17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義

著者 :
  • 春秋社
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393332658

感想・レビュー・書評

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  • 歴史に関する本はよく読むのですが、この本の特徴は、歴史を文化や宗教という切り口で解説してある点です。

    宗教というものは、人間(特に支配階級)のソフト分野の発明品だと思いますが、それが歴史においてどのような役割を果たしてきたかについて、考えさせられる良い機会を与えてもらったと思います。

    歴史は切り口を変えると、面白い発見があるので、今後ともこのような本の読み方をして楽しみたいと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・2つの大事なポイントとして、世界と日本を歴史観を持ってみること、もうひとつは、社会と文化はどのように成立しているかをよく知ること、である。この両方を学ぶことを「人間文化を学ぶ」という(p5)

    ・日本でも香りを非常に気にしていた時代があった、平安貴族がそうで、あまり風呂に入れなかった時代、香水をつけるのではなく、「お香」焚き染めて、その香りを着物や扇に移らせていた(p24)えん

    ・地球の半分以上がドロドロだったころに、宇宙からウィルスのような情報体がやってきて、その情報が海辺の粘土質のようなものに転写されることで、最初の生命が誕生したとされる(p38)

    ・親指を使ってモノをつかんだり持ったりすることができたところから、人間の文化がスタートした(p41)

    ・二足歩行を始めたことで、目の位置が変わって世の中を平衡に見ることができるようになったのは大事件であった、目が正面に並んで完全に顔の正面になった、それによって目の焦点を結ぶことができるようになった(p42)

    ・二足歩行になったおかげで、妊娠期間が異例の長期間になった、さらに赤ちゃんが未熟児になってしまった(p46)

    ・人間には3つの脳がある、ワニの脳(反射脳)、ネズミの脳(情報脳)、人の脳(理性脳)がある(p52)

    ・人間文化史の最初に出てきたものが宗教、そのあとに舞踊や哲学、建築が生まれて、その後に文藝がでてくる、理性の脳がいかに本能の脳の暴走を抑えるかという闘いがあったから(p54)

    ・ヒーロー、ヒロイン物語には、1)セパレーション(出発)、2)イニシエーション(冒険)、3)リターン(帰還)がある(p73)

    ・東洋では西洋とは異なった考え方が生まれた、それを行った代表的な人は、マハーヴィーラ(ジャイナ教)とブッダ(仏教)で、紀元前6世紀のインドに生まれた(p92)

    ・ブッダの教えは、個人で守らなければならない「戒」と、集団で守る「律」を決めていった(p103)

    ・孔子の考えを基に、儒教が生まれた、四徳(仁義礼智)を重んじることが決められ、漢の時代に発展して「信」が加わって「五常」になった(p109)

    ・荀子の性悪説は教育論に、孔子や孟子の性善説は、帝王学となった(p111)

    ・インドや中国、日本は森林が多いので、砂漠のような光と闇や、生死に迫られるといった二者択一ではなかった、森林には前後左右、東西南北と、いろいろな方面に様々な情報が待ち構えていた(p120)

    ・本当に何かをやりたければ5年間という期間は非常に大きい、ファミコン、ケータイ電話が広まったのも5年間かからなかった(p141)

    ・ユダヤ教の神聖なる教義や思想をつくったのはハスモン家であるが、これが、エッセネ・サドカイ・パリサイ派に分かれた、エッセネ派からイエスキリストが登場してくる(p147)

    ・キリスト教は、ユダヤ教のエッセネ派やその小集団であったクムラン宗団が編集しつつあった信仰を再編集して、一気に成立していったもの、その編集者がパウロ(p154)

    ・ローマ帝国が国の宗教として正式に認めていたのは、太陽神ミトラスを信仰する「ミトラス教」であった(p159)

    ・アリウス派は、父なる神とイエスキリストは本質的には異なる、子なるイ
    エスはあくまで神によって作られた人間性を本性として持つという「人間イエス派」、アタナシウス派は、イエスは神と人間の両方の性質をもつという「神人イエス派」、ニカイア公会議ではアタナシウス派が勝ったが、その後250年も続いた(p165)

    ・イスラム教は7世紀の初めにマホメットにつくられたが、世界で初めて最初から文字を持った宗教(p181)

    ・イスラム軍がピレネー山脈を越えて、欧州に侵入しようとしたときに、フランク王国のカール将軍が、イスラム軍を撃退した、この「トゥール・ポアティエの戦い」は有名(p182)

    ・日本の編集方法にこそ、日本文化の重要な独創的な特質がひそんでい
    る(p203)

    ・イザナギとイザナミが最初に産んだ子供がヒルコ(手も足もはっきりしない奇形児)であるというのは世界中の神話でも特異、さらにこのヒルコこそ大事にすべきと奉られる、それが恵比寿(p208)

    ・イザナギの左の目からアマテラス(天照大御神)、右の目からツクヨミ(月
    読命)、鼻からスサノオ(須佐之男命)という三神が生まれた(p210)

    ・古事記は万葉仮名による日本語(倭語)、日本書紀は漢文、当時の日本には縄文以来の日本語(倭語)をそのまま文字として定着させるための統一した方法がなかった(p219)

    ・古事記は天皇家のルーツや王権の由来を明確にするため、日本書紀は
    日本という正史を漢文という記述スタイルを使った(p220)

    ・天武天皇は、日本という国名を決めた天皇である(p224)

    ・朝廷とは、朝の時間帯に「まつりごと=政治上の会議や決裁」をやったことからきている言葉(p228)

    ・朝廷では漢字能力が必要であったが、内裏(朝廷に対して夜の世界を司る場所)では和歌の能力が求められた(p229)

    ・ルネサンスが起こした復興や再生は、キリスト教が封印してしまった古代ギリシア・ローマの知の復興であった(p290)

    2013年1月14日作成

  • これだけ世界史と日本史を縦横無尽に駆け巡る文化講義はなかなかないのではないか。「イギリスのエリザベス女王と信長がほぼ同い年で、共に16世紀の専制君主として宗教情報をコントロールしていった」、など、繋がるフレーズが満載である。自分は親鸞の言葉、「悪人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」
    の解説のところが特に胸に響いた。自分なりに要約するとこんな感じ。人間の罪業そのものを許す、受け入れる仏教を追求していった親鸞。善人が極楽にいけるんなら、悪人はよりいっそういけるだろう。一聴すると「えーっ??」っというような感じなんだけどこれには補足説明が必要で、昔「悪党」や「悪人」と呼ばれたのは既成の価値観に抵抗する者達だった。アウトローだが、民衆の味方だった。体勢から見た「悪」。お上に睨まれても粋な生き方をする者達。俺は浮世絵師の歌川国芳ってひとが思い浮かぶんだけど(別に悪党とは呼ばれてなかったし、親鸞とは時代も違うが)、幕府の人物表現への厳しい規制に屈せずにユーモラスな擬人画で抵抗し、おおいに町人を楽しませた。親鸞もまた、親鸞が生きた時代の仏教が持っていた女性に対する差別に抵抗し、より懐の深い仏教の形はないものか、と苦悩して生きていった。
    別の読み方としては、自分が善人だと思って生きる者よりも、何らかの罪の意識を抱きながら生きていっている者のほうが、いい人間になろうという努力をして生きていくのではないか、いい人間として生きるための「バネ」があるのではないか。という解釈もある。自分にとっては少し救われるというか、今までたくさん取り返しのつかないことや人を傷つけたことがたくさんあって、別に天国に生きたいとは思わないけど、今までのことを引きずって下を向いて生きていくより、これから出会う人や共に生きてる人にいい人間だと認められるように顔を上げていきたいと思ってる今日この頃なので。まだまだ解釈がありそうな言葉なので、ゆっくりと付き合っていこうと思う。そんな言葉と出会えたこの本に感謝します。

  • 帯に「大人がこっそり読んでいる。」とある。まさに、このような書籍は大歓迎。勉強になる講義を2,000円もせず体験できるのは非常にありがたい。子供に読ませたい本にノミネート。

  • 宗教の成り立ちがとてもわかりやすく書いてある。また読み直したい。

  • 日本文化研究に関する豊富な知識で知られる松岡正剛氏の帝塚山大学での講義をまとめた本。

    著者が唱える“編集工学”の考え方を軸にし、現在の世界宗教の成り立ちと、日本の文化の成り立ち、そして、世界との関わり方を順をおって説明していく講義。

    神話と呼ばれるような「物語」を引き継ぐために「言葉と文字」が生まれ、それがどのように編集されて宗教になり、文化として根付いていったかをわかりやすく説明してくれており、現代がどのような文化基盤から成り立っているかがすんなりと腹に落ちてくる。
    特にキリスト教の「編集」の仕方はこじつけにしか見えず、過去の宗教家たちの苦労、というか苦悩が垣間見え興味深い。

    聖書・コーラン等各宗教の聖典をいずれ一度は読んでみようと思う。

    メモとペンを片手にマッピングしながら読みたい本。

  • 大学時代に読んだ物を再読。
    とても良い本だと思う。こういう本は著者の史観の主張が強すぎて読んでて不快になる物も有るが、本書は程よいバランスを保ちながら、著者の"異"と"同"の考えが述べられている。
    本書は著者の非常に多岐にわたる知識を基に、日本-欧米の関係といった横のつながり、人間観の移り変わりという縦のつながりをうまく表現している。網羅的な内容で有るが一部掘り下げた部分もある。
    17歳のためのとタイトルには銘打っているが、30前になった現在読んでも学ぶところがおおい。
    本書中に表れる引き算の文化という考え方がおもしろい。
    枯山水に代表されるように水がない事で逆に水を表現するといった事を指す。
    他にもたらこスパゲッティー等、分かりやすい例を挙げて日本文化の特質性を記述している。
    数時間で読める割には内容の濃い名著だと思う。読んだ後は少し頭の良くなった気がする。
    若い人に薦めたい。

  • 普段読まないジャンル。なかなか面白かった!

  • 常識を疑っていくことは非常識ではない - 読んだものまとめブログ http://t.co/XZ8e4JZ via @sadadad54

  • 松岡正剛さんを知るきっかけとなった一冊☆


    編集工学というものにもこの本のおかげで興味を持ちました☆


    宗教という観点から日本と世界の成り立ちを同じ時間軸から見てみるというなんだかすごく三次元的な見方で話が進むように感じました♪


    ただ17歳のための~とありますが、途中からかなりの広く基礎知識を要する本に思いもしました☆


    自分もいっぱいいっぱいでなんとか読めたのかなと思いますが、自分が17歳であったなら決して読めないようにも思う本です(笑)


    ただこういった本を読むことはかなり脳を使うと思うのでいいのでイイ刺激になるとも思います(^^)


    またすごく勉強になったのは話の展開のしかたです!
    展開のしかたがとにかくすごい!
    松岡正剛さんの知識量を感じます☆


    これが編集工学というものなのかとも感じました。


    本の中身は一神教と多神教の成り立ちや違い。
    どのような人の心理状況が生み出したのかという考え方もおもしろかったです♪


    何度か読んで理解を深めるような一冊だと思います☆

    まだ自分は理解度としてはかなり低いようにも感じていますが、また知識を深め改めて読むと、この本の好さが改めてわかるようにも思います(^^)

  • ひとつは世界と日本を歴史観を持って見ること、 もうひとつは社会と文化はどのように成立しているのかをよく知ること。
    この両方を学ぶことを「人間文化を学ぶ」と述べています。

    印象に残った言葉
    ・「自分」がわかるようになるためには、「他者」というものの存在を理解しなければならない。自分をとりまいえいるさまざまな「他者」があるということを知ることから、「自分」という意識が生まれてくる。「自分」や「自己」は、「他人」や「他者」を介在されないと成長できない。
    ・「生きている」という実感は苦しみや貧しさや痛みがあることによって初めて実感できる。「苦」があるから「楽」が実感でき、「負」があって、やっと「正」が感じられる。

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著者プロフィール

編集工学者、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。80年代に情報文化と情報技術をつなぐ方法論を体系化し「編集工学」を確立し様々なプロジェクトに応用。2000年「千夜千冊」の連載を開始。同年、eラーニングの先駆けともなる「イシス編集学校」を創立。近年はBOOKWAREという考えのもと膨大な知識情報を相互編集する知の実験的空間を手掛ける。また日本文化研究の第一人者として「日本という方法」を提唱し独自の日本論を展開。著書に『知の編集工学』『擬』『世界と日本の見方』『国家と「私」の行方』ほか。

「2018年 『千夜千冊エディション 情報生命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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