- Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
- / ISBN・EAN: 9784394387015
感想・レビュー・書評
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伝奇小説・探偵小説の分野で活躍し、1994年に87歳で亡くなった角田喜久雄の短編集。
以前、母の蔵書で読んだ「発狂」を再読したくなって購入。
全13編収録で「発狂」以外は皆、お初お目もじ。
底本は昭和11(1936)年刊と解説者前書きに記載あり。
猟奇的な話の間にユーモア短編を挟んだ当時の編者のセンスが素晴らしい。
ピントがズレているというか、あるいは音痴であるかのような、
狂気じみた散文詩的一人称小説「豆菊」(ヒナギクの別称である由)に眩暈。
江戸川乱歩とも夢野久作の持つ雰囲気とも微妙に異なる、
独特の「ぎぼぢ悪さ」がクセになる。
しばらくぶりに読んだ鬼気迫る青年の復讐譚「発狂」は、やはり破壊力抜群。
何が凄いって、犯罪成就のための仕掛け、アリバイ作りがしっかりしているのに、
オチの適当さが……!
犯行の様子がつぶさに描かれた箇所が削除されたらしいのが残念だけど、
猟奇的かつ残酷すぎると判断されての、当時【※】の自主規制だったのかな、と。
【※】p.180(この間数行抹殺)の一文を以て事後の描写へ移行。
初出は『サンデー毎日』大正15(1926)年7月。
そして、表題作、銭湯で起きた変死事件がトンだ方向へ転がっていく、
いや、そもそも語り手が怪し過ぎる、最も奇天烈でクレイジーな「下水道」が強烈。
堅田信画伯の挿絵も艶めかしくて素敵。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(収録作品)蛇男/ひなげし/豆菊/狼罠/ペリカンを盗む/浅草の犬/三銃士/発狂/死体昇天/密告者/ダリヤ/Q/下水道