- Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
- / ISBN・EAN: 9784384043501
作品紹介・あらすじ
ソ連に強制連行されたルーマニア人の主人公レオポルトが5年の歳月を過ごした収容所の索漠とした世界。ノーベル文学賞受賞作家の著者が聞き取り調査をもとに書き上げた渾身の小説。
感想・レビュー・書評
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▼福島大学附属図書館の貸出状況
https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB90268127
<<飢えの現象学>> 20世紀は強制収容所の世紀であり、またそれを記録した世紀でもありました。フランクル『夜と霧』、 ソルジェニーツィン『収容所群島』などがすぐ皆さんの頭に思いうかぶでしょう。シベリア抑留から 生まれた石原吉郎の痛々しい詩や回想も忘れられません。 これは小説です。ヘルタ・ミュラー自身は収容所の経験はありません。彼女は戦後ルーマニアに残留 したドイツ人家庭に生まれました。ソ連軍は自国の復興のため、その地のドイツ人、とくに若者をロシア に連行し、強制労働に従事させました。その経験の聞きとりをもとに、彼女は小説を作りあげたのです。 事実の重みに、どれだけ虚構のことばがつりあえるか。彼女は収容所の体験を飢えという一点にしぼります。 ここには「息のブランコ」「申告草」「ハートのシャベル」「飢餓天使」などという奇妙な造語がいくつも 埋めこまれています。それらは、いわば読むひとの口のなかで、味気ない砂にまじった礫のように、硬く きしんだ音をたてるのです。
(推薦者:経済経営学類 神子 博昭先生)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ソ連に強制連行された、ルーマニア人が主人公。
経験者への調査をもとにしている。
悲劇的ではなく、暗さのなかで淡々とラーゲリ(収容所)の日常が語られていく。
独特な表現に、妙に惹きつけられる。
名付けられた小物たち、繰り返される言葉遊びには変に愛着も感じてきてしまう。
灰色のイメージを残す世界のなかで、それこそ、すべてが「芸術的」だ。
原書で読んでみたくなる。
最後の章、最後の数ページ、「宝物について」で、リズム感が変わった。何かが静かに押し寄せて来る気がした。
またここをいつか読みかえさなくては、と思うような、不思議な感覚を残すラストだった。
歴史の一片としても、文学としても、深い作品。 -
2009年ノーベル文学賞受賞。
wikipedia → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC
ヘルタ・ミュラー(Herta Müller、1953年8月17日 - )は、ルーマニア出身のドイツ語作家。チャウシェスク政権下のルーマニアにおける困難な生活や、バナート地区のドイツ人の歴史、ソ連占領下ルーマニアのドイツ系民族迫害などを主題にした作品で知られる。