更生記 (春陽文庫 探偵小説篇)

  • 春陽堂書店 (2025年1月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784394980155

作品紹介・あらすじ

狂女の救済!
精神病理学を応用した人の死なないミステリー。
佐藤春夫は性格描写と心理描写がほんとうにうまい。
池澤夏樹(作家)

天才作家・島田清次郎(シマセイ)をモデルに描く問題作!
文豪の傑作推理、70年ぶりの文庫化!
谷崎、芥川、佐藤とならべると、佐藤春夫が最も探偵小説に近い作品を書いている。探偵小説風の作としては、前記「中央公論」増刊にのった「指紋」が最初であるが、これなど純探偵小説といっていいものだし、本巻にのせた三篇なども、ほとんど純探偵小説なのである。ここに佐藤春夫の特徴がある。彼は探偵小説を他の作家のように軽蔑せず、それを意図して書く場合があるように思われる。戦後に発表した「女人焚死」なども、よく調べた犯罪推理の物語で、他の何よりも犯罪推理に力がはいっているのでも、それがわかるであろう。   江戸川乱歩(東都書房版『日本推理小説体系1 明治大正集』解説より)
                      
あらすじ
医学生の大場は、ある晩、自殺を図ろうとしている女性を保護し、姉と共に暮らす自宅へと連れ帰った。だが彼女は頑なに事情を語らず、警察へ行くことはおろか、名前を明かすことも拒み続けた。大場に相談を受けた猪俣助教授は、彼女が心因性ヒステリーであることを見抜き、精神分析を用いて少しずつその病因を解き明かしていく――。大木志門「佐藤春夫と島田清次郎」、吉田精一解説も収録。
〇解説・日下三蔵

装画・横尾忠則 装丁・柳川貴代

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

人間の心理とミステリーが交錯する物語が描かれています。医学生の大場が自殺を図る女性を保護し、彼女の秘密を探る過程で、精神分析が重要な役割を果たします。作品には、ヒステリーの発作を起こす女性や彼女の過去...

感想・レビュー・書評

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  •  医学生の大場は、ある晩、線路で自殺を図ろうとしていた女性を保護し、姉と共に暮らす自宅へ連れ帰った。しかし彼女は事情を語ろうとはせず、名前すら明かすことを拒み、警察へは絶対通報しないでくれと言うのであった。困った大場から相談を受けた精神病学の猪俣助教授が彼の家に向かうと、彼女はヒステリーの発作を起こし気絶してしまった。果たして彼女は何者なのか、またどのような秘密を抱えているのか、それを猪股は探っていく。
     
     佐藤春夫が「指紋」や「女誡扇綺譚」といった探偵小説(ミステリー)を書いたのは有名な話だが、本書も、女が自殺をしようとする謎を、いくつかの手掛かりをもとに探偵役の猪俣が解き明かしていく探偵小説と考えることも十分可能だと思われる。

     また本書では、女(辰子)のかつての恋人?として濱地英三郎という作家が登場するが、彼は大正時代に「地上」という作品で天才作家と称され、その後スキャンダルで失墜した島田清次郎をモデルにしているとのこと。本書でもそのスキャンダルに関するところが使われている。

     自殺しようと試み、またヒステリーを起こしてしまう、その謎を解く過程も面白いが、猪俣助教授自身、また作者佐藤春夫の分身と思しき濱地の知己である作家の須藤初雄、さらには辰子の兄青野男爵といった登場人物の性格や、相互間でのやり取りから窺えるそれぞれの心理が克明に描かれていて、とても読み応えがある。
     新聞小説ということもあり、展開が早く、文章も平易でサクサク読める。

     
     巻末に収録された大木志門「佐藤春夫と島田清次郎ー『更生記』の「ヒステリー」と「ミステリー」」は必読!



  • 横尾氏の装画で佐藤春夫を迷わず手にした。“フロイトのヒステリー論“と“ミステリー“と説く巻末資料が秀逸。精確に描かれる其々の人の素養には一癖も二癖もあり闇もある。だからこそ、陽を浴び影を踏む人の立像を成している。気づけば笑みがこぼれてた。

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著者プロフィール

さとう・はるお
1892(明治25年)~ 1964(昭和39年)、日本の小説家、詩人。
中学時代から「明星」「趣味」などに歌を投稿。
中学卒業後、上京して生田長江、堀口大學と交わる。
大正2年、慶応義塾を中退、
大正6年、「西班牙犬の家」「病める薔薇」を発表し、
作家として出発。
「田園の憂鬱」「お絹とその兄弟」「都会の憂鬱」などを
発表する一方、10年には「殉情詩集」、14年「戦線詩集」を刊行。
17年「芬夷行」で菊池寛賞を受賞。23年、芸術院会員となり、
27年「佐藤春夫全詩集」で、29年「晶子曼陀羅」で
それぞれ読売文学賞を受賞し、35年には文化勲章受章。
小説、詩、評論、随筆と幅広く活躍。

「2018年 『奇妙な小話 佐藤春夫 ノンシャラン幻想集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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