春野ことりさんの感想
2018年9月29日
森ではじまる切ない恋の物語。 道に迷った男が見た不思議な動物や少女、老婆。それは夢か幻か。 幼馴染同士のかわいらしい恋物語かと思いきや、少女が毒の植物を口にして自殺をはかり、ロミオとジュリエットのように悲劇感がただよう話でした。最後はハッピーエンドともアンハッピーエンドともいえない結末をむかえました。でもきっと明るい未来を信じる読者のために作者はミエルの生まれ変わりという存在を作ったのでしょう。 死によってしか愛する人間といられないかわいそうなミエル。一度人間ではなくなったものは、もう二度と人間と愛し合うことは許されない厳しい世界です。森を守る使命より愛する人を選んだ少女の心の強さが印象にのこりました。
1959年熊本市生まれ。 国立熊本電波高専中退。熊本商科大学卒業。 現在、熊本市役所職員。人間学研究会会員。 著書に『スコール! デンマーク 塔のある風景』(石風社) 「2020年 『デューラーと共に ネーデルラント旅日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」