労働者のための漫画の描き方教室

著者 :
  • 春秋社
4.08
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本棚登録 : 96
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393333631

作品紹介・あらすじ

労働者よ、ペンを執れ! 過重労働から心を守るためには、漫画を描こう。30日連続出勤かつ残業200時間超という経験をした著者から、懸命に働くすべての労働者へ贈る、忙しい日常でも実践できる、生き抜くための方法論。働きながら表現しよう。

感想・レビュー・書評

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  • ▼この本のポイント
    ・労働に盲目的になり心を殺されないために表現をしようと呼びかけた本。
    ・この本では「表現は思考のための道具である」とし、表現の中でも漫画が一番カンタンであるとしている。
    ・その上で、漫画を描く動機の作り方、目的のつくり方、具体的な描き方について触れている。

    ▼思ったこと
    ・この本では、漫画という表現はあくまで自分を客観視するための手段として言及していて、自己承認欲求についてはさほど触れてはいない。
    ・例えば「原発反対」という怒りを持っていたとして、そのことについて漫画にしていく過程で「なぜ俺は反対なんだっけ?」と自問したり「そうか賛成派はこういう気持ちなのか」と他者の意見に目を向けたりしていく中で視野を広げていくことを勧めているのだと思う。
    ・学校でのいじめの構造にも近い。いじめられてる本人は"学校にしか居場所がない”と思っているからいじめを我慢し続けてしまうが、広い視野を持てれば「学校なんてやめてもいっか、いじめに我慢する必要ないな」と自分を安心させ、解決へのアクションのきっかけにもなったりすると思う。
    ・自分はクリエイティブという仕事を通して、一応表現をし続けてはいるせいか、この本に対しする感動はそこまでなかったかもしれない。
    ・ただ、「表現は思考のための(自分を俯瞰するための)道具である」ということは、まさに心を殺されないためにも常々覚えておきたい。
    ・漫画じゃなくて日記でもいいかもしれない。時々tumblrに思ったことをクローズドでメモ書きしたりするけど、それをすると少し心が落ち着ける気がする。

  • もっと評価されるべき!素晴らしい!

  • 労働に殺されないために漫画を描く。一見、倒錯した主張に聞こえるが、個人的にはすごく腑に落ちた。仕事における疲労と、漫画といった表現における疲労は全く別物だと感じている。情報処理を主とした仕事(1000→10)に従事している人にとって、表現活動(0→1)は全く違う頭をつかうため、とても楽しい。というか、これらの活動を対等にした方が、人間らしさを失わずにすむのではないかと考えている。

  • 表紙にあるように、「漫画を描いて苦しい自分を変える」ための本ではあるが、漫画のみならず表現一般に対しての"心構え”を説く側面もある。
    構成は大きく
    1章 内実編
    2章 技法編
    3章 発表編
    とあり、個人的に響いたのは1章の内実編と3章の発表編。
    1章の”心構え”については私が過去に建築学科で設計課題を行っていたこともあり、うんうんと頷きながら読み、また昔の自分が読んでいれば、より創作がうまくできたんじゃないかな、と思ったりしみじみ。怒り、といった自分の感情からいかに自分なりの問題意識をつくり、他の人とは違う自分の創作のエネルギーにすることが重要かを気付かされた。
    3章の発表編は、漫画だからこそ、表現は他人に伝えてなんぼだよなあ、と。

    書籍全体のボリュームは大きいものの、筆者の意思としての文章、先生役にあたるキャラクターと生徒役のキャラクター、この3つの要素がリズムを作り出して大変おもしろい。特に、2人のキャラクターのコメントは刺さる。それだけを読んでいても沁みるものがあるが、筆者自身の意思もぐるぐると思考のあとが見えるような文章で味わいがある。
    また、疲れたら読み返したい。

  • ジョブとワークを区別し、ワークとして漫画を書くことを勧める。分厚くテキストはくどいけれども、出資は一貫しており明快なのでぐいぐい読める。
    漫画家になろうとするなの節と、とにかく終わらせろ、はい、終わり、と言う部分が印象に残った。

  • なぜ漫画か。最も効率的に伝えられる、つまり読んでもらいやすいから、小説とかより。描く動機は「苦しいから」、目的は「安らぐため」。それが「言葉という調理」を経て供される。「絵は器」なので見栄えは後回し、という芸大出身の著者が漫画の技術に触れるのは後半以降。漫画家を目指すのではなく働きながら描くためには時間管理も含めた「編集という思想」が必要、と現役編集者である著者はいう。企画書のサンプルまで示されているので試しに作ってみることに…すると案外、描けそうに思えてきた。もうこんなレビューを書く時間なんてない。

  •  amazonで購入したため届いた実物を見ると意外と厚い。京極夏彦の文庫位厚い。
     しかし紙は文庫本よりも厚いし、表紙にあるような漫画が頻繁に挟まっているため見かけほど文章量は多くなく、サラリと読める。
     内容は、タイトル通り。注意したいのは、「労働者のため」が本書の趣旨であること。この本は、漫画を描きたいと思っていない労働者に、「労働者でいるために」漫画を描くことを勧めている本である。漫画の描き方というより、そのためのモチベーションをいかに維持するかに本書の大半は割かれている。漫画を描きたいとも思っていない労働者に対して、漫画を描くメリットは何か、日々の生活中にいかに漫画を描く時間をひねり出すのか、どうやって描きたいもの、描くものを決めればいいかについて丁寧に解説してあるため、働きながら漫画を描きたいという気持ちになる。
     決して、漫画家になりたいと思う人向けの漫画の技法書ではない。漫画の技術解説が目当てならば、他の本を読んだほうがいいだろう。
     しかし、「労働者でいたい」という人に対し、労働を続けるための趣味の一つとしての「漫画」の入り口を紹介してくれる本だと思う。

  • 著者は忙しい労働者に漫画を描くことを真剣に勧める。しかしその目的は現実逃避では決してない。むしろ労働者としてありつづけるために表現者であろうと呼びかけている。
    そして漫画という表現を手に入れ、それを手放すなという。表現を手放せば、忙しい日々に漫然と殺されてしまうかもしれないからだ。
    表現は思考のための道具。思考は負の感情を鎮静化する。クソな社会かもしれないが、その中で思考し生きる、よりよく生きる、そのための漫画表現。

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著者プロフィール

1981年生まれ。埼玉県出身。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。作家・編集者、東京工業大学非常勤講師。主な著作に『ネットカフェ難民』、『知識無用の芸術鑑賞』(ともに幻冬舎)、『若者はなぜ正社員になれないのか』(筑摩書房)、『自殺しないための99の方法』(一迅社)、『小幸福論』(オークラ出版)、『はじめての批評』(フィルムアート社)、『流されるな、流れろ!』(洋泉社)、『重版未定』、『重版未定2』(ともに河出書房新社)『編プロ☆ガール』(ぶんか社)などがある。現在は『ぽんぽこ書房小説玉石編集部』(「小説宝石」光文社)を連載中。

「2018年 『労働者のための漫画の描き方教室』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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