- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784380120008
作品紹介・あらすじ
2011年3月11日、東日本を襲った未曽有の大地震と津波。
そして福島第一原発事故……。
東北、福島の地で暮らしてきた100人、一人ひとりの思いを、
IWJ代表 岩上安身がインタビューで紡ぎだす、一人語り、第一集。
感想・レビュー・書評
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東北の原発が 引き起こした見えない断裂と郷愁に 茫然とします。
東京の都会に住む人は、忘れかけているのだろうなぁ…詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
福島に暮らす人々の3.11後のインタビュー。(100人の方のうち、最初の30名の方のお話)
原発事故が起こり、あのような状況の中、なぜ、すぐにでも引っ越さないのだろう、と不思議に感じていましたが、お一人お一人の意見を聞くうちに、いろいろな事情がわかりました。
「村社会というのは、暗黙の了解で、こういうことはもう、みんなが同じ考えで行動するんだよ、みたいなのがあるんですね。その中で自分は違う意見だと言うことが、なかなか難しい。そういう場所なんです。
だからひとりだけ避難したりすると、まわりの人を見捨てて行ったというふうに言われてしまうんです。
ここは危険な場所だって言うと、そうやって、危険を煽る、不安を煽るような発言をするような人は、ちょっと受け容れられない、許せないっていうふうになってしまう。(235ページ)」
「自分としては、この「絆」があって、この地域で生活していけると、そういうようなことだと思うんです。助け合い、互助の精神。そういったものが、私どもの地域には、深く根ざしておりましてね。この先祖から受け継がれた血縁関係、そういったものが、やはり私たちの、この枷になっているというか・・・枷になっているわけですけども。(168ページ)」
それぞれが暮らす地域の「絆」がかたく結びつきあって、それが広がり、地球全域の「絆」にまで及んだとき、地球は輝き、平和を築いていける原点だと思うけれども、このような事故のもとでは、多くの犠牲が伴ってしまう・・・
植物にたとえるならば、その土地・気候の中で自生する野草のような、その山固有の他の生物、植物との密接な関わりによってのみ美しい花を咲かせる山野草のような、そんな感じの生き方、そして、逆にどの山から引き抜いてきて、どの土地に植えたとしても育っていける植物もある。
どちらも自然の法則にのっとった生き方であるし、そして、このような多様性の存在が、地球の回転を生み出しているものだと思います。
ただ、先祖の土地を見捨てることに対する罪悪感については、考える必要はないように、私は思いました。
「チェルノブイリの被爆の森」のように、人間が去った土地には、いろいろな動物や植物が繁栄を始めています。
自然の治癒力に任せるほうか、その土地は回復がずっと早まると思う。
放射能の汚染は、人間などが、除染できるものではないはずです。
「海の干潟というのがあるでしょ。その干潟というのが潮が満ちるとき、ずっと向こうから波が押し寄せてくるのではなくて、最初にちっちゃな水溜まりができるんだそうです。水溜まりがだんだん広がって、ある瞬間ブワッと一面につながるんだそうです。そういうイメージってすごくいいなと思うんです。
やっぱり自分の足下の水溜まりを広げていくことが、大事かなと思います。(308ページ)]
お一人、お一人の意見が、たいへんしっかりとしたものばかりで、お一人、お一人が毎日の暮らしをいかに真剣にみつめているか、困っていらっしゃるかが、重く伝わってきます。
私としても、「自分の足下の水溜まり」、それをまずは見つけなければ、と思いました。