母さんが死んだ: しあわせ幻想の時代に (現代教養文庫 1468 ベスト・ノンフィクション)

著者 :
  • 社会思想社
4.00
  • (2)
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 26
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784390114684

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • さびしい話しでした

  • 1987年、札幌で母子家庭の母親が餓死する事件が起きた。

    こたつにつっぷしたまま餓死していた母親。そして3人の子供は母親が死ぬまで周囲にそのような状況を知らせなかった。

    いったいどうして、このような母親はこのような悲惨な死をとげなければならなかったか。またどうして子どもは周囲に助けを求めなかったか。

    その背景には、しあわせの幻想に隠蔽された、日本の貧困が見え隠れする。

    特にここで問題とされるのは生活保護の実状。不正受給がクローズアップされるが、ほんとうに問題なのはもらえるべき人が受給できないことだ。

    政府の小さい政府路線に従い、厚生省は生活保護の適正化をうたい、生活保護の受給率を下げようとした。役所に申請にきてもなるべく申請しないように誘導した。いや、ときには人格を否定するような-風俗で働くようすすめたり、生きていることを否定したり-対応もあったそうだ。

    さらに生活保護受給者に対する世間の目の厳しさが、申請に行くことをためらわせる。

    そのようにして、もらうべきひとが生活保護をもらえず、苦しんでいるのはおそらく今も同じではないか。

    水島氏が述べたように、この国では苦しんでいるひとに対する想像力、優しさが欠如しているように思える。そしてマスメディアが想像力を麻痺させている責任は大きい。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

上智大学文学部新聞学科教授。
1957年生まれ。東京大学法学部卒。
札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー「母さんが死んだ」や准看護婦制度の問題点を問う「天使の矛盾」を制作。ロンドン、ベルリン特派員を歴任。
日本テレビで「NNNドキュメント」ディレクターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。「ネットカフェ難民」の名づけ親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。
2012年から法政大学社会学部教授。2016年から上智大学文学部新聞学科教授(報道論)。

単著に『母さんが死んだ〜しあわせ幻想の時代に〜』(ひとなる書房)、『ネットカフェ難民と貧困ニッポン』(日本テレビ)、『内側から見たテレビ やらせ・捏造・情報操作の構造』(朝日新書)、共著に『テレビはなぜおかしくなったのか』(高文研)、『想像力欠如社会』(弘文堂)など。

「2023年 『メディアは「貧困」をどう伝えたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

水島宏明の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×