代謝建築論: か・かた・かたち

著者 :
  • 彰国社
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784395012084

感想・レビュー・書評

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  • 1969年に出版されて、2008年に復刻された本。
    著名な本は、きちんと復刻されて、手に入ると嬉しい。
    菊竹清訓が、1958年から1967年の約10年間にわたり、書いてきた文章をまとめたもの。
    日本の高度経済成長期にあり、1964年には東京オリンピックがあった。
    1970年には、大阪万博があり、その前までの時期に書かれている。
    1958年は、ちょうど神武景気から岩戸景気と言われる時代である。
    一方で、公害問題が起こり、技術進歩が、幸福にならないのではないか?
    というような問いかけの中で、
    菊竹清訓は、「設計とは何か」を真摯に向かい合っている。
    随分と熱い想いが、その中に込められている。
    デザイン(設計)とは何か?
    設計の方法論を武谷三男の理論に基づいて展開していることに
    その時代の背景が見えてくるような気もする。
    1970年前後は、理科系学生として、武谷三男の本を読み
    その方法論のロジカル性に、随分と影響を受けた時期があった。
    「現象ー実体ー本質」という科学方法論で、物事や事象を見ることがあった。
    そのようなことを思い出しながら、
    菊竹清訓が、設計において、「か・かた・かたち」という方法論に応用したのは、
    非常に面白く感じる。「か」が本質であり、ビジョンや思想。
    「かた」が実体であり、法則や技術。「かたち」が現象であり、形態である。
    なんとなく、ダジャレ的な言葉の選び方であるが、伝えようとすることは、
    意味があるように思える。こんな風に考えるからこそ、メタボリズムという
    取り換え可能な建築という提案にも発展したのかもしれない。
    丹下健三は、「美しきもののみ機能的である」と述べ、
    ルコルビジェの「機能的なものは美しい」という機能主義的建築観を批判した。
    また、「伝統的建築」に対しても、否定的であり、日本的モダニズムを確立した。
    そのため、この本には、「伝統について」「目に見えるものの秩序」
    「目に見えないものの秩序」という章が構成されている。
    ルイカーンの「空間は機能を啓示する」という意見を受けて
    この本では、「空間は機能を捨てる」と言い切っている。

    空間は機能を捨てるという言葉は、ある意味では、謎のような問いかけでもある。

  • か、かた、かたち
    か  構造的段階
    かた 技術的段階
    かたち形態的段階

    どれかに偏るわけでもなく、これら3つを横断しながら、スタディしていくことを学んだ。
    ただ、まだ難解な部分も多く読み直したい。

  • 思考の「か」、知識の「かた」、感覚の「かたち」。中心にある「か」から、広がり大きくなり連なっていく、「かた」「かたち」という在り方。そうやって、導かれる方法論という筋道があることを、建築家が期待し、それによって設計を繰り広げたいと思い描くことは、当然のなりゆきだ。

    でもぼくは、まるで反対であるように、それこそ筋道を認識している。

    はじめに、無限性というままの「か」思考がある。そして、それはどこまでもいつまでも同じように有り続ける。それをひとは「かた」知識によって、制限するというベクトルを取ることでようやく、手の届くものとして扱うことができるようになる。人の手に負える世界に落とし込むことができる。そうやって、限定し、縮小していくことで、ひとが為すことが実体となって、置き換わっていく。結果的にして、出来上がったものに対して、感覚が働き、「ひとつ」の世界を認識できるようになる。はじめには大きかったものを、どんどんと小さくしていくことで、ようやく、ひとの手に届く、ひとが範疇にできる、世界が姿を表すことができる。そうやって、小さくなっていくには、何を手に取らないか、選ばないかという、捨て落としていく行為が必要になる。その必要に対して、自覚的なのか、意識的でいられるのか、がきっと肝心なところだ。圧倒的なその他を置き去りにしていくために働く自分という意識を、振る舞いをどの程度にまで、解像度を上げて、精彩にして、部分も全体も、等価にして、自分というものと同義にして、認識を持ちうることができるか、ということだ。

    その、辿る筋道にこそ、デザインすることが表れてくる。そのようにしてしか姿形を残せないものがデザインという意味だと、僕は認識しているということだ。

  • 方法論。
    か、かた、かたちの言葉に注目し建築と空間をベースに代謝論を語る。
    柱と床のあり方の考えかたが能楽視点で読むと面白かった。

  • ○藤村先生が引用していた本。
      https://twitter.com/masahiro_sekine/status/1344364252975439872

    ・建築は、設計によって社会と接触し、社会的矛盾を発見する。

    ・かたち(感覚)かた(知識)か(思考)
    ・「か」とは、かくあるべきもの、かくあるもの

    ・機能は失われても、形態は主張し続ける。
    ・計画者としての建築家を、全人的、神のような存在におくことになってしまう。

    ・「かた」は、誰が考えても究極的にはそこにゆきつくもの。

    ・ギリシア的芸術観は、技術と模倣。ロマン派的芸術観は、天才と独創。

    ・空間の秩序こそ、建築の本質。
    ・柱は空間に場を与え、床は空間を限定する。
    ・水平な支持面が基本。

    ・闇に無限の空間を感じる。
    ・建築技術は、設備によって左右されるようになってきた。

    ・思想とは、行動の原理。

    ○「か・かた・かたち」の捉え方は、建築だけでなく、地域課題の発見・解決や、研修設計という自分の仕事にも活かせる!

  • 2020/10/21

    出雲に行きたい

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99317041

  • 最も印象的であったのは菊竹清訓のその鋭い大局観である。三段階の方法論を軸に、現状から未来を見つめるうえで構想を確かにし、歴史を振り返り、型を探り出す。そしてこれらから、未来の秩序を生むべく形態を導き出す。
    そのような、敷地条件や目の前の人々の生活のみに留まらない、おおらかで寛大な設計理論に感銘を受けた。

  • 名著は時代を問わない。「設計」という行為、デザインという行為を、どのような方法論で展開していくか。菊竹清訓の「狂気」は何時如何なる時代でも学ぶべき姿勢である。

  • 「か(構想・イメージ・ビジョン)」や「かた(技術・体系)」があってこその、「かたち」。しかし、すぐれた「かたち」は必ずしもつねに「か」に由来して始まるわけではない。

    --
    以下、恣意的な抄録。

    建築家は、あるべき民主主義社会の空間環境を雄大な構想で描き、かつ、これを実現できる数少ない職能である。

    建築は、民主主義の理念を基礎として作り出されるようになってきたとはまだ言えない。

    古代エジプトは、一方でピラミッドのような建造物をつくる技術を発達させていながら、鉱山の採掘技術は遅れていた。
    それは、当時の鉱山労働が奴隷によって行われていたためである。
    同じような事態が今日もないと言えるだろうか。

    中世都市の劣悪な生活環境から、いかにして近代都市としての生活環境が獲得されてきたかを見るにはロンドンがいい例である。

    1810年にはガスパイプが鋳鉄でつくられ1815年ロンドンの公共建築はガス照明となった。このため人々は公共のホールで夜集会ができるようになり、 民衆政治がそこから活発化したと言われる。
    --

    さて……

    原子力発電が「経済」的だから使われる……ということは、なるほどもっともだとも思いつつ、私の不安や生命といったものは、放射性物質による不安や不便よりも「経済」的ではないと、世間的には断ぜられるのだと改めて認識することともなった。

    要するに、私は、現代の「奴隷」身分なのだと自覚せねばならない。
    狭い居室、不快な通勤など、みな、自分が「奴隷」だと思えば合点がいく。

    モバイルやネットに媒介されて、中東でジャスミン革命が起こったように、自分の奴隷の身分が永続的というわけでもないという期待はある。
    しかし、今は、すでに「かた」は十分なのに、「か」が貧弱なため、「かたち」として結実していないのだと思う。

    広義の「建築」家による奮起と、かつての「メタボリスト」のような活躍を望む。

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