今井信子 憧れ ヴィオラとともに

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  • 春秋社
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393934753

感想・レビュー・書評

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  •  ヴィオラ奏者、今井信子さんの本。

     連動するかのようにリリースされた「祈り」というCDの録音風景から話が始まる。林光のヴィオラ協奏曲をティボール・ヴァルガ音楽院(スイス)の学生で編成された室内オケと録音するのが、今井さんはこれをあくまで授業の一環として、ノー・ギャラでやることを主張する。自分の演奏の録音を聴いて、録り直すという繰り返しの作業は何よりの勉強になるというわけだ。しかし、ヨーロッパの音大生は貧しくて、学校側はギャラを出すことを要求する。しかし彼女は学生たちにとってお金が入った途端に何かが失われると考える。

     本のタイトルの「憧れ」とは音楽への憧れのことなのだ。
     はじめはお約束のように音楽家になるまでのキャリアが語られる。嫌々ヴァイオリンを習っていた少女が、音楽の楽しさに目覚め、次々と新しい世界が開けていく回想は、それこそ「のだめカンタービレ」みたいで、楽しいったらない。プロの音楽家になろうとしたことも、ヴィオラを専門にしようとするときも、音楽を聴いていたり、弾いていたりするときに瞬時に決めてしまう。著名な教師たちの教えが所々に書かれているのも興味深い。
     ヴィオラをやると決めたが、日本では習うところがない。そこで留学、コンクール優勝、客演依頼、レコーディングの依頼と進むキャリア。
     1973年から5年間はフェルメール四重奏団でヴィオラを弾くが、ここではカルテットの素晴らしさが語られる。しかし、私生活の事情からカルテットを続けることは困難で、ソリストの道を模索し始める。そして、コンサート・シリーズ、ヴィオラ・スペースの開催と話は現在につながる。
     ほとんどイッキ読みしてしまったが、それは筆者の人柄がなせる技のように思われる。そしてこれを読むとR.シュトラウスの「ドン・キホーテ」のヴィオラ独奏を聴いて「ヴィオラが弾きたい!」という思いに駆られた彼女のように、私もまた「ヴィオラが弾きたい!」と思ってしまう。
     ヴィオラの音色を味見できるCDシングル付き。

  • 日本のヴィオリストといえば、今井信子さん。
    CDは聞いているけども、著書があるとは知らず読んでみた。

    ヴィオラ専任の先生がいなかった時代。
    そのときに比べると、だいぶ変わったんだなぁと思う。

  • 世界的なヴィオラ奏者である今井信子氏の自伝的な著作。約50年前、日本では誰もヴィオラに注目していなかった時代にヴィオラを一生の仕事としたいと決断した著者は、海外へ渡ってヴィオラを学び、数々のコンクールで優勝して演奏家としての道を歩み始める。彼女はヴィオラの魅力を伝えたいという情熱を持ちながら、現在も演奏家、指導者として活躍している。今井氏の半生を冒険譚のように読み、音楽への「憧れ」を持ち続ける音楽家の気持ちを知ることもできる、ワクワクする一冊。

  • なんともまあ、パワフルな人である。天下の桐朋にも専科がなかった時代に、ヴィオラのソリストになっただけのことはある。
    コンクールで優勝してしまった、演奏が好評を得た、などとさらりと書いているのだが、その淡々とした記述を通してさえ、この人の天才が窺える。とにかく、この小柄な日本人女性はものすごい偉業を成し遂げた人で、それもこれもものすごい才能を有していればこそだった。
    本書の内容を要約すればそれに尽きるが、もう一点付け加えるなら、ご両親の献身ぶりが印象に残った。音楽を学ばせ、その後も長く援助する経済力と、スパルタ教育をほどこす執念。ご本人も仰るとおりとても恵まれた家庭環境であり、それなくしてヴィオリスト・今井信子はありえなかった。一ファンとしては、同胞として誇るべき演奏家を世界にプレゼントしてくださったお二人に、ただただ感謝するのみである。

    2012/5/16読了

  • 生き方に迷った時、進むべき方向が分からなくなった時に、必ず手に取る、私のバイブルです。

  • 2007年5月15日出版 ビオリストの気持ちがよくわかる。

  • 毎日新聞2007.7.22

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著者プロフィール

1943年生まれ。国際的なヴィオラ奏者として活躍、ジュネーヴ音楽院などで後進の指導にも尽力。1992年に「ヴィオラスペース」を、2009年に東京国際ヴィオラコンクールを創設。2013年旭日小綬章を受章。

「2013年 『今井信子 憧れ〈増補版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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