思考・論理・分析 「正しく考え、正しく分かること」の理論と実践

  • 産業能率大学出版部
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784382055414

感想・レビュー・書評

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  • 既に自明視されていて普段はあまり深く考えないような思考の過程について、丁寧にかつ無駄なく解説されていた。調査研究の初心を忘れないために、時々読み返すのにはいい教材かもしれない。

  • 波頭亮さんの著書。東大→マッキンゼー→コンサル会社立ち上げという経歴。同じ大学だからわかる、圧倒的な地頭を持っているタイプの東大生だったんだろう。
    普段の思考がどれだけいい加減なものになっていたか、そしてなぜそれがいい加減だったのかというところを突き止めることができる一冊である。何周か読み直しながら、考える習慣を定着させていきたい。
    そしてもう一つ。この本のすごいところは、書き方自体が本文の内容に合致していることだと思う。というのも、イシュー設定(思考論理分析)→サブイシュー分解(思考についての諸々、論理についての諸々、分析についての諸々)→さらに分解というのを、MECEを満たしながら行っているのだ。

  • 全体を通して、論理的に思考や分析をしようとした際に自然と実践されるプロセスを長々と説明しているといった印象。
    ベースになっているのは論理学などの分析哲学だが、そのあたりの解説がないためかえってわかりにくい。

    最後のイシューアナリシスについての解説は個人的に参考になったが、それ以外はどれも当たり前のことで、目新しい内容や視点はほとんどなかった。

  • 過去記録。

    子ども関連の役員をやることになり、その活動が誰のための、誰にとっての必要なものなのか、誰が求めているのか、必須なのか、余力があればやるものなのか、はたまた無理してでもやるべき(やった方がよい)ことなのか…。なぜ始まったのか、それは現状に即しているのか…。等々、役員になる前からモヤモヤがあり、かつ実際に活動を通してモヤモヤは膨らんだ。過去に体調崩す役員さんがいたという体験談も聞き、これを今のままの状態で次年度に渡すのはいたたまれなくなった。とはいえ個人的なキモチだけで動いて良いわけはないと思うので、他の保護者や組織側と話合いや調整をすることにして、周りに話を持ちかけてみた。

    自分が正しいなんて思わない。でも、自分が役員を引き受けることになったときに、この情報があれば、ここが組織側と整理されていれば、と思った点については、過去の私に受け渡すつもりで、過去の私が欲しかった情報、状況を作れたら良いと思った。でないと結局次年度からも、大変な思いをする人が出てしまう。

    正解は無いし様々な価値観、状況、関心度の違いがある中で、情報を整理して伝えること、論点を整理して話し合いのテーブルにのせることに四苦八苦。
    そんな中で以前読んだこの本の内容は、私の思考に活かされたと思う。

    p5はじめにより引用→「論理的に思考する力が強化されると、それまでよく分からなかった複雑な状況がすっきりとシンプルに理解できるようになったり、なぜ今よく分からないのか、あるいは分かるようになるためには何が判明すればよいのかということが自分自身で納得して分かるようになる。」

    すっきりシンプルに現状を整理し分かること、分からないこと、ある仕事について、どの条件が揃えばそれができるのか、あるいはできないのか…を整理して人に伝える力が私には足りていないと、会社員時代に強く感じたし、その力が足りないということを言語化することすら、当時はできなかった。その後その力が不足しているのだと少しずつ気づき、鍛えたいと願った結果、たどり着いた本たちの中の一冊が本書。

    年月が経ち、子関連の役員で実践。でも、まだまだ鍛えが足らない。ずっと鍛え続けたいし、それによってより生やくすなったらハッピー。

    p123の「大前提の普遍性」は、役員の間、自然と意識していたと思う。というか、そこをまず確認し合うことこそが大事だと、何かやるたびに感じた。色々な考えがある中で話を進めるには、そこを整理し共有することが大変重要。もちろんその整理の仕方に対しても色々な見方があり。共有も、情報を開示しただけでは真に共有とはならず、それをなるべく当事者同士が腹落ちするレベルで「共有」できてこそ共有で。

    それらを保護者側はボランティア、組織側は通常業務にプラスアルファで対応する必要があって。そして私も含めみんな漏れなく子育て中で、その他それぞれ家庭のことや仕事もあって。時間が欲しい。作るしかないのだが。作るのだが。ふぅ〜!!!これも人生経験…。

    2024/10/2

  • 「考えてアウトプットを出す」ということに真面目に向き合おうとした際、非常に役に立つ本です。

    世の中には考え方や問題解決の本はいくらでもありますが、この本はその中でも2004年出版と古く、源流の一つと言っても良いかと思います。

    思考とは何か、論理的とはどういうことか、有効な分析とはどういったものか、など、体系的にわかりやすく説明されており、値千金の価値があります。

    私自身、ノートなどにこの本のエッセンスを書き出しては見たものの、この本の内容を会得したとは言い難いので、また近いうちに再読したいと考えています。

  • 入門書とのことでしたが、難しかった。
    ただ、最近のフレームワーク云々というよりは、言葉で語るを自でいく教科書のような作品だと思います。
    作品の時代からイシュー、アウトプットの単語も出てきたし、読んでみた方が良いと判断します。



    内容(「BOOK」データベースより)
    本書は論理的思考という大テーマに真正面から取り組み、「思考」の原論、方法論としての「論理」、そして「分析」のテクニックという三部構成によって、体系的構造的でありながらかつ平易で実践的な解説を行っている。
    内容(「MARC」データベースより)
    論理的思考という大テーマに真正面から取り組み、「思考」の原論、方法論としての「論理」、そして「分析」のテクニックという3部構成で、体系的構造的かつ平易で実践的に解説する。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    波頭/亮
    1957年生まれ。東京大学経済学部(マクロ経済理論および経営戦略論専攻)を卒業後、マッキンゼー&カンパニー入社。1988年に独立、戦略系コンサルティング会社(株)XEEDを設立。幅広い分野の第一線で経営コンサルタントとして活躍し続ける一方、斬新で明快なビジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目されている。社会資本整備審議会委員、政策科学研究所委員、ぴあ総合研究所所長も務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • パッと見、堅苦しい本に見えるけど、超良書。
    学生時代に読んでおきたかった。

    読んでみると、基本的ながら大切なことが、
    分かりやすく言語化してあって、さすが、
    タイトルの能力を持ちあわせた著者による
    本である事がよく分かる。説得力ある。

    なんとなく分かってることかもしれないが、
    理解して使い熟せているかは全然違う。

    「見える景色が違ってくる」のは間違いない。

    個人的にこの本を3つのメッセージでまとめるなら、

    ・適切な目的、イシューを持とう
    ・自分と他人が納得感を持てるまで突き詰めよう
    ・バイアスに気をつけ、仮説検証を繰り返そう

    こんな感じだけど、言葉を正しく使ったり、丁寧に定義できることが、「正しく考え、正しく分かること」の基本であるように思わされる。


    以下、何度も見返したいポイント

    ・思考することは「同じ」と「違う」を認識すること

    ・「分かる」とは、同じと違うに分け尽くした状態

    ・「分ける」ための3要件
    ⇨抽象度を揃え、適切な基準を設け、漏れなくダブりなく

    ・人間は思考によるすべての理解や判断や創造を「事象の識別」と「事象間の関係性の把握」と言う2つの思考成果によって得ている

    ・スピードの出し過ぎは、事故の発生に対しては遠因で相関関係にはあるが、原因は、ブレーキの踏み遅れ

    ・傘をさすのに、雨なら強い因果、陽射しなら弱い因果。
    因果の強さの認識が欠如すると、推論を誤ることになる。

    ・知識が同一であっても結論は異なる可能性がある
    ⇨価値観の属人性

    ・いくら正しい事でも、当たり前の事、自明の事、特に既呈命題の言い換えに過ぎないような事は、推論の成果としてはほとんど価値がない

    ・推論における「確からしさ」と「距離」のバランスをとることが必要

    ・推論の内容を他者に伝える場合には、聞き手が感じる「納得性」が重要なポイントとなる

    ・客観的正しさを担保することに適った論理展開の方法論は「演繹法」と「帰納法」の2つである

    ・演繹法は、既呈命題、大前提、結論が段階的に示される形式で、「三段論法」とも呼ばれる
    イワシ=魚類 魚類=脊椎動物 イワシ=脊椎動物

    ・帰納法は、共通事項を一般命題化する論理展開
    イワシ=エラ呼吸 アンコウ=エラ呼吸 サケ=エラ呼吸
    〈結論〉すべての魚はエラで呼吸する

    ・演繹法の「包含関係の判断」として、「必ず〇〇になる」「絶対〇〇にならない」「〇〇かもしれないし、〇〇でないかもしれない」の3つが形式論理的な選択肢で、絞れるだけでも価値を持つ

    ・演繹法の大前提には、普遍性の高いものが望ましい
    ⇨自然科学的法則や法律や制度等は◎。個人的経験や意見はNG

    ・演繹において、大前提として設定される一般化命題は、帰納によってのみ論証され得るもの
    ⇨演繹も帰納と同じだけの不確実性にさらされている

    ・正しさには「客観的正しさ」と「論理的正しさ」がある

    ・注意深く論理的判断を行い、正しい論理展開をしたとしても、客観的に正しい結論が得られるわけではない。

    テングダケ=毒キノコ 毒キノコ=食べられない テングダケ=食べられない 
    毒抜きをしたら食べられる

    アメリカ人A=金髪 アメリカ人B=金髪 アメリカ人C=金髪 アメリカ人は皆、金髪である
    現実的には正しくない

    ・「分析」とは、分けて分かるための実践作業
    ⇨収集した情報を要素に分け、目的に合う意味合いを得る

    ・「情報」とは、不確実性を減ずるもの。それ以外は「ノイズ」

    ・「情報」と「ノイズ」は同じ意味内容であっても、目的によって、情報になったり、ノイズとなったりする

    ・情報収集を手がける場合には情報を集めること同等以上にノイズを集めないことにも注意しなければならない

    ・情報量はある一定レベルを超えると、それ以上情報集めても不確実性を低減する効用は向上しなくなる

    ・最も理想的な情報収集とは、ノイズを排除し、分析目的に対して寄与度の高い情報だけを必要最小限に集めること

    ・「傾向」や「相関」は“価値そのもの”の発見であり、「突出値」や「変曲点」は“価値のありか”の発見だといえる

    ・イシューとは、結論を左右する重要な課題事項のこと

    ・分析プロセスの早期の段階において、結論の内容を大きく決定づけるような「イシュー」を見極めて、そのイシューに対して情報収集や情報分析の作業を絞り込むことによって効率性を確保する

    ・分け尽くして分かる以前に決め打ちを行うと言う事は、すなわち仮説に依拠して分析を進めるということである。この仮説性こそがイシューアナリシスの分析手法としての基本的性質である

    ・イシューの抽象度が高い場合には、このイシューをいくつかのサブイシューに分解してイシューツリーを作成し、イシューの構造化を行うことが必要となる

    我が社は〇〇市場に進出すべきか
    ー〇〇市場は魅力的か
    ー〇〇市場進出は可能か
    ー〇〇市場への進出は優先事項か

    1つでもNOなら、結論はNOとなる

    ・明確にイェスノーと結論付けられないような場合には、仮説の設定と検証のプロセスを結論が得られるところまで繰り返す

    ・例えば、「この特許以外の項目は、自社が極めて有利な条件が揃っている」となれば、イシューを再検証してみるのが有効。特許の会社と提携や、代替技術の開発など。

    ・論理よりも、感情の方が、現実の人間を突き動かしてる度合いが大きいかもしれない可能性もある

    ・知識も経験もある意味では先入観であり思い込みであるという自覚を持つこと

    ・執着心がなければ、良質の分析成果を得る事は到底不可能である

    ・納得感を持って「これで良し」と思える答えが分析のゴール

  • 【星:4.5】
    テーマは「論理的思考」という今日的に手垢のついたものである。ただ、ここまで「論理的思考」について深く洞察し説明している本は初めてであり、今後出てくることもないだろう。

    この本では「論理的思考」を「思考」と「論理的」の2つに分解してそれぞれを細かく説明し、その上で論理的思考を使っての「分析」技術を説明している。これがタイトルの意味である。

    まず「論理的思考」の説明は秀逸としかいいようがない。まさに目から鱗である。

    ただ、続く「分析」の説明内容は極めて凡庸である。凡庸であることは構わないと思うのだが、先経つ「論理的思考」の説明との内容的繋がりが今1歩見えにくかった。

    したがって「論理的思考」「分析」という別の2テーマについて読んでいるように感じ、そこがやや残念だった。

    それでも「論理的思考」部分の説明が素晴らしいので全体としては高評価である。

  • 元マッキンゼーのコンサルタントである著者による、論理的思考に関する解説書。
    「論理的思考」という技術を「思考」「論理」「分析」という3つの要素に分解し、それぞれを説明していくという構成になっている。内容は抽象度が高く読み進めるには集中力が必要だったが、説明は非常にロジカルで納得性が高かった。

    読後、論理的思考に対する解像度が上がったと感じる。本著の内容を実践し、論理的思考というスキルを身につけていきたいと思う。
    この手のロジカルシンキングに関する著書の中では最も分かりやすく有意義な内容だと評価する。

  • 科学哲学的な意味での「正しさ」ではなく、ビジネス実務の観点でどう思考を進めたら良いのかを具体的に示した好著。戦略コンサルの思考プロセスを辿るのにもちょうど良い。

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著者プロフィール

波頭 亮(はとう・りょう):1957年愛媛県生まれ。東京大学経済学部卒業。マッキンゼーを経て、88年㈱XEEDを設立し独立。戦略系コンサルティングの第一人者として活躍する一方で、明快で斬新なヴィジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目される。著書に、『プロフェッショナル原論』『成熟日本への進路』『論理的思考のコアスキル』(以上ちくま新書)、『知識人の裏切り』(西部邁との対談、ちくま文庫)、『経営戦略概論』『戦略策定概論』『組織設計概論』『思考・論理・分析』『リーダーシップ構造論』(以上、産能大学出版部)、『AIとBIはいかに人間を変えるのか』(幻冬舎)ほか多数。

「2021年 『文学部の逆襲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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