わたしの山の精霊ものがたり: 山の神さまにまつわる24と3つのお話

  • さ・え・ら書房
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本棚登録 : 56
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784378014944

作品紹介・あらすじ

舞台は中央ヨーロッパの大山脈リーゼンゲビルゲ。深い森に、山の頂に、はたまたふもとの村に、七変化のリューベツァールが現われます。精霊がくりだす魔法のいたずらに、村びとや山の旅びとたちは泣いたり笑ったり-。戦争によって生まれ故郷を追われたプロイスラーが、山の精霊と遠いふるさとを思いつつ書きあげた、リーゼンゲビルゲの山国への愉しくも切ない民話の旅。

感想・レビュー・書評

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  •  山の神、霞の巨人!尊敬され恐れられる強大で意外と律儀でお人好しな山の誰かさん、その名はリューべツァール!!彼にまつわる物語をまとめた童話集だ。そのあり方や動きには日本でのカミ信仰にも似たものがありなんだか親近感を覚える。
     正直ヨーロッパにはキリスト教の影響が強いためにこうした民話はあまりないのではと思っていたが、ここで書かれるのはそのような世界でも信仰を失わない古き神、その姿だ!人々を時に助け時に罰する荒々しくも高貴に書かれる神の性格と、時には精霊ではなく神と呼ばれる描写に人々にとっての彼の存在の大きさが窺える。司祭のキリスト教の儀式に腹を立てたり、司教や修道士を手助けしたり(リューべツァール自身はキリスト教の慣例がうろ覚えなのもよい、屈したのではなく協力しているのだ)といった部分からもそれが伺える。

     とくに印象に残るのがリューべツァールとの遭遇話として、作者の実体験も書いてある部分だ。リューべツァールの王国から引き離され、しかし彼の名を冠した通りに住まうことになった作者に息づく、この山神への敬意と親しみと懐かしさがこの本を書かせたこと、それ自体が山に息づくこの大いなる精霊の姿を浮かび上がらせているのだろう。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00174383

  • (図書館員のつぶやき)
    ドイツを代表する児童文学作家さんです。戦争の捕虜も体験して紡ぎだす物語です。
    山の精霊というと日本も山々に囲まれた土地が多く、神さまと深いのではないでしょうか。ドイツの作家さんの本も読んでみたら良かごたぁですね。

  • 精霊というよりも山の神の物語として、数々の民話に基づくものであろうし、筆者の山に登った実体験もかかれているのでそれは面白い。

  • 「クラバート」や「大どろぼうホッツェンプロッツ」のプロイスラーの本。子どもの頃のおばあさんから聞いた話が元のなっている。今はすむことのできない故郷に伝わる精霊の話。精霊のすむ山、とても豊かな感じがする。

  • 作者の自伝的お話と、語り継がれてきた民話が混ざり合って、山の神リューベツァールのプロフィールを描き出す。ほのぼのした童話集。

    古い民話のリューベツァールは王侯貴族のような立派さなのに、封建的社会制度が崩れた後と思われる頃には、もじゃもじゃ髭の粗末な格好をしたおじいさんになってくるのが面白い。

  • 『大どろぼうホッツェンプロッツ』作者が生き生きとした文章で描く、中央ヨーロッパの大山脈リーゼンゲビルゲの山の精霊・リューベツァールの物語。
    気難しかったり、イタズラ好きだったり、親切だったり、様々な表情を見せながらも基本的に鷹揚な性格のリューベツァールは気さくな神さまだなと思った。
    27の短いお話が集められていてどれも素敵だが、個人的には『利子なしで三年間』『黄金の手のひら』という二編がお気に入り。
    自分の力ではどうにもならない現実から逃げることなく、歯をくいしばって生きていこうとする人々を助けるリューベツァールの力強い言葉が沁みる。
    挿絵の雰囲気もとても好みだったし、表紙にリューベツァールがうまいこと隠れているのもとても微笑ましい。

  • プロイスラーによるリューベツァールの物語。
    12話と12話の伝承と、それを包む3つの思い出。
    まさかプロイスラーの新しい本を読めるとは!

    リューベツァールはボヘミアとシレジアのあいだにある山脈、リーゼンゲビルゲに住まう赤毛の山神。
    荒々しくて親切で鷹揚。いかにも土着の古い神様らしい。
    無礼者には容赦しないけど一度の間違いは許してくれる。
    人の話を聞くし、異教徒である自分の民のために骨を折ってくれる。
    その異教の神(の信者)は自分を排除しようとしているのに。

    時系列に並べてあるのか、人外らしい扱いの伝説から徐々に思慮深い話に変わっていく。
    終盤の話は終わりを感じさせて切ない。消え行く物の怪の風情。
    「今も、臨終の時も」は特に美しい。


    リーゼンゲビルゲはかつてドイツで、プロイスラーのふるさとだった場所。
    プロイスラーはドイツ人追放を経験していたのか。
    恐いものを描きつつ排除しない世界観はそういうところからも来ているのかな。

    訳がちょっと残念。読みにくくはないけれど美しくない。
    行き届いていない感じ。
    貴族も農民も同じののしり言葉で話す。
    新月は雲が無くても暗いと思うんだけど「朔のあと最初に見える月」の意味なんだろうか。それにしたって暗いだろうに。

    表紙が良い。山の化身で精霊で神様。

  • ヨーロッパの中央山脈リーゼンゲベルゲには、山の精霊リューベツァールがいるという。気難しいが、時に優しく時にいたずら好き。山に登ったらもしかしたら会えるかもしれない。それがラッキーなのかどうかはその人次第だけど。
    プロイスラーの名文で生き生きと描かれるリューベツァール。雄大な山の景色と不思議なその姿が目に浮かぶようです。

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