黒死館殺人事件 (現代教養文庫 886 小栗虫太郎傑作選 1)

著者 :
  • 社会思想社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (547ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784390108867

感想・レビュー・書評

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  • 推理小説をあまり読まないけれど、なんとなく読んでみた。登場人物の知識量が凄まじく、読んでいて見知らぬ言葉の土石流状態。それでも何故だか妙なことに抗う気も抜け出す気にもならず流されながら読み終えた。何度かゾクリとする場面もあり、奇妙な何かが遺った。面白かったと思う。7割ほどよくわからなかったような気もするけれど。

  • 手に入れてからいったい何年(下手したら十年)積ん読状態だったんだろう。
    奇書といわれる本書。江戸川乱歩も夢野久作も好きだし(『ドグラ・マグラ』は若い頃読了)ゴシック趣味も好物。でもなんとなく手付かず。

    この度入院でベッドから動けないのを幸い、逃げられない状態で読み始める。まずその圧倒的な情報量に話の筋を見失い、読み流しつつも読了にまるまる1日かかる。
    結局、細かいトリックだのは文字に埋もれて希薄になり、探偵と関係者達との会話も芝居がかったやりとりばかりで結局何が言いたいのか浅学の身にはわからず。
    舞台装置のみならなかなか魅力的というか、怪しい洋館に曰くありげな一族と一定のファンがいるジャンルなんだけれど。
    自分は活字中毒だ、ミステリーマニアだと自負する方は読んでみては。

  • 2007/10/14読了

  • 一度で理解するのは困難。ストーリーが色んな方向に発展して行き、その発展先で悶絶し徐々に脱落してしまった。よくこれだけのミステリが描けるものだと感服はするが再読する気にはなれない。確かに、何度も繰り返し読めば、その都度違った面白さを味わえるだろうが、今回の苦痛があまりにも大きすぎた。期待してなかったものの、謎解きにはガッカリした。法水のキャラは嫌いではないが、探偵としての有能さには疑問を感じた。

  • 推理小説4大奇書(3大だっけ?)のうちの1。全編を覆うペダントリーの中で描き出されるのは何か。

  • ケルト・ルネッサンス式の城館、プロヴァンス城壁を模したと言われる壁廊。降矢木氏の館は通称黒死館と呼ばれていた。建設以来三度にわたっての奇怪な変死事件、当主旗太郎(算哲の子)とその家族の他に居る4人の異国人は40年間屋敷から一歩も出たことが無い。そんな奇妙な性質の持つ館で殺人事件が起こった。
    被害者は4人の異国人の一人、ダンネベルグ夫人。彼女の遺体は何故か発光していた。そして故・降矢木算哲(黒死館の創設者)が残した殺人方法を予告した紙。
    法水麟太郎がダンネベルグ夫人事件を検証する最中、二つ目の遺体が発見された。


    これは昭和初期(10年かな)に発表された推理小説で、四大ミステリーの一つと言われてる逸品。
    この時代にどういう作品群(本格推理モノ)があったのか良く知らないので、個人の勝手な仮定の話になるが、見立て殺人・遺体装飾・殺人予告・幾度と無くあるどんでん返し等は、おそらくこれが皮切りでは無いのだろうか。(でも、乱歩もこういうの形のを書いてそうだけど)
    凄く飾り付けの多い作品ではある。算哲の愛妻を模した自動人形(テレーズ)を殺人に使ったかもとか、死亡推定時刻の後にも生きていた可能性が出てきたりとか、十二宮に施された暗号とか、創紋を彫り上げられた数秒後に絶命したとか、遺体自体が発光してるとか……とにかく不可解事象の目白押し。
    それを解明して行くのだが、凄く判りづらい。解明の半分以上は理解出来なかった自信がある(駄目)
    何がわかりづらいって会話だ。会話。
    従って、物凄く読みづらい。こんなに読みづらいとは思わなかった。ルビ多いし、但し書きも多い。
    で、その判りづらい会話はこんな感じ。
    本文抜粋(括弧内のカタカナはルビ)↓


    「そうですか、博士に……」といったんは法水は意外らしい面持ちをしたが、けむりをリボンのように吐いて、ボードレールを引用した。
    「では、さしずめその関係と云うのが、吾が懐かしき魔王よ(オー・モン・シェル・ベルゼビュット)なんでしょうか」
    「そうです。まさに 吾なんじを称えん(ジュ・タドール)――じゃ」真斎は静かに動揺したが、劣らず対句で相槌を打った。
    「しかし、ある場合は」と法水はちょっと思案気な顔になり、「洒落者や阿諛者はひしめき合って(ゼ・ボー・エンド・ウィットリング・ペリシュト・イン・ゼ・スロング)――」と云いかけたが、急にポープの『髪盗み(レーブ・オヴ・ゼ・ロック)』を止めて『ゴンザーゴ殺し』(ハムレット中の劇中劇)の独白を引き出した。
    「どのみち、汝真夜中の暗きに摘みし草の臭き液よ(ザウ・ミツクスチュア・ランク・オヴ・ミッドナイト・ウィーズ・コレクテッド)――でしょうからね」
    「いや、どうして」と真斎は頸を振って、「三たび魔神の呪詛に萎れ、毒気に染みぬる(ウイズ・ヘキツツ・バン・スライス・プラステッド・スライス・インフェクテッド)――とは、けっして」と次句で答えたが、異様な抑揚で、ほとんど韻律を失っていた。のみならず、何故かあわてふためいて復誦したが、かえってそれが、真斎を蒼白なものにしてしまった。


    なんのこっちゃーさっぱりわからん。知識の無い私にとっては、引用などせず、ダイレクトで話して欲しいと何度思ったことか。とにかくこんな引用会話が妙に多い。
    故に、そこにどういう意味を含んだ会話がなされてるのか検討すら付かない。
    でもって、法水が何故こんな会話をしたのかなんて意識の外。


    再び本文抜粋↓


    「――略――しかし、先刻貴方は、僕が『ゴンザーゴ殺し』の中の汝真夜中の暗きに摘みし草の臭き液よ(ザウ・ミツクスチュア・ランク・オヴ・ミッドナイト・ウィーズ・コレクテッド)――と云うと、その次句の三たび魔神の呪詛に萎れ、毒気に染みぬる(ウイズ・ヘキツツ・バン・スライス・プラステッド・スライス・インフェクテッド)――で答えましたっけね。その時どうして、三たび(スライス)以後の韻律を失ってしまったのでしょう。また、どうした理由かそれを云い直した時に With Hecates(ウイズ ヘキツツ)を一節にして、Ban と thrice を合わせ、しかもまた訝しいことには、そのnthrice(バンスライス)を口にした時に、貴方はいきなり顔色を失ってしまったのです。勿論僕の目的は、文献学上の高等批判をしようとしたのではありません。この事件の発端とそっくりで、実に物々しく白痴嚇し(こけおどし)的な、三たび魔女の(ウイズ・ヘキツツ・バン)……以下を貴方の口から吐かせようとしたからです。つまり、詩語には、特に強烈な聨合作用が現れる――という、ブルードンの仮説(セオリー)を剽窃して、それを、殺人事件の心理試験に異なった形態で応用したのです。――略――ですから貴方は、それが僕を刺戟するに気がついたので、すぐにあわてふためいて云い直したのでしょう。――略――それが僕の思う壺だったので、かえって収拾のつかない混乱を招いてしまったのです。というのは thrice(スライス)を避けて、前節のBan(バン)と続けたBanthrice(バンスライス)が、Banshee(バンシイ=ケルト伝説にある告死婆)が変死の門辺に立つとき化けると云う老人――すなわちBanshrice(バンシュライス)のように響くからなんですよ。ねぇ田郷(真斎)さん、僕が持ち出した汝真夜中の(ザウ・ミツクスチュア)……の一句には、こういう場合に、二重にも三重にもの陥穽が設けられてあったのです。勿論僕は、貴方がこの事件で、告死老人(バンシュライス)の役割をつとめていたとは思いませんが、しかしその、魔女(ヘカテ)が呪いの毒に染んだという三たび(スライス)は、いったい何事を意味してるのでしょうか。ダンネベルグ夫人……易介……そうして三度目は?」


    という感じに罠をかけていたらしいのだが……先の会話でそこまで読めるわきゃない(笑)
    全ての謎は理論的に解明してる(多分)のだろうが、その理論的文の多くが、私には理解しずらかったです。
    幾度かのどんでん返しは楽しめるし、面白い筋だし、ゴシック風味で好きなんだが、とにかく読みにくいのと、特異体質多すぎのような気が。
    法水の薀蓄垂れめ。この男、頭イイのは判ったが、性格が今一つ判らんのと、茛(たばこ)吸い過ぎです。

著者プロフィール

小説家。1901年東京生まれ。本名、小栗栄次郎。1927 年、「或る検事の遺書」を、「探偵趣味」10月号に発表(織田清七名義)。1933年、「完全犯罪」を「新青年」7月号に発表。「新青年」10月号に掲載された「後光殺人事件」に法水麟太郎が初めて登場する。1934年、『黒死館殺人事件』を「新青年」4~12月号に連載。他の著書に、『オフェリヤ殺し』、『白蟻』、『二十世紀鉄仮面』、『地中海』、『爆撃鑑査写真七号』、『紅殻駱駝の秘密』、『有尾人』、『成層圏の遺書』、『女人果』、『海螺斎沿海州先占記』などがある。1946年没。

「2017年 『【「新青年」版】黒死館殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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