美は傷 (アジア文芸ライブラリー)

  • 春秋社 (2025年1月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784393455111

作品紹介・あらすじ

三月のある週末の夕暮れ時、デウィ・アユは死後二十一年にして墓場からよみがえった――。
オランダ植民地時代末期にジャワ島南部の架空の港町ハリムンダに生まれた娼婦デウィ・アユとその一族を襲った悲劇。植民地統治、日本軍による占領、独立、政変と弾圧といった暴力の歴史を軸に、伝説、神話、寓話などが渦巻く奇想天外な大河小説。世界35カ国以上で刊行されたマジックリアリズム文学の傑作。

装幀:佐野裕哉 装画:菅野まり子

「インドネシアを語る小説を書きたいという衝動があった。サルマン・ラシュディが『真夜中の子供たち』でインドを語り、ギュンター・グラスが『ブリキの太鼓』でドイツを語ったように。」(著者インタビューより)

「疑いようもなく、今日のインドネシアで最も独創的で、想像力に富み、エレガントな小説家である」 ――ベネディクト・アンダーソン(政治学者、『ニュー・レフト・レビュー』誌)

「ガブリエル・ガルシア?マルケスとサルマン・ラシュディの文学が生んだ子」――『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』

感想・レビュー・書評

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  • 「僕らには自国民の愚かさを笑い飛ばす権利がある」―エカ・クルニアワン×太田りべか | 特集記事 | 国際交流基金 - 次世代共創パートナーシップ-文化のWA2.0-
    https://asiawa.jpf.go.jp/culture/features/f-yomu2-indonesia-1/

    汎アジア文学へ(太田りべか)|Matsui-Glocal(2024年11月9日)
    https://note.com/matsui_glocal/n/n7955e1690e91

    Eka Kurniawan
    https://ekakurniawan.com/

    美は傷 エカ・クルニアワン(著/文) - 春秋社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784393455111

  • インドネシア国家独立前後の近現代史を、一人の娼婦とその四人の娘たち通して物語る長編小説。マジックリアリズム小説は、とっつき難い読者も多いと思うのだが本作は魔力やや控えめのテイストなので、身構えず手に取るのが吉ではないか。かなりの力作。

    主人公デウィ・アユはインドネシア植民地時代のオランダ人富豪の血筋だが、日本軍の進駐により強制収容される。日本軍高官向けの娼館が作られる際に、強制収容所内にいるオランダ人女性が娼婦とされるが、その一人に選ばれる。

    このデウィ・アユが繋げていくことになる血筋が、奇しくも近現代史インドネシアをそのまま体現していくという野心的な500ページ。長女は日本人の血を引き、次女は日本軍と戦うゲリラ兵士の血を引き、三女は自ら選び取って娼婦を職としてから客との間に生まれた。四女は...(ネタバレ回避)。この母娘が魔的な美貌の持ち主であり、社会のひずみ、怨嗟を呼び込んでいく姿が語られる。

    美しく生まれた娘たちはそれぞれ、独立戦争の英雄や、共産主義のエリートや、闇組織の実力者によって求められ...。インドネシア近現代史が辿る血生臭い歴史をデウィ・アユの一族が一身に負うかの如く描くその筆致が、苛烈でもあり、哀切を伴う暗い笑いのようでもある。

    解説にもある通り著者は、本作で描かれた負の歴史を現役で経験していない世代である。血を流した世代による論功話とは異なるという点が、この小説の深みだと思う。自国の全体像を見つめたい、という意思が明確であり、信頼するに値する批評眼がここにはあると感じる。

  • 新聞の書評欄で知り読んでみた。インドネシアのマジックリアリズム文学と評される。読んだところ「百年の孤独」より傑作だと思えた。
    日本の小説は人物を描くのに生い立ちや人間関係あるいは時代背景を描写することで、読者が作中の人物の視点を持つことができるようにして、作品世界を渉猟できるようするのが一般的である。あるいは村上春樹のように一歩引いた、醒めた視点で人物や出来事が語られる描き方もある。
     この小説の登場人物は頑固だったり、乱暴だったりあるいは純粋だったりする、過激な人ばかりである。その過激な人に感情移入することは難しく、作中の人物の視点に立ちにくい。しかしそれは、起きる出来事を冷静に鳥眼視するように誘う。作中の人物のように感じることはできないものの人物がどうすれば良かったのかと問いかけるようでもある。
    そして、作中時々純愛が描かれ、とてつもなく美しい。まるで手の中の壊れやすい宝石のようである。
    純愛がこの作品のテーマであることは間違いない。なぜなら作品中の純愛は成就しないのだから。
     物語の中心になるのはデウィ・アユをはじめとする美人、美女たちである。それらの美女に一目惚れして愛し、拒絶され愛を誓っても仲を引き裂れ、愛しているのに結婚できない、愛しているのに性交できないなどの様々な困難に見舞われる。
     また戦争や資本家による寡占、騒乱などの事件が登場人物にふりかかる。それらの困難は、インドネシアの人々がこの百年の間に経験してきた困難であることに気付かされる。そうして様々な困難に、登場人物はそれぞれのやり方で対処する。
     感情移入しにくい登場人物が多いものの、感情移入しやすい登場人物は性格の良いクリウォン、やくざだが直情径行型のママン・ゲンデン、男を手玉に取っていたのに純愛に目覚めるアラマンダ、ひたすら真面目なデウィ・アユなどであった。
    運命の過酷さを一種醒めた目で見ることで、インドネシアという国の現代史百年を感じることができる佳作であった。
    ちなみに登場人物の仕事は
    売春婦 客がいるなら儲かる
    兵隊 命令されたら動く
    ヤクザ 命令されたら動く 
    共産党員 命令されたら活動する
    焼き菓子売り、海パン製造 自分の才覚で切り開く
    というようなカテゴリーでこれもまたインドネシアのある側面を切り取っているのだと思う。

  • 「美」はインドネシア語で「チャンティック」。デウィ・アユの四番目の、最後の娘の名前でもあった。
    人間って生殖ばっかりしてんだなー、と半ば呆れる。

    最後の方のページ、小団長が竃の前にいた場面に、「不明」と書いた誰かの付箋が貼ってあったけど、最初に出てくるじゃん、と笑ってしまった。

    「この小説では、コロンビアの作家ガブリエル・ガルシア=マルケス風のマジックレアリズムの手法が意識的に使われている。ガルシア=マルケスの代表作『百年の孤独』のように、この小説で展開するのは、オランダ植民地時代末期から百年近くにわたる、娼婦デウィ・アユの一家三世代とハリムンダという架空の町の物語だ。植民地支配、戦勝、日本軍による占領、独立闘争、インドネシアという国家となってからのその後と一九六五年の政変。オランダ人農園主と現地人の妾との間に生まれたデウィ・アユは、日本軍の捕虜になり、日本兵たちのための慰安婦となることを強いられ、戦後は町一番の娼婦として名を馳せて、そんな激動の時代を生き抜いていく。デウィ・アユの娘たちと孫たちも機会な運命の波に呑み込まれていく。」(訳者あとがきより)

  • ふむ

  • 実は途中で読むのをリタイアしました。
    実際には起きるはずのない、不思議な事が事が起きる場面や、実際に起きたであろう、戦争の不条理な場面、ゲリラや娼婦たちは、リアルなのか物語的なのか、私には分からなかったけど、
    混沌とさせる事で、この物語自体を形成している事はよく分かりました。
    途中まで読んだのですが、500ページ以上の物語の中で、この混乱状態がずっと続くのかと思ったら、辛くなってしまい、読み進める事が出来なくなってしまいました。
    つまらないお話ではないです。重厚です。
    でも心の体力が必要かもしれません。

  • Beauty is a wound
    Eka Kurniawan

    インドネシアの小説
    和訳 美は傷
    地の魂の苦しみ、植民地としての過去、蔑ろにされる女性の尊厳、生きていくための手段。暴力と愛と呪い。
    マジカルリアリズム、強く生きる女たちの壮大な物語

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