日本が売られる (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • / ISBN・EAN: 9784344985186

感想・レビュー・書評

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  • 日本が切り売りされている。どちらの選択が本当に正しいのかはわからない。ただ言えることは、この国(政治家)や大企業の向いてる先は、ある国、ある政党、ある組織、ある人物であり、決して国民(社員)ではないと言うことだ。
    今回のコロナでそれは顕著になった。為政者には日本人の本当の魂を取り戻してもらいたい。手遅れになる前に。

  • 日本が売られる
    堤 未果【著】
    幻冬舎新書 つー4

    親米国という意味は、自国民の命や安全、暮らしにかかわる根幹をアメリカに渡すという意味ではない。
    日本の官僚、政治家たちの、国民にちゃんと説明しない、知らせないというアンフェアな政策が、密かに進められている。
    著者は、それを、「日本で今、起きている、とんでもないこと」として警鐘を鳴らしている。

    気になったのは、以下です。

    ■水ビジネス

    ・国土交通省が発表している水道水がのめる国は、アジアでは、日本とUAE。
     他は、196カ国中、15カ国にすぎない。
    ・命のインフラ「水道」は、同時に巨大な金塊でもある。ビジネスにするとうなるように儲かるからだ。
    ・20世紀は石油を奪い合う戦争だった。21世紀は水をめぐる戦争になるだろう。そして、その言葉は現実になる
    ・世界中のどこでやっても、じゃぶじゃぶ儲かる水道ビジネスは、開発経済学の概念を全く新しいものに上書きしてゆく。
    ・世界が水道公営化に向かう中、日本は民営化をスタート
    ・日本の水道を企業に売り渡す、「民営化」だ
    ・つまり水道というインフラには、利用者をひきつけるためにサービスの質や価格の安さで勝負しなければならない、競争が存在しない
    ・日本の法律には、電気、ガスには、安定供給の責任が事業者に課せられている。
    ・しかし水道だけが、そのような法律は存在しない。

    ■土地ビジネス

    ・次は核のゴミビジネスだ
    ・安倍総理は、他国へ原発を輸出する際、そこから出た核のゴミも日本が引き受けるという破格の条件を出している。
    ・タガが外れた環境省の暴走は加速してゆく。原発事故後に除染した汚染土を公園や緑地の園芸などにい再利用することを決定する

    ・農地には、労働者+流通+消費者の3セットを導入しろ
    ・日本で農地を買うとありえないおまけがたくさん
     法人を設立してスタッフを2人おけば、管理ビザがおり、10年たてば、永住権まで取得できる
    ・外国人の土地取得については、安全保障上問題があるとして、複数の国会議員が声を挙げているが日本政府の反応は鈍い

    ■農業ビジネス

    ・種子法の廃止、これまで日本をまもってきた食の安全に関する法律を廃止した今、公的制度や予算なしに、農家が種子開発するのは経済的にも、物理的にも厳しくなる。
    ・安い公共種子が作られなくなると、農家は開発費を上乗せした民間企業の高価な種子を買うしかなくなり、コメの値段が上がっていくだろう
    ・種子の特許は、モンサントや、デュポンなどのバイオ企業が所有しているため、各国の生産者が気づいた時には、同社の種子と農薬のセット購入と、特許使用料を支払う無限ループに組み込まれている

    ・日本は世界3位の農薬使用大国
    ・農薬のため、ミツバチは消える
    ・養蜂家の働きかけで、2008年からトウモロコシのネオニコチノイドの種子処理を禁止したイタリアでは、ミツバチの大量死がパタリととまった
    ・アグリビジネス業界にとって、頼れる味方はアメリカ政府だけではない。助け舟をだしたのは他でもない日本政府だった。
    ・遺伝子組み換えはもう古い、次はゲノム編集だ

    ・チーズ関税は、トランプの意をうけて3万トンの枠を受け入れた。既存7万トン+3万トンの乳製品がアメリカから流れ込んでくる。
    ・日本ではチーズをつくっていた牛乳が売れなくなり、捨てれば膨大な赤字だし、安くうれば、牛乳全体の価格が下がってしまう

    ・農業を成長ビジネスにせよ。アメリカの圧力で、これじゃあ儲からないから農協をはずせ

    ■築地卸売市場

    ・日本は食の多様性がありすぎると、撤退したフランス企業
    ・東京中央市場の中澤労組執行委員長は、卸売市場は、モノではなくヒトを育てる場所
    ・築地が邪魔になったので、解体して民営化
    ・築地VS豊洲 真の目的は卸売市場の解体

    ■労働市場

    ・どんなに働いても違法にならないワケ
    ・国連からも強く非難されている、蟹工船のような環境がまかり通っている
    ・政府が目指す、女性が輝く社会(女性とは、外国人労働者)
    ・外国人労働者の受け入れ分野に介護を加える法改正が成立
    ・日本に参入してくる、米大手介護ビジネス、中国系ファンド。
    ・人件費についての選択肢が大幅に広がることになる

    ・ブラック企業を取り締まる、労基署を民営化せよ
    ・邪魔な行政を民営化する、いつもの手法で、法改正が進む
    ・モンスター社員はうつ病にしてやめさせる方法
    ・経営者側の人間が作る、「なんちゃってブラック企業対策」

    ■学校

    ・公立学校を民営化せよ、公教育も、ウォール街にとっては、すばらしい投資商品の1つだ
    ・貧困大国アメリカで進められた、公設民営学校の導入と同様のパターンで日本も効率化へ

    ■医療

    ・国保を食いつぶす、外国人たち
    ・医療目的を隠して来日し、国民健康保険に加入して高額の治療を受けにくる外国人
    ・政府は外国人が日本の公的保険制度を使う条件をどんどんゆるめている
    ・理不尽なアメリカの要求にあらがう、ベトナム、マレーシアなど、他の国が反対する中、立ち上がったのが、どんな時もひたむきにアメリカの後をついてゆく日本政府だった。
    ・日本の介護業者はどんどん倒産
    ・日本は高齢者先進国になれるのか、それとも、貧困大国アメリカの後をおい、今だけカネだけ、の社会を突き進むのか

    目次
    まえがき いつの間にかどんどん売られる日本!
    第1章 日本人の資産が売られる
    第2章 日本人の未来が売られる
    第3章 売られたものは取り返せ
    あとがき 売らせない日本
    参考文献

    価格 ¥946(本体¥860)
    幻冬舎
    2018/10/05 発売 第1刷
    2018/10/31 発売 第5刷
    サイズ 新書判
    ページ数 291p/高さ 18cm
    商品コード 9784344985186
    NDC分類 302.1
    Cコード C0295

  • 本書が話題になっている割には周囲でそういう会話にならないのは、そもそも関心を持っている人がさらに本書で実情を知り、TV等のメディアの情報だけで生きている人は、政府の思い通りに踊らされて、足元がすっからかんになるまで気がつかないという構図になっているのだと思います。
    本書を読むと暗黒な未来に絶望してしまい、寝つきが非常に悪くなる事間違いなしです。
    阿部政権は、文字通り日本の公共的なものに値札を付け、安値でハンマープライス。ハイエナのような世界の投資家たちが群がり始めているという、まさにホラー的展開で、読めば読むほど現実とは思えない程悪魔的な行動です。国の負担を減らすために何もかも民営化して、そのつけは全て国民に払わせるつもりとみました。
    以前から水源を他国が買っているという話と、主原料が枯葉剤である農薬を日本で売りまくって国もそれを推奨しているということは本で読んでいましたが、さらに土地から海、医療から教育まで全てをビジネス理論で売り払うその場当たり的な対応に絶望します。
    日本人全体で監視しておかないととんでもない事になってしまいます。クールジャパン的な番組を作りまくって悦に入っている暇が有ったら、しっかりと社会的責任をマスコミが果たして頂きたい。そして皆この本を読んで危機感を持ちましょう。自分で手を伸ばさないと国が隠したがっている都合の悪い現実は見えてきません。
    「縮小ニッポンの衝撃」「未来の年表」とセットで読むとさらに絶望感が膨らみますが、是非セットで読んで頂きたい。日本国民はそれくらいのショックを受けた方がいいです。

  • 医療や水道、食等々、人間が生きていく上で絶対必要なものが、静かにかつ、確実に食い荒らされている実態を解説した本。ここに書かれていることが事実なら、そう遠くない将来に、日本は崩壊してしまうのではないか。野党はぜひこの本をベースに事実関係を確認し、国会で問題提起していただきたい。多くの日本国民に読んでもらいたい本。ちなみに、私は休暇中のリゾート地で本書を読んで暗澹たる気分になり、休暇が台無しになりました。

  • これが日本の現状なの?衝撃的な事実に、足元がぐらついた。アメリカや大企業にとって有利な法律に、いつの間にかするりと変えてしまう国に、わたしは住んでいたのか。あるのが当たり前なものに値札をつけられていることも、規制改革推進会議の内容にも、TPP11の内容にも、全く関心を持たずに生きていたことに気づいた。第2章までは、時すでに遅し...ということばかりだったけれど、第3章で他国の市民団体の活動を知り、わたしにも出来ることはある、行動に起こそう、と思った。

    農薬大国日本。ミツバチの大量死の原因となり、世界のあちこちで使用を禁止しているネオニコチノイド系の農薬を、いまだに使い続ける日本。アメリカですら反発の強い「ベトナム戦争時代に製造していた枯葉剤の主成分」でできている除草剤をあっさり認可した日本。各国で使用を禁止している農薬や除草剤の使用基準を緩める日本の現状について読んだら、もはや食指が動かない...。

    p15
    国土交通省が発表している水道水が飲める地域は、アジアでは日本とアラブ首長国連邦の2カ国のみ、その他はドイツ、オーストリア、アイルランド、スウェーデン(ストックホルムのみ)、アイスランド、フィンランド、ニュージーランド、オーストラリア(シドニーのみ)、クロアチア、スロベニア、南アフリカ、モザンビーク、レソトの15カ国(196カ国中)だ。

    p17
    世界の事例を見てみると、民営化後の水道料金は、ボリビアが2年で35%、南アフリカが4年で140%、オーストラリアが
    4年で200%、フランスは24年で265%、イギリスは25年で300%上昇している。
    高騰した水道料金が払えずに、南アフリカでは1000万人が、イギリスでは数百万人が水道を止められ、フィリピンでは水企業群(仏スエズ社、米ベクテル社、英ユナイテッド・ユーティリティーズ社、三菱商事)によって、水道代が払えない人に市民が水を分けることも禁じられた。
    民営化して米資本のベクテル社に運営を委託したボリビアの例を見てみよう。
    採算の取れない貧困地区の水道管工事は一切行われず、

    p18
    世界銀行やアジア開発銀行(ADB)、アフリカ開発銀行などの他国間開発銀行とIMFは、財政危機の途上国を「救済する」融資の条件に、必ず水道、電気、ガスなどの公共インフラ民営化を要求する。
    断れば、IMFはその国を容赦なくブラックリストに載せるため、途上国側に選択肢はない。
    国際線金貸しカルテルの親玉であるIMFのブラックリストに載せられたら最後、援助国の政府や金融機関は、もうその国に援助しなくなるからだ。

    p19
    「投資家のための環境改善策」(民営化、競争、規制緩和、〈企業の〉所有権強化)

    p21
    「2025年までに地球の3分の1の人々が新鮮な水にアクセスできなくなり、2050年までには、地球は壊滅的な水不足に陥る」

    p31
    何よりも素晴らしいのは、災害時に水道管が壊れた場合の修復も、国民への水の安定供給も、どちらも運営する企業でなく、自治体が責任を負うことになったことだ。
    日本の法律では、電気やガスは「電気事業法」「ガス事業法」という法律のおかげで、民間であってもガスや電気の安定供給の責任は、しっかり事業者に課せられている。
    だか水道だけは「水道事業法」が存在しないのだ。それをいいことに今回の法改正では、その責任は事業者から自治体につけ替えられた。
    これなら企業は自然災害大国の日本で、リスクを負わず、自社の利益だけを追及すればいい。

    p34
    環境省は、原発事故前は100ベクレル/kgだった放射性廃棄物の「厳重管理・処分基準値」を、原発事故後80倍に引き上げていた。だが、あまりに量が多く、置き場所もない。
    そこで通常ゴミと一緒に焼却するだけでなく、公共工事にも使うことにした。

    p35
    日本の安倍総理は、他国へ原発を輸出する際、そこから出た核のゴミも日本が引き受けるという破格の条件を出している。

    p36
    2018年4月1日。
    今度は原発事故後に除染した汚染土を、公園や園芸などにも再利用することを決定する。
    もちろん国民の健康体策もしっかり入れた。工事をする作業員やその地域に住む住民の被爆量が年間1ミリシーベルトという健康リスク上限を超えないよう、ちゃんとセシウム濃度を調整し、最後は汚染されていない土を50センチかけるのだ。相変わらず恐るべき緩さだった。

    p42
    アメリカでは1996年から遺伝子組み換え種子の商業利用が開始され、現在米国内で作付けされている大豆、綿、とうもの9割以上で遺伝子が組み換えられ、国内に流通する加工食品の9割に、遺伝子組み換え原材料が使用されている。

    p47
    1991年ら種子開発企業の特許を守る国際条約(UPOV条約=日本、米国、EUなど51ヵ国が署名)が改正され、植物の遺伝子及び個体を開発企業の知的財産とし、開発者の許可なしの農家が種子を自家採種(農家が自ら生産した作物から種子を取ること)することを禁止する法整備が、加盟国に促される。

    p49
    そもそもUPOV条約ばかり取り上げられているが、2013年に日本が加盟した「ITPGR条約(食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約)」では、自家増殖は農民の権利として認められている。

    p53
    あまり知られていないが、日本は世界第3位の農薬使用大国なのだ。

    ちなみに日本は畑にまく農薬だけでなく、国民が口にする食べ物の残留農薬基準もかなり緩い。

    p58
    例えばブドウ一つとってみても、日本人は安全基準値がヨーロッパの500倍という濃度で、ネオニコチノイドを体内に入れているのだ。

    p61
    農水省の官僚たちは知っているのだ。私たち消費者か見た目重視で食品を選び、農家や農薬の使われ方に無関心でいる限り、農薬大国日本はその方針を変える必要などないことを。

    急性毒でミツバチを殺すからと、フランスが2004年に全面禁止した浸透性の「フィプロニル」は、日本では今もあちこちの水田で使われている。

    p67
    2000年5月にアメリカ農務省が発表した報告書によると、過去5年で米国内の農薬使用量は大きく跳ね上がり、中でもグリホサートは他の農薬の5倍も増えていた。
    除草剤の量が5倍に増えれば、その分アメリカからの輸入遺伝子組み換え大豆に残留する農薬も多くなり、日本の安全基準に引っかかってしまう。この発表が出た同じタイミングで、日本政府はアメリカ産輸入する大豆のグリホサート残留基準を、しっかり5倍引き上げた。これで残留農薬が5倍に増えた大豆は、何の問題もなく引き続き日本に輸入される。

    p71
    翌年2017年の6月。農水省はグリホサート農薬の残留基準を再び大きく緩めることを決定し、パブリックコメントを募集し始める。
    今回はトウモロコシ5倍、小麦6倍、甜菜75倍、蕎麦150倍、ひまわりの種400倍という、本来本元アメリカもびっくりの、ダイナミックな引き上げ案だ。

    p73
    日本政府はEUの動向を様子見していたが、この結果を知ると、自国も翌年12月25日にグリホサート残留基準値引き上げ(最大400倍)を実行したのだった。

    p74
    問題になっていた、グリホサートに耐性を持つ雑草の出現については、さらに強力な除草剤「2、4D」で枯らせば良いという結論になった。

    p76
    ネオニコチノイド農薬もグリホサート除草剤も、どちらも遺伝子組み換え作物と切っても切れない関係だ。遺伝子組み換え種子はネオニコチノイド農薬で処理され、作付けされた後は、雑草を枯らすためにグリホサート除草剤がかけられる。

    p79
    日本は世界一の遺伝子組み換え食品輸入大国だが、表示に関する法律は、どれもほとんどがザル法だ。
    組み換えた遺伝子やそれによってできたタンパク質が残らない食品は、表示する必要がない。
    例えば醤油や味噌などの加工品や、油や酢やコーンフレーク、遺伝子組み換え飼料で育った牛や豚や鶏や卵、牛乳や乳製品に、表示義務はないのだ。

    p90
    農家の所得を保証する補助金制度は民社党政権でやっと始まったが、その後すぐに安倍政権が半分に減らし、2019年には再びゼロになってしまう。

    p96
    さらにトランプ大統領が「TPP以上の自由化をさせる」と気合いを入れる日米FTAが締結されれば、今度はアメリカ製の乳製品が今よりも勢いを増して入ってくる。
    その中にはカナダ政府や欧州委員会が、発がん性があるとして輸入を拒否している、人工的に乳量を3割増やす遺伝子組み換え成長ホルモン「γBGH」を投与した牛のミルクも含まれるだろう。

    p101
    世界では今、枯渇する〈食糧〉と〈水〉をめぐる争奪戦が起きている。過熱する奪い合いは巨大な利益を生み出し、生命に直結したものほどマネーゲームの商品価値は高い。

    国内の河川の70%が汚染されている中国では、水資源の確保が政府の緊急課題になっている。

    p123
    グローバル化した世界では、利益を出したい投資家や企業群が、公的資金であるはずの、種子や森、地下水や遺伝子、CO2を排出する権利に至るまで、何もかもに値札をつけてゆく。

    p158
    2018年6月15日。
    政府は「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)で、ついに2025年までに、50万人の外国人労働者を受け入れる方針を発表した。

    p159
    母国の斡旋業者に法外な手数料を払い、借金を背負って来日する実習生たちは立場が弱い。給料は最低賃金以上とされ、
    途中で職を変えることもできず、ブラックな働かされ方を余儀なくされても声があげられないのだ。あまりの辛さに逃げ出す者が後を立たず、2012年からの5年間で3.5倍に急増、すでに1万人以上が失踪している。

    p175
    日本でパチンコ客が1年間に失う平均金額23万円

    p186
    日本の「学校教育法」では、公立学校は自治体が運営し、そこでの教育は公務員が行うことになっているが、国家戦略特区内で設置された公設民営学校は前述した〈水道〉と同じで、自治体が所有し、民営が運営する。大阪府の非正規雇用率は現在中学校だけで41.3%だが、今後国家戦略特区法を使って設立した公設民営学校で働く教職員と事務員は、全員そろって100%非正規労働者になる。

    p193
    安倍総理が「国家戦略特区」というドリルで次々に穴を開けている、教育、農業、労働、医療という分野が、全てをマネーゲームの道具にしたアメリカからの要望だからこそ、私たちは慎重に、今のアメリカのリアルな現実を検証すべきだろう。

    p197
    政府が毎年騒ぎ立てる「医療費40兆円」の原因は高齢化などではない。最大の理由は、アメリカから毎年法外な値で売りつけられている医療機器と新薬の請求書が日本人の税金で支払われているからだ。

    それ以来ずっと日本はアメリカ製の医療機器と新薬を他国の3~4倍の値段で買わされているのだ。

    p226
    日本ではスマホユーザーの半数が利用する大人気アプリのLINEだが、韓国では2014年以来、ユーザーが次々に逃げ出している。

    中でも一番人気が高い乗り換え先は、安全性に定評があるドイツのTelegramだ。
    チャットの内容は全て暗号化され、転送は不可、サーバーに足跡も残らない。投稿内容は2秒後から1週間先まで、ユーザー自身で消すことができる。

    p255
    「企業が第一に守るべきものは、株主と四半期利益です。
    公共資産である」

    p285
    高速の点で次々にやってくるニュースに慣れて、自分の頭で考えるのをやめてしまえば、「今だけカネだけ自分だけ」の狂ったゲームを暴走させ、足元が崩れてゆくスピードは増してゆく。
    だが何が起きているかを知った時、目に映る世界は色を変え、そこから変化が始まるだろう。
    水道や土、森、海や農村、教育や医療、福祉や食の安全......あるのが当たり前だと思っていたものにまで値札がつけられていたことを知ったとき、私たちは「公共」や「自然」の価値に改めて目をやり、そこで多くのものに向き合わされる。他者の痛みや、人間以外の生命、子供たちがこの先住む社会が、今を生きる大人たちの手の中にあることについて。

  • 刺激的なルポルタージュが刊行された。
    民営化の失敗から国営化公営化に舵を切っている諸外国を例に挙げ、日本の政策に一石を投じている。
    政府はその失敗例を教訓とはせず、世界の趨勢に逆行すらしていると、警告する。

    日本の貴重な資産=水、土地、タネ、農地、森等々。
    政府はそれらに関連する重要法案を、国民の関心が逸れている間に成立させているそうだ。
    「水道民営化法案」は、オウム真理教の死刑報道の最中に。
    森友問題の報道に隠れた「主要農作物種子法」の採決。
    「森林経営管理法」という日本の資産を売る法改正も、国民の知らないうちに。
    森林も農地も、安全保障問題上の水と食料が絡む、日本にとっての貴重な資産だと、著者は言う。
    それらの重要法案がいつの間にか成立していることに、背筋の凍る思いがする。
    また、予算の度に問題となっている「医療費40兆円」の最大の原因は高齢化ではなく、アメリカから法外な値で売りつけられた医療機器や新薬が、日本の税金で支払われているからだと、喝破する。

    今、国会で審議されている外国人労働問題についても論じている。彼らは使い捨ての商品ではなく、我々と同じ人間であり、100年単位で受け止めなければならない存在だ、と。

  • 読まない方がいい。

    他の人も書いてあるように、危機感を煽っていて、読むと鬱になる本だ
    知らない方が幸せな事もある
    何より情報量が多くて疲れる

    この本を読んで、政治や経済など自分の身の回りのことに興味や関心を抱き
    自分の頭で考えて、更なる情報収集をすることで
    物事の本質や裏側を理解する人が増え
    更に投票行動や市民運動、購買行動などが変化したら
    面倒だ

    今だけカネだけ自分だけ、というのは人間の本質である
    多くの日本人は近視眼的な自己の利益の為に動いている
    その結果が、現状なのだから、この本を読んで共感する事は自己否定に繋がる
    自己否定は苦しよ
    嫌な事は避けよう
    楽で楽しい事をしていた方がいいじゃない
    他人と比較してちっちゃな自尊心を満たして、周りを気にして行動し、今ある富を失う事に怯えて生きる
    そしたら人生なんとなく平和に終われるよ

    もう一度言う、読まない方がいい。
    読んじゃダメだ!
    ダメだよ!
    ダメ!絶対!

  • 日本人の必読書。日本と日本人を大切にしない政治家に価値はない。
    保守だと思っていた自民党が、喫緊のスパイ防止法ではなく、法律としても問題が多く不要不急なLGBT法案を多数決無視で拙速にすすめたり、最近なにかおかしい。
    安倍総理が暗殺されて保守の柱がいなくなったのも大きいが、本書を読んで、実は既に安倍政権時代から様々な企みが水面下で進行していたことがわかる。
    経済はグローバル化しており、それでも自国の利益を死守することが政治家としての役割なのに、国と国民をだまし、恥じないのはどういうわけだろう。それとも単なる先が見通せない無能集団なのか。
    今、日本が進めようとしている多くの政策や問題(水道民営化、種子法廃止と自家増殖禁止、海外では禁止されている農薬ネオニコチノイドやグリホサートの許可、酪農家の切捨て、外国資本による野放図な土地購入放置、無計画な森林伐採、農業や漁業や林業という食糧自給となる基幹産業の自由化、2014年外国人労働者受け入れの永住権資格を5年から3年に短縮しさらに無期限在留資格を与え、2018年には自治体就業も可能とする悪法、カジノ利権、外国人でも3ヶ月の滞在で国保に加入出来、高額医療を日本で受ける医療食い逃げが頻発、医療費高騰の最大の理由はMOSS協議で米国産医療機器と新薬を他国の3倍の値段で買わされている、日本人介護士の待遇改善をしない、混合診療解禁、マイナンバーカードを筆頭に個人情報漏洩の頻発など盛りだくさん)は、既に欧米で弊害が出ている先行例もあるのに、なぜ失敗に学ばないのか意味不明。
    特に教育、農業、労働、医療が、国家戦略特区という岩盤規制打破という掛け声で米国や多国籍企業のマネーゲームの狩り場とされてしまう危険性に日本人はもっと問題意識を持つべき。
    そして、外資参入はもちろんマスコミにも伸延し、報道しない自由を謳歌。
    逆に光明も。
    イタリアでの五つ星運動(候補者は政党助成金を拒否し、大口献金も受け取らないことを徹底し、市民が政治をコントロールする政治活動)は政治の在り方を考えさせる成功例だと思う。また、2018年マレーシアのマハティール首相が消費税を廃止した。日本でも法人税を消費税導入前の税率に戻せば可能となるはずだが。

    2018年に書かれた本書には、今に続く日本の潜在的問題がすべて網羅されている力作ですが、それ故にあえて反日マスコミが話題にしなかった理由も納得。
    あとがきで引用された宇沢弘文先生の言葉「人間を大切にしない経済学に価値などない」が心に響きます。

  • 堤未果氏は、ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒、ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士課程修了、国際連合婦人開発基金(UNIFEM)勤務、NGOのアムネスティ・インターナショナル・ニューヨーク支局員、アメリカ野村證券勤務を経て、フリーのジャーナリスト。『ルポ 貧困大国アメリカ』(2008年)はベストセラーとなり、日本エッセイスト・クラブ賞、新書大賞を受賞。アメリカや日本における社会問題に関するルポ、ノンフィクション作品の執筆多数。
    本書は、我々が気付かないうちに、日本人の資産や日本人の未来を方向付ける制度が、ビジネスの対象となっている(=売られている)という事実を、取材とデータから明らかにしたものである。
    私は新書を含むノンフィクションを好んで読み、興味のある新刊はその時点で入手するようにしているが、今般、過去に評判になった新書で未読のものを、新・古書店でまとめて入手して読んでおり、本書はその中の一冊である。
    本書では、まず冒頭で、イラク戦争から帰還した元米兵が発した「戦場では敵がどこに潜んでいるのかの情報がないから、油断すると命とりになる。自分の周りが静かだから平和だろうと思い込むのが、最も危ない状態だ。木ばかり見ていると森は見えない。遠くのわかりやすい敵に気を取られて、近くにいる一番危険な敵を見落とせば、気づいた時には全方位囲まれて、あっという間にやられてしまう」という言葉を引用し、今でも国民の多くが「水と安全はタダ」と信じている日本において、「売国」的行為がどんどん進んでいることに警鐘を鳴らす。
    そして、具体的に、水が売られる(水道民営化)、土が売られる(汚染土の再利用)、タネが売られる(種子法廃止)、ミツバチの命が売られる(農薬規制緩和)、食の選択肢が売られる(遺伝子組み換え食品表示消滅)、牛乳が売られる(生乳流通自由化)、農地が売られる(農地法改正)、森が売られる(森林経営管理法)、海が売られる(漁協法改正)、築地が売られる(卸売市場解体)、労働者が売られる(高度プロフェッショナル制度)、日本人の仕事が売られる(改正国家戦略特区法)、ブラック企業対策が売られる(労働監督部門民営化)、ギャンブルが売られる(IR法)、学校が売られる(公設民営学校解禁)、医療が売られる(医療タダ乗り)、老後が売られる(介護の投資商品化)、個人情報が売られる(マイナンバー包囲網拡大)、について、近年の動きが詳細に語られている。
    こうして見ると、あらゆる分野で同じような動きが起こっていることがわかるのだが、これらの(大半の)根底にあるのは、行き過ぎた資本主義、即ち、1980年代から米英が主導した新自由主義(ネオ・リベラリズム)であり、日本でも、JR等の3公社民営化、金融ビッグバン、小泉政権での様々な規制緩和が行われており、その延長と言えるものである。
    よって、私が思うに、これらの動きを止め、更に、逆転させるためには、根本的な発想の転換が必要であり、それは、斎藤幸平氏がベストセラー『人新世の「資本論」』(2020年出版/本書は2018年出版)で述べている、資本主義的価値観からの脱却、「脱成長」的社会への転換なのである。本書のあとがきで、スペインのテレッサ市が、民間に売却した水道の運営権を買い戻して再公営化し、水道を、消費する「商品」ではなく「全住民の共有資産」と位置付けることにしたことが紹介されているのだが、これはまさに、斎藤氏が述べている「コモンズ」の一例である。
    著者が明らかにした数々の「敵」を知った今、我々が為すべきは、個々の敵兵の撃破ではなく、戦局を完全に逆転する価値観の転換であろう。
    (2022年9月了)

  • なかなか。
    日本は、交渉、商売がへただと思い知らされる。
    日本の良さなのかも知れないが。

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著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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