学生に与う (現代教養文庫)

著者 : 河合栄治郎
  • 社会思想社 (1997年9月発売)
4.17
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784390116190

学生に与う (現代教養文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 請求記号: 159.7||K
    資料ID: 91990666
    配架場所: 工大君に薦める

  •  「人格の陶冶」それこそが人の目指す道である。
     では「人格」とは、「陶冶」とは-
     
     私が生まれるずっと前に書かれた著書なのに、その飾らず、厳しく、しかし人の心の奥深くにまで響く言葉に、ときに勇気をもらい、ときに檄を飛ばされ、ときに傷ついた心を癒されてきた。
     
     この本に出会わなければ、きっと現実から目を背けて流れに身を任せてその日その日だけをやり過ごすような生き方を送っても疑問さえ持たなかっただろう。
     この本は決して優しくはない。だが、「人間如何に生くべきか」を、これほど誠実に教えてくれた本はない。

  • 1940年に大ベストセラーになった本。前年に東大経済から放擲されたリベラリズムの権威者である著者がその思いの丈を筆に記したもので、大変な情熱ですね。実は自分自身が大学入学した頃に読んだことがあり、もう一度読んでみたくなりました。もっと古色蒼然としているかと思いましたが、意外にも現代でも通用する!?と思います。「価値あるもの」として教育、学校、教養、真善美、歴史などを論じ、「私たちの考え方」では「読むこと、考えること、書くこと」のほか、講義・試験、親子愛、師弟愛、友情、恋愛、学園、卒業などを論じています。著者の理想主義がこの年に青年だけでなく、社会全般への励ましになったのでしょうが、今でも立派に通用するような気がするには私自身が古いからなのでしょうか。やはり学生はこうあるべきだと思うからです。しかしながら、立花隆「天皇と東大・下」に出てくる河合は美少年愛の性癖があったというし、土方派との派閥抗争に明け暮れた著者を想像しながら読むと別の面白みを感じます。

  • 大正・昭和前期の教養主義を考える時、とにかく「本を読む」ことが強調される。

    三太郎の日記、哲学以前など必読書があり、学生は中身を理解できなくても、それらを「読まなければ恥ずかしい」という意識があった。流行という意味では、全体的にはそれも一つの時代の文化なんだなと思う。

    一方で、「人生いかに生きるべきか」という人生の真理的な解答を求めて本を読んだ者もいる。その答えは真理という言葉の性質上、はっきりとはつかめなくても、人生の糧となる強靭な思考が身についたのだろう。その意味では教養主義には、時代を超えた普遍的な価値があると思う。

    河合栄治郎は戦前戦中にあって、軍部とマルクス主義双方を批判した、自由主義の東大教授である。本書も昭和15年出版で、発表すること自体、知識人として大きなリスクを伴うものだった。実際に思想の事で裁判になり、東大を追放された。決して時局や世の空気なるものに迎合せず、知識人のあるべき姿を示した思想家である。本書の思想が本物であることは、河合栄治郎の人生が示している。

    本書で河合栄治郎は、「教養」というその論理学的内包も外延も一般的同意が難しい言葉について、その目的として「人格の陶冶」という言葉を使う。それは河合栄治郎の「人生いかに生きるべきか」に対する回答である。ファッション的に教養主義云々と言っているうちに「教養とは何か」とばかり問い続け、さらには教養に関する知識経験が自己目的化してはならない(教養主義に限ったことではないが)。教養が「なぜ必要で、どう使うのか」を見失うことなく、人生の糧とすることが大事だということだ。

    プラグマティズムの立場をとる世俗的な論理であることが、宗教的差異を刺激することなく、広く支持された要因だろう。素晴らしい言葉だと思う。ただその言葉は自分から人に向けて発言するのは憚られる。なぜか、自分自身がその言葉を使うに値するほど実のあることをできていないから。

    本書は文字どおりの座右の書だと思う。本書を種に自分で考える、自分で行動する。どんな知識を得るか、どんな経験を得るか、そしてそれらから何を学ぶかは自分次第である。自分の「人生いかに生きるべきか」もその先にある。本書が難しい真理的な問題を扱いながら、時代を超えて読み手の情熱を掻き立てるのは、「人格の陶冶」という思想に普遍的価値があることと共に、著者に教育者としての読み手に対する知的なパトスがあるからだと思う。

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