子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か (幻冬舎新書)

  • 幻冬舎 (2023年11月29日発売)
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本 ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784344987135

作品紹介・あらすじ

子どもへの性加害は、心身に深い傷を残す卑劣な行為だ。なかでも問題なのが、顔見知りやSNS上にいる〝普通の大人″が子どもと信頼関係を築き、支配的な立場を利用して性的な接触をする性的グルーミング(性的懐柔)である。「かわいいね」「君は特別だ」などと言葉巧みに近づく性的グルーミングでは、子ども本人が性暴力だと思わず、周囲も気づきにくいため、被害はより深刻になる。加害者は何を考え、どんな手口で迫るのか。子どもの異変やSOSをいかに察知するか。性犯罪者治療の専門家が、子どもを守るために大人や社会がなすべきことを提言する。

感想・レビュー・書評

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  • 旧ジャニーズ事務所における性加害問題で広く知られるようになった、子供への性加害。
    男の子でも被害者になるんだ、と驚いた人も多かっただろう。
    売名だとか、嘘つきだとかそういった反応も多かった。
    だが、実際は残念ながら珍しいことではない。
    限られた子供だけが被害に遭うわけではないのだ。
    親には言えなかったけれど、私も露出狂に遭ったり、電車内の痴漢、デパート内で陰部を押し付けられたりしたことがある。
    今はSNSを入り口にした性犯罪が増加している(26頁 警察庁統計より)。
    決して、関係ない世界の出来事ではないのだ。

    加害者の頭の中は、認知が歪み過ぎていて腹立たしい。
    「相手が嫌がっていないと思った」は圧倒的支配関係の中では加害者に都合のいい言葉でしかない。
    113頁にあるように、刑法改正は本当に画期的である。
    少しでも辛い思いをする子供が減らせるよう、実際に動いてくれた大人がいることがほんの少しでも助けになるのなら。

    本書の良い点は、被害者支援は言わずもがな、加害者の治療、また加害者の体験が収められていることである。
    正直なところ加害者憎し、に動きがちな私の心に一旦歯止めをかけ、矯正、再犯防止という犯罪抑止とは何かを思い出させてくれる。
    心情的なものと、現実とをみて、より良い社会を作るにはを考えることは困難が多い。
    けれども、それを実践し続ける著者含めた多くの人々に敬意を表するとともに、
    私のような市井の人々も皆で考え、実践することで、少しでも苦しむ人が減ることを希わずにはいられない。

  • ■子供と信頼関係を築き関係性を巧みに利用して性的な接触をする行為をグルーミング(性的懐柔)という。
    ・2023年7月に改正刑法が施行され「面会要求等罪」(グルーミング罪)が新設された。
    ・グルーミングの3つのパターン
    ①オンライン上でのグルーミング
    ②面識のある間柄でのグルーミング
    ③面識のない間柄でのグルーミング
    ■治療の三本柱
    ①認知行動療法
    ②薬物療法
    ③性加害行為に責任を取る
    ■再犯を踏みとどまらせる手がかりは3つある。
    ①社会の中に自分の居場所があること。「自分はここにいていいんだ、ありのままに生きていていいんだ」と思える場所があること。
    ②裏切ってはいけない大切な人がいること。人との繋がりがないと人は追い込まれたとき自暴自棄になってしまうが、大切な人がいることで歯止めとなる。
    ③希望があること。
     この3つは、小児性犯罪者に限ったことではなく、人が同じ過ちを繰り返さないために大切なこと。

  • グルーミングへの道すじや、加害者の能力の高さに驚いた。性的志向と性的嗜好の使い分けはあまり納得できなかった。

  • 「包括的性教育」の勉強をしていて、性被害を防ぐには「性加害者」について学ばなければならないと思い、この本を手に取りました。

    以下、勉強になったことメモ。
    ーーーーーーーーーーーーー
    グルーミングとは、子どもと親しくなり、信頼関係を築き、その信頼を巧みに利用して性的な接触をすることです。オンライン、面識のない間柄、面識のある間柄の3パターンがありますが、オンライン、特にSNSでの接触が増えているようです。
    (この本を読むとわかりますが、出会い系だけではなく、ゲームで有料アイテムのプレゼントなどから親しくなることもあるようです。)
    2022年の内閣府の行なった16−22歳向けアンケート(6224人)のうち、26.1%に相当する人、つまり子どもの4人に1人が性被害にあっています。被害届を出したのはわずか14%。
    子どもの容姿と被害のあいやすさは関係ない。
    グルーミングの被害者である子どもは被害を認識できないし、加害者に洗脳されていることもよくある。
    被害者が年月を経て加害者になることもある。加害者が刑務所で自分のライフヒストリーを書き出すことで初めて子どもの頃に被害に遭っていたことに気づくこともある。

    加害ケースを読み、加害者の供述を聞くと、吐き気をもよおしました。加害者はいわゆる変態的な人ではなく、「大卒、サラリーマン、家族持ち」といった優しいその辺にいる人が加害者であることもよくあるようです。

    グルーミングの5つのプロセス
    ①被害者の選択→自尊心が低い、孤立、貧困、物理的に父親がいない子ども(母子家庭)が典型のようです
    ②子どもにアクセスし、分離を進める→家族や友人から引き離し、「みんな君のことをわかってくれていないね」などと声掛け
    ③信頼を発展させていく
    ④性的コンテンツや身体的接触に鈍麻させる
    ⑤虐待後の維持行動→口止め、小遣いなど

    「根底にあるのは男尊女卑の価値観ではないか」
    小児性犯罪者が語る「かわいい」が質的には違う。
    日本ではかわいい存在は、小さくて弱くて守るべき存在。日本では「男性は女性よりも優れていなければならない」という価値観が根強くあり、女性は「控えめで思慮深い」「やさしい」「思いやりがある」「気遣いができる」などを求められる。「女性が未熟であること」を評価する大人と、「絶対に脅かさない存在」である子どもの無知や弱さを巧みに利用する小児性犯罪者は男尊女卑という価値観において地続きの存在ではないか。(p.97)


  • 勉強になる

  • 気分が悪くなる表現がある本であるが、LGBTQとの違い。性的指向と性的嗜好。加害者の特徴。ターゲットの選び方。加害者も幸せになる権利がある。など読まなければ分からなかったことが多くあった。

  •  子供に対する性犯罪についてのパターン、グルーミング、そして、どのようにすることが際犯防止になるのかということがしっかりと書かれていました。世間の厳罰かを求める声ももっともですが、それだけでは再犯防止をできないというエビデンス的な側面も無視するわけにはいかないのだろうなと。

  • 何被害者が被害者である自覚を持つことが出来ない子供であることに、加害者の弱さや歪みを強烈に感じた。「同意のもと」だの「好意を感じた」だのと言う割に関係性について隠そうとするその行動こそ後ろめたさがある。加害者にも壮絶な過去があるケースが多いとはいえそれを理由に許すわけにはいかないし子供への性加害を行っていいことにはならない。加害者が更生するためのサポートは必要であると感じるが、それは犯罪行為を犯す前の生活を取り戻すための活動では無いことを承知して欲しい。犯罪行為を犯してしまった加害者への許しは全く必要ないという結論に至らせてくれた一冊。
    私の考えは極端かもしれないけれど、私は加害者よりも子供を守りたい。

  • 配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
    https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01426642

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著者プロフィール

精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模と言われる依存症回復施設の榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などさまざまな依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、現在までに2500人以上の性犯罪者の治療に関わる。主な著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』(ともにイースト・プレス)、『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)、『「小児性愛」という病——それは、愛ではない』(ブックマン社)、『しくじらない飲み方 酒に逃げずに生きるには』(集英社)、『セックス依存症』(幻冬舎新書)、監修に漫画『セックス依存症になりました。』(津島隆太・作、集英社)などがある。

「2023年 『男尊女卑依存症社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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