- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784382053212
感想・レビュー・書評
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戦略の構築方法を論理的かつ網羅的にに説明した一冊。
ピュア(クラシカル)な戦略コンサルタントが戦略を策定する道のりがわかりやすく言語化されており、戦略論を2回連続で落とした自分にもわかりやすかった。
本書は1995年に出された本であり実際の現場で求められることとは変わりつつあるものの、中身は至ってベーシックであり今の戦略立案においても中核をなす思考方法だということは変わらない。
読んでて思ったこととしては、コンサルタントの価値は変わり続けるだろうが、意味のある存在という点では変わらないのではないかということだ。なぜなら、企業の意思決定は内部者だけでは合理的なものになりづらいと考えられるからだ。たとえば、企業の戦略を考案するものとその戦略を実行するものが違う場合、互いの利益相反が起こる可能性がある。ここに外部者であるコンサルタントが入ることで企業の最適な戦略的意思決定に導くことができ、この価値はこれからも変わらない部分である。(本質的かどうかはわからんけど)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【星:3.5】
他の著者の経営論の本が良かったので手に取って見たが、この本は普通と言った感じ。
よく聞くようなマーケティングの話や、戦略策定の基本的な流れ、フレームワークなどを淡々と説明している感じである。
ただ、タイトルにあるように「戦略策定」という点から経営論を書いた本というのはあまり見たこともないので、その点は新鮮であった。 -
非常にいい本。
戦略について
・全体戦略
・個別戦略
・事業戦略
・機能別戦略
に分けて全体観を見せてくれる。
さらにそれぞれを考える上で必要となるフレームワークを提示するとともに
使い方をしっかりと例示つきで解説する、というすぐれもの。
この本で、いろいろな関係が見える。
これで、いろいろな分野を勉強するための全体像が見えた。
研究者時代も思ったけど、ある分野の全体像、それぞれの関係性を
示せる人って、かなり頭いい。 -
内容が濃くおおよその理解にまで3周を必要としたが読了。戦略策定の理論から実践まで細かく学ぶことができた。
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「戦略」とは「競合優位性を活用して、定められた目的を継続的に達成し得る整合的な施策群のまとまり」である。
Strategy is 「A set of Integrated Actions to Attain the Corporate Objective Sustainable Through
Competitive Advantages 」
→3つの必要条件:
目的:戦略目的が明確に設定されていること
具体的施策:組織・成員の行動を示唆する具体的施策として示されていること
競争的:競合の存在・対応を念頭に置いて設計されていること
3つの十分条件:
整合性:各具体的戦略施策が整合的であること
優位性:競合優位性形成の必然性の根拠となる自社独自の優位性に立脚していること
持続性:持続的効果をもたらすものであること
◾️戦略策定の3つのステップ
1分析:ファクトの収集・分析による状況の構造的理解と課題の絞り込み
2発想:問題解決型志向による戦略代替案の発想と検証
3具体化:戦略の個別具体的施策への展開とモニタリングプランの作成
◾️4つのブレインパワー
統合力・分析力・創造力・論理力
◾️SPEC
成果:事業運営の成果としての投資、売上、利益、成長性等を計数的に把握する:分析の第一歩
構造:分析対象がどのような市場構造、組織になっているのかを把握する
環境:分析対象の構造、運営、成果に及ぼすファクターを明確にし、その影響の度合いとメカニズムを理解する
運営:どのような機能とメカニズムで事業が運営されているのかを把握する
◾️戦略ドメインの設定にあたって、考慮すべき点
①企業戦略構造の階層の最上位に位置づけられ、各個別戦略との整合性と一貫性を有していること
②十分な具体的イメージを想起させるものであり、かつ発展・深耕の可能性があること
③比較的長期スパンでの企業経営における未来性を有していること
戦略ドメインを設定した後の次のステップとなるのが、基本戦略方針の決定である。基本戦略方針とは、設定された事業ドメインに到達するための企業運営の基本的方法論を指すものである。例えばシェア至上主義、技術開発力重視、マーケティング重視といった方針であり、基本戦略方針の設定によって全社戦略は企業の活動指針として、より具体性をもつものとなるのである。
◾️PMSの5つのステップ
・業界の構造的分析とKFSの抽出:SPECの活用
・自社・競合の強み・弱みの分析:ビジネスシステムの比較/KFSとの相対化
・戦略代替案の案出:セグメンテーション(顧客ユニット、KBF)
・戦略代替案の評価と決定:四つの評価項目(効果・資源・期間・ダウンサイドリスク)
・アクションプランの作成:具体化/スケジューリング/モニタリング
◾️SPECによる業界分析
1.成果
(1)活動成果:市場規模、市場成長率、利益率、製品別市場規模、チャネル別市場規模
(2)投入資源:主要企業平均総資産、資産内訳、投資内容、業界就労者数、主要企業平均従業員数、平均年齢、新規採用数
2.構造
(1)対象業界:企業数、主要企業名、企業規模、シェア、寡占度参入障壁、退出障壁
(2)関連業界:サプライーや業界の種類、主要企業プロフィール、得意先業界の種類、参入可能性の高い企業プロフィール、代替品出現の条件
3.運営
(1)ビジネスシステム:基本ビジネスシステムとKey skill
(2)業界ルール:契約形態、納期、談合の有無など特徴的な諸制度(経理、給与体系、キャリアパスなど)
4.環境
(1)社会トレンド:技術トレンド、産業構造、国際情勢、為替変動、流行、人口動態
(2)社会規制:法律、規制、住民運動、訴訟内容
「マーケティング」とは、一言で定義すると、「市場における需要の調節に関わる行為」である。つまりある商品に対する需要を喚起、拡大させるのに効果を持つさまざまな施策の総体が、一般的にマーケティングと呼ばれるものである。そしてこのマーケティングは、企業事業戦略を具体化させる枢要な機能の一つであり、特に戦略遂行上、非常に重要で大きな役割を占める。
◾️チャネル数(万店数)
たばこ・喫煙専門店:29.0
喫茶店:21.9
美容院:18.9
クリーニング店:15.4
理容院:14.3
菓子・パン店:12.6
酒店:10.7
家電店:6.3
医薬品店:5.5
ガソリンスタンド:5.2
野菜・果物店:4.7
CVS:4.2
鮮魚店:4.1
米穀店:3.7
ファーストフード店:3.2
書籍・雑誌店:2.8
公衆浴場:2.5
食肉店:2.4
郵便局:2.4
パチンコ店:1.7
ファミリーレストラン:1.7
銀行:1.7
◾️生産戦略の基本原則
・プロセス型:稼働率;的確な需要予測/最適規模の生産キャパシティ
・アセンブリー型:標準化;部品の共通化/作業工程の標準化
◾️内作と外作の選択
FAやCIMが自社内のビジネスシステムを徹底的に自動化することで、競合優位性を獲得しようとする動きであるとすると、それよりさらにもう一段戦略的視点を高めた施策が内作と外作の選択である。内作と外作の選択とは、部品、素材、設備などを自社で生産する(内作)のか、社外から調達する(外作)のかを決める問題であり、既存のビジネスシステムを前提に効率化を考えるのではなく、一歩進めて、効率化のために自社が内部化すべきビジネスシステムを取捨選択し、ビジネスシステム自体をデザインし直すところから競合優位性を構築しようとするものである。その際内外作の判断の基準は、どちらが「より良いモノをより安くより早くかつフレキシブルに」できるのか、という観点であることは生産戦略の基本軸として同様である。
アセンブリー型の生産システムの場合、部品の生産は人件費が安価ですむ中小の生産企業に外作政策をとり、最終製品のコンポーネント工程のみを内作することが一般的には効率的とされる。自動車の場合、日本の自動車メーカーは部品の七○パーセントが外作である。これは、部品の外作で部品メーカーを競わせることにより低コストの部品を調達することが可能であると同時に内作しない方がモデルチェンジの際のロスが少なくて済むといったコスト面での優位性からの判断がその背景にある。トヨタはこれまで系列関係にある生産会社で多くの部品を外作してきたが、近年は円高基調でも国際競争力を維持できるよう、部品の外作を欧米・アジアなど海外にも拡大した外作政策を進めている。
さらに、外作の考え方を極めれば「工場を持たない」という選択肢も含まれることになる。ハイ産業などにおいては、製品開発や設計に特化して製造機能を持たないファブレス(工場を持たないこと)化することがコスト負担を抑える企業生き残りの道とまで言われるようになってきた。センサーの製造販売会社であるキーエンスは、強力な製品開発力を武器に、設計と製品の販売に注力し、製品の生産は主に外作することにより高収益を獲得し、競合優位性を発揮している。
その一方で、外作政策を内作指向にシフトさせ、コストダウンを達成している企業もある。カーオーディオメーカーのアルパインは、それまで手作業の多い工程は安価な下請け工場で外作させていたが、外作部品と親工場の生産ラインが複雑に入り組み、さらに外作部品の受け入れ、検査のコストもかかるため、内作一貫生産にしたところ、在庫や工程が大幅に減り約三〇パーセントもの生産コストの軽減が可能となった。
このように、コストミニマムを実現するために内外作の使い分けは極めて重要であるが、内作による技術蓄積の価値も競合優位性形成の重要要因となることもある。セイコーグループが腕時計の部品であるプラスチックやICを内作したことによって、眼鏡レンズや各種エレクトロニクス機器分野を新たな事業の柱とすることができたのは内製化政策による技術の蓄積があったからに他ならない。
まず、「管理のターム」については、どのようなタイムスパンをもって営業行為を評価するかをデザインすることである。タームの設定のしかたが営業マンのメンタリティーに及ぼす影響は大きく、成果に大きな違いが生じてくる。そのため、販売する商品の特性を考慮しながら、営業マンの達成すべき目的意識を最も高揚sさせることが可能な期間を管理タームとして選ばなければならない。例えば、リクルートは就職情報誌の営業活動の成果をそれまで六ヶ月単位で評価していたのを三ヶ月ごとに直してみたら営業成績の向上がみられた。そこで、三ヶ月を一ヶ月に縮め、さらに二週間単位まで短縮したところ、さらに業績が上がったという。これはまさに管理タームを短くとることにより、目的意識がより鮮明になり、目標達成のための段取りが一週間単位、一日単位で明らかとなって効率的な販売活動が実現したという好例であろう。 -
95年発行の本ながら、定義や必要条件、事例などが丁寧にまとめられていて、まさに戦略策定の基本を学ぶのに適した良書。事例が古かったり、インターネット(スマホやSNSなど)までの言及は当然ながら含んではいないが、95年時点で既に本質的な考え方はここまで揃っていたのかと驚かされる。印象深かった事例として、「内製か外注どうするの?」という戦略上避けては通れない問いのところで、キーエンスのファブレスを取り上げていたところ。気になって確認してみたら、当時、個別株を買っていたら、現在(23年時)で約40倍になってる。。本質的な戦略が見事にハマってて、波頭さんの目のつけどころに脱帽。
個人的に、あえて3つにまとめるならば、
・必「目的、施策、競合」十(整合性、優位性、持続性)
・戦略策定は①分析②発想③具体化
・戦略効果=戦略内容×実行の歩留まり。組織化超重要。
「目的」と「施策」は、「当たり前だよね」と思えたけど、そこに「競合」ときて、最初「ん!?」となったが、確かに、そこをおかずして成立しないという納得ができてスッキリした。この本の大きな収穫の1つ。
戦略の必要条件と十分条件を必ず明確にし、ファクトに向き合い、柔軟に発想して仮説検証を回し、5W1Hで細部まで詰めて実行しきれるように人員配置、組織設計をすることが重要だなと。組織については、別冊にて。
以下は、見返し用
・「戦略」の意味合いを正しく理解することこそ、「企業戦略策定」の起点であろう。
◎定量的な目標が示された設定でなければならない。
・目標とする指標の大きさによって、採用すべき戦略の内容が大きく異なってくる。
・戦略目的自体が合理的に設定されていることこそ、戦略策定の第一歩と言える。
・戦略は、その実行に携わる組織や人員の実際の行動に結びつく具体的な施策として示されている必要がある。
◎戦略は、競合の存在、競合からのリアクションを考慮して立案されていることが必要である。
・戦略とは、競合があって、初めて成り立つものであり、自社の強み、弱みやリアクションを予測、計算して行う駆け引きなのである。
◎潜在的な競合や直接的ではない競合を意識すべきなのである
・代替品に置き換えられてしまうリスクへの対応は不可欠である。ビール会社の競合は、他のビール会社だけではなく、「食卓を楽しくするための飲料」として事業を捉える。
◎策定された戦略が大きな効力を持つためには、その戦略が包含する個々の具体的施策が全体として一環した狙いやポリシーによって、調和的に束ねられていることが重要である。収益向上でコストダウンと高級層開拓は不成立。
◎自社の弱みを強みに転化させるような、あるいはトップ企業の強みを弱点に変えてしまうような戦略を狙ってみることが有効になってくる。
◎戦略目的の達成が持続的に実現するのでなければ、良い戦略とは認められない。
・有効性が持続的でない戦略を実行してしまう事は、その結果として貴重な経営資源を浪費してしまったり、競合との相対的ポジションをかえって悪化させてしまったりすることにつながってしまうことも少なくない。
・分析フェーズでは、有効な戦略にたどり着くための核となるようなクリティカルイシューを把握することが重要であり、そのためには種々雑多な現象や課題を企業目的に照らし合わせながら絞り込んでいくことが大切である。
・発想フェーズでは、分析フェーズで絞り込まれた、クリティカルイシューについて、効果の大きい課題達成のための方策を見つけ出すことが目的であり、そのためには様々な現実的常識的制約を一度全て忘れて、自由に案を出してみることがポイントになる。
実際に起こった事は、何かと言う事実のみに基づいたファクトベースでの判断こそが、客観的な状況把握を可能にする。
・機能面での優位性で売れていると思っていた商品が、実はそれを買っていた顧客は、価格の低さや広告のイメージを購入動機にしていたという例もある。
◎「多分こうであろう」という思い込みや恣意を捨て、すべての判断をファクトベースで行えるかどうかが有効な戦略にたどり着くための第1のカギとなる。
・独立の関係と因果の関係を解明することが、この分析フェーズの目的とも言える。
・例えば「シェアが下がっている」という事実と、「製品開発部門の人員が増加している」という事実は、一見無関係そうに思われるが、因果の関係で結ばれることもあり得る。
・問題解決思考で、常識や慣習にとらわれない発想こそが、有効な戦略の策定には不可欠である。
・発想フェーズにおける第二の留意点は、「仮説の設定と検証」を繰り返し行うということである。
・ファクトベースに基づいた分析だけでは不明なイシューが多すぎる場合が多い。その時に調べてみないとわからない事柄の全てについて、実際に調査してみて、その結果が得られた答えを使ってのみ次のステップへ進んでいくと言う方法論をとっていたならば、調べなければならない事項が多すぎて、非効率な施策作業にならざるを得ない。
・仮説に基づいて戦略の基本骨格をいちど作り上げてみることが大胆で有効な発想を生かすためにも、また同時に効率的な検討作業を行うためにも不可欠なのである。
・我田引水的なアンケートや実験にならないよう、細心の注意を払わなければいけない。
・個々の組織、人員の現実的な動きに落とし込んでおくことがポイントとなる。
◎「戦略の効果とは、策定された戦略内容のクオリティーと実行段階でのイールド(歩留まり)の積で決まる」。100点満点の素晴らしい戦略を作り上げても、実行が2割しかなされなければ、効果は20点でしかなく、50点の戦略であっても8割実行して40点取った方が大きな成果を得られるものだということを忘れてはならない。
・同じファクトやデータでも、当事者によって、その戦略目的によって、抽出すべき意味合いと、そこからさらに、引き出せる施策、アクションへの示唆は全く異なる。質の高い戦略的分析とは、戦略目的を効率的に達成させる的確な施策を客観的情報から導出することなのである。
◎「このようなアクションをとれば、ほぼ確実に望ましい戦略効果に結びつく」という戦略策定者の確信水準こそが掘り下げていかなければならない分析のあるべき到達点である。
・戦略ドメインは、どの市場層のどのニーズにどのような独自能力によって対応するかによって決定される。
・戦略ドメインを設定した後の次のステップとなるのが、「基本戦略方針の決定」である。基本戦略方針とは、設定された事業ドメインに到達するための企業運営の基本的方法論を指すものである。例えば、シェア至上主義、技術開発力重視、マーケティング重視といった方針。
・KFS(成功の鍵)を理解することが、業界分析を通して獲得すべき最も重要なアウトプットである。
・競合の分析を始める前には、まず行わなければならないのは、「適切な競合の見極め」である。
・市場の成熟化が進む近年では、限られたパイの中で高シェアを獲得するためには、市場にある競合企業に対して、いかに優位性があるかが問われるようになってきた。
◎ユーザーだけではなく、「誰に働きかけることが有効なのか」と言うことを明らかにすることが重要。
◎戦略案を出すこととターゲットセグメントを決定する事はある意味で同義。
・戦略の立て方は様々であるが、従来の商品サービスでは満たされていなかったニーズを取り込んだ形での新しい商品サービスの開発と訴求が、共通のポイントとなっている。
・戦略案を出す際は、同時に、想定される期待成果と投入資源の算定を行わなければならない。マーケットサイズがどのくらいで顧客ニーズの強さや持続性はどうなのか、売り上げ、利益率がどのぐらいになるのかと言うように、想定される状況を可能な限り定量化しておくことが必要である。
・戦略のアイディアが本当に実行できるかと言うことを、人材、資金、技術、その他の事業資産の面から診断することが必要。その戦略に即効性があるのか、効果が出るまでに何年かかるのか、その効果持続性があるのかどうかを検討していく。その戦略の実行に伴って発生するリスクを把握したり、最悪のケースを想定し、そのダメージの程度を検討しておくことも忘れてはならない評価軸である。資金面だけではなく、戦略遂行に伴う企業、風土上のリスクも確認しておくべきポイント。社員のモチベーションが下がってしまうようでは戦略の遂行は困難となる。
・具体化、スケジューリング、モニタリングと三要素が整って、初めてアクションプランは実行に結びつくのである。
・戦略に関わるメンバー一人一人がどのような行動を取ったら良いのか、納得できるようなマニュアルやフォーマットを作成することが望ましい。
・具体的施策をさらにアクションプランへ展開し、その施策の準備、実施の開始時期や実施期間を決定することと、加えて、その施策の責任者、責任部署及び実行者を規定して、誰が何をするのかというところまで明示することの明確化を示している。
・各具体的施策ごとに期待成果とその成果を図る評価基準を明らかにしておく。
・モニタリングの進捗管理を行うには、モニタリングを担当する機関が必要となる。現場にモニタリングの役割を任せてしまうと、現場の利害からの言い訳が横行し、どうしても客観性にかけた評価となりがちであるためである。
◎誰が何をいつまでにどこでどのように動くのか、そしてどのようなことが達成されれば、適切な成果とみなすのかと言うことを明確に決定することが戦略遂行のカギであると理解されたい。
◎商品特性ごとにチャネルの数は、「適正規模」というものがあり、少なすぎても商売にならないし、多すぎても採算が合わないことになる。全国どこでもアクセスできるのが郵便局であるが、その数は25,000。つまり全消費者がアクセス可能な全国配置の最低規模とは25,000程度と理解できる。最も多いチャネル数は、美容院で300,000と言う数が、チャンネルの最大規模と考えることができる。このように、適正なチャネルの数についての目安を持つこともチャネル戦略上重要である。
◎内外作の判断の基準は、どちらが「より良いものを、より安く、より早くかつフレキシブルに」できるのかと言う観点である事は、生産戦略の基本軸として同様である。
・センサーの製造販売会社であるキーエンスは、強力な製品、開発力を武器に、設計と製品の販売に注力し、製品の生産は主に外作することにより、高収益を獲得し、競合優位性を発揮している。
◎コストミニマムを実現するために内外作の使い分けは極めて重要であるが、内作による技術蓄積の価値も競合優位性形成の重要要因となることもある。
・一見、多ブランドが存在するように見えても、OEMによって、事実上1社独占、数社の寡占状態にある製品分野は意外に多い。
◎トラック輸送の場合、いくら効率よく製品を満載して郵送したところで、戻りは当然ながらガラである。効率の観点からすれば、ここにも改善の余地があると言うことになる。戻りの便も何かに活用できないか、そう考えると、効率的物流は、企業や業種の枠を取り払った発想が必要になる。こうした発送により生まれたのが共同配送である。
・物流システムの構築に伴う膨大な投資を回避し、物流機能を外部の物流専門企業に任せようとするアウトソーシングの動きにも対応する動向である。
・情報システムを構築する主目的を達成するために必要となる情報の種類を明確にすることである。
◎今ある情報、収集可能な情報にとらわれずに、「この情報さえ獲得できたら、顧客の支持を得られ、他社を圧倒することができる」といった戦略的なメリットが明確に見える情報を見つけ出すのである。
◎例えば、ある商品に対して、個人個人の購入意欲の高まり、時期や、購入の必要に迫られるタイミングを知ることができたら、販売の効率は大幅に高まるだろう。かつてトヨタは、個人の車検の時期のデータが入手できたら、新車の販売に極めて有利と判断した。同様に、各家電販売店は、新しく家屋を購入する人たちのリストを素早く入手できれば、有利な販売を展開できるし、旅行会社なら、婚約したカップルのリストがあれば、海外での挙式や新婚旅行のセールスをかけられるといった具合である。
・戦略的企業経営の実現というテーマに対して、「良い戦略」は必要条件、「戦略整合的な組織制度」が充分条件と言うことになる。
・戦略を遂行するのに、都合の良い組織や制度が採用されなければ、現実的な戦略効果は極めて小さくなってしまうことが多い。
◎「組織は戦略に従う」という認識で落ち着いている。
・競合や顧客との関係に基づいて戦略を策定し、その戦略を実行するために適当なように組織と制度を合わせなければならないという考え方が主流になってきている。 -
戦略を立案するための思考の全体像を理解できました。
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"戦略"というものを体系的に解説した、戦略策定における基本書とも言える一冊。
とかく曖昧に用いられがちな"戦略"という概念を、全体戦略と個別戦略に大別し、それらをさらに「戦略ドメイン」「基本戦略方針」「事業戦略」「機能戦略」に分解した上で、それぞれについて論じている。
個々の要素要素は目新しさは少なく、また1990年代半ばの著書ということもあって記載の古さも否めないが(例えば、情報システムの記載はあっても、インターネットに関する記述は全く出てこない)、戦略策定の全体観を理解するには最適な一冊と思う。 -
■感想
戦略について体系的に理解するのに役立ちます。概論とはいえ、ビギナーだけではない。言葉の定義がしっかり書かれており、迷ったときに立ち戻る本でもある。
著者プロフィール
波頭亮の作品





