源氏と平家の誕生(祥伝社新書278)

著者 :
  • 祥伝社
3.43
  • (2)
  • (10)
  • (5)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 80
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396112783

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 源平は臣籍降下により生まれた姓である。臣籍降下は天皇になる見込みがないから自立させることである。
    藤原鎌足、不比等と祖とする藤原氏は大友氏や蘇我氏ら他の豪族を排除し、藤原氏のみが栄達することを企図した。鎌足は人質として送られた渡来人であった。
    軍事力に勝る東国と繋がりのある豪族を潰すため、東国を野蛮な蝦夷とレッテルを張り、軍事貴族である源平を派遣して統治した。藤原氏は天皇家からも恐れられ嫌われた一族であった。
    白河天皇は実子鳥羽天皇の后を寝取り子を産ませた。崇徳天皇である。崇徳は鳥羽から嫌われ、異母兄弟の近衛が天皇に即位する。近衛死後、崇徳は我が子の即位を望んだが鳥羽法皇に拒否され、兄弟の後白河が即位した。
    鳥羽死後、崇徳と摂関家藤原忠実、その子頼長は行き詰まり源為義らと白川邸を占拠する。後白河には為義の子義朝がつき、後白河が勝った。崇徳は讃岐に流され、頼長は死亡、為義は死刑となった。義朝は父を死刑にしたことになる。これが保元の乱である。この乱で力を得たのが後白河、信西、平清盛である。
    藤原信頼は後白河の寵愛を受け出世したが能力は今ひとつだった。後白河の子二条天皇を擁し、平清盛不在を狙い、二条殿を襲撃、信西を捕縛しようとした。この時源義朝は信頼についた。信西は逃亡中自害した。後白河まで幽閉する。清盛は信頼と義朝を追討した。これが平治の乱である。清和源氏は敗れ、伊勢平氏が武家の棟梁の地位を獲得した。
    乱後二条天皇と後白河上皇の権力争いが起きるが二条が死に、後白河、清盛体制となる。
    延暦寺の僧が尾張国主に暴行される事件が起き、僧たちは京に強訴する。後白河は一旦僧たちの訴えを認めておきながら、すぐ撤回し逆に延暦寺のトップを左遷する。この時平氏二名に言いがかりをつけて流罪とする。清盛は激怒し処分を撤回させた。後白河は清盛に延暦寺追討を命じたが、清盛は拒否。同時期に後白河の近臣が清盛暗殺を図ったとされる鹿ヶ谷の陰謀が発覚。しかしこれは清盛のでっち上げであり、清盛は後白河の力を削ぎ延暦寺追悼を諦めさせたのである。
    治承三年、清盛は後白河を幽閉し、平家の軍事独裁政権が成立した。
    王家の末裔源平は長い藤原氏の呪縛から人々を解き放つことに成功した。

  • 源氏と平家の起こりを、藤原氏と天皇家の抗争や他の大和氏族との関わりを踏まえて読み起こした本。
    古代史本なので致し方ないが、半分以上が想像と妄想で塗り固められており、残念なことに説得力が無い。
    井沢元彦ほど酷くも無いが、井沢元彦ほど面白くも無いといったところ。

  • 新書文庫

  • 栄枯盛衰は藤原家には当てはまらず。

  • 源平が、武士が台頭する要因がどこにあったのか、古代からの天皇と豪族のあり方に遡って探った作品。
    源氏、平氏がどうやって武士の世をもたらしたかではなく、その歴史的背景を解説しているので、源平の物語よりも教科書的ではない本当の日本史に興味がある人にはオススメ。

  • 大河ドラマで旬な源氏と平家ですが、その発祥について書かれてます。特に清和源氏は陽成源氏だったのでは?とよく言われますが何はともあれ天皇家から分かれた名族です。その貴種がどうして野に下りそしてまた中央に戻り実権を握ったのか‥関裕二氏らしく藤原氏の話に移っていくのですが、いつもの関氏の著書とちょっと違った角度から読んでみたい方にはお薦めかも?

  • 小学生の時に読んだ歴史本では、大化の改新を行った中大兄皇子や中臣鎌足は善で、蘇我入鹿などの蘇我氏は悪、というようなイメージを持っていた。

    ところが全然、そんな単純なもんではないんだなぁー。

    そう、源氏と平家の武士の誕生を紐解くには、この辺まで遡らねば分からないことだったのだ。

    天皇と藤原氏の関係も知らないといけないんだなぁー。

    いやいや、なかなか面白かったです。
    でも、通説とは違う部分、独自の解釈もかなりあるようですが。

  • 関氏の著書は、いつも面白かったのに、これは駄作。藤原氏の悪徳論で終わってしまう。

  • 高校で古代史を学んだ時、大化の改新(645)で蘇我氏が滅ぼされたことは覚えているのですが、それを滅ぼした中大兄皇子と中臣鎌足が、各々、後に栄えることになる天皇家及び藤原氏の祖である(p4)を初めて認識しました。私にとっては殆ど情報の無かった蘇我氏のその当時の位置づけについても触れられていて(p196)興味が持てました。

    この本では、藤原氏に対抗する形で、天皇の血をひく源氏と平氏が起きてきたことを解説しています。戦国時代以降に比べて、源氏や平氏の生い立ちについての知識が殆ど無かった私には、古代史の面白さを教えてくれる初めての本でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・原則的に、源性は一世王(子世代)に、平姓は二世王(孫世代)に下賜されていくが例外もある、源性のほうが天皇に近い分、より格上である(p13)

    ・平氏には、桓武平氏を含めて4流、源氏には、佐賀源氏・清和源氏の他に合計17流ある、源氏には武士だけではなく貴族も多い(p14)

    ・天皇が皇太子に譲位すれば、前の天皇は上皇、出家すると法皇と呼ばれ、その二つに身分差は無い。上皇・法皇が実権を握る体制を院政、彼等を「治天の君」と呼ぶ(p17)

    ・保元の乱とは、表向きには源氏と平氏が身内同士で戦っているように見える(平清盛は叔父を、源義朝は父や弟を斬首)が、最大の争点は、院と天皇のどちらが実権を握るかであった(p18、43)

    ・白河法皇が院政を取り入れて実権を握れたのは、藤原摂関家の影響力が二代続いて外れたことによる(p19)

    ・平治の乱(11159)では、清和源氏が敗れ、平清盛を筆頭とする伊勢平氏(桓武平氏高望王流)が、武家の棟梁の地位を獲得した(p52、75)

    ・平清盛は、仁安2(1167)、ついに従一位太政大臣に叙せられ、受領11か国、知行国は5か国になった(p58)

    ・1180(治承4)6月に、平清盛は摂津福原(神戸市兵庫区)に遷都を敢行し、後白河法皇・高倉上皇・安徳天皇を移したが、延暦寺が抗議する等があり、安徳天皇は11月には遷都した(p66)

    ・源頼朝が都で幕府を開かずに東国にとどまったのは、東国の武士たちが土地に縛られていたから、源義朝、源義政も東国の武士を呼べなかった失敗がある(p67)

    ・平家滅亡の遠因は、源頼朝を東国へ流したことにある、都で栄達を求めた平家は、源氏よりも早く東国に進出していた(10世紀頃)が、いつしか東国の武士の実力を忘れてしまった(p70)

    ・縄文時代に日本列島で栄えたのは東日本、岐阜から富山を貫く高山本線の東側が縄文人の楽園と考えられ、植生はこのあたりの東西で大きく替わる、縄文時代は1万年近く続いたので、日本文化の形成に縄文人が果たした役割は大きい(p89)

    ・弥生時代になり新たな文化が西から東に流れ込むが、奈良盆地(関西の中の縄文)が防波堤になり稲作の東漸を食い止めていた(p90)

    ・ヤマトの象徴である前方後円墳は、4世紀にかけて福島県会津若松まで伝播していたが、東北の北部域はその新たな埋葬文化を拒んだ(p97)

    ・蘇我氏を滅ぼすことで権力の座を勝ち取った藤原氏は、東国を敵視した、例として、三関固守(鈴鹿:伊勢国、不破:美濃関ヶ原、愛発:越前)であり、その東側が古代の東国である、この東を古代の「関東」という(p115、141)

    ・平氏も源氏も、藤原氏の思惑で都から遠ざけられていて、藤原氏の思惑で関東に連れてこられた点で利害は一致した(p137)

    ・摂政は幼少の天皇を補佐する、関白は元服後の天皇を補佐する役目、摂政は天皇の外戚が条件だが、関白はその必要がなく、藤原北家の出身で、大臣か前大臣であれば良かった(p154)

    ・藤原氏は、神話の世界に登場する天児屋命(あめのこやのみこと)を租として、長い間「中臣」を名乗る一族で、6世紀には物部氏とともに排仏派として活躍し、蘇我氏の寺を破壊していたりした(p184)

    ・藤原氏により古代から続く名門貴族(蘇我:石川、物部:石上、大伴:伴、阿倍、紀氏等)は、ことごとく没落させられた(p185)

    ・蘇我氏は、古代朝廷の不文律であった合議制(各部族から代表者を出す)を崩していなかった、藤原氏の考え方(自分たちの一族のみ栄えれば良い)は、それまでの日本には無かった(p186)

    ・日本書紀は「中臣氏」を改革派と位置付けるが、真相は全く逆で、蘇我氏=改革派、中臣氏=旧知派、反動勢力とみなせば謎が解ける(p198)

    2012年8月26日作成

  • この著者がどういう歴史観の持ち主か知らずに読んだが、憶測と主観だらけ。こんな新書があるのか、という驚き。「中臣鎌足=百済王の王子・扶余豊璋」は珍説を通り越して小説。出展や論拠がない。海音寺潮五郎も様々な随筆の中で珍説を提唱しているが、彼は「小説としたら面白いかも」と分かって書いている分だけマシだと思う。小説として読む分にはおもしろいかもしれない。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

歴史作家

「2023年 『日本、中国、朝鮮 古代史の謎を解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

関裕二の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×