孤島の鬼 (江戸川乱歩文庫)

著者 :
  • 春陽堂書店
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本棚登録 : 608
レビュー : 63
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784394301110

感想・レビュー・書評

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  • Linker No.16
     文学部2年
     わぎもこさん

     「この世界では、君と僕とが全人類なのだ。」

     本書は、江戸川乱歩による長編代表作の一つです。
     端的に言えば、簑浦青年と諸戸道雄を巡る事件を描いた推理・冒険小説。読みやすい文章と読者を飽きさせない展開はなかなかのものですし、グロテスクかつ官能的な描写もまた一興。
     しかし、特筆すべきは本書の恋愛小説としての側面です。簑浦青年に向けられた、諸戸道雄の同性愛的感情。極限状態に陥った人間のなまなましさ。そして、そこから現れる純然たる愛情。
     個人的には物語の展開に思うところもありましたが、その蟠りこそが読者に考察の余地を与えてくれるのだと思います。
     八十年前に書かれた乱歩の剥き出しの恋愛哲学。偏見のない目でご体感いただければ幸いです。

  • 江戸川乱歩の作品は短編しか読んだことがなかったため、長編についていけるか不安でしたが、無駄な心配でした。主人公の簑浦に翻弄された諸戸…ミステリーとしてはもちろん、二人の危うい関係がどう結末を迎えるのかも必見です。

  • 主人公蓑浦はある恐怖体験により、30歳に満たないにも関わらず総白髪であり、そして彼の妻の体には大きな傷跡がある。
    なぜそうなったのかを蓑浦が告白する形で物語は進行する。

    登場人物の狂気性、事件の猟奇性は毎度のことながら、推理要素も含んでおり、何より特筆すべきは同性愛の要素も入っていることである。
    同性愛といっても純粋に相手を慕う感情が進行の鍵となっており、露骨な性描写はないので万人向けの内容である。

    登場人物は30名近く出てくるが、関係なさそうな人物同士でも意外な形で結びついており、非常に複雑な相関図となっている。
    これらの関係性が終盤に向かうにつれ解明されていくのはとても心地よい。

    筒井康隆は本作を「乱歩の最高傑作」と語っており、このような本を作り上げた乱歩にはただただ感嘆するばかりである。

  •  乱歩先生の「孤島の鬼」。何十回目かの再読なのですが、やっぱり面白い!どう考えても乱歩最高傑作。いやむしろ我が国の伝奇小説中でもトップではなかろうかと。
     今更解説を加えるまでもないのですけど、文中のこの一文が全てを表現しているでしょうかね。

     「地獄絵だ。やみと、死と、獣性の生き地獄だ。」

     猟奇と妄想、前時代的偏見と変態性欲山盛り。耽美とあさましさと獣性の極地がそこに。だがしかし、その境地にこそ、何者も犯し得ぬ、人間本来の美しさがあるという…特にラストのラスト、最後の一文が切なすぎます。


      「道雄は最後の息を引き取るまぎわまで、父の名も、母の名も呼ばず、ただあなた様のお手紙を抱きしめ、あなた様のお名前のみ呼び続け申候」


     「孤島の鬼」は乱歩の長編第一作。むしろ、先生の作品の中ではあっさり目の内容なのですが、いわゆる本格派としての全体の構成・展開、そして得意の猟奇な雰囲気とのバランスが抜群です。
     「幻影城」などを読むと分かるのですが、先生も本来はこちらの方向性を趣向されていたのです。惜しむらくは当時の編集側・読者側に、伝奇文学にそこまでの文学性を容れる用意が無く。徒なエログロ風味に特化した作品が求められてしまうという結果に。もちろん当方のような変態には、猟奇と悪夢なそちら方面の作品、例えば「芋虫」「陰獣」「盲獣」…も大好物では有るのですが。大戦で創作活動が中断されたのも残念でした。

     ま、それはそれとして、とにかく「孤島の鬼」は最高の一冊です。優れて映像的なお話しでもありますので、できれば忠実に映画化して欲しいのですが…ニュアンスを活かした作品は有るのですが、内容的に今の時代に完全再現はアウトだよなー、なんて諦めていたのですが、先日見た「ダレン・シャン」でちょっと希望が持てました。孤島の鬼も、いわゆる「フリーク」がお話しのキモですしね。ってちょっとネタバレスイマセン。

  • オモロすぎる。乱歩の中では一番好きかな。

  • 終始ハラハラドキドキ。特に島に行ってからの諸戸さんが死亡フラグが漂い過ぎていて心配で心配でたまらなかった...。
    諸戸さんの最期、ラストの文章に涙。
    彼のことを考えると何リットルでも涙流せる...。

  • 鳥羽などを舞台とした作品です。

  • 露骨だなぁ…の一言に尽きます。
    何ていうか、蓑浦さんも諸戸さん好きですよね…
    肩抱き合って歩いたり、手を取り合って散歩に出たり、
    あんたらは敗者復活M1チャンプかいっ!!
    と思うような序盤から、
    暴走加減がイケメンM1チャンプばりになっていく過程は
    色々な意味で楽しかったです。
    内容が冷静に時代背景とかで考えれば
    重い部分とかもあって、
    最後部分にある「百万長者」という言い方にも、
    当時の物価事情だとかが感じられて、
    嗚呼、そぉだよなぁ…と思う部分もあります。
    やきもきする部分も多々ありますが、
    萌え所は多いです。

  • 推理小説のような耽美小説のような冒険小説。
    フリークス、同性愛、宝探し、座敷牢とワクワクモチーフがこれでもかと連なって出てくる。
    伏線の見せ方がうまくて最初から最後まで興奮し通しでした。
    今まで読んだ乱歩の作品の中ではこれが一番好きかも。

  • 諸戸道雄に焦点を合わせつつ読むとひと味違ってくるスペクタクル。

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著者プロフィール

江戸川乱歩(えどがわ らんぽ)
1894年10月21日 - 1965年7月28日
日本を代表する小説家・推理作家。三重県生まれ。ペンネームの江戸川乱歩は、小説家エドガー・アラン・ポーに由来。早稲田大学で経済学を学びながらポーやドイルを読む。様々な職業を経験した後、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和22年、探偵作家クラブ結成、初代会長に就任。昭和29年、乱歩賞を制定。昭和32年から雑誌「宝石」の編集に携わる。昭和38年、日本推理作家協会が認可され理事長に就任した。代表作に『D坂の殺人事件』、『陰獣』、『孤島の鬼』、『怪人二十面相』、『幻影城』、『探偵小説四十年』など。少年探偵団シリーズは絶大な人気を博した。

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