メンデルスゾーンとアンデルセン

  • さ・え・ら書房 (2004年4月1日発売)
3.95
  • (7)
  • (5)
  • (6)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 61
感想 : 11
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784378028415

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

音楽家メンデルスゾーン、童話作家アンデルセン、そして歌手ジェニー・リンドの交錯する人生を描いたこの作品は、美しい日本語で綴られ、読者を引き込む魅力にあふれています。メンデルスゾーンの裕福な背景とは裏腹...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 作曲家のメンデルスゾーン、童話作家のアンデルセン。私が敬愛してやまないこの二人が、親交があったとは!しかもあるソプラノ歌手をめぐって三角関係になっていたとは!これは絶対読まねばと思い手に取ったが、伝記児童文学という形をとりながらも、その面白さにすっかり夢中になった。メンデルスゾーンも、アンデルセンも、私が知っていた彼らの姿は氷山の一角ほどもなかったんだと改めて知らされた。
    裕福な家庭に生まれ、幸せな暮らしを送ってきたためか、音楽に深みがないというのが、これまで私が聞いてきたメンデルスゾーン評。これはとんでもない誤解であった。ユダヤ人であり、そのため差別を受け続けてきた彼。そんな逆風に負けることなく、当時古臭いと言われてきたバッハの「マタイ受難曲」を再演してバッハ音楽に光を当て、自らもたくさんの名曲を発表した。「フィンガルの洞窟」「イタリア」「スコットランド」「真夏の夜の夢」「ヴァイオリン協奏曲」…タイトルが出るだけで、私の頭の中に美しい旋律が鳴り響く。古典的でありながらも甘く切なく美しい旋律。特に「エリア」は私自身も合唱で参加したことのある思い出の曲であるため、作曲のいきさつが知ることが出来て嬉しかった。
    一方のアンデルセンは、この本ではちょっと空気の読めない道化として描かれている。この「空気が読めない」という彼の側面は意外であったが、だからこそ、ここまでの名声を得ることができたのかもしれないとも思えた。その物怖じのなさで、スウェーデン出身のソプラノ歌手リンドの活躍の場を広げさせることが出来たのだ。アンデルセンは彼女に一方的に思いを募らせるも、リンドには残念なことに届かない。そのリンドはメンデルスゾーンに思いを寄せるのだが、彼には妻子がいる。しかし音楽を通じて、二人は親交を深めるのだった。
    この三角関係だけでも十分読み応えがあるのだが、あえてそこは抑え目である。リンドに惹かれつつも理性を崩さないメンデルスゾーンは、そのとき既に様々な心労で寿命を縮めてしまっていたのだ…。
    三人の関係を軸に、本書にはたくさんの有名人が登場する。ゲーテ、ワーグナー、ディケンズ、グリム、シューマン、リスト…彼らがどんな風に物語に絡んでいるかは読んでのお楽しみだ。
    弟に負けず劣らずの才能があった、メンデルスゾーンの姉、ファニーの生涯にも興味を持った。もう一度メンデルスゾーンの名曲をじっくり聴いてみよう。アンデルセンの童話を読み返してみよう。きっとその背景に、彼らの交流によって得たものがさり気なく反映されているに違いないから。

  • 冒頭から、とても綺麗な日本語でうっとりしながら読み始めました。

    ドイツの音楽家メンデルスゾーンとデンマークの童話作家アンデルセン、そしてスェーデンのオペラ歌手リンドの3人のお話です。
    構成も美しく、各チャプターの終わり方も綺麗で、なにより日本語が本当に美麗で、読んでいて気持ちが良いです。

    クラシック音楽家にしては珍しく、(とてつもなく)裕福な家に生まれたメンデルスゾーンは、金銭的には苦労をしたことがないために、よく全てが順風満帆に行った音楽家だと扱われがちですが、ユダヤ人だった彼がその才覚の高さ故に直面しなければならなかった様々なことについて触れていて、心を打たれます。

    この本を読んだあとに、弦楽四重奏ヘ短調を聴きましたが、あらためて、どうして彼ほどの音楽家の作品が「軽い」「優美さだけ」などと評価されているのかが不思議になるほどの出来でした。
    メンデルスゾーンという音楽家にも彼の作品にも魅力を感じる私にとっては、メンデルスゾーンをただの富豪の跡取りとして書かれていないこの本は、救いのようにも思えました。

    作者の方が真摯に向き合ってくださったのが分かる、良著です。

  • 次はメンデルスゾーン弾こうと思って、なにかないかなと図書館で検索かけてたまたま出てきた本。こんなに恵まれた環境の作曲家ってなかなかいなかったんじゃないかな。祖父は著名な哲学者、父は富裕な銀行家、子煩悩で教育熱心な両親の愛情をいっぱい注がれて育ち、語学に堪能、名文家、セミプロ級の画の腕、水泳はコーチより早い、そして何よりも音楽の才能が一番秀でていておまけにイケメン!なのに、とても控え目で愛妻家で、なんちゅう素晴らしい人なんでしょね(人´∀`).☆.。.:*・゚もう次は絶対無言歌集弾くし!!!
    そんなメンデルスゾーンと、貧困な生まれの童話で有名なアンデルセンと、同じく貧困なうえに親の愛情に恵まれない生い立ちでイギリス紙幣にもなった歌手のジェニーとは、不思議な縁で関わってたという実話。
    レビューに内容はなるべく書かないように気をつけていますが、、、、アンデルセンのKYぶりには驚きましたわー。メルヘン童話そのままに楽天的な。いくらふられても懲りてなくって。というか、ふられてるのに全然、、、すごい前向きなのでした^^;;;

  • アンデルセンの楽天主義に付き合わされる周りの人って大変だったろうな…恋された相手ならなおさら。

    メンデルスゾーンの音楽ってちゃんと意識して聞いたことなかったけど、これを機会にちゃんと聴いてみようと思った。

  • 表題の二人、そしてアンデルセンが恋しメンデルスゾーンに恋した歌手ジェニー・リンドの半生記。基本はアンデルセンを狂言回しに据えた小説調の、いわゆる「見てきたような」伝記体なのだが、中で一箇所だけ「私は思う」と著者がその顔を覗かせる部分がある。また書体は大きめで、ルビやひらがなに開いた漢字も多く、全体としてはジュブナイルのような体裁なのだが、内容的には必ずしもそうではない。その意味では、いまいち焦点のぼやけた本とは言える。
    だがテーマに興味ある向きには、手軽に読める紛れもない良書である。中でもメンデルスゾーン目当ての私にとっては、願ってもない入門書だった。

    しかし——新参ファンの私にとっては人一倍まばゆい光と、その代償のような濃い影に彩られたイメージしかなかったメンデルスゾーンが、むしろ長らく「ドイツの幸福な音楽家」(多分に「幸福なだけの」という揶揄を含む)呼ばわりされていたとは驚きだった。
    確かに今もって、その早熟性・天才性・華麗さと天上的な明るさを持った作風等々共通点の多いモーツァルトとの知名度のあまりの落差は、感じないではなかったが…この問題こそ日本人にはあまりピンとこないが、げに差別とは業深きものである。

    2011/6/25〜6/27読了

  • ◼️中野京子
    「メンデルスゾーンとアンデルセン」

    裕福な音楽家、貧困から這い上がったアンデルセン、歌手ジェニー・リンドの報われない三角関係。

    クラシックは好きでよく聴きに行く。ただメンデルスゾーンはヴァイオリン協奏曲、いわゆるメンコンと一部のピアノコンチェルト、それに「イタリア」「幻想交響曲」しか知らなかった。リストの手によるショパンの伝記にメンデルスゾーンも出てくるが断片的で、どうも「幻想」の怪しさに、良くない先入観を抱いていたかなと。今回初めてじっくりと向き合えた気がする。

    フェリックス・メンデルスゾーンはドイツ・ハンブルクの銀行家の家族に生まれ生涯裕福、最高の教育を与えられた。容姿端麗、幼少の頃から音楽の才に恵まれ、順調に頭角を現す。しかし、ユダヤ人ということであからさまな差別を受ける。

    4歳年上のハンス・クリスチャン・アンデルセンはデンマークの貧困家庭から14歳でコペンハーゲンに出て苦労の後、枢密顧問官ヨナス・コリンの援助を得て大学に入り、文才を開花させた。

    さらに年下の歌手ジェニー・リンド。コペンハーゲン出身で性悪な未婚の母に何度も捨てられた。歌唱力がたまたま王立劇場の関係者の耳に止まり、未来が拓けていく。

    スウェーデンで評判になったリンドをデンマークで公演させる説得役となったアンデルセンは彼女を情熱的に恋する。チョー楽観的な彼は毎日のように会いに行った。しかしリンドはすでに妻子がいるメンデルスゾーンと出逢って深い恋心を抱いた。

    穏やかで品のいいフェリックスの苦悩、チョー楽観的なハンスの猛烈で遠慮のないアタック、ハンスに困惑、お兄さまと言って距離を置こうとし、フェリックスと多くの充実の時をともにするジェニー、そしてそれぞれの破局が語られる。

    その底にはそれぞれの活躍が華やかに述べられている。ゲヴァントハウス管弦楽団の名を大いに高めたフェリックスはヨーロッパ中で人気を博す。アンデルセンはその創作童話で知らぬ者のない作家となり、フェリックスとも親しくなる。ジェニー・リンドは「スウェーデンのナイチンゲール」と呼ばれ、ショパンには「北極のオーロラ」と称えられたその歌声でやはりヨーロッパ中をツアー、クララ・シューマンとも親しくなり大好評を博したという。

    早逝したメンデルスゾーン、長生きした童話作家と歌手。複雑な国際情勢のもと、ゲーテをはじめ著名な文化人も多く出てくるヨーロッパの芸術界で3人の人生が交錯し生まれた蹉跌、美しさと陰が描かれる。

    知的好奇心を刺激される、興味あるジャンルのエピソード紹介物語だった。この時代は少し特別で、画壇や科学史、芸術の分野で現代に賞賛される多くの成果を生んでいる。さらにこの時代の音楽家、文人らの付き合いを想いながら考えたり成果、作品を賞でたりするのは、なぜかなんとも言えず好ましい。リンドとクララ・シューマンなんて、聴くことも見ることも永遠にできない、遥かな過去への憧れだ。

    作中に出てきたメンデルスゾーンの曲、ことにリンドが歌ったという「歌の翼に」でも聴いてみよう。アンデルセンの初読の童話でもあれば最高。ちなみにこの本を借りてから鼻歌が昔のアニメになった。夢のつみきをつみかえよう^_^

  • 本文中のイラストが3人の心をあらわしていて、とてもさわやか。

  • ★★★★☆
    ユダヤ人の作曲家メンデルスゾーン、童話作家アンデルセン、スウェーデンのソプラノ歌手リンド。3人の芸術家の人生。
    アンデルセンはリンドに恋い焦がれ、リンドは幸せな家庭を持つメンデルスゾーンを恋する。
    アンデルセンが無名の頃、高名な演劇人に家を放り出されたエピソードに吹き出した。
    (まっきー)

  • 不思議な出会い 不思議な運命 人生は不思議なもの

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中野京子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×