- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784382057302
感想・レビュー・書評
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【星:5.0】
経営論の決定版と言っていいんじゃないでしょうか?
経営戦略を上手い切り口でとても分かり安く説明している。
この本を読んで、ポーターだとか有名どころの経営戦略のキモみたいなものがよく理解出来たと思う。
また、著者は経営コンサルタントであるが、実務に偏りすぎず適度に学術的で、でも学者が書くようなゴリゴリに学術的という訳でもなく適度に実務的で、その程度が非常にいい塩梅なのである。
そして、著者の文章自体もすごくわかりやすいのでスイスイ頭に入る感じ。
経営学とか経営論とか経営戦略とかに少しでも興味がある方は、是非とも一読して欲しい1冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以上のホーソン実験の結論をメイヨーは、著作『産業文明における人間問題』の中で以下の三点にまとめている。
①作業者の自由裁量が大きくなるほど仕事の満足度が向上する。
②作業者同士のやり取りや協力の度合いが高いほど、グループの結束が強くなり、生産性も向上する。
③仕事の満足度や生産性を左右するのは、物理的な作業条件よりも作業者の意欲、作業者間の協力・貢献の意識という社会的・組織的条件である。
テイラーが生産プロセスの合理化を図り、ファヨールが経営の機能を体系化したことに加えて、メイヨーがホーソン実験によって組織で働く心理的側面の重要性を証明して経営における”人の発見”を遂げたことによって、近代的な経営学の土台が築かれたと理解することができるのである。
◾️サイモンの組織構造
①まず階層化・分業化・専門化によって、より小さな単位で物事を行うことで情報の取得と判断が効率的になり、またそのことによってより合理的な意思決定が可能になる。
②そしてどのように意思決定を行っていくのかという手順とルールを決定することによって、複雑な作業であってもより効率的に行えるようになる。
実はパスカルが調べ上げたこのような生々しいエピソードこそ、ホンダの米国進出の真の姿である。「スーパーカブを、それまでのオートバイとは全く異なる訴求ポイントを持った差別化商品として、それまでの大型オートバイのユーザーとは全く別の顧客セグメントに売ることにした」という分析はあくまで後づけの結果論であって、BCGのいうような緻密な調査と明確な戦略がホンダに最初からあったわけではない。大ヒットしたスーパーカブは、アメリカ市場への進出を決めたときにはそもそも主力商品として位置づけられてすらなかったのである。
・VRIOフレームワーク
バーニーは著書『企業戦略論』で、「VRIO」という枠組みを提唱している。VRIOとは、企業の競争力の源泉になり得るリソースがどのような条件を満たしているべきなのかについて、その条件を整理したフレームワークである。
Vとはバリュアブル(Valuable)、価値の源泉であることを指す。顧客にとって何らかの経済的価値をもたらす経営資源や組織能力でなければ、競争力の源泉にはなり得ない。
Rとはレア(Rare)、希少なことを指す。企業の強さの源泉がどこにでもあるようなありふれた経営資源では意味がない。競合がすぐに調達できてしまうようなものであっては、差別化の源泉にはなり得ない。
Iはインイミタブル (Inimitable)、模倣できないことを指す。競合に簡単に真似されるような経営資源では持続的な競 争力の源泉にはなり得ない。ちなみに、VRIOの中ではこ のインイミタブル (模倣困難性)が最も重要なファクターだ とされている。一九八○年代の戦略論の核心は「ディファレ ンシエーション(差別化)」であったが、九〇年代のリソース ベースド ビューの戦略論の核心は「インイミタブル(模倣困難性)」だと理解して良いであろう。
○はオーガナイゼーション (Organization)、組織化されていることを指す。価値があり(Valuable)、稀少で(Rare)、模倣困難(Inimitable) な強みは、それらが有機的 (Organic)に束ねられて、組織化(Organized) されていてこそ、有力 な強みの源泉となり得るとする条件である。
このように、バーニーは真に有効な戦略とは自社独自のリ ソースに根ざしたものであるべきだと考え、その強さを形成するための条件としてVRIOを提唱したのである。
九○年代半ば以降、企業の競争力に直結するような差別化を生み出す源泉は、結局は”人と組織”にあるという認識が急速に広まり、どうすれば強い組織がつくれるのか、どうすれば人材が育ち、高いモチベーションで活躍することができるのかというのが、最も重要な経営テーマとなっていった。
以上のように、リソースベースドビューは、最初は資金、テクノロジー、ブランド等々の有形の経営資源に注目が集まったのだが、他社との競争優位の源泉たるインイミタブル(模倣困難性)であることを追求していった結果、人材や組織へと最重要テーマがシフトしていったのである。
また、経営資源(リソース)と並んで企業の実行力を決定づけるもう一つのファクターである組織運営体制においても、最初はカンパニー制やフラット型組織といった組織形態や、成果主義型の評価制度といった人事制度等、組織形態や運営制度という〝有形の(ハードな)”要素に注目が集まったが、次第に目標達成に執着心を燃やす企業文化やチームワークを重視する社員の行動特性といった〝無形の(ソフトな)」要素”に関心がシフトしていった。つまり「経営資源と組織の時代」の戦略論は九○年代という一○年間で、企業の競争力を形成する最も模倣困難な経営資源は人や組織といった無形の資源であるという認識に至ったのである。
◾️コリンズ「ビジョナリーカンパニー2」
彼は「ビジョナリー・カンパニー」を発表した次の研究として、長期間にわたって成功を収め ている「偉大な。企業と短期的な成功を収めた後に衰退してしまった。良い、企業との違いについ ての調査を行った。その結果、企業が持続的に高い成果を上げ続けるための鍵は、優れたビジョ ンよりもむしろ、「誰をバスに乗せるか (first who: ファースト フー)」にある、という結論を 提示した。
これは要するに、「偉大な。企業を率いる経営者は、まず初めに企業のビジョンに合う適切な 人材をバスに乗せ(経営陣に迎え入れ)、不適切な人材をバスから降ろす(経営陣から外す)ことを優先している。そして適切な人材がそれぞれに相応しい席に座ったところで初めて、自社が何をすべきか、戦略と組織はどうするのか、どのような技術を開発するのか等々を決定しているということである。
これは企業の経営戦略に関わるチームを適切な人材だけで編成することによって、
i.企業内部の政治的な活動よりも企業が追求すべき外の機会に目を向けて行動することができ、 環境の変化に適応しやすくなる。
Ⅱ.自主性が強く、動機づけや管理の問題がほとんど必要なくなる。
という大きなメリットがあるためであると分析している。逆に経営陣に不適切な人材が多いと、たとえ正しい方向が分かり、正しい方針が示されたとしても、社内の人材がお互いに足を引っ張り合ったり、組織のポリティクスに多くのエネルギーが注がれたりして、偉大な企業になることができないのである。
◾️資本と組織の相反
企業は社会から資金を集め、その資金で原材料を調達し、人々を雇用し、雇用した人々の労働で商品を作り出すことを通じて資本の増殖を図ることを目的にした存在である。このことが示すのは、企業の最も根源的な資源は資本(カネ)であり、それと同時に実際の活動を行う主体はヒトから成る組織であるという企業の現実である。こうした企業のそもそもの成り立ちに根ざして、企業の本能ともいえる二つの根源的指向性が発生する。『資本の本能」と組織の本能”である。資本の本能は増殖を指向する。組織の本能は保守化と肥大化の傾向を持つ。そして二つの本能の根源的指向性の違いが、企業の経営戦略に重大かつ深刻な相反性をもたらすのである。これが実際の企業経営が孕む四つ目の相反性、資本と組織の相反である。(資本の本能と組織の本能の相反と呼ぶ方がより正確である。) -
この体系化はわかりやすい。
戦略サファリはぶ厚過ぎる、経営戦略全史も項目たくさんありすぎるので、頭に整理できるくらいの分量で経営戦略が体系化されていてGood。 -
『経営戦略全史』を会社の勉強会で読むということで、副読本として購入。
波頭史観なのかは浅学なのでわからないが、経営戦略論の潮流とその類型が整理されており、頭の整理に非常に良い。
戦略策定の方法論軸(プランニングorエマ―ジェンス)と戦略の有効性軸(ポジショニングorRBV)で論を分類し、時代を経るごとに経営戦略論が、システマティックからヒューリスティックへ、ハードからソフトへ、スタティックからダイナミックへと重層的に発展してきたという説明になっている。
また、経営戦略論と実務というテーマでも紙幅を割いており、実学向けの感もあり使いやすい一冊。 -
・経営戦略の潮流と、潮流が生まれた歴史的背景がまとまっている名著
・内部分析→競争環境分析→ポジショニング学派→RBV学派、それぞれが生まれた歴史的背景と、それらを踏まえて企業運営上の難しさ(=4つの背反性のマキシマムポイントの取り方)が言及されていて、どんなケースでも想定したい論点が山盛り
著者プロフィール
波頭亮の作品





