教授。京都大学経済学部卒、同大学院法学研究科修士課程修了、同大学院情報学研究科博士後期課程指導認定退学。博士(情報学)。近畿大学助教授、首都大学東京准教授、追手門学院大学教授などを経て、現職。
人類の悲劇を巡る旅「ダークツーリズム」と情報学の手法を通じ、観光学者として東日本大震災後の観光の現状と復興に関する研究を行う。
主著に『ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅』、そして『ダークツーリズム拡張―近代の再構築』。

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