ヒトラーとケインズ(祥伝社新書203) (祥伝社新書 203)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396112035

感想・レビュー・書評

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  • ナチスをライフワークとされている武田知弘さん著作。ナチスドイツの政策の柱は底辺の人の生活を安定。アウトバーン建設などの公共事業、若者の失業対策、中高年の雇用優先、中小企業、小規模農家の救済などと8時間労働の法的実施労働者の福利厚生充実などにより経済を回復し支持率が上がったらしい。この時期イタリアのムッソリーニもソ連のスタリーンも復興に成功しており混乱期には全体主義的経済政策なのかを問う。

  • TT6a

  • ヒトラーとケインズの話は薄め。うっすら関連性が見えるだけで、主題はナチスドイツによる大恐慌の乗り越え方。数字も年表もないので詳細には詰め寄れないが、マクロ経済初心者も思わず納得感を得てしまうつくりのわかりやすい解説本。導入本としては最適。

  • こんなに薄い本も珍しい。経済という非常に細かな数値の積み重ねの学問をざっくり考え、妄想と現実の区別が付いていない本であった。始めは読者の気を引こうとして書いているのかと思ったその表現のまま最後まで走り切ってしまった。著者の経歴を見てもまともな経済学の勉強をして来なかったのだろう。出版社の良心を疑う。

  • ナチの経済政策は統制経済政策+国家管理経済政策+もう少し具体的には自由放任ではなく、貧富の格差を無くし、失業を極力少なくするための公共投資を国家予算の実力を超えて赤字国債を大量に発行して、しかもインフレを起こさないという奇跡のような政策。これにドイツ市民はみんな騙されましたね。破壊による勝利か死かを博打のように電撃的にやった戦略も、懐の深いロシアには通用しません。ナチスもヒットラーも賞賛しては非常識という考え方が支配的ではありますが、非常に巧妙な経済政策はケインズの一歩先を行くものだったと、少しは良い点を評価してもいいかな?と思いますね。

  • 失業者を減らすこと。社会の富の配分のバランスに気を配っていたこと。資本移動の自由を嫌い、短期的な投機によるマネーゲームを嫌っていたこと。ヒトラーの政策がケインズの考えていた政策と似通っていることが分かった。
    だけどもこの政策が今の国際経済で通用するかというとどうなんだろうと悩んでしまいます。

  • なぜ、ドイツだけが3年弱で世界大恐慌から脱出できたのか?本書はナチスドイツの経済対策を英国の経済学者ケインズの考え方を基に解き明かしたものである。

    前作に引き続き、ナチスドイツの経済政策を見直した内容であり、興味深く読んだが、最後のユダヤ人に対する記述は乱暴な気がする。筆者は「ナチスのユダヤ人迫害という事実に目をそむけるつもりはない」というが、それならばもっと丁寧に著述すべきであろう。
    本書だけでなく類書を読んだ方がバランス良く複合的に歴史をみる事が出来る気がします。

  • 歴史上の事件は全て繋がっている、と書かれていたのは私が愛読している井沢氏の言葉ですが、ひとつの事件を見る場合にはそれに到るまでの流れや背景を把握しておくことが重要であると思います。

    私は武田氏の著作によって初めて、ナチスがドイツで支持された理由を知ることができました。これは私にとって正に「目からウロコ」でした、第二次世界大戦を引き起こす原因は、一次世界大戦の処理にも大きく関わっているようです。

    また経済学で有名なケインズがイギリスで重要な役職にいるにも拘わらず、ナチスの経済政策を事実上支持していたというのは驚きでした。

    武田氏もこの本で再三コメントしているように、ナチスがユダヤ人を虐殺したことが許されることでは無いにしても、なぜユダヤに絞る必要があったのかについての考察は、知っておくべきものであると思いました。

    また、この本でドイツでハイパーインフレとなった本質的な理由(インフレに乗じて儲けようとした人が多数いた:p81)は今まで言われてきた公式見解(多額の賠償金、ルール地方の占領等)よりも納得できました。

    以下は気になったポイントです。

    ・英仏等の連合国は償いをドイツに求めるしか無かった、オーストリア及びトルコは解体されたので、ロシアのフランスへの債務はロシア革命後のソ連は拒否をした(p31)

    ・アメリカが金を溜め込んだ理由として、1)貿易黒字を貯めこむことが悪いという認識がなかった、2)貿易を必要としなかった国だった、である(p45)

    ・ドーズ案(1924)により、賠償金を減額、ドーズ公債という債券を発行してアメリカから借款、それを賠償にあてる、アメリカはドイツに投資をして、そのお金を連合国に払う、連合国はそのお金でアメリカ(GNPの7%相当の70億ドル)に支払いをするという流れができた(p48)

    ・ヤング案(1929)では、賠償金は減額(3分の1)されたが、トランスファー保護規定(マルクの価値が下落しないように調整するのは連合国の義務)は廃止された(p51)・ヤング案以降、ドイツの賠償金支払い、英仏のアメリカへの戦債支払いが未払いとなった、経済とは自国のみが潤うことはできない(p56)

    ・ケインズは景気がいいときには緊縮財政にして赤字を埋め合わせる、それにより不景気のとの赤字財政が高価を上げると言っている、日本はひたすら巨額の公共事業をしていて異なっている(p70)

    ・国民に金を与えるのは、紙幣をすれば良い、ただし作られた紙幣に見合うだけの物資を労働者が生産していることが大事、これが通貨の本質(p71)

    ・ドイツのインフレが天文学的になった本当の理由は、インフレに乗じて儲けようとしようとした人が続出したから、お金を借りてモノを買って売るということを続けた(p81)

    ・ナチスは労働債以外にも、租税債(納税の代わりになる債券)、納品債等の多様な債券を発行して、信用創造をした(p99)

    ・公共事業が成功(乗数効果が上がる)には、1)大企業や高額所得者に増税してそれを充てること、2)公共事業費を労働者に暑く分配すること、である(p101)

    ・ナチスは、法律を作って、公共事業土地を収用する場合は、決定時点での時価を基準とするという方針をとって、土地取得費を抑えた(p105)

    ・ケインズは金によらない決済方法を提案したが、金を大量に保有しているアメリカには不利であったので、アメリカは金本位制に固執した(p151)

    ・ケインズの主張は、マネーゲームにつながりやすい短期的投資には制限をかけて、その国の発展を後押しする長期的な投資は推進することにある(p156)

    ・政府がすべきことは、社会には必要だが民間企業がけしてやらないこと、1)通貨の計画的統制、2)貯畜・投資が適正規模になるように調整、3)適度の人口を保つ、である(p169)

    ・デフレよりインフレがまし、という意味は、デフレが起きて失業者が増えるよりも、インフレが起きて金利生活者が困る方がまし、という意味(p179)

    ・民主党の子ども手当は全員対象、ナチスの場合は、所得が低くて子供が多い家庭のみ(p183)・民主党とナチスの最大の相違点は、民主党は金持ちや大企業に増税しないこと、ヒトラーは増税後にそれが貧乏人に渡るような政策を実行している(p185)

    ・当時のドイツに於いて、ユダヤ人は人口1%であったが、政治家や大学教授のかなりの割合を占めていた、収入は他のドイツ人の3倍以上(p187)中世までキリスト教では利子をとってカネを貸すことは禁じられていたので、ユダヤ人はその間隙をぬって金融分野に進出した(p189)

    ・ユダヤ人は阻害されることが多く、つい最近まで商業銀行はワスプ(非ユダヤ系白人)に握られていた(p196)

  • ヒトラーの当初の政策理念が予想外に真っ当だったのに驚いた。むしろ現在の金融システムに対する不安が増大した。

  • どちらかというとケインズに惹かれて買っただけん、ヒトラーを誤解してたことに気づいた!結果良いか悪いかじゃなくて、そんな一面もあったってことが意外。

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著者プロフィール

1967年生まれ、福岡県出身。出版社勤務などを経て、フリーライターとなる。歴史の秘密、経済の裏側を主なテーマとして執筆している。主な著書に『ナチスの発明』『戦前の日本』『大日本帝国の真実』『大日本帝国の発明』『福沢諭吉が見た150年前の世界』(ともに彩図社)、『ヒトラーの経済政策』『大日本帝国の経済戦略』(ともに祥伝社)等がある。

「2022年 『吉田松陰に学ぶ最強のリーダーシップ論【超訳】留魂録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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