発達障害に気づかない大人たち<職場編>(祥伝社新書237)

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396112370

作品紹介・あらすじ

前著『発達障害に気づかない大人たち』で著者が明らかにした、見過ごされる「大人の発達障害」。患者の最大の悩みは、仕事がうまくいかず、職場で孤立してしまうことである。これは当事者のみならず、上司や同僚など周囲にとっても喫緊の課題であり、ひいては、ニートやひきこもりの増加につながっているとの指摘もある。しかし、発達障害の短所と長所を認識することで、これを改善することは可能だ。本書では「職場の発達障害」の対処法について、「時間や約束を守れない」「仕事に集中できない」「上司や同僚とのコミュニケーションがうまくとれない」といった具体的場面に即して、当事者・周囲の人の両面からアドバイスする。

感想・レビュー・書評

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  • ずっとそうではないかと疑惑のあった身内が発達障害と診断されたので、改めて発達障害の人の特性を知るため本書を手に取った。

    本書では発達障害のなかでも、主にADHD(注意欠陥多動性障害)、広汎性発達障害…のうちのASD(自閉症)、のうちのAS(アスペルガー)(ADHD以外は現在名称が変わっている可能性があるが、今でも使われている)について焦点を当てている。
    発達障害の人たちが日常生活の中で、そしてタイトルにもあるように、職場でどのように振る舞えばいいか、また周りの人たちはどのように接したらいいのかなどを、著者自身の失敗談・経験談・著者が診た患者さんたちの事例などを元にアドバイス。
    そう、著者自身がADHDなのです。
    客観的な視点から成るアドバイスと共に、星野流仕事術として、著者の経験から成るADHDとしてミスややらかしをしないようにこのように気をつけているとも、本書では紹介されている。

    また、まだ診断を受けていないけど自分や身内が発達障害かも…?という方の参考にもなるチェックシートがついている。
    発達障害は脳機能障害であり、人生設計などの対策を練ることができるよう、早めに診断を受けた方がいいらしい。
    何よりも、本人や家族などの周囲が、発達障害のことをいい意味で受け入れること・認めることが大事とのこと。確かにこれは発達障害に限らず、どの障害・病気にも当てはまることだと思う。
    しかし一生付き合っていく必要のある発達障害は、なおさら本人や周囲が自身の特性を受け止め、意識して行動することが、本人の人生のためにも必要なことだろう。
    ただ発達障害当事者の中には、自分が発達障害であるかもしれないという疑念を露ほども抱いていないことが多いので(私の身内もそうだった)、本人自身が発達障害であることを認めるのが一番大変だろう…

    この本は、発達障害当事者が読むのはもちろん、私のような当事者に身近な人間が読むのにも適している本なので、ぜひ手に取って読んでみてほしい。
    とても読みやすい構成になっているので。

    最後に、本書が出版されたのは10年以上前であるが、本文中でいまだに精神医学・臨床心理etcの分野でも、大人の発達障害について学ぶ機会が少ないことを言及されている。
    これは10年経った現在でもあまり改善されていない…気がする。
    私自身、大人の発達障害について無知である(他の分野もそうだけども)。臨床心理の分野では、子どもに比重を置いた発達心理学については大学院で学ぶと思うのだが(発達心理学=発達障害についてではないです念のため)。身内に当事者がいて、発達障害かもしれないと思っていたが、はっきりとは分からなかったのだから…
    ケアされるべき現場ですらそうなのだから、まだまだ社会全体では大人の発達障害への認知度が少なく、発達障害当事者にとってかなり生きづらい社会だ。
    また、とても正直な話、発達障害当事者の周りの人たちも、当事者と関わること自体苦になることがやはりある。
    本書を読んで、発達障害の方々がどのようなことができて、できないのか(かなり個人差はあるが)、ざっくり知ることができたので、次はどうやったら発達障害当事者がもっと苦なく生きられるか、どうやって社会が(発達障害に関わらず、とも言いたい)受け入れていけるかを考えながら、他の書籍にもあたっていきたい。

    • マメムさん
      初コメです。
      最近メディアでもよく目にすることが多いですよね。

      『本人自身が発達障害であることを認めるのが一番大変だろう』
      まさにそうだと...
      初コメです。
      最近メディアでもよく目にすることが多いですよね。

      『本人自身が発達障害であることを認めるのが一番大変だろう』
      まさにそうだと私も感じますし、本人に受診を促すべきか、とても悩む所です。

      私の職場に(もしかしたら?)と感じる方がいて、でも上司に相談するか悩んでいます。上司から「決めつけは良くない」と言い返された場合、ご本人がこのまま苦しい職場生活に耐えられるのか?とか考えてしまい、社会や職場全体が発達障害に対する理解と受診を促す仕組みがいつ出来るのか、非常に悩ましく感じています。
      2023/03/03
    • ゆまちさん
      マメムさん>

      コメント等ありがとうございます。
      そうですね、メディアでも取り上げられ、様々な本も出版され、認知度は上がってきていると思いま...
      マメムさん>

      コメント等ありがとうございます。
      そうですね、メディアでも取り上げられ、様々な本も出版され、認知度は上がってきていると思います。

      本人に受診を促すのは、私の場合はとても近しい身内でしたがそれでも大変でした。

      マメムさんの職場にもしかしたらって方がいらっしゃるんですね。確かに上司に相談しても、上司の方からご本人に受診を促すとハラスメントとも取られかねない時代ですから、色々と難しいかもしれませんね…デリケートなお話になってしまいますし…
      マメムさんから見てその方は、職場で苦しんでいるように見えるのでしょうか?
      もしマメムさんのお勤めのところに産業カウンセラーがいれば、上司にその方が苦しそうで心配だ・また近くで見ていて発達障害かもしれないと感じるとお話して、産業カウンセラーとの面談を申し込むよう勧めてくれないか、という相談の仕方はあるかもしれません。あくまで、最近疲れているように見えるから仕事上のストレスなどあれば相談してもらうという形で…
      上記の感想には書いてないのですが、発達障害の方は二次障害としてうつ病などを併発する確率が高いから、というのもあります(本書情報)。
      私もただの素人なので上記に書いたのが実現可能か、正しいやり方かどうかは分かりかねますが(すでにされているかもしれませんし)、僭越ながら思いついたことを書かせていただきました。

      発達障害に限らず、社会がそういった少数派を理解・受容し、適材適所で無理なく働くことができるようになればと私も思います。

      返信が長文となり失礼しました。
      職場の方のために真剣に悩まれているマメムさんは思いやりのある方だと感じましたし、マメムさんのように視野が広く理解ある方がいらっしゃると、勝手ながらありがたいとも思います。
      私には何もできませんが、その方が必要以上に苦しむことなく働けるようになることをお祈りしております。
      2023/03/06
    • マメムさん
      ゆまちさん、お返事ありがとうございます。

      難しい問題ですよね。私から見えるその人が他の人から見ても同じように見えるのか、逆に私が偏見を持っ...
      ゆまちさん、お返事ありがとうございます。

      難しい問題ですよね。私から見えるその人が他の人から見ても同じように見えるのか、逆に私が偏見を持ってしまっているのか、見極めは容易くないと感じています。
      私は以前、うつ病手前?の適応障害になった経緯があり、その時の経験と感情から、その人の様子が気になっているのもあります。

      産業医との面談を勧める前に、落ち着いた頃合いで一度、その人と仕事のやり辛さ等を聞いてみようかなと今は思っています。

      色々と親身に相談に乗って頂き、ありがとうございます♪
      2023/03/06
  • 子供についてはかなり世間一般に浸透してきた発達障害ではあるが、大人の中にも発達障害の人はたくさんいる。自分がそうであった場合、または職場にそう言った人がいた場合の対処方法について解説した本。
    ああ、こんな人会社にいるよな、とかこういうことする人いるよな、というのが実は見逃されてきた発達障害のせいだったというのは、新しい視点だと思う。
    なかなか思った様に育ってくれない部下を持つ人、部下を振り回す上司を持ってしまった人はぜひ読んだほうが良いと思う。

  • 発達障害者として働いていくため、生きていくための豊富な知恵が、とてもわかりやすい言葉・構成で書かれてある。発達障害者以外の人にも応用できる部分も多く、参考になった。

  • 自分も当てはまる!って思ったり、こういう人いるなぁって思ったり。
    症状と個性とを見極めるのは難しいけど、自分自身のことや周りのことを少し見つめるためには、いいかもしれません。

  • 注意欠陥・多動性障害(ADHD)やアスペルガー症候群(AS)といった発達障害の典型的症状と社会への適用方法について概説した本。前者の典型的症状は、仕事のスケジューリングが出来ない、机の整頓・部屋の掃除が出来ないといったもの。後者の典型症状は、会話の把握能力に難があり、空気が読めなかったり、会話のキャッチボールが出来ないといったもののようだ。頭がよく学校の成績が良いような人だと、当該障害の存在を見過ごされたまま、普通に学校を出て社会に出ていくことも多いということで、本人も周りの人間もとても苦労しそうだ。

    こういうご時世なので、わが社にもこうした障害を持つ若者が入社してくることを覚悟しなければいけない時代なのかも、と思った次第。

  • 発達障害という言葉を最近良く耳にするようになったので読んでみました。
    発達障害それぞれの特性と対策が分かりやすく紹介されています。

    整理整頓が苦手、時間ギリギリまで行動できない、騒音が苦手等、エピソードを読んでいると私にも思い当たる部分があったのですが、チェックリストで見てみるとそうでもなかったので、境目ってどこなんだろうと思いました。

  • 職場にそれらしい人がいて、お互いどうすればストレスを減らせるかと思って買った本なんだけど、自分がそうだったのを思い出した。仕事や他の人のことなら問題ないんだけど、自分のことがさっぱりできない。気にして対処方を考えないと。
    逆に同僚は仕事に出てしまうタイプ。できないことを望むより、できることに集中できるようにもっていってあげるのが、双方にとって幸せなのか。
    『個性』と『性格』と『病気』の境界線って難しい。なんでも『病気』とする風潮は好きではないけれど、『病気』と言ってしまえば楽になることも多いからなあ。

  • これを読むと、私も会社の上司も同僚も、みんな発達障害に見えてくる…。

  • いいことも書いてあるけど、それを台無しにするくらい軽はずみな記述が多すぎると思う。「実際の姿はそれぞれ異なる」的なことを書いている一方でステレオタイプな印象を与えかねない内容がけっこう限定的に書かれていて(著者自身は決めつけているつもりは全くないと思うが)、よく知らない人が読んだら誤解を生じる可能性も大きいように感じる。また「ACの発達障害」とか「ニートやひきこもりになってしまう」などといった表現が頻繁に出て来るのもちょっとなあ…という感じだ。著者はあくまで精神科医というポジションで本書を著しているのであり、これが素人の書いたものなら「ああADHD特有のオッチョコチョイだなあ」で済むかもしれないけど…シャレにならない。「職場で発達障害者を活かす」という一連のくだりも、こんなん読んだらますます一般の職場は発達障害者を敬遠するんじゃないかと危惧せざるを得ない。
    繰り返すが、本書にはいいこともたくさん書いてあるのだ。のだが…。著者の芸風と言ってしまえばそれまでなのかもしれないが…やはり、当事者でもあり対人援助職に就いている人間でもある立場からは、看過できない記述が多いわけで。

  • 上司がたぶん発達障害だ。もっと具体的な付き合い方を知りたかった。

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著者プロフィール

1973年、福島県立医科大学卒業、神経精神科入局。79年、医学博士。84〜85年、アメリカ・エール大学児童精神科留学。93年よりロマリンダクリニック心療内科勤務。2001年、福島県立医科大学神経精神科助教授。03年、福島学院短期大学福祉学部教授。06年、福島学院大学大学院附属心理臨床相談センター所長。1990年に大腸ガンを発症し、切除手術を受けるが、7ヵ月後に再発(肝転移)。ガンの食事療法「ゲルソン療法」を簡略化した「星野式ゲルソン療法」を考案・実践し、克服した経験を持つ。また、自らが発達障害の一つであるADHD(注意欠陥・多動性障害)であることを公表している。

「2017年 『ガンを食事で治す星野式ゲルソン療法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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